最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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「皆で、御鍋パーティだよ!腹が減っては戦はできないもんね!」


五十九撃目:弟と鍋

ガロウが怪人からの襲撃を受けているとは知らないホタルは、キッチンでまな板や包丁を洗いつつハラハラしながら兄や弟子。そして、客人達の様子を見守っていた。

 

 

(み、皆・・・。物凄い形相で、御鍋見てる・・・。)

 

 

そうして、ボコッと全ての具材が煮え終わったような音がした瞬間!ホタルを除く全員の箸が、肉を(めぐ)って鍋を掻きまわし、ありとあらゆる具材が宙を舞う!!その余波でキングも吹き飛ばされ、キングが後頭部を打ち付けないようにホタルが急いで駆け寄るが、残りのメンバーは目をひん剥きながら肉を探し当てようとしている。

 

 

そんな中、一枚の肉がフヨフヨと何者かのもとに(いざな)われるかのように動く。その犯人は勿論、地獄のフブキであるが、そんな肉を横からジェノスが奪い取る。

 

 

「先生達の肉に、何の用だ?地獄のフブキ。」

 

 

そう言って睨みを()かせるが、フブキも負けじと睨み返す。

 

 

「あら、奇遇ね。私も丁度、ホタル君に肉を取ってあげようとしてたところだったのよ。」

 

 

そんな中、バングはヒョイヒョイと豆腐のみを取り続ける。

 

 

「やめんか。鍋は分け合い、楽しく食べるもんじゃろ。」

 

 

そんなバングの独占振りに、ボンブが苦言を呈する。

 

 

「おい!オメー、独りで豆腐取んなよ!!」

 

 

現場がカオスを極めようとしたとき、気絶しているキングを除く全員の背に冷や汗が流れる。何故なら、キングが吹き飛んだ方向から、強烈な怒気が襲い掛かって来たからだ。そして、件の場所に全員が目を向けると・・・

 

 

「皆さん・・・。」

 

 

にこやかな笑みを浮かべたまま、髪にプラズマを走らせたホタルが居た。そんな彼は、左手で気絶したキングの後頭部を支え、右手に舞い散った具材を猛スピードで全て回収した皿を持ちながら、その小さな体躯からは想像がつかない程の濃度の怒気を放っていた。その様子には、武術界の大御所コンビであるバングとボンブも息を詰まらせる。

 

 

「ほ、ホタル・・・?」

 

 

そんなホタルに、恐る恐る声をかけるサイタマを一瞥(いちべつ)した後、ホタルはゆったりした声で説教を始める。

 

 

「せっかくの御鍋の日に、こんな小言を言いたくはありませんが・・・。いいですか?・・・僕達が普段食べてる食材は、生産者である農家さんや畜産業者さん達の努力の結晶。そして、多くの生き物達の尊い命から成り立っているとも言える程の物なんです。・・・にも(かかわ)らず「いただきます」という感謝の一言も無ければ、まるで飢えた獣のようにがっつく様な食べ方をして・・・。」

 

 

その言葉に、サイタマ達は目を逸らす。

 

 

「次にこんな食べ方をしたら、御鍋没収しますからね。」

 

 

「「「・・・・・・。」」」

 

 

「返事は?」

 

 

そう言いながら笑顔で首を傾げるホタルに、キングを除く全員は綺麗な土下座をしてのけた。

 

 

「「「誠に申し訳ありませんでした!!」」」

 

 

━━━━━━━━━━━

そうして、(ようや)く落ち着いたちゃぶ台では各々が話し合っている。

 

 

「ホタル君、御鍋食べないの?御肉美味しいわよ?」

 

 

「ん~・・・フライドポテトを食べた所為で、お腹も膨れちゃいましたし・・・。じゃあ、少しだけ頂きますね。」

 

 

そう言うとホタルは野菜を(すく)って、両手を合わせてから食べ始める。フブキはフブキで、自分の分を食べつつもホタルの皿に、甲斐甲斐(かいがい)しく肉や野菜を入れてやる。

 

 

そんな風に、隣り合いながら鍋を突くフブキとホタルを見ていたクセーノが、何気なくフブキとホタルに聞こえないくらいの声量で呟く。

 

 

「随分、仲睦(なかむつ)まじいのぉ。もしや、あの二人は男女の仲なのかの?」

 

 

その声に、ボンブも同意する。

 

 

「確かに、先程から距離が近いしのぉ・・・。バングから見たらどうなんだ?ワシやクセーノさんよりも、あの二人とは付き合いは長いだろう?」

 

 

「むぅ・・・。どうなんじゃろうなぁ?ワシも、所帯を持った事は無いしのぉ・・・。」

 

 

「女遊びは激しかったがな。お前の場合は。」

 

 

そう揶揄(からか)う様な事を言うボンブに、バングは気まずそうにする。

 

 

「お兄ちゃん・・・。もう、何十年も前の話じゃろ?若気の至りという奴じゃし、耳の痛くなるような事を言わんといてくれ。・・・じゃが、何と言うか初々しくて微笑ましいのぉ。」

 

 

そう目を細めるバングの視界には、平静を装いながらも互いに耳が赤くなっているホタルとフブキが映っている。

 

 

「そうだな。ワシ等も、武術を極める事が無い人生であれば色恋も楽しめたのかもしれんなぁ。」

 

 

そう言う武術家兄弟に、クセーノは質問をする。

 

 

「御二人は、後悔しとりますか?その道を選んだ事を。」

 

 

その問いに、バングとボンブは顔を見合わせたが頭を振る。

 

 

「まさか・・・。己の編み出した、武を極めて昇華する。その道を悔いた事など、一時(いっとき)もありませんて。なぁ、バングよ。」

 

 

「そうですとも。仮に後悔していたとしても、ワシ等の様な老いぼれのやるべき事は、ホタル君や嬢ちゃん達の様な今を生きる若い世代の者達に、道標を示してやることぐらいですわい。」

 

 

そう話し合う三人の方を向いたホタルは、首を傾げながら問いを投げかける。

 

 

「バングさん達、何を楽しそうに話してるんですか?」

 

 

その言葉に三人は顔を見合わせると、悪戯っぽく笑う。

 

 

「何でもないぞ、ホタル君や。」

 

 

「そうじゃぞ。老い先短いジジイ共の、他愛無い会話じゃ。」

 

 

「決して、浮ついた話では無いからの?」

 

 

そう言う三人に、ホタルは唇を少し尖らせる。

 

 

「むー・・・怪しいです。」

 

 

そんなホタルに、話題を変えるようにバングは問いかける。

 

 

「それにしてもホタル君や。ホタル君は、ジェノス君に稽古を付けるときに如何いったアドバイスをしとるのかね?」

 

 

「え?ん~・・・アドバイスと言いましても、とにかく焦らず自分のペースでコツコツ一歩づつ学んで貰う感じでやっていますよ。千里の道も一歩からと言いますし。焦るのは禁物ですから。」

 

 

「そうじゃのぉ・・・。」

 

 

そう言って目を伏せるバングに、ホタルは恐る恐る質問する。

 

 

「・・・ガロウ君の事ですよね?」

 

 

「そうじゃ・・・。ワシは一体、どんな風にガロウに寄り添ってやれたら良かったのかのぉ・・・。」

 

 

「そうですね・・・。やはり、武道大会の日にガロウ君と再会したときも感じましたが、あの子は何処か焦燥感に駆られているようなところがありましたから・・・。先程申し上げたように、自分のペースでやらせてあげる・・・。とかですかね?」

 

 

「むぅ・・・ワシの道場は、実力主義じゃからの。それがいけなかったんじゃろうか?」

 

 

そう嘆くバングを、ホタルは制する。

 

 

「バングさん。何が正解かだなんて、誰にも分かりません。(よわい)20の僕が言うのもなんですけど、人生に後悔なんてものは必ず付いて回って来るんです。僕だって・・・ガロウ君に、もっと寄り添ってあげたら良かったんじゃないかなって後悔したり、押しつけがましい事をしてるんじゃないかって考えたりする毎日です。でも・・・今は難しい事は考えずに、ガロウ君を一人ぼっちにさせない為にも彼に向き合いましょう。ガロウ君に対する接し方を悔いるのは、それからでも遅くは無いんじゃないですか?」

 

 

その言葉に、バング達は目を見開く。

 

 

「ホタル君や。」

 

 

「どうしましたか?」

 

 

「本当に、今年で20歳なのか?もしや・・・人生2周目とか。」

 

 

「もー。そんな事ある訳無いじゃないですか。・・・あ、そういえばなんですけど、バングさんにボンブさん。」

 

 

「ん?どうした?ホタルくんや。」

 

 

そう聞いてくるボンブに、ホタルは童帝との話し合いの内容を伝える。

 

 

「・・・という訳で、ボンブさんにも怪人協会突入メンバーに、加わって欲しいのですが・・・。」

 

 

「・・・ふむ。しかし、良いのか?バングは兎も角、ワシはヒーロ協会の人間じゃないぜ?」

 

 

そう言いながら顎髭を指で(もてあそ)ぶボンブに、ホタルは綺麗な人差し指を立てる。

 

 

「大丈夫です。今回の作戦は、一世一代の大抗争と言っても過言ではありません。なので、今回の作戦立案者のヒーローさんと話し合いをした結果、ボンブさんも突入してもらった方がいいと判断しました。それに、ボンブさんはヒーロ協会のリストに載っていない事から、怪人協会にマークされていません。つまり・・・。」

 

 

そう言葉を続けようとするホタルに、バングが重ねて声を上げる。

 

 

「お兄ちゃんが参入するだけで、怪人協会側の計画を狂わせてしまう可能性があるって事だな?」

 

 

バングの言葉に、ホタルは大きく頷く。

 

 

「はい。()わば、隠し玉の様な感じです。怪人協会側は、バングさんに対する対抗措置は考えているかもしれませんが、ボンブさんの対抗措置は考えていないと思います。それに、バングさんとの連携攻撃も想定していないと考えるのが妥当でしょう。」

 

 

「成程な・・・。」

 

 

そう呟くボンブは、暫く熟考した後に目を見開く。

 

 

「分かった。この老いぼれが何処まで役に立てるかは分からんが、一肌脱ぐとしようじゃねぇか!」

 

 

「本当ですか!?有り難うございます!では、当日はキングさんとフーちゃん先輩と共に突入してください。一応、レーダーで把握した限りの立体マップを渡しておきますね。」

 

 

そう言うと、ホタルは童帝と共に作り上げた立体マップが入っている端末を、その場にいる突入するメンバー全員に渡す。

 

 

「これ・・・ホタル君が作ったの!?」

 

 

「ほう・・・イマドキの機械の進歩はすげーな。」

 

 

「これがあれば、迷わずに済みそうじゃな。」

 

 

そして、ホタルはクセーノ博士にも端末を渡す。

 

 

「クセーノ博士。このマップデータを、ジェノス君に入れてあげる事は出来ますか?」

 

 

「ふむ。出来ん事は無いぞ?ラボに帰ったら、すぐにジェノスの脳内回路にインストールしよう。良いな?ジェノス。」

 

 

「はい!有り難う御座います!クセーノ博士、ホタル先生!」

 

 

そうして、ホタルはサイタマにもマップ入りの端末を送信しておく。

 

 

「はい。お兄ちゃんにも渡しておくね?」

 

 

「え?俺も?」

 

 

「うん。・・・お兄ちゃんはどうする?怪人協会に行く?」

 

 

そう首を傾げるホタルに、サイタマは能天気な表情で言う。

 

 

「あー・・・そうだな。怪人達とヒーロー達が激突するんだろ?そうなったら、騒音とかヤバそうだしな・・・。」

 

 

「もー、お兄ちゃん。もっと緊張感持ってね?はい、これが端末ね。壊さないでよ?」

 

 

そう言いながら、ホタルは気絶しているキングのポケットにも端末を入れ、鍋に箸を向けて大好きな野菜を食べていく。

 

 

そしてその横では、ジェノスが(しゅうとめ)のように各々に小言を言うが、サイタマが図々しくクセーノ博士に「また肉を持って来て欲しい」といった際に、サイタマにタメ口を使ってしまった事から土下座をし、サイタマはそんなジェノスに向かって「もう休め」と言い放った。

 

 

そして数十分後・・・鍋が(から)になり、キングとホタルとサイタマを除く各々は明日の怪人協会突入作戦の準備をする為に、サイタマ宅から出て行ったのだった。




「ふー、お腹いっぱい。いよいよ明日だね。」
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