最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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「無免さんのお見舞いへGo~!」


四十三撃目:弟と力と技

良く晴れた午後の日、最強兄弟は無免ライダーのお見舞いに来ていた。

 

 

「無免さん。怪我の具合は大丈夫ですか?」

 

 

そう聞くホタルに、無免ライダーは笑顔を向ける。

 

 

「あぁ、大丈夫だよ。君達がわざわざお見舞い来てくれるなんて嬉しいよ。サイタマ君、ホタル君。」

 

 

「おぅ、バナナここに置いていいか。」

 

 

そう言うとサイタマは、ベッドの横にバナナを置き・・・モグモグ食べ始めた。

 

 

「君が食べるのか・・・・。」

 

 

無免が呆れていると、ホタルは謝りながら見舞いの品を渡す。

 

 

「お兄ちゃんが食べたら駄目でしょ!すみません、無免さん。取り敢えず、夜は冷えるでしょうからブランケット買ってきました。」

 

 

「ありがとう。やっぱり毛布だけじゃ冷える事もあるからね。有難く受け取っておくよ。」

 

 

そんな二人の会話に、サイタマは割り込む。

 

 

「ヒーロー協会の新聞にでかでかと載ってたから。たった一人の怪人に数十人のヒーローがやられたって。まぁ、そいつの正体は人間らしいけどな。」

 

 

「サイタマ君の言う通り、彼は人間だったよ。・・・それより、何で彼が人間だって知ってるの?協会は彼を、怪人として指定してる筈だけど?」

 

 

無免ライダーの疑問に、サイタマは頭を掻きながら答える。

 

 

「あ~。もしかしたらの話なんだけどな、そいつはホタルの元後輩かもしれねぇんだよ・・・小学校時代の・・・。」

 

 

「えぇ!?ごほっ!!」

 

 

無免ライダーは驚きの声を上げるが、喉を怪我しているのか咳き込む。そんな無免ライダーを心配して、ホタルは能力で喉の痛みを和らげる。

 

 

「無免さん!喉を怪我してるのに、大声出したら駄目ですよ・・・。」

 

 

「あ、あぁ・・・ありがとう。」

 

 

無免ライダーが礼を言うと、その隣から・・・。

 

 

「それは本当か!?」

 

 

何者かが、声を掛けてきた。

 

 

(あれ?この声って・・・。)

 

 

ホタルが無免ライダーの隣のカーテンを引くと・・・そこに居たのは、タンクトップマスターだった。

 

 

「タンクトップマスターさん!無事だったんですね!」

 

 

「あぁ・・・何とかな。」

 

 

しかし、ホタルとタンクトップマスターが会釈しているその横では、サイタマが無免ライダーに質問していた。

 

 

「あの人・・・何か急に会話に入って来たんだけど、誰か知ってる?」

 

 

「S級ヒーローの、タンクトップマスターさんだよ。」

 

 

「ああ~、そういや新聞に載ってた!!一番ボコボコにされた人だって!」

 

 

そう悪気無い顔で言うサイタマに、ホタルは注意する。

 

 

「せめて、一番食い下がったって言ってあげようよ・・・。すみません、本当に・・・お兄ちゃんが・・・。」

 

 

「いや君が謝る事じゃない・・・。しかし、情けない話だ。この俺としたことが・・・まさか、あんな若造に不覚を取ろうとは・・・まったく、武術とは厄介な物だ・・・。」

 

 

そう言って頭を抱えるタンクトップマスターに、ホタルは質問を投げかける。

 

 

「武術・・・?流水岩砕拳の事ですか?」

 

 

「あぁ・・・こんな事に成るなら、シルバーファングから対処法でも聞いておけばよかった・・・。これまで、どんな怪人が相手であろうと殆ど一撃で倒してきた俺が・・・。」

 

 

そんな時、サイタマがタンクトップマスターに声をかける。

 

 

「おい。」

 

 

「ん?」

 

 

そう言って、タンクトップマスターがサイタマの方を向くと、サイタマはタンクトップマスターにバナナを渡す。

 

 

「バナナやる。」

 

 

「ん?あぁ、ありがとう。」

 

 

「で・・・その話。詳しく聞かせてくれ。」

 

 

そう言ってニヤリと笑うサイタマに、タンクトップマスターは詳しく話し始める。

 

 

「分かった・・・。全ての攻撃が全て(かわ)され()なされ、流される。どんな強力な攻撃でも・・・、まず当たらなければ意味が無いだろう?」

 

 

「そりゃそうだ。」

 

 

「更には、こちらの動きを読んだカウンターや投げ技。相手のパワーを利用する技術で倍返しされる。関節や急所を狙った突きも厄介だった。やられると、身体機能を著しく損なう。従来の怪人の戦闘方法は、その身体性能に任せて、力一杯暴れる者が殆どだったが、奴は違った。奴は人間を壊す専門技術を持っている。すなわち、ヒーローを倒す方法を知っている!」

 

 

その言葉に、サイタマはニヤリと笑う。そんなサイタマの顔に気付かず、タンクトップマスターは懸念する。

 

 

「シルバーファングが奴を倒せるか、俺には分からないが・・・。誰かが止めなければ、被害は拡大する一方だ。怪人を名乗る人間による、ヒーロー狩り。これは、社会全体の治安を揺るがす大問題だ。このまま野放しには出来ん。俺もすぐにでも復帰するつもりだ。サイタマ・・・だったか。一部のS級の間で噂に成っているとはいえ、君も気を付けた方が良い。」

 

 

その言葉に、サイタマとホタルは反応する。

 

 

「噂?」

 

 

「お兄ちゃんが・・・ですか?」

 

 

そう聞くホタルに、タンクトップマスターは頷く。

 

 

「あぁ、なんでも戦闘能力のみで言えば、S級にも匹敵する力かもしれないと、あの唯我独尊のタツマキもこぼしていたからな。」

 

 

「そ、そうですか・・・。」

 

 

「それから、ホタル君。一つ聞きたい事があるのだが・・・。」

 

 

そう言うタンクトップマスターに、ホタルは首を傾げる。

 

 

「はい?」

 

 

「今回、シルバーファングは元師匠であるという立場から、ガロウ討伐に名乗り出た。ならば・・・元先輩である、君はどう動く?」

 

 

その質問に(しばら)く考えた後、ホタルは慎重に言葉を紡ぎ出す。

 

 

「・・・僕は。・・・このような回答をすれば、甘いとかヒーロー失格とも言われるかもしれません。でも・・・仮に僕の知ってるガロウ君だったとしても、僕にとっては可愛い後輩です。勿論話し合いで解決するとは、毛頭思いません。ヒーローと怪人と言う立場上、一度は暴力沙汰に成るかもしれません。・・・それでも、僕はあの子を一人ぼっちにさせたくない。多分あの子は、途方もない暗闇を彷徨(さまよ)ってる状態なんだと思います。気障(きざ)な言い方かもしれませんが、僕はあの子の彷徨う暗闇を照らす、一筋の光に成ってあげたいんです。誰にも殺させないし、誰も殺させない。絶対に。」

 

 

そう言って決意の籠った目をするホタルに、タンクトップマスターは眩しさを覚える。

 

 

「・・・そうか。君は本当に優しいんだな。(名前が人を表すとは言うが、この子はその名の通り、暗闇を彷徨う者の道標(みちしるべ)を示す、蛍のような子だな・・・。)」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━

次に兄弟が訪れた場所は、チャランコの病室である。

 

 

「よおー、爺さんとこのちゃんぽんだっけ?見舞いに来たぞー、大丈夫か?」

 

 

入室早々に、自分の名前を間違えるサイタマにチャランコは激昂(げっこう)する。

 

 

「チャランコだ!元気に見えるか!?」

 

 

そんな様子に、ホタルは溜息をつく。

 

 

「お兄ちゃん、いい加減覚えてあげようよ・・・。」

 

 

「ホタルさんは兎も角、何であんたが俺の見舞いなんか・・・気持ち悪いな・・・。」

 

 

「本当にすみません・・・。さっき、病院で借りたミキサーでバナナミルク作ってきました。飲めますか?」

 

 

そう言ってホタルが差し出してきたバナナスムージーを、チャランコはギプスで固定されていない右手で受け取る。

 

 

「え?あ、あぁ。右手は動かせるんで・・・有り難う御座います。」

 

 

そう言いながらスムージーを飲むチャランコに、サイタマは気の毒そうな顔を向ける。

 

 

「ヒーロー狩りの巻き添え食らったんだってな・・・気の毒に。」

 

 

「いや・・・一応、正面から挑んだつもりだったんだけど。」

 

 

「ところで話は変わるんだけど。」

 

 

そう言って、スンッとした表情に早変わりするサイタマに、チャランコとホタルは突っ込みを入れる。

 

 

「「もう話変わるの!?」」

 

 

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そうしてサイタマがしてきた相談内容に、チャランコは眉を(ひそ)める

 

 

「強い武術家と、試合がしたい?」

 

 

「うん。」

 

 

そんなサイタマに、チャランコは呆れた目を向ける。

 

 

「アンタ・・・さんざんバング先生の勧誘をシカトしといて、今更何を・・・。」

 

 

「もしかして、ガロウ君と戦う為に?」

 

 

そう聞くホタルに、サイタマは頷く。

 

 

「まぁ、それもあるけど・・・ちょっと興味が湧いたんだよ。何か伝手(ツテ)とか無い?」

 

 

「だったら・・・バング先生だって最高峰なんだから、胸を借りればいいだろ。あんたの事気に入ってるみたいだし。」

 

 

そう言うチャランコに、バナナを食べながらサイタマはナチュラルに失礼発言をする。

 

 

「お前なぁ・・・老人に無理させるわけにはいかないだろ。」

 

 

「ナチュラルに、失礼過ぎるよ・・・。」

 

 

そう言って呆れた目を向けるホタルに頷きながら、チャランコは武術の過酷さを語る。

 

 

「ホタルさんの言う通りだ。大体、ド素人が武術家といきなり試合だなんて、非常識なんだよ。まずは基本の型を死ぬほど練習して・・・。いや、その前に体力作りだ。何百段もある石階段を往復・・・何なら道場の雑巾掛けから・・・。」

 

 

「あぁ・・・お前も、まだ素人の白帯だったな・・・。」

 

 

失礼発言を重ね続けるサイタマに、ホタルは少し強めに注意する。

 

 

「お兄ちゃん。一回、御口チャックしようか。」

 

 

「というか、ホントに見舞いかこれ!?」

 

 

そう叫ぶチャランコに、ホタルは申し訳なさそうな顔に成る。

 

 

「本当にすみません・・・。」

 

 

「まぁ、伝手が無いんじゃ諦めるか・・・。」

 

 

そう言って病室から去ろうとするサイタマだったが・・・、それをチャランコが引き留める。

 

 

「ちょっと待った!!そういえば・・・流水岩砕拳の一番弟子になって、浮かれてノリで申し込んだ異種格闘技大会があった。たしか、財布の中にチケットが・・・。ほら。」

 

 

そう言って差し出されたチケットは・・・。

 

 

「シワシワじゃねーか。」

 

 

「出場選手として登録したんだけど、辞退するつもりだ。でも、入場チケットには成るから・・・試合を観戦して、参考にしてみるといい。いろんな流派の技が見られると思うぞ。」

 

 

そう言うチャランコに、サイタマは礼を言いつつジーっとチケットを見つめる。

 

 

「ありがとう・・・。チャランコ・・・棄権するのか」

 

 

「まぁ、この怪我だからな・・・。(万全でも、多分一回戦負けだろうけど・・・。)」

 

 

「・・・賞金300万って書いてある。」

 

 

そう呟くサイタマに、ホタルは一抹(いちまつ)の嫌な予感を覚える。

 

 

(お兄ちゃん・・・?)

 

 

「まぁ、それなりの規模の大会だからな。」

 

 

そう言うチャランコの説明を聞いているのかいないのか、サイタマは呟き続ける。

 

 

「優勝で日給300万・・・。」

 

 

「一応言っとくと、それ俺の名義で登録してるからな。棄権するしかない。やらないと思うけど、替え玉出場なんて出来ないからな。・・・聞いてる?」

 

 

そんなチャランコに反応しない兄に、ホタルは嫌な予感をさらに(つの)らせる。

 

 

(何考えてるの?お兄ちゃん・・・。)




「・・・お兄ちゃん。まさか、替え玉出場する気じゃないだろうね・・・。」
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