最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
最強兄弟と弟子が最強の活躍を心待ちにしている中、当の
「俺を殺しに来た・・・か・・・。はぁ・・・。はぁ、はぁ、は・・・はぁはぁ!!」
キングエンジンを鳴らしつつ、公衆トイレで過呼吸に
「(どうしてこうなった?怖え・・・怖えよ・・・!!俺は強くなんてない!無職でオタクで引きこもりな、駄目な29歳だ!!キングエンジンって何だよ!?馬鹿か!?人一倍・・・いや、何十倍も臆病なだけだ!!ビビり過ぎて、鼓動の音が他人にまで聞こえちゃう・・・。たまたま、俺の目の前に災害レベル鬼~竜の凶悪な怪人が現れ、目を閉じてる間に誰かがやっつけていた・・・。偶然そんな場面に5回も出くわした!それだけだ!!そしたら、ヒーロー協会が勝手にS級ヒーローの証を送り付けてきた!!数々の功績を讃えるとか、最強の新人ヒーロだとか言って・・・。悪い気分じゃなかったので、積極的に否定しなかった俺も悪いけど、こんな事態になるなんて!!)・・・はぁはぁはぁはぁはぁ!はぁゲホッ!!ぁはぁはぁはぁはぁはぁ!!(やべぇ!ヒーロー辞めたい!死にたくない!!ロボット相手じゃ、名前の圧力も通用しない!!心臓がはち切れそう!!)」
そうこうしてる間に、腕時計の長針が10分過ぎようとしていることを知らせる。
「あぁぁぁぁぁ!!」
そう叫びながら腕時計を見た、その時・・・。ドォォンという轟音が鳴る。
「ひぃっ!この音は・・・。(始まった・・・1分ごとに10人・・・ごめん・・・ごめん・・・。)」
人々の大ピンチに颯爽と現れ、敵を一撃で倒し名乗りもせずにその場を去る。そんな、最強のヒーロー。キングと呼ばれる男。彼に、人生最大の危機が訪れていた。
(人が死ぬ・・・沢山・・・!!)
そう考えている間にも、ドスンと轟音が聞こえる
「ひっ!・・・あいつ、暴れてる!!俺の戦闘データ取るとか言ってたけど、意味わかんない!!考えろ・・・この場を何とかする方法を・・・!!・・・あっ!!」
ここで何か思いついたようだが・・・。
「絶対無理だ。どうしようもないなこれ・・・。殺されて終わりだ。この公衆便所から、ロボットの場所まで徒歩2分・・・逃げられるかなぁ・・・。」
きんぐ は てきぜんとうぼう を せんたく した▼
(ごめん!ごめんよ~!!)
そう念じながら、フードを被りダッシュで逃げる。
━━━━━━━━━━━━━━━━
しかし、現場に死人は一切出ていなかった。何故なら、ジェノスが交戦していたからである。
振り下ろされた大剣を一撃で叩き折り、ロケットパンチを顔面に叩き込み、ロボを吹っ飛ばした。
「何それ?ロケットパンチ?」
サイタマがそう聞くが、吹っ飛ばしたロボが起き上がりジェノスを踏みつけた。そんなジェノスを、ホタルは心配そうに見つめる。
「・・・ジェノス君。多分僕がそのロボットをハッキングしたり、EMP*1を放出したら直ぐに終わると思うんだけど・・・。」
「いえ!御心遣いはありがたいのですが、サイタマ先生に出された課題、『S級ランキングで10位以内を目指せ』を達成するには・・・これしきの相手!独力で倒せるようでなくては!!」
その様な課題内容を聞いていなかったホタルは、サイタマに呆れた目を向ける。
「そんな課題出してたんだ・・・。」
「あー、まぁな。んじゃ、負けんなよ。」
「目標を達成しようとするのも良いけど、本当に危なくなったら呼ぶんだよ!!」
そう言うと、最強兄弟は反対方向に歩き始めたのだった。そうして、災害アナウンスも流れ始める。
「緊急避難警報!!M市中央公園付近にて、ロボット兵器が暴走中!!S級ヒーローが応戦中との目撃情報が有りますが、近隣住民は速やかに避難してください!!災害レベル虎!レベル鬼に移行する恐れあり!!」
━━━━━━━━━━━━━━━━
そんな事が起きているとき、地上最強の男はと言うと・・・。
「はぁはぁはぁ・・・。な、何とか無事に帰れたけど夢に出そうだな、あの怖いロボット。・・・ゲームやって、忘れよう。」
そう言うと、コントローラーを手に取り電源を付けて起動させる。
「恋愛ゲームは、心のオアシスだな。どきどきシスターズって、オープニング凝ってるなぁ・・・。これは、ワクワクが止まらん。」
すると、ゲームキャラが話し始める。
『起キテ!オニイチャン!朝ダヨー!!』
「何だこの声優・・・、棒読みにも程があるだろ。主人公の名前を決めてください・・・か。本名は照れ臭いよな・・・29歳にもなって。どうしよっかな~。」
するとそこへ・・・二つの声が掛かった。
「主人公、キングでいいんじゃね?」
「ヒーローネームは身バレの危険性が有ると思うけど・・・。」
「そうそう、ヒーローネームとか一瞬でばれるし、ゲームキャラにキングお兄ちゃんなんて呼ばれてるの誰かに知られたら、死ぬしか・・・。(え・・・?)」
普通に返事を返していたが、違和感を感じたキングが振り向くと、そこにはニヤニヤしたサイタマと、ニコニコしたホタルが居た。
(え?え~と、え?何この人達?何で居るの?)
きんぐ は こんらん している▼
そんなキングに、あっさりと兄弟は答える。
「窓が開いてたもんで。」
「飛んで入りました。」
そんな兄弟に、呆然としながらも少し虚勢を張る。
「ここ、22階ですよ。・・・こ、困るなぁ~。勝手に人の家に上がり込んでもらっちゃあ。こ、この俺がS級ヒーローと知っての事なのかな?」
そんなキングに、サイタマはあっさり答え・・・
「知ってるよ。キングだろ?」
「集会のときには、お話しする機会が無かったので御挨拶にと伺いました。こちら、つまらないものですが。」
そう言うと、ホタルは高級和菓子が入った紙袋を手渡す。
「え、あ。ど、どうも・・・。(はっ!こ、このハゲの方はS級会議に何故か来ていたB級ヒーローに、こっちは髪型がサイドテールからポニーテールに変わってるから気付かなかったが、S級5位の激雷の天使!!)」
そう言って和菓子を受け取るキングを他所に、横で流れるゲーム画面に目を向けるサイタマ。
「ん~、でも・・・。こういうゲームやるタイプだったとは知らなかったよ。」
そこでは、棒読みで名前を求める女児キャラが映っている。
『オ兄チャン!名前ヲ決メテ!!』
それを見られて恥ずかしいのか、キングが絶叫する。
「や、やめろぉぉぉぉぉ!!」
そんな中、マイペースにサイタマは床に落ちているゲームを拾う。
「ん?何だこのゲーム?面白そうだな。」
「こら、お兄ちゃん。人の私物を触っちゃいけません。」
そんなサイタマを
「やめっ・・・!え・・・!?あっ、それはアクションゲームだ!!」
「ロボット動かすのか?」
「そうそう!!」
そう質問するサイタマにキングは必死に頷き、ホタルはそんなキングを見て少しポカーンとする。
(キングさん、すごい必死・・・。)
「本当はそういうゲームが好きで、このゲームもアクションかと思ったら何だこれ!?恋愛ゲームだったのかよ!!間違えて買っちゃったよ!!」
そう言って、キングが投げ捨てた「ドキドキシスターズ」をホタルは拾い上げる
「・・・ドキドキシスターズ?」
その言葉に、キングは大焦りする。
「マジで!?怒気怒気シューティングスターかと思った!あー騙されたー!!すぐ捨てよう!!おっと、直ぐ電源切んないと電気代の無駄だな!!29歳で恋愛ゲーム買うとか、恥ずかしいな~!アハハハハハハ!!」
しかしその時、キングの腹からグルルルルと音が鳴った。それを聞き逃すホタルではない。
「グルルルルル?」
ホタルがそう言うと、キングは慌てだす。
「おっと、もう昼食の時間だ!!ゲームなんてやって無いで、何か作らないと!!」
そう言ってキッチンに行こうとするキングを、ホタルは止める。
「・・・あの?じゃあ、僕作りましょうか?」
「え?」
「挨拶に着たとはいえ、アポ無しで来ちゃったので、そのお詫びです。」
そう言ってニコリと笑うホタルに、サイタマはキングに提案する。
「じゃあ、ホタルが飯作ってる間にこれでもやろうぜ。どうせ暇だろ?」
「え、あ、うん。(お、御詫びに飯を作ってくれる激雷の天使は兎も角、何だこいつ~!図々しいし、タメ口だし俺は年上だぞコノヤロー!!っていうか、何で居るんだよ!!)」
そんなキングを他所に、ホタルは台所で料理を始めたのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━
その頃、地上ではジェノスがロボ相手に善戦していた。そして遂に、ロボットの攻撃を避けつつ背中当たりの所に飛び乗り・・・。
「焼却!!」
ドォォンという音と共に、ロボットを熱で溶かしたのだ。
「内部構造を融解させた。もう動けないだろう。デカい体が災いしたな・・・。」
しかし、融解を続ける巨大な機体の中から・・・。小型の人型ロボが現れたのだ。
(操縦者・・・?いや、本体か!)
そして、その小型ロボの頭部から小さい砲口が出現した途端、何か嫌な予感をジェノスは感じ取り市民に警告する。
「・・・全員離れるんだ!早く!!」
それと同時に、紫に輝くレーザー光線が射出された。
━━━━━━━━━━━━━━━━
その頃、キング宅では・・・。
「キングさん。この空のDVDのパッケージって捨てて良い奴ですか?」
「えっと、限定版の奴だから取っといて欲しいんだけど・・・。」
「分かりました。本棚に直しておきますね。」
「え、うん・・・。なんか、ありがとね。」
ホタルが散らかった部屋を掃除し・・・。
「おぉ・・・おいおいキング。お前、ゲーム滅茶苦茶上手いな。」
「ま・・・、一応・・・。アクションゲームなら、昔から幾つかの大会で優勝してるけど。(挨拶がてら昼飯作ってくれたり、掃除してくれてる弟の方は兎も角として、兄の方は何で来たんだよ・・・。早く帰ってくれ。)」
キングとサイタマは、ホタルが作った昼飯を食べ終えてゲームをしていた。そして、そんなキングの言葉にサイタマは感心する。
「優勝って・・・凄いなお前。現実でも強いのに、ゲームの中でも一等賞かよ。・・・で、何でさっき逃げたんだ?今ジェノスが、代わりに戦ってんだけど。」
そんなサイタマの質問に、キングはジュースを吹き出す。
「ぼふっ!!」
「キングさん!?大丈夫ですか!?」
そう言いながら、ホタルは床を掃除する。そんな中、サイタマは質問し続ける。
「お前、滅茶苦茶強いんだろ?S級ヒーローなんだろ?何で、あのロボット怪人から逃げたんだ?それだけ聞きたくて、付いてきちゃったけど・・・。・・・お前ゲーム始めてるし、怪人とかに興味無いのか?何を考えてんだ?教えてくれ。頼む。教えてくれ。」
そう矢継ぎ早に聞くサイタマに、キングは焦り始める。
「・・・・・・!!」
「お兄ちゃん。矢継ぎ早に聞かないの・・・。キングさんも焦っちゃってるよ?」
矢継ぎ早に質問するサイタマを、ホタルが優しく諫めたとき・・・。
ウゥゥゥゥと、災害警報が鳴り始めた。
「警報?」
そうホタルが呟くと、アナウンス内容が流れ始める。
『緊急避難警報!緊急避難警報!M市上空に巨大怪鳥出現!!建物から絶対に出ない様に!!災害レベル鬼!災害レベル鬼!!』
その内容に、サイタマは立ち上がる。
「また警報・・・最近やたらと多いな。ホタルは行くか?」
「ごめん、僕は御掃除が終わってから行くよ。」
「そうか、キング。お前は出ないのか?」
サイタマがそう質問するが、キングは黙ったままだった。
「・・・・・・。」
そんなキングを見て、サイタマは窓から出ようとする。
「そうか、また来・・・。」
その時・・・。
「あ、来た。」
ホタルの一言と共にカラス型の怪人がズドンと、マンションに突っ込んできたのだ。
「驚いた。災害の方から、アンタの所にやって来たぜ。」
「やっぱり、王者の風格って奴に引き寄せられるのかな?・・・僕も戦いたいけど、床拭きで忙しいからお兄ちゃんかキングさんのどっちかお願いね。」
そう言う兄弟に、キングは更に焦り始める
(そうなんだ・・・。俺は昔から、運が悪すぎるんだ。だが最近は、異様に運が悪い!!嘘ついてた罰が当たったとでもいうのか!?というか、嘘だろ!?いくら俺が人類最強とか伝わってるとはいえ、怪人よりも家事優先って・・・!!)
「自分の家にまで押し寄せられたら、戦うしかねぇだろ。」
そう言いながら、片手で怪鳥を支えるサイタマに・・・
(勘弁してくれ・・・神よ。)
キングはそう、心の中で嘆く。
最強の男に、人生最大の危機が迫っていた。
「キングさんの戦いがようやく見れるね♪」