最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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「ガロウ君VS怪人協会からの刺客だよ!」


五十七撃目:後輩と怪人協会からの刺客

「・・・きて、起きて!」

 

 

頭の中で声が響く。誰の声だ?そう思いながら目覚めると、視界には赤い夕焼けが映っていた。

 

 

「おじさん!起きてよ!!」

 

 

その声に、意識が急に戻る様にハッと目が覚める。そんな俺の隣に居たのは、例の不細工なガキだった。

 

 

「おじさん大丈夫?ヒーローのハゲてる人が、「やっちまった。」って言って逃げてったよ。」

 

 

ガキのその言葉に、俺は目を見開いてしまう。有り得ねぇ。コンディションはデスガトリング達に襲われた時よりも万全だった。にも拘らず、ヒーロー名鑑に載ってるか載って無いか分からないようなヒーローに・・・負けただと!?

 

 

「俺が負け・・・!?嘘だろ?あんなハゲに・・・。」

 

 

「本当だよ。ものすごい勢いで、おじさん吹き飛ばされてたんだから・・・。」

 

 

そのとき、何処からともなく粘っこい声が聞こえる。

 

 

「ガロウ君~。君、何やってんの?」

 

 

その声と共に、周囲に居たであろうカラス達が一斉に飛び立っていく。まるで、不吉な事が今から起こってしまうかのように。そして、その「不吉な事」は案外すぐにやって来たみてぇだ。そこに居たのは・・・キリサキングと、怪人協会に居た虫型の怪人だった。

 

 

「ずっと見てたよ。ガロウ君って、私達とは違うね。」

 

 

「あぁ、違う・・・。残念だが、お前に怪人性を感じられなかった。」

 

 

そう言ってくる奴等を無視して、ガキに忠告をしてやる。

 

 

「おい、クソガキ・・・。ボーっとしてねぇで、さっさと帰れ。アイツ等は、俺に話しがあるみたいだしな。」

 

 

俺がそう言うが、ガキは目の前に状況に脳の処理が追い付いていないのであろう。呆然とした表情を浮かべている。しかし、次第に状況が理解できたのか後ずさり始める。

 

 

「あっ・・・あぁ・・・。・・・あぅああ~っ。名鑑にも載・・・ってる・・・。噂じゃあ無かった・・・ん・・・だ。なんで、こんな・・・所に・・・。キリサキングだ・・・何人も子供が(さら)われている・・・。」

 

 

そうガキはブツブツ言っていたが、遂に恐怖が限界に達したのか絶叫する。

 

 

「キリサキングだぁぁ!!うわぁぁぁ!!」

 

 

そう言ってへたり込んでしまうガキに、俺は一喝するがガキは泣き止まない。

 

 

「おい!?しっかりしろ!泣いてねーで、立つんだよ!!」

 

 

そんな俺の気を知らずに、キリサキングは馴れ馴れしく話し掛けてくる。

 

 

「まさか、ガロウ君にそんな小さいお友達がいたとはね~。」

 

 

「おい、止まれ!話はそこで聞く!!」

 

 

俺が警告するが、キリサキングの野郎は止まる気配が無い。

 

 

「あらら・・・ごめんね。泣かせるつもりじゃ無かったのに・・・。悲鳴を上げさせるのは、あとでじっくり・・・のつもりだったのに。ごめんね・・・。あ~・・・可哀そうに。後でちゃんと、全身ズタズタにしてあげるからね・・・ごめんね。少年・・・もう助からないけど、ごめんね~。」

 

 

そう言って、こっちの神経を逆撫でしてくるような誠意の欠片も無い謝罪に俺の苛立ちは(つの)り始める。

 

 

「下がってろ。」

 

 

そう言うと、俺は奴等に向かって構えを取る。拳を握ったり開いたりするが、特に問題なく指は動く。大丈夫だ。きっと、このクソみたいな状況も切り抜けられる。

 

 

「ギョロギョロちゃんから、ガロウ君の動向監視を命じられてたんだよね。本当に私達の仲間に相応しいかどうかを、見極めろってね。ヒーロー狩り・・・「僕は怪人だ!」って、エクスタシー感じちゃってる(ただ)の変態の人間なのか・・・怪人なのか。」

 

 

そうペラペラ話すキリサキングに、反吐が出そうになりながらも奴等に向かって歩を進める。

 

 

「ハッ・・・偉そうに、何言ってやがる。こっちは丁度、お前等のぬるさに落胆してたところだ。」

 

 

「じゃ、その子供を殺してみて。」

 

 

「あ?そりゃあ、意味が分からねーな。」

 

 

俺がそう言うと、今度は虫型の怪人が話し始める。

 

 

「怪人とは、人間である事を捨てた者。人の世から切り離された存在。ガロウ、お前がその子供を助けているところを見たぞ。それじゃ駄目だ。殺さなきゃ。怪人協会の一員に成る為には、我々の信用を得る為の努力が必要だ。お前は人間である事を、捨てきれていない。」

 

 

「こっちも、中途半端な奴は要らないんだよね。人間社会をぶっ壊して、支配する組織になるの。ガキなんかバンバン殺す。しかもさっき、微妙なヒーローに負けてたよね。油断とはいえ、あれじゃ戦力としてもどうなのかな・・・?」

 

 

そう言いながらも、(いま)だに攻撃してこない奴等の様子に俺はガキに再度逃げるように伝える。

 

 

「さっきも言っただろうが。ガキは早く帰れ。」

 

 

だが、ガキは半べそをかきながら震えるだけだ。

 

 

「あ・・・足が震えて動けない・・・。うぅ~・・・動けないよぉ・・・!!」

 

 

そんなガキの様子に、俺は何かが切れるのを自分でも自覚する。気が付くと、俺は大声でガキに一喝していた。

 

 

「バカヤロウ!!立てないからって、誰かが手を伸ばしてくれると思うんじゃねぇ!!誰も助けには来ねぇ!!こんなもん捨てちまえ!!お前の事は、お前が守るんだよ!!」

 

 

そう言いながら、俺はガキの持っていたヒーロー名鑑を叩き落とす。そのとき、ホタ兄のかつての言葉がまた頭に()ぎる。

 

 

『君も虐めっ子に負けないくらい、強くなるんだよ。』

 

 

俺はホタ兄みたいに器用じゃねぇ。相手が今一番欲している言葉を掛けてやるなんて事は、絶対に出来ない。だから、この言葉は俺が憧れたホタ兄(ヒーロー)からの受け売りを俺なりにアレンジしただけだ。

 

 

「こういう時こそ、自分が強く成るしかねーんだ。」

 

 

そうして、ありったけの大声を出す。

 

 

「立てっ!!タレオ!!」

 

 

俺がそう言うと、ガキは背筋を勢い良く伸ばす。そのとき、背後からの強烈な殺気と共にキリサキングが突きを放ってくるが、俺はそれを受け止めテコの原理でキリサキングの体を打ち上げ、鳩尾(みぞおち)に蹴りを食らわす。そうすると奴は吹っ飛ぶが、地面に刃を突き刺して着地する。

 

 

「走れ!!」

 

 

俺がそう言うと、ガキは全力疾走で走り去っていく。そんな様子を見ていたキリサキングと虫型の怪人が殺気を一気に上げる。

 

 

「へぇ・・・。もう駄目だ。こっち側を、敵に回したね。」

 

 

「ヒーロー狩りと言いながら、一人も殺していないという・・・。思った通りの軟弱者だったな!!」

 

 

そんな奴等の態度に腹を立てつつも、俺は流水岩砕拳の構えを取る。

 

 

「テメェ等の態度が、気に入らねぇんだよ!!」

 

 

そうして構えを取り終えると、奴らは一斉に襲いかかって来やがった!

 

 

先ずは挨拶代わりだ。虫野郎に襲い掛かり、鳩尾に正拳突きを食らわせる。しかし、やはり虫型の怪人だけはあってか外骨格が異様に硬ぇ!手の皮が(めく)れて、血が(にじ)み出る。

 

 

そんな俺の隙を突くかのように、キリサキングが両手の刃を振り回し斬撃の雨を降らせてくるが、(かろ)うじてそれらを全て(かわ)しつつ流水岩砕拳で、斬撃を虫野郎にお返しする。

 

 

斬撃は見事、奴の全身にヒット・・・したと思ったが、野郎は無傷で俺を殴り飛ばしてきやがる。そのまま電線にぶつかると、全身に電流が流れるのが分かる。

 

 

(こんな所で・・・死んでられるか!!)

 

 

俺は気合いで意識を保つと、電線の(たゆ)みを利用してパチンコの様に奴等に向かって吹っ飛ぶ!!奴等も俺に襲い掛かって来やがるが、二人(まと)めて蹴り飛ばす。

 

 

そうして地面に着地すると、俺はある事を確信する。

 

 

(いける・・・こいつ等!ジジイに比べたら、大した事ねぇ・・・!!)

 

 

そんな俺の状態に、ある程度実力を把握したのか奴等の闘気も上がる。

 

 

「まさか人間が、ここまでやるとは・・・。」

 

 

「2対1だよ・・・?私達相手に・・・キミ結構、強いんだね。ふー・・・、ちょっと遊んでやろうかと思ったんだけど・・・もういいや。やっちゃおう。」

 

 

「本番はここからだ!!」

 

 

奴等はそう言って勝手に盛り上がるが悪いな・・・

 

 

「続けるのは構わねぇけど、テメェ等の動きはもう見切った。」

 

 

そう言いながら俺は、グラついている奥歯をへし折り地面に吐き捨てる。

 

 

「もう当たらねーよ。」

 

 

そう俺が言った瞬間、キリサキングと虫野郎は疑問の声を上げる。その疑問を向けている相手が自分自身では無い事を察知すると、俺は慌てて後ろを振り向く。何だこの嫌な予感は・・・!そして、目に入った光景に愕然としてしまう。目に映るその光景は・・・

 

 

「おじさん・・・。おじっ・・・さっ・・・。ごめっ・・・なさ・・・。」

 

 

先程一喝した際に(ようや)く泣き止んだにもかかわらず、また半べそをかいてるガキ・・・。いや、正確にはそのガキをヘドロみたいな怪人が拘束していたのだ!!

 

 

「ヘドロクラゲ。御前ここで、何してんだ?」

 

 

虫野郎のその問いに、ヘドロクラゲと呼ばれた奴はペラペラと話し始める。

 

 

「いや~・・・そいつには、個人的な恨みがあってね。嫌がらせをするチャンスを(うかが)ってたんだ~。」

 

 

そいつの姿を見た瞬間、俺は全身の血液が頭に上るような感覚に陥る!・・・そうだ、こいつは金属バットの妹を(さら)おうとしたクソ野郎じゃねぇか!!

 

 

「てめぇ!そのクソガキは、何の関係も・・・!!」

 

 

そう言葉を続けようとしたが、それは叶わなかった。突如背中に激痛を超えた熱が(ほとばし)り、鳩尾に衝撃が走る。そして、全身が切り刻まれる感覚に襲われる。

 

 

そして、薄れゆく意識の中で確認できたのはガキが連れ去られる光景だけだった。

 

 

━━━━━━━━━━━

ドクンドクンと、やけに音が五月蠅(うるさ)い。その音が自分自身の心音だと気付くのに、時間は掛からなかった。全身に激痛が走るが、何がどうなってこうなったんだ?

 

 

取り敢えず、痺れる身体に鞭打って起き上がろうとするが全身がかなり痛い。そこで、記憶が蘇る。キリサキングに全身をズタズタに切り裂かれたのだと。しかし、そこで新たな疑問が浮かび上がる。

 

 

(あんだけズタズタにされたのに、何で生きてるんだ?俺は・・・。そういえば、あの不細工なガキはどうなった!?解放されたのか?それとも、まさか・・・・・どうでも良いか。)

 

 

そう思考を整理すると、傷の状態を確認する。血は止まっているが、服がズタズタの傷口に張り付いて剥がれねぇ・・・。ガチガチに癒着してやがるな。

 

 

そんな事を考えながら、俺は全身の筋肉を隆起させ血液の循環を早くさせる。

 

 

目指すは怪人協会だ。そう・・・これは()わば、御礼参りだ。俺を、こんなにズタボロにした奴等への復讐だ。

 

 

決して、あの不細工なガキを助ける訳じゃねぇ・・・。仮に復讐の過程でガキが助かったとしても、俺にとってはどうでも良い・・・。

 

 

俺は決して、ヒーローなんかじゃない。俺が成るべきものは、世界中を恐怖のどん底に(おちい)らせる絶対悪だ。・・・あのガキを助けるのは、俺じゃなくても良い。ホタ兄の様な、本物のヒーローが助ければいいだけの話だ。

 

 

待ってろよ、怪人協会のクソ共が。俺がテメェ等を、一匹残らず狩り尽くしてやる。




「ガロウ君、御願い・・・危ない事はしないで!」
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