「ふむ…奴の魔力の反応があるからと思い、マタと主より賜りしプロキスをこの地で放ってみたが…まさか初っ端から当たりだったとはな」
ユーリ達の街から少し離れた場所の崖の上。ラフォビアは機械人形達と怪物によって被害を受けた街を見渡していた。
街から撤退した機械人形…マタの内の一体がラフォビアの元へと近づく。ラフォビアはマタの頭部に手をかざす。するとラフォビアの手が薄ら光り出す。マタを通じてユーリの戦闘の記録を読み取っているのだ。
「うむ…なるほどな…」
ラフォビアはかざすのをやめる。
「戦闘能力はまだそれくらいか。まだ目覚めたばかりと見えるが…油断はしない方が良いかもな…ん?」
ラフォビアは何かを感じ、後ろを振り返る。そこにはユーリが倒した怪物…プロキスと呼ばれるものの同個体がそこにはいた。ただし色が臙脂色と少し体色が異なっていた。
「別個体も作っていたか…何だ?」
『主より通達。我が元へ一度帰還せよとの事』
「ふむ…わかった。直ぐに戻ろう。主にも報告すべき事もあるからな」
ラフォビアは臙脂色のプロキスから伝えられた主の指示に従い、残っていたマタを引連れ、この場を立ち去る事にしたのだった。
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マタとプロキスの襲撃から5日後。
ユーリとリウムの二人はマタとプロキスの襲撃後、街には襲撃を聞きつけ、【アメリア帝国】の兵士や支援の団体がやってきていた。
アメリア帝国はこの世界の大陸の3分の1を統べる国家であり、様々な情報や技術が集まる場所でもある。ユーリ達が暮らしている街も、都から離れてはいるもののアメリア帝国の領地の一部でもあるのだ。
帝国からの支援もあり、ユーリ達は仮設の住居で生活をしていた。
そして現在二人は襲撃によって破壊されたリプアへ訪れ、まだ破壊されていない道具を探しに来ていたのだった。
「うーん……駄目だ…コレも完全に使えない…」
「こいつもだね…全く…アイツら派手にやってくれたみたいだね」
リプアの中で使えるものがないか探す二人だったが、どれもが使い物にならない状態となっており、ガッカリとしていた。特に商売道具の半分程が壊されている有様だったのが痛かった。
「むぅ…今のところ回収できたのはこれだけか…うちがこの有様なら他のところも同じ状態だろうね…」
「うう…おばあちゃんから受け継いだ大切な店だったのに…」
「前にも言ったけど、生きてるだけで良かったと思うよ。君のおばあちゃんもきっと同じ事を思ってるよ。店はボロボロだけど、君がいればまた店を立て直すことは出来るさ。まぁその為にも色々と大変になりそうだけどね」
「ユーリさん…ありがとうございます」
俯いていたリウムは、ユーリに言葉に励まされて少し明るくなれた。
「そういえばなんですけど…ユーリさん」
「ん、なんだい?」
「ユーリさんのあの姿なんですけど…あれからどうです?」
「ああ…あれね…」
リウムはふと思いユーリに尋ねるも、ユーリは首を横に振った。
ユーリは初めて白い戦士に変身した戦いの後、再びあの姿になれるか試していた。だが変身出来ず、その際に現れたベルトすら出てこない状態だった。故にあの姿が何なのか、そしてあの力が何なのか全くの謎の状態が続いていた。
ただあの姿の時に感じた力が戦った相手に通じた事から、敵と何か関係があると思い、ユーリとリウムは誰にも話さず、二人だけの秘密にしておくことにしていた。
「あの時の姿…ボクの過去に繋がる何かはあると思うんだけどね…」
「戦ったヤツらと何か関係があるんですかね…」
「そういえばなんだけど、君ボクの姿を見て何か言ってなかったっけ?確か…え〜っと…『仮面ライダー』…だったっけ?何だいそれ?」
ユーリはリウムが呟いていた言葉、仮面ライダーについて尋ねる。
「『仮面ライダー』はですね、はるか昔に存在していた戦士の名前なんですよ。腰に不思議な力を秘めたベルトを着け、多くの人々の為に様々な怪物と戦う…仮面を着けた古の戦士なんです」
「ふーん…よく知ってるね」
「まぁ古い書物で見ただけですけどね…色々な本を読んだ時にちらほら出てきて…かっこいいなって思いまして…あはは……あれ、ユーリさん?どうかしました?」
「いや、なんかすごい生き生きと話してたから…男の子だねリウム…」
「あはは…まぁですね…」
リウムは照れながら答えた。その姿を見て、ユーリは大切な店を破壊されたリウムが少しでも明るくなれた事に少しホッとしていた。
「それじゃあ作業に戻ろう。早く元の生活に戻れるようにね」
「ですね」
そう言って二人は作業を続けた。と、その時だった。
ザッ…
破壊されたリプアの入口の前にフードを被った黒のマントに身を包んだ何者かが立っていた。
「…………」
黒のマントの人物は何も喋らず、二人を見つめている。
「あ、あの…どうかされましたか?今は店もこんな状態なんで休業状態で…」
「白い髪のお前…アルバス、だな」
「っ!」
男の声。黒のマントの男はユーリに向かってアルバスと呼んだ。この言葉にユーリは強く反応した。
「アルバスって…確かユーリさんが戦っていた奴が言ってた言葉でしたよね…?」
「ああ…何故それを?」
ユーリは身構えた。あの戦いにおいて、アルバスの言葉を知っているのはユーリとリウムの二人だけだからだ。
「少し場所を変えよう。ここでは色々と目につきやすくなるからな」
「……わかった。着いてくよ」
「僕も行きます」
二人は怪しみながらも黒のマントの男に着いていくことにした。
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街から離れた森の中、二人は黒のマントに導かれ、ここまでやってきた。
「ここなら人目につかれる心配はなさそうだな」
「で、ボクに何の用だい?ボクの事を知ってるって事なんだろう。色々と答えて欲しいところだけど」
「その前に…お前の実力を試させてもらうぞ」
と、男はいきなり近づいたと思うとマントに忍ばせていた刀で攻撃してきた。
「っ!?」
咄嗟に剣製を行い、攻撃を防ぐユーリ。鍔迫り合いになる二人。
「いきなり何だい!?」
「ほう…咄嗟に作ったにしてはなかなか丈夫な剣だな。悪くない」
男はユーリを蹴り飛ばして距離を空ける。
「話し合うんじゃなかったのかい?」
「その為の戦いだ。下手に気を抜けば、ここで死ぬぞ」
男は再びユーリに詰め寄り、刀による連撃を繰り出した。ユーリは剣を2本剣製し、二刀流で対処した。
「な、何故こんなことに……」
そばで戦いを見ていたリウムは心配そうにしていた。
「…………」
「くっ…!(こいつ強い…!)」
ユーリは苦戦していた。剣術と体術を組み合わせた素早い戦術に翻弄されていた。反撃をしようにも付け入る隙を与えてくれなかった。今まで会ったことの無い強敵とユーリは感じていた。しかも男は先程から右腕のみで戦っていた。剣も数本砕け散ってしまっていた。
「……何故変身しない?」
「え?」
距離を取った男は質問をしはじめた。
「あの姿なら俺と渡り合えるはずだ。何故変身しない?」
「…………」
ユーリは何も答えない。まだ素性の知れない男に対して答える事が何かデメリットに感じてしまったからだ。
「答えたくないか。ならもういい。あの姿にならないと言うならそれでいい」
男はユーリに鋒を向けた。
「ここで殺す」
「っ!?」
突然何かの力によってユーリの身体が鋒に向かって引き寄せられた。不意をつかれたせいか、剣を落としてしまう。
「ユーリさん!!」
咄嗟にリウムが手を伸ばし駆け出す。
(リウム…!)
瞬間、ユーリの目にその姿が映る。
(ボクはまだ…死ぬ訳には…!)
リウムを強く思う心。それに反応したのか、ユーリの腰にあのベルトが現れる。
「うぉぉぁぁッ!!」
ベルトの中心が輝きだし、それと同時にユーリの身体も輝きだす。
ガキンッ!
「……ほう」
「ユーリさん…!」
鋒がユーリの身体を貫く直前、ユーリはあの白い戦士へと変身し、刺さる前に両手で刀を受け止めていた。
「ぬんっ!!」
「っ!」
ユーリは刀を強引にへし折る。同時にユーリを引き寄せていた謎の力も解除された。
「ようやく変身できたようだな」
「まぁね。お陰で死ぬところだったけど」
「それでいい。その感覚を忘れずにいろ。何時でも変身出来るようにな」
「君は何がしたいんだい?ボクに変身してもらいたかったようだけど」
「……もう少し見させてもらうぞ。アルバスの力を」
「アルバスの力…?(この姿の事を言ってるの?)」
男は折れた刀を捨て、先程とは短い刀を右手に持ち構える。
「はぁぁぁっ!」
今度はユーリの方から仕掛けていく。
「やぁっ!」
「………」
ユーリはパンチや蹴りを繰り出していく。おとこはそれを無言で躱し、当たりそうな攻撃には短刀で何とか受け流していく。
「これなら…!」
ユーリは踏み込み、男の懐に入り拳を叩き込もうとする。
「遅い」
「うっ…!」
だが攻撃を読まれ、攻撃に合わせて胴体に一閃を食ってしまう。
「くそっ…」
「体術は苦手なようだな。剣術の方も先の戦いを見るに我流と言ったところか」
実際のところそうだ。ユーリは誰かに剣術を教わった訳でもない。基本的にはただ剣を振ってるだけの型もない我流である。それでも戦えていたのは持ち前のセンスで乗り切っていたからだ。だが相手はかなりの手練。ユーリの攻撃は簡単に見切られてしまっている。
「けどまだまだ…!」
それでも諦めずにユーリは構える。だが。
「いや、もういい」
男は何を思ったのか突然刀を収める。
「…どういうこと?」
「そのままの意味だ。ある程度ではあるが、お前の事は理解できた」
「?」
武器を収めたのを見て、ユーリは変身を解いた。それを見て男はフードを上げ、顔を見せた。男の左側は髪で隠れていたが、明らかに顔に怪我をしているのがわかった。
「俺は帝国の秘匿事案行動部の人間だ。アルバス…いや、今はユーリと名乗っていたな。お前と手を組みたい」
「帝国の…?」
「秘匿事案行動部…?何なんですかそれ?僕は帝国にそこまで詳しくはありませんけど、そんな部隊があるなんて聞いたことは…」
安全がわかったのか、リウムも男に近づいて話をする。ユーリは仕事の都合で帝国に何度か行ったことがあった。帝国には国を守護する騎士部隊があるのは知っていた。憲兵部隊、遠征部隊、そして精鋭揃いの特級騎士部隊といったような様々な隊だ。だが男の言った部隊に関しては全く聞いた事がなかった。
「当たり前だ。秘匿性の高い案件に対処する為の部隊だからな。存在を知るものは少ない。知っていたとしても、ほぼ噂話程度ぐらいだな」
男は淡々と語った。
「どうしてそんな部隊を僕らに明かしたんですか?まるで僕らが秘匿しなきゃならない事をしたような…」
「お前は関係は無い。いや、正しくは巻き込まれた側と言ったところか。
「ボクに?」
「ああ。お前はヤツらに関わりが深い存在だからな」
「ヤツらって…もしかして前に街を襲った…」
「ああ。詳しくは俺の拠点で話そう。おい、いいぞ」
と、男は誰かを呼んだ。
「お、ようやく呼んだでありますか師匠?」
すると突然ユーリとリウムの間に狐の耳を生やした人間の少女が現れた。
(えっ…)
(いつの間に…)
気配も感じさせずにすぐ側にいた事に二人は驚いた。
「二人を拠点に連れて行け。俺は色々と処理してから行く」
「え〜…そんな地味な仕事でありますか〜…?人払いの結界魔術張って連れてくだけの仕事って…」
「文句を言うな。後でそれなりの仕事は与える。俺も面倒な事をしに行くんだからな」
「ぶ〜…わかったでありますよ。ではお二人共、自分に着いていくでありますよ」
「あ、ちょっといいかい?」
ユーリは連れていかれる前に男に気になっていたことを聞いた。
「なんだ?」
「名前、教えてくれないかい?てか名前教えてくれないとかちょっと失礼な気もするんだけど?」
「ふむ…そうだな…部隊の都合上、本名は消して、偽名を使うようにしているんだがな…」
男は少し考える。
「そうだな…タチバナ、とでも呼んでくれ」
「じゃあ自分はタキと呼んで欲しいであります。もちろん自分も本名消してコレも偽名ではありますけどね」
タチバナ…イメージCV:杉山紀彰
タキ…イメージCV:Machico