最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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「できる事なら、戦いたくはなかったよ・・・。」


二十撃目:弟と深海王との決着

シェルターに到着したホタルが、深海王に向き合う。

 

 

「貴方・・・。」

 

 

「・・・深海王さん。やはり貴方だったんですね。」

 

 

雨に濡れながら呟くホタルの顔は、悲しげに歪められていた・・・。

 

 

「ホタル先生・・・こいつが・・・。」

 

 

ジェノスの声に、ホタルは静かに首を縦に振る。

 

 

「うん・・・。」

 

 

そんな様子のホタルに、深海王は語り掛ける。

 

 

「何しに来たの・・・?私は貴方と戦うつもりは無いわよ。」

 

 

「それは、僕も同じです。でも・・・、ヒーローという立場上、貴方を止めなければならないんです・・・。ごめんなさい。」

 

 

そう言うと、両手に雷光剣を(たずさ)える。そんなホタルを、ジェノスは心配そうに見る。

 

 

「先生・・・。」

 

 

「手筈は、さっき説明した通り。やるよ。」

 

 

ホタルがそう言うと、民衆達は歓喜の声を出す。

 

 

「S級ヒーローだ!!」

 

 

「助かったぞぉ!!」

 

 

そんな声を無視し、深海王に話しかける。

 

 

「深海王さん、僕は今からあなたと戦います。でも、それは敵としてではありません。友を止める為に、戦いますよ!!」

 

 

「・・・好きにしなさい!!」

 

 

そうして、戦いのコングが今鳴った!!

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━

まずは、ホタルが先制攻撃を行う。運動神経伝達速度向上スキルで、飛び蹴りを食らわし、シェルターの外に吹っ飛ばす。その衝撃に、深海王は呻き声を上げる。

 

 

「ぐぅぅぅ!!」

 

 

続いて、ジェノスが深海王に拳のラッシュを食らわせる。だが・・・。

 

 

「あの子はともかく、貴方レベルじゃ私には勝てないわよ!!」

 

 

そう言い放ち、ジェノスをシェルターの壁まで吹き飛ばす。

 

 

「ぐぁぁ!!(くそっ!大きな破損は無いが、可動部の回路がイカれた!動けん!)」

 

 

「ジェノス君!!」

 

 

自身の心配をするホタルに、ジェノスが大声を上げる

 

 

「俺に構わないでください!!深海王の侵攻を止めるのでしょう!!」

 

 

「・・・っ!!電磁砲(レールガン)!!」

 

 

ホタルがそう言い放つと、深海王の蟀谷(こめかみ)に、音速を超えるタングステン弾を撃ち込む!!

 

 

「ぐっ!!」

 

 

そう呻くと、深海王は少しよろめく。そんな深海王に、ホタルは強く語り掛ける。

 

 

「深海王さん!何があったかは知りませんが、落ち着いて!!あなたは、こんな事をする人じゃありません!!海を想う、心優しい人でしょう!?」

 

 

「こんな姿の化け物が、優しい心を持っている訳がないでしょう!!(ふらつきが・・・!!)」

 

 

「体は怪人でも、貴方には同胞を思う優しい心がある!!心が人なら、それはもう人間ですよ!!縛!!(それに、あなたの顔には、怪人特有の残虐性が見えない!悲しい目をしている・・・!)」

 

 

ホタルがそう唱えると、深海王の動きが止まった。深海王の両腕、両足に⊕電荷を付与し、空気中の⊖電荷に引き寄せる事で、動きを封じたのだ!!

 

 

(動きは止まった!!側頭部に触れて、脳波を操作してβ波からα波に変えなきゃ!!)

 

 

しかし、雨の力でパワーアップした深海王には、(やわ)な拘束は通じない。

 

 

「があぁぁ!!」

 

 

「くっ!!」

 

 

腕を振り上げる深海王の攻撃を、ホタルは避ける。その顔は悲しみに歪んでいた。

 

 

(どうして・・・どうして!!)

 

 

そう思いながら、ホタルの目には涙が溜まる。

 

 

「どれだけ素早く動いても無駄よ!!せめてもの情けで、投げ飛ばすだけにしてあげる!!」

 

 

そう言うと、深海王はホタルの片足を掴んで、空に投げ飛ばした。

 

 

(しまった・・・!!)

 

 

普段なら避けれていた攻撃も、涙で景色が(にじ)んでいたのと、動揺していたことにより、足首を掴まれ投げ飛ばされてしまったのだ!!

 

 

(体勢を立て直さないと!!早く・・・!!)

 

 

そう思いながらも、ホタルは遠くに消えてしまったのだった。

 

 

(怪我をしない程度の強さで放り投げたけど・・・、あの子なら大丈夫でしょう・・・。)

 

 

そう思いに耽ると、深海王は再びシェルターの方へ顔を向ける。

 

 

「さて・・・さっき舐めた口を()いた人間は何処に行ったのかしらァァァ!!!」

 

 

そう言って歩を進める深海王に、民衆達は悲鳴を上げる。

 

 

「ひ、ひぃぃぃ!!!」

 

 

「お、おい!もっと奥に詰めろ!!」

 

 

「無理に決まってんだろう!!」

 

 

再び顔が絶望に染まる・・・と思ったその時。

 

 

「ジャスティスクラッシュ!!正義の自転車乗り!無免ライダー参上!!」

 

 

(C級ランキングトップの・・・。)

 

 

ジェノスの目に映っていたのは、C級1位の無免ライダーだった。そんな彼に、深海王は忠告をする。

 

 

「・・・またヒーローね。止めておきなさい。貴方と私の実力は雲泥の差。分かるでしょ・・・?」

 

 

「よ、よせ・・・・。」

 

 

ジェノスは、無免ライダーに退却するように言おうとするが声は届かない。そして、無免ライダーの登場に市民達も声を上げるが・・・

 

 

「む、無免ライダーだ!無免ライダーが来てくれた・・・。」

 

 

「でも・・・。」

 

 

そう、誰の目から見てもC級ヒーローである無免ライダーに勝ち目は無かった。

 

 

「とうっ!!」

 

 

無免ライダーが飛び掛かるが・・・。

 

 

「弱き人の子・・・。勇気と思っていることが無謀だったなんて事は良くある話よ・・・。」

 

 

深海王に、拳を掴まれてしまった。

 

 

「ぐっ!!く、くそっ!!」

 

 

「貴方の様な心の持ち主を傷つけたくない・・・。引きなさい・・・。」

 

 

そうして深海王は、無免ライダーを放り投げる。すると無免ライダーは全身を打ち付けながら転がっていく。

 

 

「がっ!!」

 

 

「さーて、殺すわよー。安心しなさい、全員殺す訳じゃない。さっき嘲笑った一人が出てきたら帰る・・・。」

 

 

そう言いかけた深海王に、トスッと衝撃が走る。その正体は・・・

 

 

「ジャ、ジャスティス・・・タックル・・・。」

 

 

弱々しく深海王にタックルをする、無免ライダーであった。

 

 

「・・・諦めが悪いのね。」

 

 

深海王の言葉に、無免ライダーは反論する。

 

 

「し、C級ヒーローが、大して役に立たないなんて事、俺が一番良く分かってるんだ!俺じゃB級じゃ通用しない!自分が弱いって事はちゃんと分ってるんだ!!俺がお前に勝てないなんて事は、俺が一番良く分かってるんだよぉ・・・!!それでも、やるしか無いんだ!!俺しかいないんだ!!勝てる勝てないじゃなく、此処で俺は、お前に立ち向かわなくちゃいけないんだ!!」

 

 

無免ライダーがそう叫ぶと、帰ってきた答えは・・・。

 

 

「・・・あなたの様な、気高い精神の人ばかりだったら良かったのにね・・・。」

 

 

そんな怪人らしからぬ優しい声色に、無免ライダーは困惑する。

 

 

(え・・・・・・?)

 

 

続いて湧き上がるのは、民衆からの声援の嵐。

 

 

「頑張れェェェェェ!!!」

 

 

「負けるなァァァ!!」

 

 

人々は、最後の希望を彼に託したのだった。

 

 

(これが、言霊(ことだま)の力・・・。目の前の彼の気が・・・。)

 

 

深海王が目を凝らすと、無免ライダーの周りが黄色く光り始める。

 

 

「ぬぁぁぁぁ!!!」

 

 

そう叫びながら、無免ライダーは渾身の一撃を入れる。しかし・・・。

 

 

「あなたの様な、気高き人と出会えてよかった・・・。」

 

 

深海王に手を掴まれ放り投げられ、地面に転がる・・・。筈だった・・・。

 

 

しかし、地面に落ちる寸前で彼を抱きかかえる者が居た。その正体は・・・。

 

 

「よくやった・・・。ナイスファイト。」

 

 

ギリギリ現着したサイタマ。そして・・・。

 

 

「間に合ったぁぁぁ!!」

 

 

投げ飛ばされた方角から、ホタルが戻って来た。

 

 

最強兄弟、ここに集合。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━

そうして再び、ホタルは友である深海王に向き合う。

 

 

「戻って来たわね・・・。」

 

 

「お望み通りにね・・・。お兄ちゃんも間に合った様で良かった。」

 

 

「おう。」

 

 

そんな三人に、再び民衆は騒めきだす。

 

 

「激雷の天使が帰って来たぞ!」

 

 

「隣に居るのは、誰だ?」

 

 

「俺知ってるよ!C級の新人だよ!ランキング2位の!!」

 

 

「C級なのは残念だけど、S級が戻って来たんだ!!形勢逆転だぞ!!」

 

 

そんな民衆を横目に、ホタルはサイタマに指示を出す。

 

 

「・・・外野が喋ってるけど、これで決着を付けよう。お兄ちゃん、作戦は覚えてるね。」

 

 

「・・・おう。」

 

 

そんな兄弟に、深海王は拳を振り上げる。

 

 

「どんな作戦を立ててきたかは知らないけれど、これで最後よ!食らいなさい!!」

 

 

「同じ手に引っかかるとは思わなかったよ!!縛!!」

 

 

しかし拳は振り下ろされる事無く、再び深海王は拘束される!先程よりも強い力で!!

 

 

「なぁ!!」

 

 

「お兄ちゃん!!手筈通りに・・・決めて!!」

 

 

「おう!食らいな!!」

 

 

そうサイタマが言い終えると・・・。

 

 

ズドォォンという轟音と共に、深海王の鳩尾(みぞおち)に拳を打ち抜き、地面に倒れさせた。

 

 

(良かった・・・腹部に穴は開いてない・・・。)

 

 

ホタルが安堵した、その時・・・

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

「何者だよ!!」

 

 

「何が起きたんだよ!!」

 

 

「助かったぞぉぉぉ!!」

 

 

「一発で仕留めちまったぞ!ワンパンだよワンパン!!」

 

 

「C級じゃないの!?」

 

 

「強すぎる!!」

 

 

民衆の沸き立つ歓声が巻き起こり、事態は収束する・・・筈だったが。

 

 

「実は、あんまり強い怪人じゃなかったんじゃね?」

 

 

そう発言したのは、つい先程、深海王の地雷を踏んだ男だった。

 

 

「いや、でもいろんなヒーローが、負けてるぞ・・・。」

 

 

そう反論するもう一人の市民に、地雷を踏み抜いた男は嘲笑しながら言い返す

 

 

「負けたヒーローが弱かったんじゃね?」

 

 

「それは・・・。」

 

 

そう言い淀む市民達を一瞥しながら、地雷を踏み抜いた男は饒舌(じょうぜつ)に話し始める。

 

 

「確かに今の見ると、敵が弱く見えたけど、そこに居るC級ヒーローが一発で倒しちゃったんだぜ。負けたヒーローってどんだけ・・・。A級とかS級とかぶっちゃけ肩書だけで、大した事無いんだな。ってか、あそこのS級に関しては、動きを封じただけじゃん。」

 

 

「おい、やめろよ。一応命張ってくれたんだぜ。」

 

 

そう言って周りが注意するが、男の暴言は止まらない。

 

 

「命張るだけなら誰でも出来るじゃん。やっぱ、怪人を倒してくれないと、ヒーローとは呼べないっしょ。今回、沢山ヒーローに負傷者が出たらしいじゃん?そんな人達を今後頼りに出来るかっつーと、疑問だよね。ま、結果的に助かったんだから良いんだけどさ、殆ど一般人と変わらないみたいなヒーローは、助けに来られても困惑するだけだから、出来れば辞めて欲しいな。やっぱ、ヒーロー名乗るからには確実に助けて貰わないとさ・・・。」

 

 

ここで、遂に堪忍袋の緒が切れた男性が胸倉を掴み上げる。

 

 

「おい!お前、いい加減にしろよ!!」

 

 

しかし、地雷を踏み抜いた男は悪びれる様子は一切ない。

 

 

「なんで?なんで俺が怒られないといけないの?ヒーロー協会の活動資金は、皆の募金が元に成ってるんだよ?お金払ってるからには、ちゃんと守って貰わないと困るよね。実際、今回はあの剥げてる人と、背中に翼が生えてる人が解決しちゃった訳だし、他のヒーローは無駄死にだよね!!」

 

 

「止めろって!!」

 

 

「時間稼ぎなんて、工夫すれば誰にも出来るしさ。他のヒーロって、結局なにもヒーローらしい活躍してなくね?」

 

 

そう煽り散らかす男に、周りも罵声を浴びせ始める。

 

 

「とにかく助かったんだ!それで良いじゃないか!!」

 

 

「というか、お前あの深海王とかいう怪人を怒らせた奴じゃねぇか!!」

 

 

「てめぇの所為で、こっちは死にかけてんだ!!殴らせろ!!」

 

 

「そうよ、そうよ!!確かに他のヒーロは活躍できなかったけど、そこを突っ込むなんて、性格悪いわよ!!」

 

 

周囲の人間もヒートアップしかけたその時・・・。

 

 

「あっはっはっはっは。いやー、ラッキーだった。」

 

 

サイタマが突然話し出した。その様子に、ホタルは神妙な顔に成る。

 

 

(お兄ちゃん・・・本気でするんだね・・・。)

 

 

「他のヒーローが怪人の体力奪っててくれたお陰で、スゲー楽に倒せた!遅れて来て良かった!!俺何もやってないのに、手柄貰えたぜ!正直言って、ホタルもやられてたら手柄を独り占め出来たんだけどなぁ~!!あ、お前らちゃんと、噂を撒いとけよ!!漁夫の利だろうが何だろうが、最後に怪人を仕留めたのは俺だからな!!本当は、ただ遅刻してきただけとかバラしたらぶっ飛ばすぞ!!」

 

 

その言葉に、周囲の民衆は困惑する。

 

 

「え・・・?どういう事?」

 

 

「あの怪人、弱ってたのか?」

 

 

「倒した本人がそう言ってるけど・・・。」

 

 

「ヒーローとの連戦で、かなりの体力を奪われてたのかも・・・。」

 

 

「いやでも・・・それでも一撃で倒せるか?普通・・・。」

 

 

その時、一人の市民がサイタマの正体に気付く。

 

 

「ちょ、ちょっと待てよ。あ・・・あいつ・・・サイタマだ。Z市で一時期インチキ呼ばわりされてたヒーロだよ・・・間違いない。」

 

 

その言葉に、周りが騒然とする。

 

 

「え!?インチキ!?」

 

 

「いや、本当にインチキかどうかは分かって無いんだけどさ・・・。隣にいる激雷の天使に、尻拭いさせて収まったらしいけど・・・。」

 

 

「どういう事!?C級がS級に罪を擦り付けたの!?」

 

 

そう騒ぎ始める市民の様子に、サイタマの方をホタルは不安そうに見つめる。

 

 

「お兄ちゃん・・・。」

 

 

「ここは俺が何とか収めるから、お前はその怪人連れていけ。そいつを連れて行きたい場所があるんだろ・・・?」

 

 

そう静かに言うサイタマに、感謝を言いつつホタルは深海王を姫抱きする。

 

 

「ありがとう・・・。それから、誰が何と言おうと、お兄ちゃんは僕のヒーローだから・・・!」

 

 

「・・・行け。」

 

 

そのサイタマの言葉に、ホタルはいつの間にか人間大サイズに成っていた深海王を連れて、どこかに飛び去った・・・。




「深海王編は、まだまだ続くよ。」
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