最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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「瀕死の深海王さんを運んで来たよ。」


二十一撃目:弟と深海王の正体

ホタルは飛んだ。怪人の身でありながら、多くを語り合った友を抱きかかえて。

 

 

最早深海王に、脅威と呼ばれる要素は無くなっていた。サイタマの腹パンの攻撃により、意識不明の重傷を負い、仮死状態といった具合である。

 

 

そうして、ホタルは到着する・・・そこは、初めてホタルと深海王が出会った場所だ。

 

 

「・・・到着。じゃあ、始めようか。エレクトリックラジエーション・・・。透視の結果、胸部骨折に心肺停止みたいだね。AED治療と治癒能力で骨折箇所を治癒っと・・・。」

 

 

そう呟くと、深海王を膝枕した後、胸部に指を置き、AED治療を始めたのだ。しばらく治療を続けると・・・。

 

 

「・・・ここは?」

 

 

深海王が目を覚まし、所在を尋ねる。

 

 

「・・・貴方と僕の、思い出の場所です。」

 

 

「ここは・・・、私達の出会いの場所・・・。」

 

 

「はい・・・。」

 

 

ホタルが頷くと、深海王はまだ痛みが少し残るのか咳をする。

 

 

「ゴホッ!!・・・信じられないわ。貴方が来るまでは、汚れに汚れていた海や砂浜がこんなに綺麗に・・・。」

 

 

「僕だけの力じゃありません。海を、そこに住む御魚さん達を想う多くの人々による努力の結晶です。」

 

 

その時、深海王の眼前に映ったのは幻・・・、まだ、ヒーロー協会なるものが発足していない時代に、供え物を捧げに来る漁師・・・、村で起きた事を嬉々として話しに来る無垢な子供・・・。そして、供え物の返礼として、多くの活きの良い魚を与えた先代深海王の影・・・、深海王に成ってない下っ端の頃に、人々に海の恵みを与えて穏やかな顔を浮かべる自分の顔・・・。

 

 

そんな思い出に、深海王は呟く。

 

 

「愚かなのは、人じゃない・・・。昔の事も忘れ、畜生道に堕ちた私の方だった・・・。」

 

 

「・・・そんな事はありません。私達人間が、海を想っていれば貴方が畜生道に堕ちる事はありませんでした。」

 

 

「でも・・・。」

 

 

そう口籠(くちごも)る深海王に、ホタルは衝撃的な事を口に出す。

 

 

「そして貴方も、海神(わだつみ)から怪人に堕ちる事も無かった筈です・・・。」

 

 

「え・・・・・・?」

 

 

困惑した顔をする深海王を他所に、ホタルは話し続ける。

 

 

「・・・疑問に思っていたんです。本来、怪人とは人を本能的に襲うもの。けれども貴方は初めて僕に会った時、敵意を収めていた・・・。そこがまず、疑問に感じた所でした。」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

その言葉を、深海王は不安そうな顔に成りながら聞く。

 

 

「そこで、調べてみたんです。古事記に掲載された、深海に沈んだ人物を・・・。貴方の正体は・・・。」

 

 

ホタルが核心をつく発言をしようとすると、深海王はその先の言葉を拒絶しようとする。

 

 

「やめて!!私はとっくに堕ちた身よ!!今更その名を名乗る資格は・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、ホタルは深海王の正体を言い当てる。

 

 

「貴方の正体は、弟橘媛(おとたちばなひめ)・・・。日本武尊(やまとたけるのみこと)が海神の怒りを買った際に、怒りを鎮める為に飛び込んだ彼の(きさき)・・・。後に神格化した女性・・・。」

 

 

そう言うホタルに、深海王は図星を突かれたように顔を(しか)める。

 

 

「・・・・・・っ!!」

 

 

「その証拠に、貴方からは殺気が微塵も感じられない。いや寧ろ、人々を害する事を躊躇(ちゅうちょ)していた・・・違いますか?」

 

 

その言葉に、深海王は押し黙りながら肯定する。

 

 

「・・・大当たりよ。私は、日本武尊様が海神様を怒らした事により、荒れた波を鎮める為にその身を投げたわ・・・。」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

その言葉に、ホタルは静かに話を聞き始める。

 

 

「とある文献には、私は怨霊に成ったって書いてるけど、深海に入ってから500年前に人間が攻め入るまで、私は人から神格化した神だった・・・。私の配下の異形の海人族も初めは普通の魚だったわ・・・。彼らは地上から来た私のような存在でも温かく迎え入れてくれた・・・。それからの日々は温かかったわ・・・。人間達が攻め入るまでは・・・っ。」

 

 

そうして辛そうに話を続ける深海王に、ホタルは気を遣う。

 

 

「・・・話したくないのであれば、無理には聞きません。」

 

 

「いいえ、話すわ。最初の頃は人間達も信仰深く、私の事を拝めてくれたわ。勿論私もそれに応える為に、彼らに海の幸を捧げた。お互いに良好な関係を築いていた・・・。でも、ある人間達が私達の住処を襲ったわ。・・・そこからは地獄絵図。魚の子供は死に絶え、先代の深海王であった神も殺された・・・。だから、私は復讐を誓ったの。天罰を与えるようにね・・・。まぁ、負けちゃったけど・・・。」

 

 

その言葉に、ホタルは確認するように質問する。

 

 

「あなたが怪人化したのは、人間達への恨みでしょう?」

 

 

「・・・えぇ。そして、その恨みによる瘴気(しょうき)は、罪の無い魚達にまで広がった!・・・彼らが怪人に成ったのは、私の責任よ!!」

 

 

そう言い放ったと同時、深海王の頬を包み込んだのは、温かな手の平であった。

 

 

「え・・・?」

 

 

「よく、話してくれましたね・・・。」

 

 

次に深海王の顔に降り注いだのは、温かな滴。しかし雨は降っていない。ならば、その正体は・・・。

 

 

「辛かったでしょう・・・?御自身の体が、怪人に成っていくのは・・・。信じていた人達に裏切られるのは・・・。人を信じたい気持ちと、復讐の心に挟まれて(さいな)まれたのは・・・。」

 

 

深海王を膝枕する、ホタルの涙であった。

 

 

「あ・・・。」

 

 

その時、深海王の脳裏に昔の記憶が蘇る。

 

 

それは、海神の怒りを鎮める為に海に飛び込んだ自分の姿。深く暗い深海に沈んだときは、恐怖と悲しみに包まれた。

 

 

しかし、そんな自分を温かく迎え入れてくれた海の生き物達。

 

 

(この暖かな気持ち・・・、初めてお魚さんと会った時と同じ・・・。私を温かく迎え入れてくれた時と同じ・・・温かい・・・気持ちになる・・・。)

 

 

その時、深海王の体に異変が生じた。

 

 

「・・・え?」

 

 

なんと、ピシピシと体がひび割れていくではないか!!その様子に、ホタルは驚愕する!

 

 

「こ、これは!?」

 

 

次の瞬間、深海王の体が眩く光り始める!

 

 

「うわぁ!!・・・一体何が?・・・え?」

 

 

次の瞬間、ホタルが目を開けたときに居たのは、半魚人の様な怪人では無く・・・、黄緑の(つや)やかな髪に、透き通った白い肌に海色に輝く瞳をした、グラマラスな体型の身長160後半の美麗な女性であった。

 

 

「え?え・・・?」

 

 

そんな女性の登場に、ホタルは(がら)にも無くポカーンと口を開ける。そんな様子のホタルに、目の前の美女が心配そうな目になる。

 

 

「ど、どうしたのですか?」

 

 

その口から放たれるのは、コロコロと鈴を転がす様な、綺麗な声。

 

 

「ど、どちら様・・・ですか?」

 

 

そう聞くホタルに、女性は名乗りを上げる。

 

 

「わ、私です!深海王ですよ!!」

 

 

その言葉に、ホタルは更に驚愕する。

 

 

「えぇ!?嘘は言わないでください!見た目も口調も、別人じゃないですか!!」

 

 

そう言って、鏡を差し出すと女性も驚いた顔をしていた。

 

 

「この姿・・・弟橘媛(おとたちばなひめ)の姿ですよ!!」

 

 

「え、えぇ~・・・?あぁ・・・。」

 

 

あまりの衝撃事実に、ホタルは気を失ったのだった・・・。

 

 

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「う、うぅ〜ん。あ、あれ?」

 

 

数分後、目が覚めたホタルの眼前にあったのは美しい顔である。

 

 

「ひ、膝枕?」

 

 

そうホタルが言うと、ホタルに膝枕をしていた美女・・・弟橘媛が心配そうに尋ねる。

 

 

「お、落ち着かれました?」

 

 

「な、何とか・・・。え、えっと・・・弟橘媛・・・様・・・ですよね?」

 

 

ホタルがそう問うと、彼女は複雑そうに答える。

 

 

「えぇ・・・、そうですね。」

 

 

「ご、ごめんなさい。神様に膝枕してもらうなんて・・・。」

 

 

そう言ってホタルが謝ると、弟橘媛は恥ずかしそうに手を振る。

 

 

「い、いえ。先程のお返しの様なものですから・・・。」

 

 

「そ、その・・・。お綺麗に成りましたね。」

 

 

そう言うホタルに、弟橘媛は少し悪戯っぽい表情になる。

 

 

「あら?前の私は醜女(しこめ)と言いたいのですか?」

 

 

その言葉に、ホタルは精一杯首を振る。

 

 

「め、滅相もございません!!と、とってもお綺麗でした・・・身も心も。」

 

 

「ふふっ。嬉しい事を言ってくれますね。・・・それにしても、これからどうしましょうか・・・。」

 

 

そう。深海王という存在は消え去った。ここに残るのは、一人の女神だけ。

 

 

その時、ホタルが提案しようとする。

 

 

「あ、あの・・・。僕から提案があるのですが・・・。」

 

 

「提案・・・?」

 

 

「付いて来て下さ・・・。」

 

 

そう「付いて来て下さい」と手を伸ばそうとした瞬間・・・

 

 

(深海王・・・。いや、弟橘媛。貴様、寝返ったのだな・・・。隣の男も含めて没収だ・・・。)

 

 

何者かが、二人の頭の中に語り掛けてきたのだ。

 

 

「!?」

 

 

その言葉に、ホタルは声のする方を見つめる。

 

 

「ひっ!」

 

 

そして、その言葉を聞いた弟橘媛は怯えた顔をしたが・・・。

 

 

(没収が出来ない・・・?そうか、隣にいる貴様は・・・。まぁ良い・・・。怪人の力が無くなった時点で、貴様に価値は無い・・・。)

 

 

謎の声が見切りをつけるような発言をすると、その場には波の音が残されるだけだった。

 

 

「な、何だったんでしょう?と、取り敢えず行きましょう。」

 

 

「は、はい・・・。」

 

 

そう言うとホタルは弟橘媛を姫抱きし、何処かに向かったのだった。

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━

数分後・・・ここはヒーロ協会本部、そこには、ホタルと弟橘媛に向かい合うように座っている、鼻が特徴的な男が居た。

 

 

「して、何用だね?ホタル君。・・・そこの女性は?」

 

 

「本日は、お話しの場を設けて頂き感謝いたします。シッチさん。」

 

 

ヒーロー協会幹部の一人、シッチだった。ヒーロー協会に腐敗した幹部達が居る中、ホタルが信頼を置く数少ないマトモな幹部である。

 

 

「単刀直入にお話しします。彼女は今回の事件の首謀者、深海王です。」

 

 

その言葉に、シッチは顔に驚きの色を見せる。

 

 

「何だと・・・?報告書の写真と違うが・・・。」

 

 

「それに関しても、全てお話しいたします・・・。」

 

 

それからホタルは全てを話した。

 

 

彼女は弟橘媛という、深海を統べる女神であったという事。

 

 

彼女は人間を愛していたという事。

 

 

信じていた人間に裏切られ、女神から怪人に堕ちてしまった事。

 

 

許されるのなら、また女神として海を、人の子達を見守りたい事・・・。

 

 

その願いをシッチは、真剣な顔で聞いていた。

 

 

「彼女のしでかした所業は、許される事ではありません。ですが、彼女が堕ちた原因を作ったのは、僕達人間です。ならば、その彼女の贖罪(しょくざい)を手伝うのも、僕達の仕事ではないでしょうか?」

 

 

そのホタルの言葉に、シッチは弟橘媛の方をじっと見る。そして、そんな視線に弟橘媛は身を縮こませる。

 

 

「・・・・・・っ!」

 

 

「深海王・・・いや、弟橘媛(おとたちばなひめ)・・・君の気持ちは分かった。だが、今回の騒動で怪我を負い、入院生活を送るヒーローが居るのも事実だ。そう簡単に『はい、分かりました。』と首を振る訳には・・・。」

 

 

そうシッチが言いかけた所で・・・弟橘媛は待ったをかける。

 

 

「そ、その事で渡したい物が・・・。」

 

 

そう言うと、弟橘媛は数枚の護符を手渡した。

 

 

「これは・・・?」

 

 

護符を手に持ちながら、シッチは質問する。

 

 

「私の神通力を込めた、癒しの護符です・・・大己貴命(おおあなむちのみこと)*1程の効力はありませんが・・・。これを彼らに貼り付ければ怪我も早く治りましょう・・・。この様な物で許されるとは思っていません・・・。ですが、今の私に出来るせめてもの償いです!!」

 

 

そう言って、弟橘媛は頭を下げる。そして、次いでホタルも頭を下げる。

 

 

「僕からもお願い致します。それに現実的に考えて、今まで海を統べていた弟橘媛様が居なくなってみてください。今度こそ、海の生物達が侵攻してきてもおかしくありませんよ?」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

その言葉にシッチは少しの間、目を閉じて考え込む。

 

 

「・・・シッチさん!!」

 

 

そうホタルが声を出すと、シッチは静かに口を開く。その眼には、真剣さが宿っていた。

 

 

「・・・今度の議題に、今回の話を提示しよう・・・。深海王・・・いや、弟橘媛様。今回は我々人間が多大なるご迷惑をお掛けして、申し訳なかった。」

 

 

そう言ってシッチが頭を下げると、弟橘媛も頭を下げる。

 

 

「・・・!!こ、こちらこそ申し訳ありませんでした!お心遣い有り難う御座います!!」

 

 

この日、怪人が発生し始めて数年。初めて、人類と怪人が和解した瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホタルと弟橘媛が去った後、シッチは部屋で独り言ちる。

 

 

「しかし、さっきの者・・・。あの男の言う「カミ」とは違うのか?今度、聞いてみるか・・・。」

*1
大国主神(おおくにぬしのかみ)の別名。医療の神である




「オリ展開にしちゃった・・・神道系に強い人から見たら、弟橘媛の内容が違ってるかも、ごめんね。弟橘媛様の出番は、また有るかも・・・。」

弟橘媛のイメージCV:大野柚布子

▼弟橘媛の手書きイラスト

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▼弟橘媛のAIイラスト

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▼弟橘媛のアニメ風AIイラスト

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