最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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「バッド君と、裸の付き合いだよ。(前半、バット君視点です。少し、話の都合上金属バット君と絡ませたかったので、挿入投稿します。ごめんね。)」


四十撃目:弟とヤンキー

その日、俺は全力ダッシュをしていた。何故かって?何故なら今日は、俺の妹のピアノの発表会だからだ。しかし、最悪な事にヒーロー協会から要請を食らっちまった。クソが!!幹部連中の奴、今度会ったらしばき倒してやろうか!!

 

 

ゼンコの発表の時間まで、あと3時間程。(ようや)く怪人を見つけたは良いものの・・・。

 

 

「クソがぁ!!幾らなんでも多すぎんだろ!!」

 

 

目の前の巨大な怪人は、体を変形させながら分裂するタイプ・・・つまりは俺みたいな殴るしか出来ねぇタイプとは、相性最悪って訳だ!!

 

 

「ぎゃぁぁぁ!!」

 

 

怪人も怪人で悲鳴を上げてはいるが・・・くっそ!こんなのに時間取られてたら、またゼンコに泣かれる!!それだけは避けねぇといけねぇってのに!!

 

 

「ぜぇぜぇ!!くっそ、いい加減死んどけよてめぇら!!何体いんだよ!暇人かコラァ!!」

 

 

ぶっちゃけ体力も底が見えようとしてるし、ゼンコへの言い訳を考えようとしたその時、光明が現れた。

 

 

「バッド君!!」

 

 

上からそんな声が降って来ると同時、無数の槍が怪人目掛けて降って来たんだ。その声の正体は・・・。

 

 

「ホタルさん!?」

 

 

最近S級に成ったとはいえ、実力に関しては戦慄のタツマキと同格と言ってもおかしくない強さを持つ男の人が空に浮かんでたんだ。

 

 

「協会から要請を受けて飛んで来たんだけど・・・あぁ、もう凄い怪我!取り敢えず下がってて!一気に片付けるから!!建御雷神!!」

 

 

ホタルさんがそう唱えると晴天の青空から一気に雷雲が生まれて、その怪人を焦がしちまったんだ!!

 

 

「ぐぉぉぉぉ!!」

 

 

そう断末魔を上げる怪人に、ホタルさんは黙祷を捧げると地上に降り立った。

 

 

「来世では、人の身に生まれますように・・・。」

 

 

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黙祷を捧げ終わると、ホタルさんは俺に駆け寄って来た。

 

 

「バッド君、大丈夫だった?」

 

 

「う、うす。あざました。」

 

 

と、礼を言ったは良いものの、ぶっちゃけ血だらけだし疲労困憊(ひろうこんぱい)だし大丈夫じゃねぇ。そんな俺の様子に気付いたのか、ホタルさんは心配そうな視線を向けて来る。

 

 

「さっき言った手前あれだけど、どう見ても大丈夫じゃないよね。それに、よくその怪我で戦えたよね・・・。」

 

 

「いや、何て言うか怪我を負えば負う程強く成る体質なんで・・・怪我も気合で直りますし、そんな心配する事じゃぁ・・・。」

 

 

そう言い訳をする俺の言葉を遮る様に、ホタルさんは少し怒った様な顔に成る。しかし、その様子はプンプンと擬音が聞こえてきそうなほど、迫力が無いのだが・・・

 

 

「バッド君!やせ我慢はめっ!だよ!」

 

 

「う、うす・・・。」

 

 

この人と初めて会ったのは、S級集会・・・宇宙人共が襲来した時だ。

 

 

最初の印象は、俺より年上の癖になよなよしてる人だなとか思ってたが、再生能力のある宇宙人に梃子摺(てこず)ってたときに現れて、弱点をよく分かんねぇ力で発見してくれて負担を減らしてくれたすげぇ人って今は思ってる。

 

 

「最近、怪人発生率多いよね~。」

 

 

俺の怪我を治し、そうボヤくホタルさんに同意する。

 

 

「そっすね。何か人間怪人とかいう奴も暴れてるらしいですし。」

 

 

その言葉に、ホタルさんも神妙そうな顔に成る。

 

 

「・・・そうだね。それにしても、返り血でベタベタになったよ~。うぅ~。」

 

 

そう言って、可愛らしい顔を(しか)めるホタルさん。その時、俺に名案が下りた。

 

 

「あの・・・銭湯にでも行きませんか?あ、いや勿論ホタルさんが嫌じゃ無ければっすけど。」

 

 

俺のそんな言葉に、ホタルさんは目を(しばたた)かせた後。

 

 

「うん、良いよ~。」

 

 

ふんわりした笑みを浮かべて了承したのだった。

 

 

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今、俺が入ってる銭湯は、子供の頃から通ってる所だ。因みにホタルさんに銭湯に入った事が有るかと聞いたところ、あまり無いと言っていた。俺はガキの頃から、親父と一緒に行ってたもんなんだけどな。

 

 

「あ゛ー!沁みる~!!」

 

 

幸いな事に、この時間帯はガラガラに空いている。最早、経営不振じゃねぇかって位に。そんな事を考えていると・・・。

 

 

「バッド君、おまたせ~。バッド君って、髪を下ろすと印象がガラッと変わるね~。」

 

 

声に振り向くとそこには・・・。何故か下半身だけじゃなく、上半身までタオルで覆っていたホタルさんが居た。

 

 

「ホタルさん・・・タオルで上まで隠す派なんすか?」

 

 

俺がそんな質問を投げかけると、ホタルさんは顔を赤らめつつ少し困った顔で・・・。

 

 

「う、う~ん。そ、その・・・実は小っちゃい頃、御銭湯に行ったときに・・・その、僕って自分で言うのも何だけど、女の子みたいな顔だから・・・え、エッチな目で見られる事が多くて・・・か、体を触られたりとかもあったし・・・。」

 

 

重い。たかが銭湯の話なのに、話が重すぎる。

 

 

「でも、その時はお兄ちゃんが守ってくれたけど・・・。」

 

 

その言葉に、何故かS級集会に来ていたB級のハゲのおっさんを思い出す。

 

 

「兄って・・・。あの・・・最近ヒーローネームが公開された、ハゲマントですか?」

 

 

確か、タツマキとかいうチビがS級に匹敵するとかぼやいてた人だよな・・・。

 

 

「うん。けど、本人の前では頭の事は言わないであげてね。気にしてるから。」

 

 

「っす。・・・実は俺にも妹が居るんすよね。」

 

 

その言葉に、ホタルさんは目を瞬かせる。

 

 

「あ、そうなの?」

 

 

「ゼンコっつーんですけど、可愛い妹でしてね。今日はピアノの発表会が有るんですよ。あと・・・1時間程ですね。会場が開くまで。」

 

 

「妹さんとは仲良いの?」

 

 

不意に聞いてきたその質問に、少し自信を無くしてしまう。ゼンコとの約束を、ヒーロー活動が原因で反故(ほご)にしてきた前科があるからだ。

 

 

「・・・どうなんでしょうか。やっぱりヒーロー協会からの呼出しとかで、約束を破いたりとかありますし・・・。はぁ~、兄貴失格ですよね・・・。」

 

 

そう項垂れる俺の頭を撫でながら、ホタルさんは言う。

 

 

「そっか・・・。じゃあ、今日は絶対に行ってあげなきゃね。」

 

 

「うっす!」

 

 

「じゃあ、そろそろ出よっか。コーヒー牛乳奢ってあげる。」

 

 

「あざっす!!」

 

 

そうして俺とホタルさんは、銭湯から上がったのだった。

 

 

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そうして、ホタルさんに奢られたコーヒー牛乳のパックを飲みながら、俺達は外に出た。

 

 

「良い御湯だったね~。」

 

 

「風呂上がりのコーヒー牛乳も最高ですね!!なんであんなに美味いんすかね?」

 

 

俺のその何気ない質問にも、ホタルさんはしっかり答えてくれる。

 

 

「ん~、何でだろうね?でも、入浴中に失われたビタミンとかミネラルを牛乳が補ってくれるって聞いた事あるよ。細胞レベルで体が欲してるんじゃないかな?」

 

 

「へ~、博識っすね。・・・お、あそこの会場っす。」

 

 

そう話していると、ゼンコの発表会場が見えてくる。その規模の大きさに、ホタルさんは感嘆する。

 

 

「わ~、おっきな会場。でも、僕も入って良いのかな?」

 

 

「入場券が必要な訳じゃ無いですし、良いと思うっすよ?」

 

 

そう言って入ろうとした瞬間・・・。ピロロロロと、協会のアホ共から連絡が入りやがった。

 

 

「げっ!!レベル鬼が二体!?冗談だろ!?もう始まっちまうのに・・・。ホタルさん、申し訳ないっすけど先に入っといて貰えますか?二対(まと)めてぶっ潰してから行きますんで!」

 

 

俺がそう言って、携帯端末から顔を上げると・・・。ペチッと額に小さな衝撃が走った。一瞬呆気に取られたが、その正体はホタルさんが俺の額に軽いしっぺをした衝撃だった。

 

 

「こら、バッド君。妹さんの約束をまた反故(ほご)にするつもり?」

 

 

「いや・・・けど・・・。」

 

 

そう、モゴモゴ言う俺に笑いかけながら、ホタルさんは俺の任務を引き受けてくれる。

 

 

「鬼の対処は僕に任せてよ。バッド君は、ゼンコちゃんの発表を見に行ってあげて。ね?」

 

 

まるで幼子に語り掛けるようなその眼に・・・。

 

 

「あざっす!」

 

 

俺は壊れたブリキの人形の様に、礼を言うしかなかった。

 

 

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結果から言うと、ゼンコの発表は最高だった。ガチ泣きしすぎて周囲からは不審者を見るような目で見られたが、そんなの関係ねぇ。

 

 

「ゼンコォォォ!!良かったぞ!準優勝したんだってな!!」

 

 

そんな風に号泣する俺を、ゼンコは呆れた目で見つめて来る。

 

 

「お兄ちゃん、泣きすぎだから。・・・というか、発表会が始まる前に怪人警報が鳴ってたけど、お兄ちゃん行かなかったの?」

 

 

「え?あぁ、その事なんだけどな・・・。」

 

 

俺が、さっきの事を話そうとしたら話題に上がろうとした張本人が現れた。これが本当の、噂をすれば影が差すって奴か?

 

 

「バッド君。無事にゼンコちゃんの発表見れた?」

 

 

「ホタルさん!無事にゼンコの発表見れましたよ!!」

 

 

そう言って頭を下げる俺に、ホタルさんは笑いかけてくれる。

 

 

「そっかそっか。」

 

 

そう言って、穏やかな顔で相槌(あいづち)を打つホタルさんは、何と言うか男の筈なのに母親の様にも見える。本当に不思議な人だ。と、ここで・・・。

 

 

「あれ?ホタルさん?」

 

 

ゼンコが、ホタルさんの名前を呼んだのだ。そうすると、ホタルさんもゼンコに笑いかける。

 

 

「ゼンコちゃん、こんにちは~。」

 

 

「え?ぜ、ゼンコ。お前、ホタルさんと知り合いなのか?」

 

 

俺がそう聞くと、ゼンコは出会った経緯を話してくれる。

 

 

「うん。この前、学校に怪人が現れたときにやっつけてくれて・・・その時にS級だって知ったから、軽い挨拶をした感じかな。」

 

 

マジかよ!お兄ちゃん聞いてねぇぞ!?

 

 

「あはは・・・。じゃあ、そろそろ御買い物に行かなきゃだから、またね二人共。」

 

 

そう言うと、ホタルさんは翼を広げ去っていく。そんな、ホタルさんの姿が見えなくなるまで、俺は頭を下げ続けた。

 

 

「うっす!あざっした!!」

 

 

多分俺は、今日も明日もこの人に足を向けて寝る事は出来ないんだろうな・・・。




「バッド君って、妹さんいたんだ。」
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