最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
暫く走っていると、ホタルの強化された視力がスタジアムで怪人化したバクザンに襲われている、スイリューの姿を捉えた。
「お兄ちゃん!スイリューさん発見!!四本腕の怪人さんに襲われてる!」
「じゃあ四本腕の怪人は俺がぶっ飛ばすから、スイリューと他の出場者の保護を頼むわ。」
「任せて!」
そうして、ホタルはスイリューの方に。サイタマは怪人化したバクザンの方に向かったのだった。
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およそ1~2分後・・・そこには腹部に大穴が開いた、バクザンが突っ立っていた。そんな惨状に、スイリューはポカーンと口を開ける。
「・・・・・・。」
そんなスイリューを膝枕しながら、ホタルは乾いた笑いを浮かべる。
「うん・・・。いつも通りに一撃で終わっちゃったね。」
そんなホタルに、サイタマはぼやく。
「なんか、強そうだとは思ったんだけどな~。」
「武術の事・・・何か分かった?」
「うん・・・なんかカッコいいものだな。いや~、それにしても災難だったな・・・お前。
「あ・・・あぁ。助けてくれてありが・・・とう。君達は何者なんだ?ヒ・・・ヒーロー・・・なのか?」
そう聞いてくるスイリューに、サイタマは己の素性を明かす。
「俺はサイタマ。そこの弟と一緒にヒーローやってる者だよ。・・・一応プロの。」
「サイタマ・・・じゃあ、素性を偽って大会に参加していたのか?」
スイリューのその言葉に、サイタマは明後日の方向を向く。そんなサイタマに、ホタルは呆れた視線を向ける。
(時すでに遅しだよ・・・。)
「何の為に?わざわざカツラまで被ってまで・・・。ヒーロー協会の秘密の作戦なのか?」
スイリューのその質問に、サイタマは頭を振る。
「いや・・・武術を体験したくて・・・。最近"ヒーロー狩り"が暴れてるらしくてさ、そいつが武術の達人だって言うから、何となく興味が湧いてさー。」
「そ、そうか・・・。それでその対策を練る為に・・・武術家との実戦経験が必要だったのか・・・。」
「いや・・・必要って程でも無いんだけど。たまたまチケットが手に入ったから・・・もっと言えばまぁ・・・暇だったから。」
「決め顔で言う事じゃ無いよ・・・。」
そう突っ込みを入れるホタルの膝の上で、スイリューはホタルとサイタマに感謝を述べる。
「おかげで命拾いしたよ。君達が来たタイミングも早すぎなくてよかった。」
その言葉に、最強兄弟は首を傾げる。
「・・・?どういう事ですか?」
「もうちょっと早く来た方が良かっただろ?」
「いやいや・・・、"ゴウケツ"が去った後で良かった。やばい怪人がもう一匹いたんだよ。上手くすれ違ったから良かったものの・・・危うく、サイタマ君とホタル君がやられるところだった・・・。この俺がまるで、赤子同然の扱いだった・・・あれには参ったね・・・あの強さは反則だよ。・・・だから、暫くは外に出ない方が良い。他にも恐ろしい怪人がうようよいるって話だ。」
「マジか・・・ホタルは如何だったんだ?ゴウケツっぽい怪人は見なかったのか?」
その兄の質問に、ホタルは首を捻る。
「どうだろ・・・基本的に労せずに倒したから・・・あまり分かんない。」
「それに・・・奴は人間を怪人に変身させる方法を見つけたみたいなんだ。これから、ますます凶悪怪人が増えるかもしれない・・・。君が倒したバクザンも、さっきまで人間だった男だ。ほら・・・二試合目で対戦した相手だよ。」
スイリューの言葉に、ホタルは納得が言ったように頷く
「誰かに似てると思ったら、あれってバクザンさんだったんですか・・・。」
「殴った相手の事、一々覚えてねーからなー。」
どこ吹く風の兄弟に、畳みかけるようにスイリューは忠告を重ねる。
「・・・とにかく今は、危ない状況なんだ。他と連絡が取れるまで、単独行動は厳禁だよ。これじゃあ救急車も動けない筈だし、ジッとしといた方が良い。」
そう言うスイリューに、サイタマはゴウケツの向かった方角を聞く。
「そか、遊んでる場合じゃなかったんだな。その怪人は何処行った?」
「え?あっちの方向だよ。スタジアムの壁を突き破ったのも奴だ。」
「あー、あの時のデカい音は、そん時のか。」
「そっか・・・君達兄弟もヒーローなら、いつか闘わなければならない時が来るかもね・・・。全く頭が下がるよ。仮にあれを退治しようとするなら大勢のヒーローを集めて・・・警察と連携して・・・罠を仕掛けて・・・他に何が出来るかな・・・?とにかく可能な限り入念な準備をして挑むべきだな。」
スイリューがそう言い念を押した・・・が・・・。
「そうか。ちょっと行ってくる。ホタルも来るか?」
「うん。もしかしたら、道中避難してる人もいるかもしれないし・・・。此処は一応、鉄傀儡を配置して守っておくよ。」
兄弟が選択したのは、即日退治である。あくまでもスイリューが提案した案は普通のヒーロー達に対する忠告である。・・・故にぶっ壊れスペックの兄弟に忠告した所で無意味でしかないのだ。そして当然その答えに対し待ったをかける!!
「ちょちょちょちょ・・・ちょっと待ったぁぁぁ!!」
「スイリューさん!内臓が傷ついてるかもしれないのに大声出したら駄目ですよ!!あくまでさっき施したのは応急処置なんです!!悪化しますよ!!」
「今は、俺の傷の事はどうでもいい!!と言うより聞いてたよね!?忠告しただろ!?」
そう切迫感のある声で言うスイリューに、サイタマは相変わらず間の抜けた声で聞き返す。
「聞いてたけど・・・え・・・何?」
「君達はまだ理解してない!まだ、怪人協会って言うヤバすぎる組織が暴れてる最中なんだ!!時間が経てば、事態は一旦落ち着くって言ってたし・・・待とう!自分達より強い怪人に囲まれたらどうする気だ!!それにゴウケツは、元・一流の武術家だ!俺より技のキレもスピードもあるし・・・パワーだって尋常じゃ無いんだ・・・!!・・・殺され‥むっ!!」
しかしその時・・・ホタルがしゃがみ込み、人差し指をスイリューの口元に当てて言葉を遮った。
「スイリューさん、御心遣い有り難う御座います。確かにそのゴウケツと言う怪人は、名前の指すように強いのでしょう。もしかしたら僕達兄弟でも殺されるかもしれません。だとしても・・・僕達はヒーローだから、対峙する相手が強いから、怖いから等という理由で逃げる訳にはいかないんです。」
ホタルがそう諭すが・・・
「駄目だ!恩人を見殺しにするわけには出来ない!!」
スイリューは、駄々っ子の様に聞く耳を持たない・・・すると・・・。
「大丈夫です。だって、お兄ちゃんは最強なので。」
ホタルは、安心させる様にスイリューに笑いかける。
「・・・・・・!」
その言葉に仰天したような顔を向けるスイリューに笑いかけると、ホタルはサイタマと共にゴウケツのいる方に向かって行った。そうして独り残されたスイリューは嘆きの声を上げる。
「あ・・・あぁあ・・・!ああ~~!!止められなかった・・・クソ・・・畜生!彼等もやられてしまう・・・!!せっかくヒーローの・・・、本物のヒーローの姿を見たって言うのに・・・彼らは此処で死ぬべきでは無いのに・・・これから先、もっと多くの人を・・・救うはずだったんだ・・・ううっ!」
その時ドォォォンと空を裂くような轟音が響いた!
(この音・・・始まった!!)
次の瞬間最強兄弟が向かった先の上空に雷雲が鳴り響き、轟音と共に光の筋が舞い降りた!そして・・・ドッゴォォォォンという音と共に静寂が訪れた。
(あ、終わった。)
次の瞬間、スイリューの目の前に落っこちたものは丸焦げに成ったゴウケツの首であった!それと同時に背後から声が掛かる。その声の主は、もちろん最強兄弟である。
「そうそう、言い忘れてた事があったんだけど・・・。」
「お兄ちゃんが素性を誤魔化して大会に出場した事、内緒にしてて下さいね?」
そんな脳天気な事を忠告する兄弟に、スイリューは吹き出した。
「ぷっ・・・イテテ・・・ゴウケツは手強かったか?」
「うーん、他との違いが分からんかった。」
「いつも通り一発だったからね~。」
「そういえば、俺も聞き忘れた事があったんだ。」
スイリューの言葉に、ホタルは首を傾げる。
「何ですか?」
「もう、引退するしかないと思ったけど・・・こんな大怪我しちゃったけど。・・・怖さを克服するのにどれくらいかかるか分からないけど・・・成りたい目標ができたんだ。ヒーローに成れるかな、俺も。」
しかし、そんな言葉をサイタマはバッサリ叩き切る。
「知らん。」
そんなサイタマにスイリューはガッカリした様な顔をするが、ホタルがフォローを入れる。
「スイリューさん、僕達はスイリューさんがヒーローに成れるかは知りえません。・・・でも、この業界に入ってから色々な人を見てきました。その中には元々は怪人だったけど、改心して女神様になった人もいるんです。だからきっと、諦めなければ・・・人を思いやれる優しい心があれば、最強のヒーローに誰だってなれるはずです!」
そう言って拳を握るホタルに、スイリューは笑顔を見せる。
「最強のヒーローか、良いねそれ。もう一つ聞いても良いかな2人とも。」
「はい?」
「弟子にしてくれないか?」
凛々しい顔で頼んできたその願いを最強兄弟は・・・
「絶対に断る。」
「まずは怪我を治すのが先決ですよ。」
爽やかな笑顔で断ったのだった。
「ジェノスくんで手一杯だし、そもそも教えるのに向いてないんだよね〜。」