神龍に見えなくもない
お姉さんではなくお姉ちゃんとして覚醒した3人。
覚醒なんて言っているが実際はただのデバフ。
(弟君可愛い)
(は~~吸いて~~~)
(撫で撫でしたい、一日中撫でたい)
裏の世界で生きてきたはずの3人。
しかしもの数秒で弟君と呼び、吸いたいと言い出し、一日中撫でまわしたいと言う。
これがデバフでなくて何だと言うのか。
「お腹空いた」
きゅ~~という実に可愛らしい音がシドの腹から鳴る。
(((かっわ)))
語彙力が死にその可愛さに悶絶。
可愛さから復帰しシドの腹を満たすべく料理をすべく立ち上がり
「直ぐに用意するから、ちょっと...」
待っていてほしいと言いかけた所で襖が吹き飛んだ。
吹き飛ばしたのは
(あいつら.....仕置きしたろうか)
カナとナツである。
ジョン・スミスの仮面の下であるシャドウ(成人)を見て、年齢と色気が釣りあっていないとかスケベだとか言っていた2人ではあるがシドの食欲を満たすべく動きだした。
その理由は何か?
お姉ちゃんだから。
お姉ちゃんだから可愛い弟君の腹を満たすのは当然のこと、というか義務。
絶対にやらなきゃいけない事というのが理由である。
餌付け...なんて考えは微塵もない、一切ない。
お姉ちゃんとしての義務としての行いである。
そしてユキメも同じ考えであった。
弟君の腹を満たすのはお姉ちゃんとして当然の役目、その役目を抜け駆けされて激怒していた。
しかしお姉ちゃんとしての振る舞いを心得ているユキメは怒りを気配にすら出す様な失態は犯さない。
「ふーー」
かと言って抑えるのにも限界はあるわけで、それを抑える為に
「すーーーーー.....はーーーーーー」
ショタシャドウを吸う。
膝の上に座らせて頭に顔を埋めて吸う。
カツラ越しとはいえシャドウの匂いが鼻腔を満たす。
吸った空気は鼻腔を通り、気管から気管支で枝分かれし肺全体に行き渡り肺を満たす。
(効くぅ~~~~~~)
怒りは燻る程度まで落ち着き、消えつつある。
ショタシャドウの匂いはお姉ちゃん特攻を秘めているようだ。
「すーーーーー.....はーーーーーー」
そしてお姉ちゃん特攻を含んだ匂いを吸い続ける。
吸う、とにかく吸う。吸い巻くる。
一方その頃抜け駆けしたナツとカナはというと
「邪魔すんじゃねぇよ!!」
「お前が邪魔すんじゃねぇよ!!」
端正な顔を嫉妬に歪めて、その顔からは想像もつかない様な罵声を浴びせあう。
「『検閲済み』!!」
「『検閲済み』!!」
この争いの原因はどちらが
むしろ蹴落としてやるとすら考えている。
そして遂には
「喰らえ!!」
「やりやがったなこの野郎!!」
実力行使を伴った争いに発展した。
ここでもし真っ当な感性を持った、普通の一般人が見たらそこまでする事でもないだろうと言うだろう。
だが2人にとってはそこまでする事なのだ。
これはお姉ちゃんとしての誇りをかけた戦い。
譲るなんて事も協力なんて事もない、絶対に負けられない戦いが今ここにある。
協力したらいいんじゃない?喧嘩する程の事じゃないだろというツッコミは無粋。
いい年した女性2人がする争いの内容にしてはレベルは低くすぎじゃない?とか、君らの弟じゃないじゃん他人の弟じゃんとかも決して言ってはいけない。
「よっしゃ勝ったぁ!!」
「ちくしょおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
長く激しい戦いの末、カナが勝利した。
殴り合いから始まり、取っ組み合って関節技を掛け合った長い戦いに決着が着いた。
勝利したカナは喜びの雄叫びを上げながら、台所に向かって駆け出す。
そして負けたナツはというと
「くしょぉ.....ちくしょぉぉぉ」
うずくまって泣いていた。
ボロボロの体を抱えてうずくまりさめざめと泣いていた。
Q.そこまで泣くような事なのか?
A.泣くことです
お姉ちゃんとしての役目を果たせなかったナツは号泣。
数分間泣くと、うずくまっても仕方ないと思ったのか起き上がりボロボロの体を引きずりながら部屋に戻る。
(ああ、可愛い)
戻れば当然いる、天使がいる。
ボロボロの体は瞬時に幸福で満たされ、取っ組み合いで付いた傷が癒えていく(幻覚)。
だがそんな幸福も10秒と持たなかった。
存在自体忘れていたユキメと目が合った。
目が合った瞬間、全身に寒気が走り塞がった(幻覚)はずの傷が痛み始めた。
そして恐怖の末ナツは
部屋の隅で縮こまった。
ユキメにもシドの目にも入らないように部屋の隅で縮こまる。
一瞬だけ見たユキメの顔は笑顔だった、美しい笑顔だった。
それと同時に漏らすんじゃないかと思うほどの怒りが向けられた。
(ちょっと出そうかも....)
苛烈な争いに勝利したカナはシドの朝食を用意し、ルンルン気分で厨房から部屋へ戻る。
普段のカナならここまでの事はしない。
普段なら客人として、主人であるユキメの思い人として丁重にもてなすだけでここまで積極的にはならない。あくまで義務としてやるべき事を行うだけ。
しかし今のカナはショタシドを目にして覚醒してしまった。
母性の爆発、ちっちゃくて可愛い
だからこそ譲れなかった。
お姉ちゃんとして弟君の朝食を用意するのは当たり前。
蹴落としてでも朝食の用意をすべきなのだ、例えそれが共にユキメに仕える仲間だったとしても。
因みにカナが用意したのは炊き立てご飯で作った塩むすび、3個作った。
そこに疚しい気持ち等微塵もない。
(これを弟君が...ごくっ)
疚しい気持ち等微塵もない、ないったらない。
握ったおにぎりが口の中から胃に入って消化されて、体の一部になったり成長の糧になるとかエッチじゃない?とかそんな事は一切考えていない。
あくまで発露した母性と甘やかしたいという気持ちから作っただけで、疚しい気持ちは一切ない。
作っただけ。
自分が握った塩むすびが口に入る瞬間を想像して興奮なんてしてない。
(ふふ.....ふふ♪うふふふふ)
薄ら笑いを浮かべ、スキップしながら部屋に戻る。
そこに小狐を抱えた、鬼がいるとも知らずに。
「お待たせし.....ま.....した」
部屋に戻った瞬間、鬼と目が合った。
鬼とはカナが仕えるユキメの事である。
睨みつける目は鬼としか言いようがない。
その瞳は言葉を発さずとも語っている。
お前、後でしばき回すからな。
カナは悟った。
(あ、死んだわこれ)
こんな痴話喧嘩ですらない、男の取り合い?が死因になるとか恥ずかしさしかない。
(でも死ぬ前に弟君におにぎり食べて貰えれば、それで満足だわ)
謎の図太さを発揮し、おにぎり食べて貰えればいいとか考え出した。
死ぬ前の思い出がそれでいいのかと疑問も出なくもないが、本人が良しとしていのでいいのだろう。
覚悟がガンぎまりのカナは鬼の真正面に座り、膝の上のショタシャドウと目を合わせる。
「はい、お待たせしました」
おにぎりの乗った皿を差し出せば、シドはおにぎりを口一杯に頬張る。
「美味しい!!」
(あ、可愛い。死ぬ)
美味しいと言いながら、口一杯に頬張る姿は昇天必須。
実際、綺麗なお花畑も見え始めた。
だがそんな幸せも持って3秒。
「良かったなぁ、美味しいんやって」
地獄の底から響くような声で話すユキメによって昇天は強制終了させられる。
お花畑から現実へと帰還、目の前には笑顔だが一切優しさや温もりを感じないユキメ。
しかし、図太いというよりは開き直ったカナは
(これが私の人生最後の幸せか....まぁいいか)
確定した死を受け入れ幸せを噛みしめていた。
一方、完全に蚊帳の外とナツはというと
(うわぁ....あいつあんなだったか)
自分の事を棚に上げて、引いていた。
朝ご飯作るのに本気の争いをしておきながら、引くのは完全にお前が言うな案件。
どの口が言ってんだと言われても文句は言えない。
(私はああならないようにしよう)
もうなっているので手遅れ。
「ふんふんふん♪」
ご機嫌な様子で白の塔の内部をトコトコ歩くシャドウ。
そしてその後ろを可愛さに悶絶しながら付いていく、ユキメ達。
何故こんな事になったか?
それは10分程前。
「シャドウはん、今までどないしとったん?」
何気ないユキメの一言。
シャド吸いで落ち着いた心に生えたほんのちょっと嫉妬。
ちょっぴりの嫉妬。
いつものシドなら嫉妬を感じ取り、面倒事につながるよう事は言わない。
しかし、数日間幼児化を継続している事により徐々に精神が外見に引っ張られ始めたシドは全部話した。
ベータのお胸で窒息しかけた所でお薬投与からの幼児化。
続く七陰に揉みくちゃにされて着せ替え人形。お姉ちゃん呼びからの可愛がり。
メアリーの餌付けからの、エリザベートとの3人でお散歩デート。
素直に全部話した。
なんて事ないように話すものだから、ちょっとイラッとして頬っぺたを揉みまくってやった。
「やぁめてよぉ~~~」
弱々しい声で懇願してくるのはそそられた。
それはそれとして、吸血鬼2人組にの後というのは非常に腹立たしい。
デートも非常に羨ましい。
ここは無法都市、デートの場所としては論外。ユキメが頑張ればデート自体は出来なくもないが、目を離した隙にいなくなられたりしたら心がもたない。
迷い込んだ先が自身の直轄地である色街だとしたら発狂する自信がある。
あんな可愛い子狐が迷い込んだらどうなるか?
男を金を稼ぐ為の道具だと割り切っている女達は問題ない、軽くあしらって終わりだ。問題はすれていない女達。
乙女心の残った者達が見たらどうなるか?絶対に可愛がる。
そしてこの子狐は口説くだろう、自覚もないままに口説いて口説きまくって虜にしまくるのは容易に想像できる。というかそれしか想像できない。
そうなるとシャドウガーデンからの焼き討ちは必然、色街からの上がりは全滅。
事の次第によっては全員吸血鬼の血液ドリンクバーにされる可能性もある。
このままではお散歩デートができないと悩みに悩んだ結果、ユキメはその頭脳で答えを導き出した。
お家デートすればいいじゃん、と。
全然答えになってはいないがユキメの中では筋が通っていた。
ユキメも現在参加している正妻戦争、参加人数が多い事とアピールチャンスが少ない事で膠着状態が続いていたがこの機会を利用すれば有利に正妻戦争を進められる。
しかもお家デートなら将来、正妻戦争に勝利した際の住居として使うなら動線の把握は必須。
ついでに子供に優しい事もアピールできればより有利な立場になれる。
というのがユキメの考えである。
そして時は現在に戻る。
尻尾とカツラについた耳がピコピコ動くのを見ながら、シドの後ろを付いていく。
目に付いた扉を開けひたすらに開けまくって、部屋の中を見ていく。
その途中ナツとカナの部屋もあったが、ユキメは朝食の件で怒りが残っていたので2人のプライバシーを無視して部屋を公開。
鬼畜の所業。
その後もお家デートを続行していると、シドの足がある部屋の前で止まる。
部屋の前で考えこんでから扉に手をかけて開けようとするも
「あきまへんよ」
開けようとした扉を抑え込む。
今の状況では力はユキメの方が有利。
「ん~~~」
頑張って開けようとしているけれど、ユキメが抑えているので開けられない。
「んん~~!!」
力んで開けようとしているけれどぴくりともしない。
(きゃわいい~~~♡♡)
必死に力んで開けようとしても開けられない。
その姿がとんでもなく可愛い。
可愛すぎて抑える力が緩みそうになるのを頑張って耐える。
(撫でまわしたなるわ)
撫でまわしたくなる程の可愛さ。
しかし撫でまわる程の可愛さだが、撫でるのは諦めるしかない。
この部屋だけは見られる訳にはいかない。
部屋の中にある物をシドだけには見られてはいけない。
隠し撮り、隠し撮りがプリントされた抱き枕etc....
ガンマとの交渉で手に入れたオタ活ならぬシャド活の為のグッズが大量に保管されている。
特に今のシドに見られて引かれでもしたら普通に死ねる。
心が死ぬ。
だから見られる訳にはいかない。
開けられないので興味を失ったのか、シドは歩いて別の部屋に向かっていく。
シドがいなくなったのを確認してから
「これで大丈夫やろうな」
今まで付けていなかった錠まで付けた。
鍵をしっかり閉めて、盗られない様に懐にしまう。
「鍵付けるぐらい大事なの?」
先に行かせていたはずのシドがいつの間にか隣にいて、錠を付ける瞬間もしっかり見られていた。
「そうやなぁ、大事なもんがあるんよ」
「へー」
「....」
「......気になる」
「あきまへんよ?」
「むぅ」
時間は流れ夜になる。
一緒に布団に横になって寝るはずがそうはならなかった。
ユキメは正座状態で失神、ナツとカナも同様に失神。
そしてそんな事はいざ知らず、ユキメの尻尾に包まれて爆睡するシド。
ユキメより先に風呂に入っていたシドは、ユキメが風呂から上がってきた時には既に夢の世界に漕ぎ出していた。
座った状態のまま揺れて、今にも倒れそうな状況。
律儀に狐耳まで付けて待っていてくれたようだが、今にも倒れそう。
その奇跡の様な光景を写真に収め、倒れないうちに受け止めようと隣に座る。
そして限界が来たシャドウは倒れこむ。
ユキメの尻尾へと。
尻尾にシドがダイブした瞬間、ユキメの思考は停止した。
膝か胸に倒れこむのは予想していたが尻尾は全くの予想外、処理に時間がかかった。
漸く現実に復帰したユキメはなんとかカメラを手に取り、尻尾に抱きつく姿を収める。
「ん....ん」
尻尾の感覚が気持ちいいのか頬ずりして、より深く顔を埋めてしがみつく。
そして
「あ」
ユキメは昇天した。
小狐が自分の尻尾にしがみついて眠っている、しかも心地よさそうな笑みを浮かべながら。
勿論、ナツとカナも被弾した。
視界に入った瞬間に脳が破壊され、昇天。
「ふぁぁ」
オマケ 目覚めしおネえチゃン
「あのクレアちゃん、そんなにしたら扉が壊れちゃうから」
「というかこの前貴方が壊したのを直したばかりで....いや、修理費を払うとかじゃなくてそもそも壊さないで欲しいのよ。壊さなきゃ修理費なんていらないし、修理する必要もないのよ」
「だから修理費の問題じゃなくて....どこにいるか教えてって言われても知らないのよ、そもそもそういうのは貴方の方が詳しいんじゃ....教えて貰ってない?そ、そうなのね」
「だから私は知らないのよ。というかどんな所に行くかとかは家族である貴方の方が詳しいんだから私に聞か...え、それは知らない私が家族じゃないって事かって?そんな事はないわよ、貴方はシド君のお姉さんで家族じゃない、家族同士にだって知らない事があってもおかしくないわ」
「おかしくないからそんな目で見ないで...怖いわ」
「それ以上ドアノブをガチャガチャされるとノブが取れ」
バキッ
「あ」