最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
スイリューや、他の怪我をした出場者を病院に送り届けて早数分。最強兄弟は怪人の残党が居ないか捜し回っていた。
「お兄ちゃん。さっきのC級ヒーローさんは、鉄傀儡に運ばせて病院まで連れて行っといたよ。」
「おう・・・あんがとな。」
ホタルのその報告に少し浮かない顔で答えるサイタマに、ホタルはサイタマの顔を覗き込みつつ疑問を投げかける。
「お兄ちゃん?どうしたの?元気ないよ?」
「いや・・・ちょっと考え事してて。」
「考え事?何でも相談に乗るよ?」
「・・・実はな。」
そう言ってサイタマが話そうとしたその時、兄弟の横に一台の自転車が停まり声を掛けてきた。その人物は・・・
「あれ?サイタマ氏とホタル氏?」
人類最強の男、キングである。そんなキングの登場に、怪人警報の件もあってかホタルは驚いた声を上げる。
「キングさん!?どうしたんですかこんな所で!?」
「いや、ここ俺ん家の近くだし・・・。新刊漫画を買いに来たんだけど・・・さすがに、どのお店も閉まっててね。・・・それにしても、サイタマ氏はどうしたの?暗い顔をして。」
「それが、さっきから暗い顔ばっかりしてて。・・・キングさん、相談に乗ってあげてくれませんか?」
「いや・・・ちょっとな・・・思う所があって。」
サイタマのその言葉に、キングは何かを察したのか話し始める。
「・・・そうか。そんなに気を落とさなくても・・・。まだ若いんだから・・・、諦めるにはまだ早いよ。希望を捨てちゃ駄目だ。」
「キング・・・。」
「まだ、これから生えてくるかもしれないよ・・・。育毛剤だって進化してる筈・・・。」
キングのそのズレた発言に、最強兄弟は突っ込みを入れる。
「キングさん!多分お兄ちゃんは、そういう事で悩んでるんじゃないと思います!!」
「ホタルの言う通り、そんな話じゃねぇから!・・・もっと、なんつーか漠然とした悩みだ。」
サイタマの言葉に、キングは目を丸くする。
「へぇ・・・らしくないね。あの強いサイタマ氏が・・・。」
「俺は、強く成り過ぎたんだ。」
サイタマの言葉に、キングとホタルは首を傾げる。
「え!?それの何がいけないんだい!?」
「そうだよ!ヒーローなんだから、強いに越した事は無いんじゃ・・・。」
キングとホタルがそう言うが・・・
「だからこそだ。強く成り過ぎて・・・誰と戦っても何も感じないし・・・技を見ても何の参考にもならない・・・。他人から吸収できるものが何も残って無いんだ。超能力を応用できるホタルは兎も角、俺はもう・・・これ以上は強く成れないらしい。」
そう呟くサイタマに、キングが疑問を投げ付ける
「そこまで強さを極めたって事は、素晴らしい事なんじゃないの?ヒーローなら尚更強い方が良いでしょ。」
その疑問にサイタマは、溜息を吐く。
「キング・・・ホタル・・・伸びしろが残って無いって事は、自分の成長を楽しむことがもうできないって事なんだ。ホタルだってそうだろ。もしも自分の能力を応用できずに、ただ単に怪人を一撃でやっつけるだけだったらつまんねぇだろ?」
その言葉に、少し
「それは・・・確かに。・・・そう考えたら、僕も人を助けるって言う目標があるから頑張れるけど、その目標が無かったら、マンネリ化しちゃうかも。・・・それに、最近は単純作業に成ってきてるというか・・・。
「キングも想像してみろ。例えばお前に好きなゲームで例えるなら、育てていた主人公のレベルが最大値に成ったら、もうやる事が無くなって退屈だろ?敵に苦戦することだってないし、ライバルに成りえる存在すらいないんだ・・・俺には・・・。幾ら怪人を退治しても、心の中は退屈でしょうがない。」
サイタマのそんな嘆きの言葉にキングが返した言葉は・・・
「いやアイテムを全部集めたり、最速クリア記録に挑戦したり、ほかのプレイヤーと交流したり、やりこみ要素はレベル上げ以外にも見つけられるよ?」
何ともズレた物だった。
「キングさん・・・多分お兄ちゃんが言いたいのはそういう事じゃないと思います・・・。」
「ホタルの言う通りだ。というか、ゲームの話をしてる訳じゃ無くてここは現実だぞ。」
「いや、サイタマ氏がゲームで例えるから・・・。」
キングの言葉に、サイタマは乾いた笑いを上げる。
「フッ・・・まぁキングには分からないか。たまにお前が羨ましいぜ。俺はもう負けて流す悔し涙の味も、接戦の末の勝利の感動も忘れてしまった。人としての感性がどんどん鈍って来て・・・今となっては、何かに喜んだり腹が立つことも無くなってしまった。」
そんなサイタマの言葉に、ホタルは心の中で疑問を感じる。
(ん・・・?腹が立つ事が無くなった?・・・ジェノス君と初めて会った日、物凄い剣幕で蚊を追い回してたような・・・。)
そんなホタルの疑問を他所に、サイタマは話し続ける。
「強すぎる故の喪失感か・・・自分だけ別の世界に居るような感覚・・・。自分で選んだ道である以上、仕方のない事なのかもしれないが・・・ヒーローがこんなに孤独な物だとはな・・・。」
「サイタマ氏、孤独なの?」
「まぁな・・・。」
そんなサイタマに、キングは代替案を提示してみる。
「一つ思ったんだけど、ホタル氏と戦ってみたら?兄弟だし張り合いの勝負が出来るんじゃ・・・。」
しかし、キングのそんな言葉に・・・
「お兄ちゃんを傷付けたくないので絶対嫌です。」
ホタルは、ニッコリとその提案を却下した。
「そ、そっか・・・じゃあ、Z市駅前に、社交ダンス教室あるから行ってみれば?」
そう言うキングに、サイタマは首を傾げる。
「え?何で?」
「孤独だって言うから・・・ヒーロー活動以外で友達作れば?」
「いや・・・そういう事じゃ無いんだよなぁ」
「何で?」
「何でって言われても・・・興味ねーし・・・最近怪人も増えて来て、習い事するほど暇じゃ無いし・・・。」
「じゃあ、落ち着いたら気分転換に旅行にでも行ってみれば?」
「旅行・・・。う~ん、特に行きたい場所も無いしな・・・。」
そう言って顎に手を当て考えるサイタマに、キングは溜息をつく。
「ふ~・・・やれやれ。退屈だと言って何も行動せず、刺激を求める割には挑戦しない・・・。そんな時期が俺にもあったなぁ。」
キングのその言葉に、サイタマは少しイラっとする。
「くっ・・・!」
「いいかい、サイタマ氏。それから、ホタル氏にも一応聞いて欲しいんだけど、人生は当てのない旅だよ・・・。新しい景色を見る為には、自分で道を切り開いていくしかないんだ。」
「お前、旅した事あんのか?」
そう突っ込むサイタマを、ホタルは諫める。
「お兄ちゃん、取り敢えず突っ込まずにお話し聞こう?」
「さっき、ホタル氏もヒーロー活動が単純になって来たって言ってたけど、それは二人が強く成っただけで目的地に辿り着いたと勘違いしてるだけじゃないかな?ヒーローとして道を進むって、そんなに簡単にゴールできる者じゃないと思うんだ。」
「うっ・・・お前だって人に語れるほどヒーローやってないくせに・・・。」
そう言うサイタマの言葉をねじ伏せるように、キングは話を続ける
「戦いの中に充実感を得ようとするのは、ヒーローの本質的に間違っている。人助けや世の役に立つことにこそ、ヒーローの存在意義があるのではないか。その点で言うと、二人は最強のヒーローであっても、最高のヒーローにはまだ成れていない・・・。そう考える事が出来るはずだ。そこに理想を追求する課題、ひいてはヒーローとしての伸びしろが多く残されているのではないだろうか。だとすると、どうだろう。もう自分は成長しきったなどという台詞は、浅はかで
そうキリッとした顔のキングに、最強兄弟は感銘を受けていた。
「キング・・・凄いなお前・・・。」
「そんな事・・・考えた事もありませんでした。」
そう言ってしばらく沈黙が続くが・・・。
「・・・なんか、余計退屈になりそうなんだけど。」
サイタマのその言葉に、キングは提案をする。
「そんなに退屈なら、ウチで格闘ゲームでもしていく?ホタル氏もどう?」
「んー僕は苦手なので、二人の様子を見ておきます。」
「俺も今はとてもそんな気分じゃねぇから辞めとく。そんなので勝っても負けてもなんとも思わねぇし・・・。何やっても虚しいだけだ。」
「いやいや、折角だしやろうよ。」
「いや、遠慮するよ。お前どうせ手加減しないし。」
サイタマのその言葉にキングは挑発的な発言をする。
「たまには負けたいんでしょ?負けさせてあげるよ。」
「はっはっは・・・。挑発したって無駄だぜ。どうせゲームで負けたって、悔しくも無いし腹も立たないんだから・・・俺は感情が薄れてきてるからさ・・・。」
サイタマのその言葉に・・・
「そうか・・・分かったよ。じゃあ、ハンデとして俺は指二本しか使わないからさ。」
更なる挑発をした結果・・・
「言ったな!?今度こそぶっ潰してやる!!」
「いや、普通に怒ってるよ・・・お兄ちゃん。」
キレたサイタマに、ツッコミを入れたホタルであった。
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最強兄弟とキングが歩いている道の先では、血だらけになったガロウが歩いていた。
クソが・・・まさかの返り討ちかよ・・・!
戦う前はイケるかと思ったが・・・見通しが甘かった。だが逃げ切れたのは不幸中の幸いだったぜ。
あの町を出たら番犬マンは追って来なかった・・・自分の縄張りしか守らない奴の特性に救われたな・・・。
たかだか着ぐるみ野郎があんなに強いなんて・・・パワーもスピードも遥かに上回るものだった・・・。それにまだ余力を残していたようだったし、流水岩砕拳も通じなかった・・・。それに相性も悪かった!四足戦闘スタイルの番犬マンには、人間向けに磨いた俺の技が通用しなかった。ありゃ人間とは別の生き物だ!思えば爺からは人外の化け物との闘い方なんて教わっちゃいねえ!俺の武術にはまだまだ改良の余地があるって事か・・・。
勉強に成ったぜ。畜生・・・こっぴどくやられったっていうのに・・・興奮が冷めねぇ!あぁ・・・笑い声まで出てきやがった。楽しくてしょうがねぇ!俺はもっともっと強く成れる!そして、最恐の怪人にだってなれるはずだ!!
その時、俺の目の前に有り得ない光景が目に浮かんだ!なんと、そこには地上最強の男キングが居たからだ!人違いじゃねぇ!アジトで何度も見た顔だった・・・こっちは手負いだが、体は動くし痛みも感じねぇ・・・逆に気持ちが昂って、力が
そうして、俺はキングを狩ろうと驚異の脚力でスタートを切った筈だった!だが、途中で足が止まっちまったんだ・・・。キングと良く分からねぇハゲに挟まれてた男の人・・・
忘れるはずもない・・・
そして、その男の人の声色で俺は確信した。
「うわっ!なんだこいつ!急にこっちに近づいてきたと思ったら、急ブレーキかけやがって!」
「ちょっとお兄ちゃん!初対面の人に毒を吐いちゃ駄目・・・。・・・え?・・・ガロウ・・・君?」
「え?ガロウ?」
「え?マジで!?」
そう言って隣に居るハゲとキングが騒いでいるが、俺の視界にはキングとハゲに挟まれた男の人しか認識出来てねぇ・・・
「ホタ・・・兄・・・なのか?」
目の前に居たのは・・・俺の憧れの
「ガロウ君と無事再開(?)」