第二話
「マリナードタウン...。やっと帰ってきたな。」
ああ疲れた。最初は14~16時間ほどでパルデアに着くはずだったのにさ。
僕が乗っていた船が海賊みたいな奴らに乗っ取られ乗務員と乗客全員が縄で縛られ奴らの捕虜にされてしまい。
運よく拘束から抜け出し下っ端を全員手刀で黙らせたはいいもののリーダー格の女がウルトラビーストのウツロイドを繰り出してきた...と思ったら何故か懐かれ。
そこにタイミング悪く突撃してきた国際警察の人たちに僕に懐くウツロイドの様子から僕が事件の主犯だと勘違いされカロス地方の国際警察支部に連れていかれて。
(ウツロイドは研究施設に連れていかれることになった。)
事情を説明し何とか開放してもらってパルデア行きの船に乗って今に至る。
「まさか地元に帰ってくるのに4日かかるとは。」
本当だったら今頃は実家でぬくぬくと姉さんのケーキを食べていたはずなのに。あの海賊たち絶対許さん...。早いとこセルクルタウンに帰ろう。家族も心配してるだろうし。
「まあまあそんなことがあったの~?大変だったわね~?」
ケーキを頬張る僕の隣で話すこの女性はみなさんご存じお菓子の虫セルクルタウンジムリーダー、虫タイプのエキスパートで僕の実の姉であるカエデその人である。今はオフなのでいつものパティシエの制服ではなく結んだ髪を下ろしグレーのセーターとタマンチュラのイラストがプリントされた深緑のスカートを着ている。ちなみに今僕が食べているケーキも姉さんが作ったものである。
「ごめんなさいね~。早いところ可愛いベルちゃんを迎えに行きたかったんだけど仕事が多くてなかなか休みを取れなくて~。」
「姉さんはジムリーダーなんだから仕方ないよ。それに今回はこっちの事情だし。」
今回は完全にあの海賊のせいだからね。姉さんが責任を感じる必要はないのだ。
「そういえば、5年ぶりの実家はどう?ベルちゃん?」
「やっぱり落ち着くよ。こんな風に家族と一緒にソファに座るのも久しぶりだし。」
ジムリーダーをしていた頃は忙しくてのんびり座ることもできなかったからなぁ。リーグから貸し出されたマンションの部屋がただ寝て起きるだけの場所と化してたし。
「それは良かったわ~。あの時は本当にびっくりしたわ~。急に『ジムリーダーにスカウトされた』っていうんですもの。」
そんでもってその連絡入れてからまともに会話してなかったからね。父さんや母さん、姉さんには本当に心配をかけたと思う。
「姉さん、本当にごめん。連絡も入れず、5年も。」
いっぱい迷惑をかけたと思う。心労も絶えなかったと思う。子供だったんだ。スカウトされて自分の実力が認められた気になって勝手に突っ走って。家族の気持ちも考えず。
「ベルちゃんが謝ることじゃないわよ~!ベルちゃんはただ、自分のやりたいことを精一杯にやっただけ!」
「そういうわけにはいかないよ。だって僕は...。」
「大丈夫!どんな道をたどっても、ベルちゃんは私のかわいい自慢の弟よ~。お父さんもお母さんもきっと同じことを言うわ。だ~い好きよ!ベルちゃん!」
姉さんは力強く僕を抱きしめる。まだ二人ともアカデミーに通っていた頃、姉さんは僕がテストでいい点を取ったりジムバッジを取得したりするごとにこうして抱きしめてくれたことを思い出した。特にチャンピオンになった時は1時間以上離してくれなかったっけ。
「姉さん...。ありがとう...。」
前世と合わせるともう三十路ぐらいのはずなのに、年甲斐もなく涙を流し家族の温かみを知る僕なのであった。
作者の勝手な妄想の今回名前が出たキャラのイメージCV
カエデ…戸松遥