最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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「最初ガロウ君視点です。その次の視点が僕。その次が三人称です。」
※今回賛否分かれる終わり方に成ると思います。テストなどで投稿が空いた事を御詫び申し上げます


四十九撃目:後輩と憧れの先輩

目の前に居る人は、出血多量が引き起こした幻覚かと思った。だって有り得ねぇ・・・ホタ兄とこんな所で会うなんて・・・。

 

 

「ガロウ・・・君?な‥んで。血まみれに・・・。」

 

 

間違いない。鈴を転がしたような綺麗な声に、誰もが庇護欲を抱くような可愛らしい顔立ちに少し小さい背。けれども、そんな容姿とは相反するかのような全てを見透かす様な芯の通った紫の瞳。

 

 

「ガロウ君!!どうしたの!?その怪我!全身から血が出ちゃってる!!」

 

 

俺の方に走りかけてきながら発してきた大きな声に俺は我に返り、声を紡ぎ出そうとしたけど声が出ない。だって、そのくらいに衝撃的な出来事だったから。

 

 

「あ・・・え。ホタ・・・兄。」

 

 

「何があったの!?誰かに苛められたの!?今すぐに言って!!あぁ!それよりも病院に行かないと!!」

 

 

ホタ兄がヒーロー活動をしているのは知っていた。しかも、天下のS級ヒーロー様に成って。

 

 

だからアジトにある顔写真を見るたびに、憂鬱になっていた。いずれはぶつかる事に成るんじゃないのか。その時にホタ兄はどんな顔をするんだろうか。怪人に成ろうとしている俺を見て、怒るんじゃないのか?それとも、悲しんでしまうんじゃないのか?

 

 

色々な考えが頭の中を回って、眠れない日々もあった。

 

 

毎朝起きるたび、他のヒーロー達の顔写真を見るたびに高揚していた気分が、ホタ兄の顔写真を見るたびに胸が苦しくなった。教えに背いたから。

 

 

武術を誰かを護る為ではなく、誰かを傷つける為に使ってしまっているという事。ホタ兄が折角俺のヒーローに成ってくれていたのに、俺はその真逆の道を進もうとしている事に。

 

 

呼吸がだんだん浅くなる。

 

 

視界がぼやける。

 

 

汗が止まらない。

 

 

出血のせいじゃない。

 

 

怖いんだ・・・この人(ホタ兄)に失望されるのが。ガキの頃、同級生や糞教師。挙句の果てには糞親共も俺の言い分を聞いてくれなかったにも(かかわ)らず、唯一無二の味方になってくれた、この人に嫌われるのが。

 

 

何秒経ったか分からない。実際には数秒だけしか経っていないのかもしれない。けれども、吹き出した汗が顎から地面に落ちようとしたとき、俺の体は温かいものに包まれた。

 

 

「・・・大丈夫だよガロウ君。ゆっくり息を吸って。ゆっくり・・・ゆっくり。吸って~吐いて~。」

 

 

いつの間にかホタ兄が、自分でも気付かない内に(うずくま)っていた俺を抱きしめつつ、俺の掌よりも小さな掌で俺の背を(さす)りながら耳元で優しく語り掛けてきてくれた。そして、その紫の瞳は・・・ホタ兄の卒業式の日に見たときと変わらず・・・どこまでも優しく・・・泣き出してしまいたくなるくらいの慈しみを含んだ眼差しだった。

 

 

━━━━━━━━━━

今日は大変な一日だったと思う。多分、僕が今まで生きてきた中で一二を争う程の。大袈裟(おおげさ)かもしれないけど、お兄ちゃんの武道大会の観戦途中に急にレーダーに引っかかった、無数の怪人さん達の対処。

 

 

その・・・、今思い出したら物凄いエッチな格好をしていた怪人さんにやられていたフーちゃん先輩の救出。

 

 

そして、途中から来たタツマキさんにフーちゃん先輩との関係性に突っ込まれたり、キングさんに人生相談をしたりしていた。

 

 

そんな一日も、もうそろそろで終わるかと思ってた。でも・・・更なる衝撃的な展開が僕を待ち構えていた。

 

 

キングさんの御家に向かう途中、突然キングさんに明確な敵意を持った男の人が襲い掛かって来た。僕は、キングさんがやられちゃわない様に極限まで動体視力を向上させて対処できるようにしといた・・・筈だった。でも・・・そこに居たのは・・・

 

 

血だらけになっていた。僕の可愛い後輩(ガロウ君)だった。

 

 

その瞬間、いろんな感情が僕の中を駆け巡った。

 

 

人間怪人として多くのヒーローさん達を傷つけてる事に対する困惑。

 

 

僕の教えた事は無意味だったのかという哀しみ。

 

 

恐らくS級の誰かと戦ってできたのであろう傷に対する心配。

 

 

ぐちゃぐちゃの感情に成ってようやく出来たのは、突然(うずくま)ってしまったガロウ君を抱きしめてあげる事だけだった。

 

 

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そうして暫く経つと、ホタルはガロウに声を掛けた。

 

 

「ガロウ君?・・・少しは落ち着いた?」

 

 

「落ち着いた・・・。ホタ兄は・・・大丈夫なのか?血がいっぱい・・・。」

 

 

「え?・・・あぁ、これは怪人さん達の返り血だよ。それに治癒能力がある僕がやられる訳無いでしょ。・・・でも、心配してくれてありがとね。」

 

 

そう言って心配をするガロウに対し、ホタルは苦笑しながら感謝を述べた。・・・が、目が伏せられる。

 

 

「ガロウ君・・・ヒーロー狩りしてるって、本当?」

 

 

「・・・本当。・・・俺の事・・・捕まえんのか?」

 

 

そのガロウの問いに・・・ホタルは首を振る。

 

 

「・・・ううん。捕まえないよ。少なくとも今はね・・・。」

 

 

そう、ホタルは深海王のとき然り現行犯主義者なのである。その言葉に、ガロウは驚いた声を上げる。

 

 

「何でだよ!ホタ兄はヒーローなんだろ!!ヒーロー狩りをしている俺を捕まえないと、大変な事に成るんだぞ!!」

 

 

ガロウのそんな言葉に、ホタルは困ったような笑顔を浮かべる

 

 

「・・・そうだね。確かに本来ならガロウ君の事は捕まえなきゃいけないんだと思う・・・。でもね、少なくとも僕は今のガロウ君を捕まえる気にはなれないよ。・・・僕はこの業界に入ってからいろんな人や、怪人さん達を見てきた。その中には、人間以上に高潔な心を持った怪人さんも居たし、怪人よりも醜悪な考えをしている人達も居た。だから、怪人だから無条件でやっつける・・・。人間だから積極的に守りたい・・・。そんな風に単純に割り切る事が出来ないんだよ。それにね・・・、こんなに悲しそうにしているガロウ君を、捕まえられないよ・・・。」

 

 

ホタルのその言葉に、ガロウの顔が気まずそうに歪められる。

 

 

「ガロウ君、さっき抱きしめてあげたときに怪我を治してあげたんだけど、どうかな?歩ける?」

 

 

「歩・・・ける。」

 

 

「こんな事は、本来ならヒーロー失格な行いなんだけどね・・・。何処かで暫く安静にする事。それから、回復して協会に出頭する気が起こったら出頭する事。いいね。」

 

 

「・・・もし、出頭しなかったら?」

 

 

ガロウのその言葉に・・・ホタルは少し顔を伏せ・・・。

 

 

「その時は残念だけど、ヒーローという立場上絶対にガロウ君を止めて見せる。今回ガロウ君を見逃すのは、あくまでも"小学校の頃の後輩を心配した先輩"としての行動だからね。次に会った時・・・ガロウ君が怪人として名乗り続けるなら・・・"ヒーロー"として全力で止めてあげる。・・・ほら、早く行って。」

 

 

ホタルのその言葉に・・・

 

 

「分かった・・・。・・・ごめん、ホタ兄。

 

 

そう言いつつ、ガロウは去っていったのだった。

 

 

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そうして、ガロウが去った数分後・・・。遠巻きに見ていた、キングとサイタマが駆け寄った。

 

 

「ホタル氏!大丈夫だった!?」

 

 

「はい・・・なんとか。」

 

 

そう言って笑うホタルに、サイタマとキングは呟く。

 

 

「そうか・・・。それにしても、あいつがガロウか・・・。なんか、思ったより普通の奴だったな。怪人っつーよりチンピラみたいな感じだった。」

 

 

「というより、怪人によく見られる殺気・・・みたいなのが無かったよね。なんか、こっちに突っ込んできたときも焦ってる感じだったし・・・。」

 

 

「深海王のときみたいに、話し合いの余地は有りそうだよな。」

 

 

その、サイタマとキングの言葉に・・・。

 

 

「お兄ちゃん、キングさん。改めて言うけど、僕はガロウ君をやっつけるつもりは無いし、やられるつもりもない。・・・ガロウ君は本当は、さっき僕の怪我を心配してくれたように優しい子なんだ。・・・だから、ガロウ君を怪人さんにしたくない。・・・だから、協力してくれる?特にお兄ちゃんは、ちゃんとガロウ君の話を聞いてあげてね。問答無用に暴力を振るったり、20文字以内で簡潔に(まと)めろとか言わないであげてね?」

 

 

ホタルのその願いを・・・

 

 

「うん・・・分かった!」

 

 

「・・・善処はする。」

 

 

聞き入れたキングとサイタマであった。




「ガロウ君・・・。手遅れになる前に、元の優しいガロウ君に戻って・・・!」
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