最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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「ガロウ君とジェノス君の対面だよ」


五十一撃目:後輩と弟子

その日俺は、アジトにしている廃屋(はいおく)で寝転がっていた。

 

 

はぁ・・・くそっ。ホタ兄と再会してから早数日・・・。ホタ兄が怪我を癒してくれたとはいえ、疲労が消えたわけじゃねぇからな。全身が(ほとん)ど動かないくらいに、(ダル)すぎる・・・。まぁつっても、ホタ兄が怪我を癒してくれなかったら、アジトまで帰ってこれなかったのは事実だからな・・・。ホタ兄の忠告通り、安静に寝ておくのが吉か・・・。

 

 

そう考えていると、アジトのドアが急に開きやがった。ヒーローに居場所がバレたかと思いきや、そこに居たのは公園で「ヒーロー名鑑」を読んでいたガキだった。話を聞く限り、虐められっ子に俺を追い出すように言われたらしい・・・。くそっ、胸糞悪ぃ・・・。

 

 

そうこうしていると、いきなりアジトの壁越しから数人程から発せられる殺気に気付いた。恐らくは今度こそ、俺を追ってきたヒーロー共だろう。

 

 

ヒーロー達への対策を取る為に、廃屋の壁に指で小さな穴を開け観察をしてみると・・・A級8位のデスガトリングやA級10位のスティンガーを筆頭に、8人のヒーローが立っていた。S級ヒーローが居ない事が気掛かりだがな・・・。そう思いながら、ガキから借りたヒーロー名鑑で対策を立てていると、デスガトリングが威嚇(いかく)射撃をしてきやがる。時間も無いようだし、ある程度のヒーロー達の特徴から弱点を絞り出すと、俺は廃屋から身を剥きだしにする。

 

 

そうすると、デスガトリングやスティンガーは俺が降伏したのかと思っているのか、「ヒーロー協会に連行してやる」などとほざきやがる。けど残念だったな・・・てめぇらは俺の踏台程度にしかならねぇんだよ!!

 

 

それに、連中は俺の事しか眼中にねぇ・・・廃屋の中に俺以外の奴・・・例えば、俺が廃屋の中に人質を入れている可能性とか考慮もしねぇのかよ・・・

 

 

やっぱり、てめぇらは偽物のヒーローでしかねぇ・・・。そんな偽物のヒーロー達は・・・俺がこの手で潰してやる・・・

 

 

そうして俺が廃屋の屋根に立ち、「ヒーロー狩り100人突破だ!」と宣言すると同時に、奴等との勝負が始まった。

 

 

━━━━━━━━━━━━

戦闘が終了し、辺りには死屍累々とヒーロー達の残骸が転がっている。

 

 

ムカツク連中だ・・・怪我人相手に8人掛かりとか、正々堂々の"せ"の字も感じられねぇ・・・。しかも口を開けば、やれ「ランキング」だの「A級以下ヒーロー達の存在意義」だの・・・くっだらねぇ御高説を垂れ流しやがって・・・。

 

 

違うだろうが!本物のヒーローってのは・・・地位や名声なんかを気にせず、他人の為に戦える奴の事を言うんだろうが!!

 

 

しかもデスガトリングの野郎・・・、俺が流水岩砕拳を使ったから良かったものの、ガキがまだ居る廃屋に「デスシャワー」で砲撃してきやがって・・・。

 

 

あぁ・・・クソッ。あの不細工なガキは、戦闘が終了すると同時に逃げちまったし・・・。いや、ガキが逃げた事に関しては喜ぶべき事だろ。それだけ・・・俺が絶対悪に近づけている証拠なんだから・・・。

 

 

クソッ・・・ヒーロー達をぶちのめして、ガキからも恐れられたのに満足できねぇ・・・。そうだ。この満足いかない原因は、シューターが放ってきた毒矢のせいだ。取り敢えず俺は、背中に刺さっていた毒矢をぶち抜く。

 

 

「取り敢えず、手当を・・・。・・・み、水。その前に水を一口・・・。」

 

 

そう言ってヨロヨロと、情けなく歩き始めようとしたそのとき・・・ドンっという衝撃音と共に、何者かの覇気(はき)を感じる。この度合からして、A級どころじゃねぇ・・・

 

 

嫌な予感と共に俺が振り向くと、ギュィィンというモーター音と共にそこに居たのは・・・金髪に白い肌。白目と黒目が反転したような瞳を持つ・・・

 

 

「応援要請の信号を確認してきたので来た。発信源は・・・あいつの端末か。見た所、例のヒーロー狩りだな。」

 

 

S級ヒーローの、鬼サイボーグだった。俺が歯ぎしりをしながら戦闘態勢を取ろうとした瞬間、鬼サイボーグは信じられない事を口にする。

 

 

「御前を排除する・・・と言いたいところだが、ガロウ。御前に一つ質問がある。S級5位ヒーローの、激雷の天使・・・いや、ホタル先生と御前は知り合いなのか?」

 

 

その名を聞いたと同時、俺の水分を欲していた筈の身体からは大量の冷や汗が噴き出たのだった。

 

 

━━━━━━━━━━━

あの日、バングの自称一番弟子のチャランコが先生達の家に来訪した日の夜。俺は、ホタル先生に呼び出されていた。

 

 

呼び出しの内容は、「もしもガロウ君と交戦する事に成った場合は、まずは御話しを聞いてあげて」と言う物だった。

 

 

その言葉に、俺はあまり驚きはしなかった。そもそも、ホタル先生は怪人相手だろうが人間相手だろうが、余程の(クズ)相手や切羽詰まっている状況でない限り、情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)の余地を与えたり相手の話を聞き入れる事から始める平和主義を具現化したような人だからだ。

 

 

ましてや、ガロウに至っては小学校時代の元後輩。そうなると、奴に対する思い入れは相当なものになるだろうと俺は解釈した。

 

 

そうして、今日この日。俺は遂にガロウと対面した。そこでの惨状を目の当たりにし、俺は疑問を浮かべる。

 

 

(ヒーロー達の生体反応が消滅していない・・・?)

 

 

到着した時にあちこちに死屍累々(ししるいるい)と転がっていたヒーロー達は、殺されてはいなかったのだ。そこから俺は、深海王のときと同じように話し合いの余地があると判断し、ガロウにホタル先生の事を知っているのかどうかと問いを投げかける。

 

 

「S級5位ヒーローの、激雷の天使・・・。いや、ホタル先生と御前は知り合いなのか?」

 

 

ガロウにそう聞くと、奴は分りやすい程に全身から大量の汗を吹き出させ、目を泳がせる。そうして奴が紡いだ言葉は・・・

 

 

「そんな奴の名前・・・知らねぇよ。」

 

 

奴はそう答えたのだった。まるで、ホタル先生の事を記憶から振り払う様に。・・・分かりやすい虚言だ。

 

 

さっきまで散々逃げる為の算段を立てていた瞳が、「ホタル」という名前を出しただけで揺れ動いた。間違いない・・・こいつは本当に、ホタル先生の後輩だ。

 

 

苦々しげな表情をする奴を目の前にし・・・俺は掌の砲門を閉じ、両手を上げる。その様子に、ガロウは怪訝そうな顔を向ける。

 

 

「何のつもりだ!鬼サイボーグ!」

 

 

「見て分からないのか?こちらには今の所、御前と戦う意思は無いという事だ。」

 

 

俺のその言葉に、ガロウは皮肉を込めて言葉を返す。

 

 

「へっ!流石はヒーロー界の頂点に君臨するS級様だ!さっきまでの連中と違って、精神性も本物のヒーローってか!?」

 

 

以前までの俺なら、こんな安い挑発にも簡単に乗ってしまっていただろう。だが、今は違う。(むし)ろ、俺はこいつに憐みにも似た感情を募らせる。

 

 

「・・・一つ質問をさせてくれ。どうしてお前は、ヒーロー狩りなんてものを続ける。先の反応を見るに、御前はホタル先生の後輩だろう・・・?こんな事をしていれば、いずれはホタル先生ともぶつかる事に成るんだぞ!」

 

 

「・・・んなもん知ったこっちゃねぇよ!そんな事・・・覚悟のうえでやってんだよ!(むし)ろ、激雷の天使が来てくれた方が良かったぜ!あいつを狩れば、(はく)が付く*1からなぁ!」

 

 

そう言って奴は喋り続けるが、先程までの迫力が全くと言って良いほど無い。寧ろ、苦しそうな顔をしている。恐らく敬愛しているホタル先生を、あいつ呼ばわりしてしまった自責の念だろう。

 

 

そんな時思い出したのは、深海王が襲来した時のホタル先生だ。・・・あの時の俺は今よりも未熟で、何故ホタル先生が"怪人"という存在を助けようとするのか分からなかった。だが・・・、今なら少し分かる。深海王が「環境汚染をする悪」によって歪められた被害者であるように、ガロウも・・・ある意味「虐めという悪」によって歪められた被害者であるという事を。

 

 

「・・・頼む、教えてくれ。」

 

 

(なお)も聞き続ける俺に、ガロウは遂に間の抜けた表情になる。

 

 

「御前のした事は、全てが(ゆる)される訳では無い。それに関しては、ホタル先生も俺と同じ意見だろう。だが・・・こんな事をするのには、何か理由があっての事だろう。それを聞かずして一方的に御前を痛めつけるのは、筋違いと言う物だ。・・・ガロウ・・・御前がヒーロー狩りをしていると聞いてから、ホタル先生がどうしているか知っているのか?」

 

 

その言葉に、ガロウの眉が(かす)かに動く。

 

 

「ホタル先生は毎晩、泣いていらっしゃるんだ。それも、御前を責めているんじゃない。ホタル先生は、御自身を責めていらっしゃるんだ。「僕がもっと傍に居てあげれたら、ガロウ君はこんな事にはならなかったんじゃないのかな・・・」とな・・・。お前がヒーロー狩りを続ける事は、御前の恩人でもあるホタル先生を苦しめる事に成るんだぞ!」

 

 

俺のその言葉に、ガロウは絞り出すように声を上げる

 

 

「・・・るっせえよ。」

 

 

「何・・・?」

 

 

俺がそう言うと、奴は髪の毛を掻き(むし)る。そうすると奴の身体から蒸気が上がり、髪や片目が赤く染まる。

 

 

「うるっせぇって言ってんだよ!・・・そんなもん分ってんだよ!だとしても・・・俺はやらなきゃいけねぇんだよ!・・・激雷の天使に伝えとけ・・・。チンケな虐めも・・・犯罪も!そんなカスみたいな悪事なんて目じゃなくなるくらいの・・・最強の怪人が生まれるってなぁ!!」

 

 

その気配に俺は危機感を覚えつつも、同時に一つの考えに至る。

 

 

(あぁ・・・こいつは、不器用な奴なんだな。)

 

 

恐らくこいつは、推測でしかないが自分自身が絶対的な恐怖の象徴になる事によって、虐めや犯罪を無くそうとしているのだと・・・。

 

 

(だが、ガロウ・・・分かっているのか?そんな事をすればする程・・・ホタル先生がどれだけ悲しむのかを・・・。)

 

 

そのとき、俺の背後の地中から無数の生体反応が確認される。そこから現れたのは・・・無数の怪人達だった。

 

 

「ヒーロー狩りを援護しろぉ!!」

 

 

「了解!!」

 

 

その声と共に、怪人共は俺に襲い掛かってきた。

 

 

━━━━━━━━━━━

鬼サイボーグの野郎と戦っていたら、急に無数の怪人共が奴に襲い掛かりやがった。その状況に困惑していると、俺の背後から植物型の怪人が話しかけてきやがる。

 

 

「怪人協会でーす。ガロウさん・・・貴方を御迎えに上がりました。ピンチなんでしょ?助けてあげます。ウチの上の者が貴方の功績を(たた)えて、幹部として招待すると言ってるんですよ。良かったですね。」

 

 

後ろに居る怪人は、粘つく様な声でそう囁きかけるが気持ち悪すぎて腹が立ってくる。どいつもこいつも指図しやがって!!

 

 

「また、てめぇらか・・・いらねぇ。失せろ。」

 

 

俺がそう言うも、後ろの怪人は気持ち悪い声で話しかけてきやがる。

 

 

「いやいや、今度はそういう訳には・・・こっちも命令なんでね。」

 

 

その声と共に、背後から多少の殺気が感じられた瞬間・・・目の前の土煙から、怪人共の断末魔が聞こえてきやがる。そして、猛スピードで鬼サイボーグが突っ込んできやがったが、ギリギリで避ける。後ろの怪人は、見事に一刀両断されてたがな・・・。

 

 

そう考えていると、鬼サイボーグが再度話し掛けてくる。

 

 

「ガロウ・・・まさか御前、怪人協会とも繋がっていたのか・・・?こうなってくると、流石に庇えなくなってくるぞ。」

 

 

そう言って砲口を向けて来る奴の姿に、俺は何も言えなくなる。

 

 

「それから御前は先程、最強の怪人が生まれると言っていたが、それは違うぞ。」

 

 

「・・・は?」

 

 

「御前に一つ教えといてやる・・・。どんな怪人も敵わない、最強のヒーローは存在する。その人達こそホタル先生と、その兄のサイタマ先生だ。」

 

 

サイタマ先生という名の、聞き覚えの無い名前に俺は反芻(はんすう)する。

 

 

「サイタマ・・・先生?」

 

 

そんな俺に、鬼サイボーグは今度こそ砲口を向ける。

 

 

「無傷で捕獲したかったが・・・止むを得ん。・・・焼却。」

 

 

そう言って鬼サイボーグが向けて来る砲口をぼんやり見ていた俺に襲い掛かって来たのは、熱線ではなく凄まじい蹴りだった。

 

 

畜生・・・この蹴りの鋭さには覚えがあるぜ・・・。来やがったな・・・シルバーファング(糞ジジイ)!

*1
拍が付くとは、世間に認められて値打ちが上がる事、貫禄が増すという意味




「バングさんが乱入したよ!御願いだから、暴力より先に対話をして欲しいな・・・。」
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