仮面ライダーアルバス   作:風来のがばお

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第一話 覚醒

「……さん…ユーリさん。起きてくださいよ」

 

「うっ…うーん…悪いけどリウム…少し寝かせて…どうも昨日の仕事が辛くてね…」

 

「駄目ですよユーリさん。てか昨日途中仕事サボってるの僕知ってたんですからね!今日は真面目にやってもらいますよ!」

 

「ううっ…!仕方ない…よいしょっと…!」

 

ここは魔法とドラゴンやゴブリンといったこの世ならざる幻獣が存在する幻想の世界。一つの大陸に様々な国が存在し、小さな争いはあれども大戦といった争い事の無い世界。

そんな世界の、とある街にある一軒の素朴な建物の二階。その物置のような部屋の隅のベッドで寝ていた白銀の長い髪の少女が茶髪の少年、リウムに起こされた。彼女の名はユーリ。リウムは経営している修理屋『リプア』に訳あって住まう居候である。

 

 

服を着替え、髪と顔を整え、朝食を取った二人は一階の職場へと降りていった。

 

「で、今日はボクはどうすればいい?」

 

「今日は町外れの鉱山にある魔力鉱石の回収をお願いします。ちょうど依頼にあった魔道具の修理に使う分が足りないので…」

 

「了解。それ以外に何かある?」

 

「そうですね…今のところ特に必要なものはありませんが…」

 

「そう。じゃあ少し寄り道だけして帰らせてもらうよ」

 

「ああ…また行くんですか?僕と出会ってからもう1年とちょっとくらいですけど…まだ思い出せそうに無いですか?()()()()()を」

 

 

 

 

ユーリは記憶喪失なのである。リウムが仕事に必要な素材の採集の帰りに自らの店の近くで倒れていた所をは発見した事が出会いのきっかけであり、そこでユーリが記憶喪失だということを知った。このまま放置しておくのも可哀想なので、リウムは保護する事にした。

 

リウムはその後ユーリに色々と質問をしたが名前すらも分からない、自分が何故このような場所に来たのかも検討がつかない状態だった。ただ魔法が使える事と何か戦闘の類に関わっていたのか戦闘のスキルは持っていた事だけはわかった。とりあえず名前も分からない状態なので、今は亡き店の主の祖母が使っていた名前であったユーリという名を与える事にした。

 

それから1年が過ぎたが、未だに記憶は戻らずの状況が続いていた。今は居候のみではあるが、リウムの仕事を手伝う良き相棒として共に平和に暮らしていた。

 

 

 

「まぁね。多分何も思い出す事はないとは思うけど…それでもね。けど何か…ここ最近になって…何か感じるようなものはあるんだよね」

 

「ここ最近になって?何かありましたっけ…」

 

「…いや、なんでもないよ。それじゃあボクは行ってくるよ。寄り道も程々にしておくから遅くはならないよ」

 

「気をつけてくださいね?」

 

「わかってるよ」

 

ユーリはリウムに見送られながら町外れにある鉱山へと向かって言ったのだった。その後ろ姿を見てリウムは。

 

「…何事もなければいいけどなぁ…」

 

とこぼすのだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

とある地下。そこには広大な遺跡のような場所があった。岩で出来たら建築物のようなものもあるが、辺りには機械で出来ていたであろう残骸も残されていた。その場所の最奥に巨大な生物的な蒼い球体のようなものが壁に張り付いていた。

 

そこへ大柄な騎士の鎧を纏った女性が数名のヒトを模した白い機械の人形を引連れ、球体へと向かっていた。

 

「お待たせ致しました我が主。かつて引き起こしてしまった失態より約1年…時間をかけてしまい申し訳ございませんでした。ですがこのラフォビア、及び主より創造されしモノ達により、ようやく本格的に動く事が可能となりました」

 

ラフォビアと名乗った女性は傅きながら球体に向かって話す。球体はそれに応えるように触手を生み出す。そして機械の人形の一体に触手を伸ばし、球体の中へと取り込んだ。

 

そしてそこから不気味な何かが産み落とされた。

 

(未だ完全なる力には程遠いもの…しかし新たな命を生み出す力…なんという絶大なる力…この星の支配の為に…我が主の為に尽くさねば…)

「では我が主、このモノ達共に…」

 

 

ラフォビアは産み落とされたモノと共に姿を消したのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「いや〜ユーリちゃん。ご苦労だったね〜」

 

「いや、大丈夫だよ。仕事の帰りのちょっとしたボランティアみたいなものだからね」

 

「歳をとると荷物を荷台に入れるのも一苦労でのぉ…」

 

日も傾きはじめた頃、ユーリは何度かの仕事の縁で知り合いとなっていた老人の馬車の荷台に乗ってリウムの元へと帰っていた。荷台には自身のも含めた様々な荷物が載せられていた。

 

「そういやユーリちゃん。記憶無くしてると言っていたが、どうなんだい?」

 

「いや、結局何も思い出せなかったよ。ま、ボクとしてはもうこのままでもいいかなって思ってるとこだよ。リウムにも世話になってるし、ボクとしてはこの生活も気に入ってるからね」

 

「そうかいそうかい。わしもユーリちゃんと知り合ってそれなりに経つけど、色々助かっておるわい」

 

「こっちもだよ。ボクとしては移動手段としては楽になるか…っ!?」

 

と、他愛もない会話をしていると、進行方向の先から黒い煙が上がっているのを見えた。

 

「お、おい…あの先には確かユーリちゃんの住んでた街が…」

 

「飛ばして爺さん!」

 

「あ、ああ…!」

 

 

ユーリは老人に激を飛ばし、急いで街へと向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「…っ!これは…!」

 

街へ到着したユーリが目にしたのは、建物を破壊しながら人々に襲いかかる人の形をした機械の人形、逃げ惑う人々とその機械の人形達に立ち向かう街に駐在している兵士だった。

 

「なんじゃ…これは…!?」

 

「爺さん、早く安全なところへ!」

 

「ユーリちゃんは!?」

 

「リウムのとこに行く!」

 

ユーリは老人に安全を促し、リウムのいる『リプア』へと急いで向かった。

 

「邪魔だ!」

 

ユーリの使う魔法は『剣製』という剣といった単純な構造の武器を精製する魔法であり、魔力が尽きぬ限りいくらでも精製が出来る魔法である。魔力の込め具合で強度も高めることが出来る。

ユーリは魔法で精製した剣を使い、道中襲いかかる機械の人形達を切り伏せて行く。

 

 

程なくして、ユーリは『リプア』へ辿り着く。外観からでも分かるぐらいに建物はボロボロになっていた。

 

「うわぁ!!来ないでください!」

 

建物の中からリウムの悲鳴が聞こえる。

 

「リウム!」

 

急いで中に入ったユーリ。そこには襲い来る機械人形から何とか必死に抵抗するリウムの姿があった。

 

「リウムに手を出すな!」

 

ユーリは即座に機械人形の首を切り飛ばす。首を切り落とされた機械人形は力なく倒れた。

 

「ユーリさん…」

 

「大丈夫かいリウム?」

 

「ええ僕は何とか…」

 

「何があったんだい?」

 

「分かりません…僕にも何が何だか……突然街にコイツらが現れて襲ってきて…ああ…家が…店がボロボロに…」

 

リウムは荒れ果ててしまった我が家の姿に放心状態となって膝を折ってしまう。

 

「生きてるだけで良しだよ。とりあえず無事でよかった…一体コイツら何なんだ…?」

 

「見るからに…機械で造られた人形ですね…でも見たことない…僕も機械にはかなり詳しい方ですけど、こんなのは初めてです…」

 

「とにかく安全なところへ逃げよう。ここはもう危険だ」

 

「うっ……はい…」

 

ユーリはこの場から急いで移動することを提案し、リウムは悔しながらもその提案に乗ることにした。二人は建物から出て街から離れようとしたその時だった。

 

 

「ぐわぁっ…!!」

 

「「っ!?」」

 

突然建物の前に街を守護していた兵士が吹き飛ばされてきた。

 

「だ、大丈夫ですか!」

 

「なん…だ……あれは……に、逃げて…く……うっ…!」

 

リウムは倒れた兵士に駆け寄るも、兵士は息絶えてしまった。

 

「ユーリさん…」

 

「リウム、悪いけど先に逃げて。コイツの相手はボクがする」

 

リウムはユーリの方向を向くが、ユーリは兵士が飛ばされた方向を見ていた。そこには今迄の機械人形とは明らかに違う異質な存在がいた。

 

 

 

『…………』

 

カマキリのような巨大な鎌の両腕。機械人形とは違った強硬な身体。バイザーのようなものをつけた頭部。そして無機物の身体に相応しくない、それらにはあまりにも異質な生物の肉体。機械人形のようでもあり、生き物のようなそれは兵士達を虐殺しながらユーリ達のいる方向へと向かっていた。

 

「危ないですユーリさん!」

 

「わかってる。ボクも逃げたいところだけど、多分無理そうだ。こっちを見てる。多分あの感じは逃がしてくれそうにもない」

 

ユーリの言葉通り、謎の怪物はユーリ達をじっと見つめていた。そしてゆっくりとユーリ達の方へと向かっていた。

 

『……殺戮を続行。対象を抹殺』

 

「リウム行って!早く!」

 

「うっ…死なないでくださいよ!」

 

リウムは悔しさを噛み締めながらその場を離れていった。

 

『抹殺』

 

「くっ…!はぁっ!」

 

怪物は両腕の鎌をユーリに向けて振り下ろす。ユーリはそれを受け止めるも剣は折れてしまった。直ぐにユーリは新たな剣を精製し攻撃を仕掛けた。

 

『損傷軽微。問題無し』

 

「っ!」

 

だがさしたるダメージを受けもなく、怪物に軽く切り傷をつけただけだった。しかしそれだけでは終わらせなかった。ユーリは剣をもう一本精製して連続攻撃を仕掛け、

 

「でりゃぁぁ!」

 

2本の剣を捨てて大剣で大ダメージを与えようとした。が、しかし。

 

 

ガキンッ!

 

 

大剣を鎌で受け止めるどころか、怪物はそれを体で受け止めたのだ。そして剣は脆く折れてしまった。

 

「なっ…!?」

 

動揺するユーリ。怪物はそれを見逃さず、

 

「うわぁっ!!」

 

ユーリに強烈な鎌の一撃を与えた。咄嗟に剣を精製して受け止めようとするも中途半端な精製だった為、ユーリは完全に防御出来ずに攻撃を食らい、吹き飛ばされてしまった。

 

(なんだ…コイツの強さ……それに…なんだ…剣製が上手く働いてくれてない…?それに…なんだか魔力が上手く込められない…)

 

怪物と対峙してユーリは自身の不調を感じていた。精製している剣は名剣でないにしろ決してなまくらでは無い。魔力もかなり込めた頑丈なもののはず。それが容易く壊れた。今までこのような経験は無かった。それどころか魔力も上手く働いてくれない。

 

(コイツが原因なのは分かる…けどどうすれば…)

 

必死に考えるユーリ。だがそこへ。

 

「ユーリさん!」

 

先程逃がしたはずのリウムが戻ってきていたのだった。

 

「リウム…!どうして…!」

 

「ごめんなさい…ユーリさんがどうしても心配で…見捨てるなんて…」

 

「リウム…はっ!危ない!!」

 

「えっ…」

 

咄嗟にユーリはリウムを突き飛ばした。呆気に取られ飛ばされたリウムだが、瞬間気付く。怪物が緑色の魔力を込めた斬撃を飛ばしてきていたからである。ユーリは代わりに攻撃を受け、遠くへ吹き飛ばされ重症を負ってしまった。

 

「うっ…あっ…!」

 

「ユーリさん…!あっ…」

 

苦しみ悶えるユーリ。リウムは駆け寄ろうとするが、怪物が目の前まで近づいてきていた。リウムは恐怖で脚がすくんでしまい、動けなくなってしまった。

 

『抹殺』

 

リウムの前に立つ怪物。そして怪物の鋭利な鎌が、リウムに襲いかかろうとしていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

意識が朦朧とするユーリ。

 

「うっ…あぐっ…!」

 

なんとか身体を起こそうとするも、身体が言うことを聞いてくれない。

 

「ぐっ…あっ……なっ…!?」

 

必死に顔だけ起こすと、ユーリの目に映っていたのは、怪物がリウムに向かって襲いかかろうとしていた光景だった。

 

(駄目だ…!駄目だ駄目だ駄目だ!)

 

その光景を見て、強く、自身を奮い立たせる。

 

(リウムは…ボクを救ってくれた恩人だ…!)

 

必死に、身体を震わせ立ち上がるユーリ。

 

(死なせるもんか…絶対に…絶対に!)

 

ユーリは力の限り、がむしゃらに怪物に向かって突っ込んで行った。そして必死になってユーリは気づかないでいた。

 

 

 

 

 

ユーリの腰の辺りが白い光に包まれていたことを。

 

 

 

 

そしてその光が、ベルトのようなものに変化していた事を。

 

 

 

「うぉぉぉぉぉッ!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

「うっ…!」

 

怪物の鋭い鎌の攻撃に身構えたリウム。

 

(僕は…死ぬの…?)

 

もうどうすることも出来ない。顔を伏せ、死を覚悟したリウム。だが…。

 

(……?)

 

一向に鎌の攻撃が来ない。恐る恐る顔を上げるリウム。そこには鎌の攻撃から自身を守ろうと受け止める謎の戦士がいた。

全身が白く、所々に黄金の光の線が通った鎧を身に纏い、白を基調としたベルトを腰に巻いた戦士が。

 

「ぐっ…リウム、大丈夫…!?」

 

「その声…もしかしてユーリさん…?」

 

「はぁぁぁぁッ!!」

 

白い戦士となったユーリは、怪物を蹴り飛ばす。

 

「これは…一体……この姿は…」

 

自身の姿を見て動揺するユーリ。そんな姿を見てリウムは呟く。

 

「仮面…ライダー…?」

 

『アルバス』

 

「えっ…?」

 

ユーリの姿を見た怪物が口にする。

 

『最優先抹殺対象、アルバスを確認。命令更新。アルバスの抹殺を開始』

 

怪物は先程狙っていたリウムから、白い戦士へと変身したユーリの方へと狙いを変え、再び襲いかかる。

 

「ふんっ!」

 

ユーリは怪物の鎌の攻撃を両腕で受け止めた。先程のユーリであれば受け止めきれなかった攻撃を、しかも剣を使わずに受け止めることが出来た。

 

「はぁっ!でやぁっ!」

 

ユーリは鎌を押し返し、ただひたすらに殴った。何度も、何度も。先程のお返しと言わんばかりに拳を叩き込んでいく。

先程のユーリの攻撃が嘘のように怪物にダメージを与えていく。

 

「うぉぉぉッ!!」

 

怪物の右腕の鎌を掴み、それを腕ごとチョップで切断した。そして怯む隙を与えず切り落とした右腕の鎌を使い、左腕も切り落とした。

 

『損傷…重大。戦闘継続困難。撤退』

 

「逃がさない!やぁっ!」

 

ユーリは逃走を図る怪物の脚部を攻撃して動きを封じた。

 

「君はもう、逃げられない…トドメだ…!」

 

ユーリは右脚に魔力を込める。右脚からは金色の魔力の奔流が起こる。

 

『回避…不能…』

 

「でやぁァァァッ!!」

 

ユーリは右脚を高く上げ、そのまま怪物の頭目がけてかかと落としを決めた。怪物の頭は捥げ、蹴り潰されるのだった。蹴りの威力は凄まじく、潰れた箇所を中心に地面が大きくひび割れていた。

顔が潰れたと同時に、怪物の体は泥のように溶けて消えてしまった。

 

「はぁ…はぁ…あっ…」

 

怪物の亡き姿を見届けた後、ユーリの身体が発光し、元の姿へと戻った。

だが周囲には怪物と戦う前にいた機械人形達が何体か居り、こちらを見ていた。

 

「まだやるってのか…」

 

ユーリは身構えるが…

 

『………』

 

機械人形達は全員撤退したのだった。

 

「な…何なんだ…一体…」

 

「ユーリさん…大丈夫ですか…?」

 

機械人形達が町から完全に居なくなり、心配して駆け寄るリウム。

 

「君こそ大丈夫かい!?なんであんな真似を…!」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

ユーリはリウムの両肩を押さえ、心配した様子で話した。

 

「もうあんな真似はしないでくれ…」

 

「はい…。あの…ユーリさん…さっきの姿は一体…?」

 

「分からない…無我夢中だったから……この力は一体…」

 

ユーリは腹の辺りを撫でる。自分に一体何が起こったのか。ユーリは戸惑うのだが。

 

(この力は…ボクの失われた記憶と何か関係があるのか…?)

 

自身の失われた記憶を取り戻す、その何かを掴んだ気がしたのだった。

 

 

 

 

 

そんなユーリを建物の陰から覗く黒いフードを被った人物がいた。

 

(あの力…目覚めたのか…なら監視は終わりだな…接触を図る必要があるな…)

 

ユーリの力の覚醒を目の当たりにしたフードの人物は、そのまま姿を消すのだった。




ユーリ…イメージCV:高野麻里佳

リウム…イメージCV:村瀬歩

ラフォビア…イメージCV:井上麻里奈
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