最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
サイタマが自身との約束である、「ガロウ君に会ったら、まずは暴力とかじゃなくて御話しを聞いてあげて」という約束を、見事に破った事も露知らず、ホタルはファミレスに来ていた。そこで見知った顔を見つける。
「あれ・・・?フーちゃん先輩?」
そう、そこに居たのは地獄のフブキである。しかし彼女は何故か、イライラしながらブツブツ何かを言っている。
「サイタマの奴・・・
そうブツブツ言っているフブキの目の前に座りながら、ホタルは手を振って呼びかける。
「あの~・・・、フーちゃん先輩?おーい・・・。」
そうしていると、ホタルに気付いたかのようにハッと顔を上げる。
「ほ、ホタル君!?どど、どうして此処に!?」
「お、落ち着いて下さい。・・・僕は、怪人協会のアジトの正確な位置を把握しに行ってて・・・腹ごしらえの為に、此処に寄ってたんですけど・・・。フーちゃん先輩は?」
「私は・・・サイタマに、情報提供してあげようとしたんだけど・・・。会計押し付けられたのよ。」
その言葉に、ホタルはポカーンとした顔に成る。
「え・・・?会計の押し付けって・・・どういう流れで・・・?」
「いや・・・さっきサイタマが、私にフライドポテトを一本くれたんだけど・・・一本食べたからっていう理由で、会計を押し付けられたのよ。」
そう半目になるフブキに、ホタルは顔を掌で覆いながら絞り出すような声で謝罪する。
「・・・なんか、本当にごめんなさい。お兄ちゃんが・・・。」
「い、いや!ホタル君が謝る事じゃ・・・。」
「取り敢えず、ここの代金は僕が払います・・・。いや、わざわざ言う事でも無いんですけど。」
そう言いながら、サイタマの尻拭いをするホタルにフブキは気の毒そうな顔に成る。
「・・・何と言うか大変ね。」
「・・・もう慣れましたよ。」
そう言って、乾いた笑いを見せるホタル。
「・・・ところで、そのポテト食べないんですか?」
「え・・・?あぁ、そうね・・・。折角だから、消費するの手伝ってくれない?」
「え?あ、はい!」
そう言って、ポテトをちまちま食べ始める二人。しかし、そんな二人の脳内は互いに騒ぎまくっていた。
(あぁぁぁ!!何言ってんの私の馬鹿!消費するの手伝ってくれないって、何様のつもりで言ってるのよ!!もうちょっと、頼み方ってもんがあるでしょ!!それにしても、ホタル君の一口小さいわね・・・。ハムスターみたい・・・。それにしても、この状況って・・・何というか・・・。)
(ど、どうしよう!つい流れで、フーちゃん先輩とポテトフライをシェアする感じになっちゃったけど・・・。指で摘まんで食べたら、品の無い食べ方って思われちゃうかな!?フォークか何かで食べた方が良いのかな!?と、というか・・・この状況って・・・。)
((・・・学校帰りのデートみたい。))
そう思いながら必死に自身の恋心に気付かれない様に、ポーカーフェイスを極めようとする二人であったが・・・。
(((あそこの二人から、何か甘酸っぱそうな雰囲気が流れてんなー・・・。)))
二人は気付いてはいなかったが、周りの客達は二人の甘酸っぱい空気に微笑ましいといった顔を向けていた。
なお、この日のファミレスの売り上げ一位の商品はブラックコーヒーであったとかなんとか。
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そうして、サイタマが置き忘れた白菜を持ってファミレスを出た二人。そんな二人は、仲睦まじく手を繋いで・・・はおらず、御互いに距離を空けつつ並んで歩いていた。
「お、美味しかったわね!フライドポテト!」
「そ、そうですね!!」
そう言って話を広げようとするが、両者共に緊張しているのか全く話が広がらない。
(あぁぁ・・・ど、どうしよう。全然、話題が膨らまない!フーちゃん先輩、退屈してないかな?最近忙しすぎて、怪人協会のアジトを探したりとか、病院で怪我をしたヒーローさん達の治療ばっかりしてた所為か、全然膨らむような話題が見つからない!!)
(ど、どうしよう・・・。最近はフブキ組の皆とヒーロー活動をしていないせいで、特に膨らむような話題が見つからない・・・。何か・・・何か・・・。)
そこで、何かを閃いたかのようにフブキが話題を提供する。
「そ、そういえば、ガロウってどんな奴だったの?」
「え?・・・ガロウ君ですか?急に、どうして・・・?」
「何となく気になっただけよ・・・。」
フブキの言葉に、ホタルは懐かしそうな顔をしながら話し始める。
「・・・そうですね。ヒーロ協会や他のヒーローさん達は、ガロウ君の事を危険人物や荒くれ者って思ってる節がありますけど・・・。僕からしたら、彼等の評価は真反対過ぎるんですよ。」
「大人しい子・・・っていう事?」
「そうですね。・・・ガロウ君の担任の教師によると、根暗な奴っていう評価だったみたいです。」
その言葉に、フブキは眉を顰める。
「根暗な奴・・・?それ本当に、学校の教員が言った台詞なの?」
「そうですよ。残念ながら・・・。まぁ、そんな教師も僕が退職させましたけど・・・。」
その言葉に、フブキは大きく目を見開く。
「退職させた!?ど、どうやって!?」
「それは・・・。弁護士と警察、教育委員会の立ち合いの元で・・・。」
その言葉に、フブキは唖然とする。
「弁護士に、警察官・・・教育委員会って・・・。ホタル君って、意外と行動力あるわよね・・・。」
「そ、そうでしょうか・・・。」
そうホタルは苦笑いをするが、表情は何処か暗い。その様子に、フブキは心配の言葉を掛ける。
「・・・ホタル君。大丈夫?」
その言葉に笑みを浮かべるが、やはりいつもの様な天真爛漫さは見られない。
「だ、大丈夫です!大丈夫です・・・僕は・・・。」
そう答えるホタルの声は震えており、掌もいつもより強く握りしめられている。するとその時・・・ホタルの体は温かい体に包まれた。フブキがホタルを抱きしめたのだ。
「フ、フーちゃん先輩!?えっと・・・どうしたんですか?」
「ねぇ・・・ホタル君。無理してない?」
「え・・・?む、無理って・・・どういう意味ですか?」
「そのままの意味よ・・・。何と言うか、今のホタル君は・・・精神的に不安定そうで見てられないの・・・。」
「・・・・・・っ!」
フブキのその言葉に、無意識の内にホタルは拳を握り締める。
「ねぇ、ホタル君。ホタル君は本当に優しくて、思いやりのある子だわ。でも・・・その優しさって、自分以外の人に向けてばかりじゃない?・・・ずっと苦しんでるでしょ?ガロウがヒーロー狩りしてるって知った日から・・・。」
その言葉に、フブキに抱かれていたホタルは顔を上げる。その紫の瞳には、今にも
「フーちゃん・・・先輩。」
「大丈夫よ、ホタル君。もう時間も遅いし、ゴーストタウンなだけあって周囲に人は居ないわ。泣きたいときは泣いて良いのよ。」
そう言いながらも、フブキはホタルのフワフワした髪を撫で続ける。そんなフブキの仕草に、ホタルは頬に涙を伝らせながら、必死に言葉を繋ぎ合わせる。
「僕は・・・っ!ガロウ君を元に戻してあげたいんです!でも・・・ガロウ君にはガロウ君の想いがあって・・・っ!どんどん、僕から離れて行っちゃって・・・!!このままだと、手の届かない所まで行っちゃいそうでっ・・・怖いんです・・・!でも・・・ガロウ君の意思を尊重したい気持ちと、ガロウ君を止めないといけない気持ちが交差してて・・・!!どうしたら良いか解かんなくて・・・!!」
遂に、涙でフブキの服を濡らしてしまうホタル。しかし、フブキは嫌な顔をせずにポンポンとホタルの背中を優しく叩く。
「そう・・・辛かったわね。大丈夫よ、全部吐き出していいからね。」
それから数分の間、ホタルはフブキの腕の中で泣き続けたのだった。
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そして数分後、落ち着いたホタルが声を上げる。
「フーちゃん先輩、ごめんなさい。御洋服を濡らしちゃって・・・。」
そう謝るホタルに優しい眼差しを向けながら、フブキは首を振りつつ涙を指で拭ってやる。
「大丈夫よ。それに・・・少し安心したわ。ホタル君も、ちゃんと甘える事が出来るんだって確認出来て。」
そう言って笑うフブキに、ホタルは恥ずかしいのか顔を赤らめる。
「あ・・・うぅ・・・。」
そうしていると、フブキはしばらく黙ったかと思えば口を開く。
「・・・ホタル君。私にも、協力させてくれない?・・・ガロウを引き留める為の計画に。」
「え!?・・・ど、どうして?」
その言葉に、フブキは慌てて手を振る。
「あ・・・ごめんなさい。変な事言って・・・。私はガロウに一度も会った事が無いから・・・こんな事を言うのは、変かもしれないけど・・・。その・・・なんか放っておけない感じに思えるの・・・。ガロウの事が・・・。」
「・・・放っておけない?」
「えぇ・・・。もしかしたら・・・私もホタル君に虐めから助けて貰えてなかったら、ガロウみたいになってたかもしれない・・・。そう考えたら、ガロウの事を放っておけなくて・・・。って!S級ヒーローが戦っても捕まえられなかったガロウを、私がどうにか出来る訳無いわよね!今のやっぱり・・・。」
そう言って発言を取り消すかのように、フブキが訂正しようとするがホタルは目を輝かせる。
「フーちゃん先輩・・・協力してくれるんですか?」
「え、えぇ・・・協力したいのは山々なんだけど、私じゃ力不足じゃないかしら・・・?」
そう言って不安そうにするフブキに、ホタルは首を振る。
「そんな事ありませんよ?寧ろ、ガロウ君を助けてくれる人が増えただけでも、僕はとっても嬉しいんです!」
そう言って先程の悲しげな顔とは違い、大輪の花の様な可愛らしい笑みを浮かべるホタルにフブキは頬を染める。しかし、何かを思い出したかのように少し目を伏せる。
「あ・・・けど、一つ問題があるわ・・・。」
「え?・・・問題ですか?」
「姉が・・・タツマキが、私が怪人協会に突入するのを許してくれるかどうか・・・。」
「あ・・・た、確かに。」
そう。普通に考えて、シスコンとも言えるほどにフブキを溺愛するタツマキが、怪人協会の突入メンバーにフブキを据える事に賛成するとは思えないのである。
その事を想像した両者は、互いに口を
「と、取り敢えずは、僕のお家に行ってから考えましょう!」
「そ、そうね!!」
タツマキをどう説得するか問題について目を逸らし、サイタマ宅に向かったのだった。
「タツマキさんを説得するという、難関イベントが~・・・。」