陰の幼なじみは異世界でも巻き込まれる 作:後は野となれ山となれ
ベータが我が村(廃村)へやって来てからはや数ヶ月。
シャドウガーデンのメンバーも続々と追加され、今やアルファ含めて7人が我が村の村人となっていた。
……うちの村の村人ってよりかは村がシャドウガーデンの拠点になってる気がするのは気のせい。気のせいだと思いたい…!
みんな美少女で困っちゃう。……いや、ほんとに可愛い。しゅごいかわいいのぉ。
でも悔しいかな。全員が治療して命を救ってくれたミノルのことを心酔しちゃってるの。
全員俺がこの村に運び込んだのに…!少しくらい俺に好意あってもいいじゃない…!
え?どんな扱いされてるのかって?
一言で言うと呆れですね、はい。
作るご飯は男飯!掃除洗濯家事全般は男らしく大雑把!戦闘に関してはもはや着いていけないから前世でミノルにしてたみたいにサポート係に!ミット打ちなら任せて!
……あるぇ?俺足手まといじゃね?
いや、マジで言い訳させて。飯とか家事とかそこら辺は及第点なんですよ。アルファちゃんからも"まあいいか"みたいなお許しも出てるし。
ただ、戦闘に関して。これはもうまじで無理だろ。
俺一般人よ?ミノルみたいに頭のネジ外れてないし、シャドウガーデンに入った子たちは才能の塊だし。格差がしゅげーのよ。
まあ、組手とかでバリバリに怪我をさせられたおかげで魔力使った治癒とかは大得意になりましたが。
回復役としてならシャドウガーデンナンバーワンの自信があるね。
あと毎日ボコボコにされてるおかげで前世みたいにタフネスが化け物級へと成長してる。……嬉しくないね。
「──で、昨日は俺1人対シャドウガーデン7人で組手したの」
「大乱闘じゃん……」
「おう、浦島太郎の亀みたいにされた」
「ボロ負けじゃん……」
呆れるミノル……いやシドにそう言われる。
シド・カゲノー。この世界でのミノルの名前。
やっぱり異世界に来たならそっちの名前で呼びあった方がいいとの判断らしい。まだ慣れない。
「"トモ"は普通の戦い方だとまず勝てないからなー」
「……なんか腹立つな。事実だけど」
トモ。今世の我が名前。
トモ・ダチヤン。
なんやこの名前って思ったそこの君。気が合うね。俺たちはブラザーのようだな。
「やっぱタフネスのゴリ押しが1番じゃない?」
「ヤダ!スタイリッシュに戦いたい!」
「よく言うよ。最終的に僕との模擬戦で"あんな戦い方"してるくせに。……アルファたちとの組手じゃ"あの戦い方"してないんだっけ?」
「まあ。……心配されちゃいそうだし」
「それで手を抜いてデルタとかにボコボコにされてるんだ?」
「手を抜いてないから。あれは戯れだから。遊びだから。だからノーカンノーカン」
デルタだって、"トモー!デルタと遊ぶのですー!"とか言って飛びついてくるだけですからね。
あれは遊び、遊びなんだ…!だから!まだ負けてない…!
それにしても、デルタってシドのことボスって言うのに俺のことは呼び捨てだよなー。
…………………………いや、あれは親しみを込めてるんだろうな。そうさ。きっとそう。舐められてる訳じゃない。そうなんだ。きっとそうなんだよ…!(涙)
「そういやトモは学園って行くの?」
「ああ、15になったらーってやつ?」
「それそれ」
この世界では貴族は15歳を迎えると王都の学校に3年間通う義務がある。
俺も貴族ではあるが……この廃村を見てくれ。もはや貴族と言っていいか分からないだろ?
通いたいは通いたいけど……行けんのかなー?
「行きたいけどなー」
「大丈夫じゃないかな?ダチヤン家の爵位ってまだ剥奪されてなかった気がするし」
「あー、アルファが一応土地関連の仕事やってくれてたもんな。誤魔化せてはいたんだな」
でも、それがいつまで持つかは分からんし。
「……カゲノー家に養子で来る?」
「え?それ大丈夫?」
「多分いけるんじゃない?トモも最近遊びに来てくれて仲良くなってるから事情説明すれば……あ、あと姉さんが顔見せろってうるさかったよ」
「……ダニィ!クレアちゃんが俺に会いたいだとぅ!?」
それを早く言えアホンダラァ!
………でもあの人ブラコンだもんなあ。シドだいしゅきーな人だもんなー。
………………なんで……なんでシドばっかり…!俺だって、俺だってモテたい…ッ!!(切実)(迫真)
そうしてのんびりと二人で過ごしていると、
「あ、シャドウ様」
「ベータか。どうした?」
「アルファ様が相談したいことがあると……」
「そうか、今行く」
そう行って去っていくシド。
残されたベータと俺。
「…………」
「…………」
気まずぃー!
シドに話しかけるベータは頬を赤らめて乙女を前面に出しているのに、俺と一緒にいると目も合わせてくれん。ちくせう…!
それに俺この前見たぞ!『シャドウ様戦記』だかなんだかって書かれたノート!シドのこと好きすぎだろ!その好意の1ミリでいいから俺にも向けてー!
「トモさん」
「……ん?」
っ!?話しかけてきた…!?
………フッ、しゅき(チョロい)
「お洗濯物。まとめておいてって言いましたよね」
「あ、はい」
「あと、トモさんの作った"かれぇ"でしたっけ?具材が大きかったです」
「あ、はい」
「あと……あとは……いえ、もういいです。私はもう行きますね」
「あ、はい」
チラチラとこちらを見ながらそんな会話して切り上げたベータ。
こうして彼女はこの場を立ち去ってしまった。
「……………」
楽しい会話出来たからまあいいか!(涙)
時間が経ち、1ヶ月後。
俺氏は現在カゲノー家にいた。
シドの提案の養子の件だ。
事情を説明して、その結果は──!
「うおおおおおお!辛かったねトモくん!家に来なさい!今日から私がパパだよッ!」
「うわーい」
涙を流して抱きしめて頬ずりしてくるハゲのおっちゃん。
髭がジョリジョリして痛い。
まあ、こうして無事にトモ・ダチヤンはトモ・カゲノーに進化しましたとさ。
……扉から覗く黒長髪の赤い瞳がこちらを射抜いていて怖かった。
なんか笑ってるし。イジメないでね?
主人公どれくらいの強さなの?
"ある戦い方"をしたらシドと並ぶレベル。
普通に戦えばガンマよりは強いくらい(これでも世界的に見れば上澄みレベル)