ヴァンパイアとアリス   作:獄華

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 スモーキーはジョースター家に食事に誘われた。


宣戦布告

 

 

 (これがエリナさん……ジョジョのお祖母ちゃん)

 

 

 翌日スモーキーはジョースター家の誘いで一緒に食事を取る事になった。

 初めて見たジョジョの祖母エリナは上品さと年相応の美しさに加え人としての温もりが見て取れた。

 

 「貴方がスモーキーさんですね。ジョジョの友達になってくれたみたいでありがとうございます」

 

 

 「あ、いえ。俺こそジョジョに助けて貰って……。今日は食事に呼んでくれてありがとうございます」

 

 今までの人生の中でこんなにも穏やかな会話をした事があったろうか。

 自分のような者にまでエリナは優しく接してくれる……。

 そんなエリナだが突然ある光景を見て溜め息をついていた。

 

 

 「どうかしたんですか?」

 

 

 「またジョジョが争い事をしているのです……本当にあの子は血気盛んね」

 

 

 見るとジョジョはタクシーと書かれた車の運転手と言い合いになっているところだった。

 

 

 「どこ目付けてふらついてんだよ!このスカタン!テメーのケツ犬にでもキスさせてろぉ!」

 

 

 すかさずジョジョは開いてるドアガラスに近寄ると運転手の襟を掴み取る。

 

 

 「もしもーし!」

 

 

 「ひっ!」

 

 

 「何だって?。ゆっくりともういっぺん言ってみろ!米国英語の通訳なしでも分かるよーになー。場合によっちゃぶっ飛ばす!」

 

 

 

 「……ジョジョ!何をしているのです?」

 

 

 「イッ!?」

 

 

 運転手をぶん殴る寸前のジョジョを止めたのはエリナの一声だ。

 ギクゥゥゥ!とジョジョは肩を震わせ運転手を離した。

 

 

 「エリナ婆ちゃん!?」

 

 

 「その人に何をしようとしていたのですジョジョ?」

 

 

 「あ~、えっと……そのですね……」

 

 

 困るジョジョの視界に入る『TAXI』の文字。

 締めたぜ!とジョジョは心の中でガッツポーズした。

 

 

 「タクシー!タクシーですよ!エリナお祖母ちゃん!。乗っけってってくれるそうです!」

 

 

 「おぉジョジョ。それは気が利くわね。スモーキーさん貴方も行きましょう」

 

 

 ジョジョはふぅ……と一安心しながら最後にタクシーに乗り込んだ。

 

 

 ――――祖母と孫だけのたった二人の一族ジョースター家……。

 俺がこの一族と知り合えたのは偶然か必然か…車に揺られながら俺は二人の会話を聞いていた。

 

 「なぁ。お祖母ちゃん。スピードワゴンはよぉ俺達にニューヨークに来いって行っておいてよぉ。自分はどっか旅行してるんだって?。ちょいと良い加減過ぎないかスピードワゴンの爺さん」

 

 

 「石油の仕事できっと忙しいのでしょう」

 

 

 「ふーん……………」

 

 

 ジョジョは何か言いたげな様子でエリナを見る。

 まるで好奇心旺盛な子供が面白い物を見つけた時のような目で。

 

 

 「ねぇお祖母ちゃん」

 

 

 「ん?」

 

 

 「本当にさスピードワゴンはジョナサンお祖父ちゃんの親友だったの?ただそれだけぇ?本当に?」

 

 

 「どうゆうことです?」

 

 

 「だってさー。スピードワゴンの爺さんは独身だよ。お祖母ちゃんもずっと未亡人。本当にそれだけの仲・な・の・か・なあ〜〜〜〜〜と思ったりしてぇ!」

 

 

 「無礼者が!」

 

 

 エリナの目がキッと険しくなり自分の持つ傘を手にしジョジョを叩いた。

 バン、バンとジョジョの身体を叩く音が車内に広がり運転手もエリナの怒りに動揺したのか車が少し蛇行する。

 

 「わ、分かった!もう言わないから許してぇ!知ってるよ!スピードワゴンの義理堅さは!」

 

 

 

 ――――ジョースター家は代々短命な一族、エリナお祖母ちゃんは若い時……夫を船の事故で失い。その時身籠っていた男の子とその事故の時一緒に助かった女の赤ちゃんが大人になって結婚してそれがジョジョの両親……このご両親も戦死と病気でなくなったのだそうだ。

 エリナお祖母ちゃんは限りなく優しい。

 チンピラのオイラにも誰に対しても……それはその人生の寂しさのせいなのだろうか……。

 ジョジョも同じだ。

 そしてその親切さがその日にトラブルの元になった……オイラのせいで……。

 

 

 

 

 

 

 「おい!ウェイター!。ウェイター!」

 

 

 「はい!」

 

 

 「この店はあんなくっせぇ豚野郎入れてんのかァァァ〜〜〜〜〜!?。ハー!」

 

 

 スモーキーに因縁を付けて来たのはブクブクと太った白人の男だ。

 黒人のスモーキーが同じレストランで一緒に食事を取るのが気に食わないらしい。

 

 

 「あいつの匂いが料理にうつってまじいんだよ!。ああいうの入れてんじゃねぇ!」

 

 

 「お客様。この店では如何なるお客様でも料金さえ払って頂ければ料理をお出し致します」

 

 

 荒ぶる客にウェイトレスは冷静に説明するが男は聞く耳を持たない。

 

 

 「何だとォーーーーー!。この店は豚が豚を食ってもいいのかっ!ハー!」

 

 

 

 スモーキーは言い返せず涙目を浮かべていた……。

 

 

 「お、俺先に帰るよ……」

 

 ジョジョ達に迷惑を掛けてはいけないと立ち去ろうとしたスモーキーをジョジョが手を掴み止めた。

 親友を侮辱された怒りにジョジョはムッカアァァァァと立ち上がる。

 

 

 「ジョジョ」

 

 

 「お祖母ちゃん……まさか止めんじゃないでしょうね?」

 

 

 「いーえ。個人の主義や主張は勝手……許せないのは私共の友人を公然と侮辱したこと!。他のお客に迷惑を掛けずきちっとやっつけなさい!」

 

 

 「そうこなくっちゃあな!お祖母ちゃん!」

 

 

 水を得た魚のようにジョジョは笑みを浮かべていた。

 とっちめてもいいとエリナの許可が降りたのだ。

 

 「オホホホホホ!やるってのか兄ちゃんよォ」

 

 

 スモーキーを侮辱した男もポキポキと指を鳴らし立ち上がる。

 すかさず男は自分の上着にある得物を取ろうとしたが……そこに得物はなかった。

 

 「ヘイ!オッサン!メリケンサックを探しているのなら(・・・・・・・・・・・・・・・・)アンタの上着のポケットにゃあないぜ!ズボンの後ろポケットに入っている(・・・・・・・・・・・・・・・・)!」

 

 

 

 (ま、まさか……)

 

 ジョジョはまるで予測していたかのように告げると実際にメリケンサックはズボンの後ろポケットに入っていた。

 

 

 「デッ!」

 

 

 戸惑う男をピィンとジョジョは指差す。

 

 

 「お前は次に『なんでメリケンのこと分かったんだこの野郎!』と言う!」

 

 

 「なんでメリケンのこと分かったんだこの野郎!……ハッ!」

 

 

 

 「お前の利き腕の指のスリムケを見ればそれはメリケンサックをハメて喧嘩した物と分かる!。そしてお前のシャツについているのは血!それも返り血!さっき人を殴って来たばかりだな!しかも血が上着ではなくシャツに付いていると言うことは上着を脱いで喧嘩して来たと言うこと!」

 

 

 「ヌゥゥゥ……!」

 

 

 「つまりメリケンサックを指から外した時、上着は着てないからズボンのポケットにしまった事は当然の結果だ!」

 

 

 苛立ちからか唸り声をあげ、慣れた手つきで男はメリケンサックを手に嵌める……。

 

 

 「次のセリフは『分かったからどうだってんだよこのクソガキが』だ」

 

 

 更に怒りを誘う為かジョジョは最後にまた男を指さした。

 

 

 「分かったからどうだってんだよこのクソガキがーーーーッ!」

 

 

 

 男の拳はジョジョの顔に当たり血飛沫が上がる。

 

 

 「当たったぁ!」

 

 

 ドバババン

 

 

 完全にジョジョを捉えたと男は確信し更にラッシュを叩き込む。

 

 

 「ハッハ……ザマアミロ!。カッコつけんじゃねぇ!」

 

 

 

 「いーや違うね。いったいどこ殴ってんだよ」

 

 

 何とジョジョは全くの無傷だったのである。

 男は無我夢中で馬鹿みたいに『別な物』を必死に殴っていたのだ。

 

 

 「オメーが楽しそうに殴ってたのは俺じゃないぜ後ろの帽子掛けだよ」

 

 

 「デッ!アガガァーーー!」

 

 帽子掛けは硬い物質で出来ており男の手のひらを鋭い棘が貫通していた。

 痛みに悶絶し男は情け無い声を出しながら右手を抑える。

 

 

 「オメーのような単純脳ミソのやるパターンは全て読まれてるってこと分かんねーのか!このウスバカが!」

 

 

 

 歓声が上がり客達の間で拍手が溢れ出る。

 スモーキーもジョジョが敵を取ってくれた事に誇らしげに笑みを浮かべていた。

 拍手が静かにならない内に一人の黒服の男が立ち上がる。

 ジョジョは警戒し瞬時に男の方へと身体を向かせた。

 

 

 「いや!子分の無礼を許してください」

 

 

 「おっさん喝采の拍手も終わんねーうちに立つなんてアンタも相当礼儀がねぇな」

 

 

 「こいつは失礼。だがこちらも急ぎ伝えたくてね。マダム……貴女はエリナ・ジョースターさんでしょ?。私はスピードワゴンさんに大変世話になってやしてねぇ……あんたの事も以前ロンドンで教えられて知ってるんですよ。会えて良かった」

 

 

 カツン、カツンと上品そうな靴の音を立て男は此方へと近づいてくる。

 

 

 「さっき知った裏の情報でまだこの国の新聞屋とかには知られてねぇんだが……スピードワゴンさんが殺されましたぜ」

 

 

 カツゥンと一段高い音を立て男は歩みを止めた。

 

 

 「なっ……」 「何だと…!」

 

 

 衝撃的な情報にエリナもジョジョも動揺を隠せない。

 

 「噂では…殺ったのはチベットから来た修行僧」

 

 

 「修行僧……!ストレイツォか!」

 

 

 半世紀前のディオと水銀燈との戦いで祖父ジョナサンと共にディオの牙城へと入りスピードワゴンと共に水銀燈と対峙したストレイツォ。

 彼の話もジョジョはエリナやスピードワゴンから聞いている。

 波紋戦士が人を……しかも旧交があるスピードワゴンを殺すなんてどんな異常事態が起きたのかジョジョには分からない。

 

 

 「メキシコ奥地の川で流れ着いたスピードワゴンとその一行らしい死体を発見した者の話だ……どこで何故殺されたかも、修行僧が何処へ行ったかも……誰も知らない」

 

 

 男から発された言葉を聞きエリナは神に祈るように両手を合わせた。

 身体を震わせながら……。

 

 

 「わ……分かる気がする。きっと多分…スピードワゴンさんが嘗て話してくれた石仮面とディオ……それにまつわる事のような気がする……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『し、あわ……せ……に……エリナ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エリナは半世紀前、夫ジョナサン・ジョースターがディオの技に破れ…燃える中死に行く姿を鮮明に思い出していた。

 あの記憶は今でも彼女の中を燻る……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ジョジョこの男はマフィアだぜ!。信用しちゃあいけねぇ!きっとタカろうとしてるんだ!」

 

 

 

 スモーキーの言葉なぞまるで何処吹く風の様子で男は煙草を咥えた。

 

 

 「そう思うのは勝手よ」

 

 

 「……おっさん。ライターなら胸ポケットに入ってるぜ」

 

 

 「ハッ……!」

 

 

 そのままジョジョは男の襟を掴んだ。

 

 

 

 「スモーキー!忠告ありがてぇが俺はこいつの言う事を信用する!……こいつらは銭金のみで動く連中!ソイツが恩を売ろうとして流すマフィアの情報だから現実味がある!だがッ!」

 

 

 ドボォ!。

 

 

 男の腹にジョジョの拳が入る。

 

 

 「おぱあぁおおおっ!」

 

 

 

 「いくら真実とは言えそんな最悪の情報をエリナお祖母ちゃんにいきなり聞かせたのは許せねぇ!怯えさせて悲しちまったじゃねーか!このバカタレが!」

 

 

 

 「50年前の事が未だに続いてるなんて……」

 

 

 「怖いのか?お祖母ちゃん!俺が守ってやる!」

 

 

 「違う!ジョセフ!お前の事だよ!。お前が巻き込まれていく運命の事が怖いのです……!」

 

 

 「大丈夫だよ……」

 

 

 ジョセフはエリナを優しく抱きしめた。

 

 

 「それが運命なら……それに従うぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 ――――オイラには何が何だかわからないけどこの二人は途轍もない過去を背負っているんだ……。

 

 

 

 スモーキーは計り知れない一族の血の重さに何も言葉を掛ける事が出来なかった……。

 この場にいず一人アメリカの空を飛んでた金糸雀は『無意識の海』からジョジョとエリナの話を聞いて涙を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――数日後。

 

 

 

 

 

 「おい!スモーキー!」

 

 

 「うん?今日は冷えるなぁ」

 

 

 

 夜……ジョジョとスモーキーは良さげな喫茶店に入り談笑していた。

 

 

 

 「この雑誌!ここ見ろよ!」

 

 

 

 「何だよ?」

 

 

 「これもしかするとここ盛り上げるやつかよ?ほへぇー!」

 

 

 ジョジョは自分の胸の前で意味有りげに手のひらを外に向ける。

 

 

 「なになに?。AAカップがCになる……へー騙されるぜ!気をつけようぜ、なあ!」

 

 

 「……おや?」

 

 

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

 

 

 

 その時ジョジョは硝子の向こうから此方を見つめる男の存在に気づいた。

 うーんと自分の記憶の中に長い黒髪で若い東洋人の男を思い起こすが出てこない。

 白崎とは明らかに髪型も容姿も背丈も違う。

 だが男の目線は明らかにジョジョを捉えていた。

 

 

 「……やっぱし俺によう?えっとーー?」

 

 

 頭に手を当てながら喫茶店の外に出る。

 

 

 「はて?何処かで見たことがあるようなー。ないようなー」

 

 

 東洋人の男はその長髪をたくし上げる。

 

 

 

 「ミスター白崎とは違うし……アンタ、以前どっかで会った事がないかな?」

 

 

 ジョジョが質問しても男は黙ったままジョジョの周りを歩く。

 間合いを取るようにジョジョも彼から離れながら続けて質問を投げかける。

 

 

 「ね、なんでこんな寒いのに白い息が出ないんだ?。そしてアンタ今チラァと口の中に牙が見えたような〜見えないような〜……」

 

 

 

 

 二人の歩みは今止まった。

 

 

 

 「とぼけんな……この野郎!」

 

 

 

 間違いない。こいつがスピードワゴンを殺したチベットの修行僧ストレイツォだとジョジョは確信に至る。

 石仮面の力で吸血鬼になり若帰ったのだ。

 

 

 「フッ。街中だろうが関係ない。ジョジョ!お前の命を貰う!才能が目覚めんうちになぁ!」

 

 

 最早ストレイツォは殺気を隠さず、格闘の構えを取っていた、だがジョジョは動じない。

 

 

 「ほう、そうかい!」

 

 

 ストレイツォは目を疑った。

 なんとジョジョは一瞬の内に銃を取り出し自分に撃ってきたのだ。

 

 

 

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!

 

 

 

 銃撃を受けストレイツォの身体は店の中に吹っ飛んだ。

 

 

 

 

 (無茶な奴とは思っていたがこれほどとは!街中からいきなり何処から手に入れたのか!トンプソン機関銃をぶっ放したぁ!)

 

 

 

 スモーキーは驚きながらその光景を見ていた。

 ジョジョが一般人に銃撃を………した光景を……。

 

 

 

 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 

 

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!

 

 

 

 

 全弾撃ち尽くし煙を上げた薬莢がチャリィーンと音を立てて落ちた。

 

 

 

 「ストレイツォ!来るのを待ってたぜ!この程度で貴様が死ぬとは思えねぇがスピードワゴン爺さんの仇……宣戦布告だぜ!」

 

 

 

 割れた硝子のサッシに足を置きジョジョは高らかに宣言した。






 (け、契約するマスターをま、間違えたかしら!)

 一人ジョジョの服の中で怯える金糸雀であった。
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