陰の幼なじみは異世界でも巻き込まれる 作:後は野となれ山となれ
幼なじみ。
子供の頃からの親しい間柄。そんな存在は俺にもいた。
ただそいつは周りの人とは違って普通のヤツじゃなかった。
小さい頃。
いつの日か唐突に家に来たかと思えば『僕は陰の実力者になる!』とか宣言して、それをきっかけに空手やら柔道やら、その他エトセトラ。色んなもんに手を出したソイツ。
恐ろしいことに、実力をメキメキ伸ばしてもはやオリンピックアスリートなんじゃね?レベルにまで体を鍛え上げた。
でも人前でその強さを1ミリも出さない。
んー、ナンデェ?
あくまで普段は凡人なのに実はクソ強いっていうシチュエーションが興奮するとのことらしいアホくさ。
まあ、人の趣味だ。別にやりたきゃやればと思っていたが、あの野郎こともあろうか俺をトレーニングに付き合わせてきやがる。
いや無理よ。ハードすぎて開始30分でダウンしたわ。
強くなれたら女の子にモテるよって言葉にホイホイ乗ってしまった俺も馬鹿だったぜ…!実力出さないなら強くなっても意味ねぇよ…!
まあそれからというものサポートに回った日々。
ミット打ちやらタイム計測やら……、うん、パワーとかが人間超えて腕の骨何回痛めたと思ってんの。
おかげでタフネスが並の人間の倍以上になったね!
……嬉しくねぇよ。
そんな幼なじみが事故でポックリ逝った。
山道でトラックに轢かれたらしい。
何をやっとんだアイツは。
どうせ、山の中で修行だー!とか言って疲れてフラフラしてたら轢かれたんだろう。トラックの運ちゃん不憫すぎてマジ同情。
え?幼なじみ?あいつは知らん。
……とか思ってたんすよねー、数日前まで。
開放されたひゃっほい!とか言ってでもその気持ちは一瞬。時間が経てばあの五月蝿さが消えた日常は何処と無く寂しさを感じる。
何事もなく過ぎ行く日常がこんなにも暇だとは思わなかった。無くしてから気づく大事なもの……いや、アイツは別に大事じゃねえなうん。
仲のいいアイドルみたいな女の子から最近元気ないね、やっぱり幼なじみくんが……とか言われたけど無い無い。あんなのいなくても別に大丈夫だし?平気だし?俺強い子だもん。
まあ、そんなこんなで"その日"も学校終わりに日課になってしまったジムでの筋トレの帰り。
空も暗く夜の時間。フラフラと帰っていたら──
──トラックに轢かれました☆
いや待ってくれよ、ほんとに。
幼なじみが死んでヤケになって身投げしたのかなとか思われそうで嫌なんだけど。死ぬのは百歩譲っていいとしても、そんな印象残して死にたくない。
蛇行運転でバカみたいな速度出して突っ込んで来てたからあれは確実に飲酒か居眠りだな。俺にはわかる。
それから、俺に当たってそのまま建物の中まで突っ込んで引きずり殺したことは絶対に許さん。死ぬほど痛いからなあれ。実際死んでるし。
はい、で!今俺はどういう状態かと言いますとね──
「──おぎゃあぁぁぁぁぁあ!!」
──赤ん坊なんよね。
▼▼▼▼▼
異世界に生まれて数年が経ちました。
ええ、異世界です異世界。あの異世界ですよ?凄いねー異世界。
クッソ田舎の領地を治める貴族の家に産まれたらしい。よう知らん。まあ不自由はない。村人も優しいし。
なんて平和なスローライフ。心が落ち着くようだ。
ここにはあの幼なじみも俺を殺した憎きトラックもいない。
こんな平和な日常があっていいんですか!?
これも俺の日頃の行いってやつかなー!……そう思ってた時期もありました。
えー、結論から言いましょう。
盗賊に襲われました。
フジャケルナ!モアイ!!
なんでこう…!俺は何かに巻き込まれてなきゃ行けないんだ…!ちくしょうめぇ…!
ヒャッハー!だよ。村人ヒャッハー!されてるよ。何コレ世紀末?
両親?ああ、お部屋で寝てるよ(死体)
俺はと言うと隠れてる。
うん……いや隠れるよ。死にたくないもん。
盗賊たちが持ってきた代車の中で丸くなってるよ。大正デモクラシーだか灯台もと暗しだかわからんが、まさか自分たちの荷物に隠れる奴がいるとは思うまい、ぐへへ。
こんな調子ではいるが内心めっちゃ鬱。すごい鬱。
人の心捨ててる幼なじみとは違って優しさの塊である俺だ。仲良くしてた村人や今世の両親がヒャッハー!されたら流石に心が抉られちゃう。
「……あー、泣きそ。泣いていい?」
「…………」
隣に座る人。いや、人?にそう聞くが帰ってくるのは無言。
返事がない。ただの屍のようだ。
そこに居たのは人間……と言うよりもスライム。肉のスライム。グチョグチョとした体にぎょろぎょろとした目玉。にちゃあとしたお口。
これが元々人の形してたって話だから驚きだね。
「親も近所の人たちもみんな死んじゃったよ。天涯孤独だよ。どうしよう」
「…………」
「え?自分がいるって?」
「…………」
「嬉しいこと言うなー。よしよしよしよし……」
「…………」
頭(らしきとこ)をくしゃくしゃと撫でる。
……うーむ、この感触、癖になるな。好きな手触り。
よしじゃあ俺たち今日から友達な!
え?頭おかしくなったのかって?そんなん昔からだ、ほっとけ。
と思っていたら何やら遠くの方で男の叫びが響いた。野太い男の声。
村人?それにしちゃ恐怖の叫びと言うより何やら慌てた様子の叫び。ほな村人ちゃうかー。
「なんだろうねー」
「…………」
スライムさんをムニムニしてみるが返答は無い。
……なんやこいつ、きゃわいいねぇー!全身モチモチしてやる!してあげちゃう!
そんなことをしているうちに騒ぎは収まりあたりは静かになっていた。
なんだったのだろうか。不思議に思いつつスライムさんと戯れていると目の前に同い年くらいの少年が現れた。
「あれ?生き残りがいた」
そう言って首を傾げる少年。
しかし、その顔に見覚えがある。いやでもまさかそんなわけが無いだろう。そう思いつつも俺の口が勝手にとある名前を呼んでいた。
「あれ?ミノル?」
「…………え?」
前世の幼なじみ、影野実のそっくりさんがそこにいた。
テンポよくね、テンボよく。
続きはモチベ次第。