時を渡る正義の乙女たち   作:UBW・HF

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乙女はかく語りき

 

「いやぁ、それにしても」

 

その日の夜。

アリーゼたちは様々な驚愕と動揺を押し殺しながら、呟く。

広い館であり、部屋は有り余っているが敢えて一つの部屋を五人で使うことに。

その方が彼女たちも安心できるだろうし、今後のことを彼女たちだけで話し合う必要もあるだろうという配慮だった。

 

丁寧に手入れされたフカフカのベッドに飛び込むように寝転がるアリーゼ。

部屋に置かれた椅子に静かに座るアーディ。

ベッドに腰掛けるリオンとライラ。

立ったままで神妙な顔をしている輝夜。

 

それぞれが服を着替えた上で、リラックスした状態でこの場にいる。

 

「いいお湯だったわね!極東出身の……命ちゃんだっけ?あの子の要望で導入されたらしいけど、最高ね~!」

 

「この状況での第一声がそれかよ?今後話し合おうって思えよ?」

 

「いいじゃない!焦ってもどうしようもないし、ヘスティア・ファミリアも信用できる。そうでしょ?」

 

「それは否定しませんが、少しは警戒心というものを…………」

 

「ねえ、輝夜!戻ったらうちの本拠にも作りましょうよ!」

 

「言った側から…………」

 

「そんな金どこにあるのですか、団長殿?大抗争を乗り越えてもまだまだオラリオは不安定。風呂にかける金の余裕なんてあるわけないだろう」

 

「え~」

 

「え~じゃない。もう少し余裕ができたら、だ。この時代のオラリオくらい落ち着いたら…………まあ、アストレア様に相談してみよう」

 

能天気に振る舞うアリーゼに頭の痛い思いを抱えるが、気持ちはわかるし敢えてそう振る舞っている面もあるのだろう。

ヘスティア・ファミリアは信用できる。

これは全員の共通認識。

口では色々言っているが、リオンも心のなかではそう判断しているはずだ。

 

「それもこれも覚えていられたら、いいんだけどね…………」

 

アーディの言葉が小さくも部屋の中に響く。

彼女の深く沈んだ声色に、全員が押し黙る。

その現実に誰よりも心を痛めているのはきっと、アーディだ。

彼女のことを思えば、誰も何も言えない。

 

「…………女神フレイヤの話では、元の世界に戻ればすべて忘れてしまう、でしたか」

 

「それも推測なんだろ?結局、どうなるかはその時にならないと分からない」

 

「分からないとは言うが、もしそうなれば私たちは認識すら出来んだろうな。個人のことを忘れれば前提(ルール)を守れた前とは違って、今回は世界全てがそれに抵触する」

 

「色々世話になった恩人兼戦友を忘れるって、歯痒いわね……」

 

アリーゼ達の世界のオラリオは、こちらに比べてかなり被害が減少している。

リューに聞いた話を鑑みても、それは間違いなくベルの功績と言えるだろう。

誰とも連携が取れない中たった一人で、戦い続けた彼のおかげだ。

 

「思い出す前は、どういう認識だったっけ?」

 

「えっと、正体不明の狩人で、アタシたちは少しは交流があったけど何故か思い出せない」

 

「リヴェリア様も静寂と戦う際あの男と接触したらしいですが、要領を得ていませんでしたし。私たち以外はそもそも思い出せないという違和感も少ないかも知れませんね」

 

「…………静寂」

 

過去のオラリオを震撼させた、かつての最強。

気高くも孤独な彼女は、アリーゼ達によって倒されて死を選んだ…………ということになっている。

 

(きっと、あの時のアルが言ってた人は静寂……。)

 

だが、彼女はアルによって救われた。

死の運命を変えられた。

リヴェリアと一緒に戦った時から、何度か接触があったのだろう。

自分を犠牲に運命を変えることを選んだ彼女は、一緒に戦う道を選ばされた。

 

「アルと、どういう関係なんだろ……?」

 

たった数度会話をしたにしては、なぜか二人とも感傷的だった。

アリーゼ達の話を聞く限り、かなり頑固で意固地な彼女が己の誇りを擲ってでも生き方を変える程度には。

少なくとも彼女の方からは、彼に対して情念深かった。

 

「アーディ?なにか言ったか?」

 

「……ううん、なんでもない」

 

彼女は死んだ。

そういう事になっている。

彼が彼女を助けたなんてこと、アーディ以外誰も知らない。

一緒に抗うことを決めた彼女の邪魔をするなんてこと、したくなかったから。

 

(あの人なら、こういう時どうするんだろ……?)

 

同じように彼に救われた彼女がこっちの世界に来たのなら、何を思うのだろう?

アリーゼ達以上に彼女と言葉を交わした彼ですら、その答えは持っていない。

だからきっと、この疑問の答えは本人以外誰も持っていない。

それこそ彼以上に長く時を過ごした恋人や夫……あるいは、息子か娘でもいない限り。

 

「…………ねえ、アーディ」

 

「なあに、アリーゼ?」

 

「もしかしてアーディって、ベルのことが好きなの?」

 

「ブッ!!」

 

「なっ!?そうなのですか、アーディ!?」

 

アリーゼの口からいきなり飛び出たその発言に、アーディは思わず吹き出す。

動揺で唇を震わせながらアリーゼを睨む。

が、本人たちは至って真剣だ。

 

「はぁ?ポンコツエルフ(リオン)に続きお前もかよ?」

 

「ポンコツエルフ(リオン)以上に年が離れてるだろうに……八歳差か?しかも私たちの時代ではあの小僧はまだ10にも満たないだろう?」

 

「幼年児への淫行とかやめてよね?流石に私たちも友達に性犯罪者としてお縄にかけたくないし」

 

「都市の憲兵を代表するうら若き乙女がまだ幼い男児へ淫らな行為。次の日のトップニュースは決まりだな」

 

「あんな男やめておきなさい、アーディ!そしてライラ!なんで私は既に含まれているのですか!?」

 

「いや、こっちのお前見てみろよ。むしろ開き直ってたぜ?」

 

「あれは私であって私では…………いえ、あんなもの私ではない!!」

 

「待って待って待って!!なんでそういう話になったの!?」

 

少し静寂と彼の関係について考え込んでいたから話は半分以上聞き流していたが、そういう話題ではなかったのは確かだ。

そう思って思わず大声を出してしまうが、リオン以外の反応は思った以上に冷ややかだった。

 

「え~、だって…………」

 

「あの小僧のことを忘れると知れば取り乱して女神に詰め寄って…………」

 

「あいつがこっちの仲間とよろしくやってたら顔曇らせて…………」

 

「「「ほら……ね?」」」

 

「やめて!そう言われるとメッチャ恥ずかしい!」

 

「しかも、話聞き流してたでしょ?」

 

「それはゴメンだけど!!」

 

バレてた。

何も言えなくなってしまう。

 

「ところでいい加減ハッキリさせときたいんだが、なんでリオンはそう頑なにあいつを嫌ってるんだよ?前の時はそうじゃなかっただろ?」

 

「そ、それは…………」

 

「アーディの態度も露骨だが、お前も露骨だ。もちろん悪い意味で。いい加減話せ」

 

「ベルはリオンが嫌うほど悪い子じゃないと思うわよ?あの小っさ可愛い神様たちの話を聞く限り、滅茶苦茶頑張ってるみたいだし」

 

「だから、それは…………」

 

「「「それは?」」」

 

「それは…………」

 

言い淀むリオンを、全員が見つめる。

その瞳はジトッと冷たく問いただすように細められており、言うまで逃さないと告げている。

視線に耐えられず観念したように、リオンは小さく語り始める。

 

「あ、あの男が…………」

 

「ベルが?」

「小僧が?」

「ガキが?」

 

「あの男が、こっちの私とベタベタベタベタしてるから!!」

 

「「「…………は?」」」

 

「何もない時でも距離感が近いし!!いつも隣りに座っているし!!何だったらボディタッチもさり気なくしてるし!!自分と同じ顔をした女が胡乱に思ってる男に露骨に擦り寄ってるのですよ!?態度の一つや二つ悪くもなりますよ!!」

 

「リオン…………」

「思春期か、思春期だったな…………」

「ムッツリエルフ…………」

 

「何なんですか!皆して!!アリーゼ達にこの気持ちは分からないですよ!!」

 

元々エルフの中でも特に潔癖な性分をしているのがこのおぼこ娘だ。

恐らく、リューがいなければ多少悪くは言いつつもすぐ態度を軟化させていたはず。

そうならなかったのは、運が悪かったとしか言いようがないが。

まあ、リューがベルとの距離感が近かったのは、リオンが明確に敵意に近い感情を向けていたせいだ。

それがなかったら……なかったら…………うん、まあ、うん。

それはともかくとして。

 

「潔癖症とか男嫌いとかそういう次元の話じゃないだろ、これ」

 

「おい、アリーゼ。明日の朝一であの小僧とこの馬鹿を縛り上げて触れさせるぞ。この馬鹿は一回突き付けんと理解できんようだ」

 

「え~?それ大丈夫?もしリオンが手を払っちゃったらそれこそヤバくない?」

 

「こっちの青二才が太鼓判を押していたから大丈夫だろう」

 

「ほぼ初対面の時から触れたって言ってたもんね」

 

「そ、そんなことをしても私は屈しませんよ!?」

 

「どこぞの女騎士か、テメエは」

 

神々が聞けば大喜びしそうなセリフを素で言ってのけるのが恐ろしい。

 

「このムッツリポンコツエルフはさておき、お前はどうしたんだ、アーディ」

 

「余計酷くなってる!?」

 

「自業自得だ、馬鹿」

 

「どうなの?ベルのこと好きなの?」

 

「…………う、う~ん」

 

どうにも煮えきらない態度を取るアーディ。

この感情はきっと、恋だろう。

でも、今はこの感情を恋だと認めることに強い恐怖を覚える。

だって、だって、もしこれが恋なら、あまりにも報われないではないか。

自分ではなく、アルが。

 

「よく、分かんないな……。こういう感情を抱くのも初めてだし、色々……グチャグチャしてて、これがなんなのか自分でも分かんない」

 

「そんなに難しく考えなくていいんじゃない?好きだと思うなら好き、嫌いだと思うなら嫌い。恋だと思うなら、それが恋よ!!」

 

「お前はもう少し難しく考えろ」

 

「それにこれが恋だとしても、それが何になるの?報われないどころか、忘れるだけでしょ?」

 

「あっ、そっか。その問題もあるのか」

 

そう。

彼女たちは結局忘れてしまう。

どう足掻いても、今のままでは何も変わらないのだ。

 

「一応そうならない可能性と、もう一つの可能性もあるらしいけど、そっちはあんまり期待できないらしいし。それに、どの道アルにはもう会えないでしょ?」

 

「? そんなことないんじゃない?私たちの世界にも、まだ子どものベルがいるんだから。きっとオラリオに来るでしょう?」

 

「でも、その子はベルであってアルじゃない。私たちが出会って話をしたアルは、ここにいるアルだけなんだから」

 

彼女たちが言葉を交わし、彼女たちの命を救い、オラリオに貢献した彼。

きっと、同じ名で同じ身体で同じ魂を持つ男の子なのだろう。

でも、それはアーディたちが知る“アル”ではない。

 

「忘れるし、もう会えない。そして何より、私たちはアルについて何も知らない。彼が何を成したのかは聞いたけど、その時のアルがどういう想いで、何を思ってそれを成したのか。一番大事なそれを、私たちは知らない」

 

「…………聞くだけでお腹いっぱいになるくらい、波瀾万丈な半年だったらしいわね」

 

嬉しそうに、楽しそうに彼との冒険との日々を語る彼女たち。

それを聞いて、アーディは思わず唇を噛み締めた。

そこにある思い出と深い想いに、負けてしまったから。

 

「リヴィラの連中助けて手懐けて、格上のファミリア相手に戦って、たった一人の娼婦のために街の一角を敵に回して」

 

「挙句の果てに、自我を持ち人語を介するとは言えモンスターを助けるためにオラリオのすべてを敵に回した。正気の沙汰とは思えんな」

 

そして、それすらも最終的に糧としてオラリオでの地位と支持を得ることに繋がった。

狙ってできることではない。

それを行ったのは純粋な守りたい・助けたいという思いからだ。

だからこそ、分からない。

暗黒期にあの絶対悪と相対したアリーゼたちは、戦慄する。

一体どれだけの覚悟があれば、その行動を迷いなく取れるのか。

 

「ベルなら、エレボスとの問答でなんて答えるかな?」

 

そう呟くアリーゼ。

彼が実際にそれを突き付けられた時、どう動くのかは分からない。

でも、彼なら迷いなく人々を助け続けるだろう。

そう思わせるだけの何かくらいは、彼女たちも受け取ったのだから。

 

「…………もう少しだけ、アルと話したいな」

 

もう少しだけ、本当にもう少しだけ。

欲を言うならもっと、ずっと、話していたい。

自分たちのいた時代に、彼を連れて行ってしまいたい。

そうすれば、忘れなくてすむから。

 

「忘れたくないな……」

 

そう呟く乙女の心は悲痛で。

かつては知らなかった忘れてしまうという現実に怯えて。

ここで彼を手放せば、もう二度と会えないという恐怖に苛まれて。

 

…………

………

……

…

 

乙女はかく語りき。

 

ずっとずっと、迷いなんてないと思ってた。

彼がオラリオに現れて人々を救って、三ヶ月ほどの期間を空けてまた現れて。

知り合って、忘れて、思い出して、また忘れて。

 

そんな経験を繰り返して、その中で彼に恋をして。

また会えるその時を、ずっと待ってた。

でも、こんな形だとは思わなかった。

 

こんな形で会いたくなんて、なかった。

 

自分たちの知る彼が、今後会う彼とは違う存在だと突き付けられる。

喉元に、心臓に、脳髄に、魂に、いっそ痛ましいくらい突き刺さっていく。

 

ずっと一緒にいたい。

もっと話をして、知りたい。

 

でも、その一方で。

 

いっそのこと、彼と再会しなければ。

いっそのこと、彼のことを何も知らなければ。

 

そんな醜い自己防衛本能が、アーディの心を苛む。

 

何も知らなければきっと、彼女は笑って彼と出会えた。

全てを忘れてしまえばきっと、彼女は笑って彼と出会える。

 

だから、いっそのこと。

 

「全部、忘れてしまいたい……」

 

すべてをなかったことにすれば、この想いも少しは軽くなるだろうか?

 


 

あとがき

 

さて、アルゴノゥト映画化しねえかなって思う今日この頃。

最後に投稿したのが、9月で、ダンまち関連だと8月。

ヤバいですね。

ちょっと色々と忙しくて色々やばい。

何がとは言えないけどヤバい。

まあ、頑張っていきますね。

 

リハビリがてら書いてみたはいいものの、う~ん、このぐだぐだ感。

見切り発車で始めた物語の悪いところが全面に出てますね。

取り敢えず、今回はアーディさんの心情描写と現状整理。

何でか知らないんですけど、自分が書くと物語が重たくなるというか、天真爛漫なアーディさんがいなくなるというか。

何ででしょうね?

 

それはさておき。

 

一応の補足説明。

リオンさんがベルに反抗的なのは、リューさんが半分くらい悪い。

もう半分は当人の問題です。

そりゃ、ねえ?

自分でもよく分からない感情やら事情やらを抱えてる状況で、ベルくんはほぼ無意識とは言え、リューさんの方は意識してベタベタしてたら潔癖なエルフ様はそりゃ態度悪くなりますよ。

赤の他人ならいざ知らず、未来の自分ですし。

まだ15歳の子どもですし。

現代日本なら思春期、反抗期真っ盛り。

そういうことで、リオンさんを若干よく思えない方々も、納得していただけたらと。

ここから卍解!じゃなくて、挽回していきますから。

 

アーディさんの方は。

色々ぐちゃぐちゃになってますね。

一回恋を自覚した上で忘れて、思い出せずに悶々として。

ようやく再会できたかと思えば、今度別れたらもう二度と彼自身とは会えないと宣告された上で、彼のことも忘れるって言われてるわけですし。

どうすればいいのか分からず、ぐちゃぐちゃになってます。

8巻でヘスティア様と喧嘩したベルくんに近い感情を抱いてる。

仲良くしたいし、知りたい、大切にしたい。

でも、それが本人のためになるとも思えず、今後苦しい思いをするのは確定してる。

だったらいっそ…………みたいな?

これに対するベルくんのアンサーは、皆さん分かりますね?

 

お楽しみに。

 

それはさておき。

誰か続き書いてください。

書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください書いてください…………

 

あんまり書くと嫌われそうなんで、このへんで終わらせます。

 

あの、もしかして本当に誰も書いてくれない感じですか?

誰でもいいですよ?

待ってますよ?

次にダンまちが発売されるの、12月ですよ?

 

それまでは自給自足で乗り切ろうって、皆で約束したじゃないですか!!

 

この設定で、誰か全く別の物語を書いてくださいよ!

お願いしますから!

まあ、もう惰性とノリで言ってる部分がありますけど、ずっと待ってるのは本当です。

誰でも気軽に、試しに、あるいはダンまちの二次創作を始めてみたいけど良い設定が思い浮かばないって方がいれば!

途中でやめてもいいし、投げ出してもいいです。

今ならYouTubeで道化師もイレレコも見れますし、アニメで終わったくらいの時系列なのでちょうど良いかなって思ってます。

書き方がわからない、書けるか分からないって方でも、大丈夫!

僕も最初の方は別垢でクソみたいな小説書いてましたし、今も時々クソみたいなの書いてますし。

出来る限りの応援やお手伝いくらいはしますので、挑戦してみてください。

 

以上、あとがきでした

 

 

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