最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
ガロウが、怪人協会のボスであるオロチに負けた数時間前・・・。
チュンチュンと小鳥がさえずる中、地上最強の男であるキングは目覚める。
「う、うーん。あれ?なんで俺、寝てるんだろ?」
そう身体を起き上がらせると、そこは見慣れない寝室だった。すると、ドアが開き入って来たのは・・・。
「キングさん。おはようございます。」
にこやかに笑うホタルであった。そんな彼に、キングは質問を投げかける。
「え?ホタル氏?えっと・・・おはよう。ここって?」
「この部屋は、普段ジェノス君が使っている寝室ですよ。ジェノス君は、クセーノ博士とラボに行って部屋が空いたので、ここに運んだんです。ぐっすり眠れましたか?」
「え?あ、ありがとう。せめて、布団畳んでおくね。」
「分かりました。御気遣い頂き、ありがとうございますね。では、準備が出来たら仰ってください。先程イサム君からメッセージがあり、S級集会をそろそろ始めるとの事です。」
「わ、分かった。」
そう言うと、ホタルとキングは家を出たのだった。
━━━━━━━━━━━
そして、集会所では欠席の常連であるブラスト、メタルナイト。そして、サイタマ宅に邪魔していたシルバーファング、キング。そして、単独で怪人協会に突入して以降連絡の取れない駆動騎士。Q氏に留まる事を優先した番犬マン。現在修理に出かけているジェノス。そして、入院中のタンクトップマスターと金属バット。そして、キングと共にヒーロ協会に向かっているホタルの計9名を除くヒーロー達が集まっていた。
そんな中、童帝が話し始める。
「それじゃあ、今回の作戦についての話し合いを始めるよ。」
その言葉に、S級ヒーロー達は頷く。
「皆に、お兄さん・・・。激雷の天使こと、ホタルさんと共同制作した立体マップを渡しておくね。侵入口に関しても、ホタルさんがありとあらゆる侵入口を探し当ててくれたから、分散して同時刻に各自突入する。ルート割り当ての説明はこれから・・・。」
その言葉に、クロビカリが質問を投げかける。
「せっかく集まったのに、ばらけて戦うのか?」
「それは怪人側も同じことだし、纏まって全滅する方が危険だ。互いの位置が分かるように、発信機も預けるよ。」
そう言うと、童帝はチカッチカッと点滅する発信機を全員に手渡す。
「人質の状態を考えると、なるべく短期決戦で。まずは誰か、一人でも人質に辿り着ければいい。」
その言葉に、閃光のフラッシュが顔を顰める。
「人質に辿り着くと言っても、このマップを見る限りかなり広大だぞ。どのくらいの時間で見つければ良い?まさか、
その言葉を、童帝は否定する。
「その心配は無いよ。マップに青い点滅が光ってる所が幾つかあるでしょ?それは、怪人じゃなくて人間の生体反応が確認された場所だから。そこを確認してくれればいいよ。」
「人間の生体反応だと?そんな物、どうやって分かったんだ?」
「それも、ホタルさんの能力だよ。ホタルさんのレーダーは、位置だけではなくその位置に居るのが怪人か人間なのかを見分ける能力があるからね。」
その言葉に、プリズナーが反応を示す。
「成程・・・流石はホタルきゅん。・・・と言いたいところなんだが、マップを見る限り一つだけじゃなくて数カ所青い点滅があるぞ?人質は一人じゃないという事か?」
その言葉に、ゾンビマンが考えを示す。
「いや・・・恐らくは、人間でありながら怪人協会に付いてる連中もいるって事だろう?」
その言葉に豚神も見解を放ち、童帝はその言葉を肯定する。
「つまり、人質じゃない限りは基本的に捕獲・・・っていう形で良いんだね?」
「そういう事。あとそれから、S級以外のヒーローとしてアトミック侍さんの三弟子以外にもあと二人突入させるつもりだよ。」
その言葉に、アトミック侍は眉を寄せる。
「S級以外でだと?・・・弟子達を連れて行く俺が言うのもなんだが、その二人ってのは誰なんだ?」
その質問に大きく息を吸い、童帝は言葉を発する。
「まず一人目は、シルバーファングの兄である旋風鉄斬拳の達人であるボンブさん。そして・・・現B級ヒーローであり、・・・ホタルさんのお兄さんでもある。ハゲマントさん。宇宙船襲来時に、S級会議に出席してた人だよ。」
その言葉に、タツマキは目を見開く。
「ハゲマント・・・。あいつも参加するのね。」
そして、先程まで黙っていたセキンガルも何かを思い出す様な声を上げる。
「・・・そういえば、前に眼鏡を掛けた職員が言ってたな。ヒーロー協会の歴代体力測定の記録を大きく塗り替えた、ヒーローが居ると・・・。民衆達からは、インチキ扱いされているらしいが。まさか、そのヒーローが・・・。」
「うん。そのヒーローこそ、ハゲマントさんだよ。そして、ハゲマントとホタルさんは今作戦の切り札になり得る存在だからね。ハゲマントがホタルさんの証言通りの強さなら・・・。」
その言葉に続けるように、ゾンビマンも言葉を発する。
「状況を、一気にひっくり返す事が出来るかもしれねぇって事か。」
「そういう事。」
童帝の言葉を聞きつつ、ゾンビマンは思考を巡らす。
(ランキングはB級と言えども、本質的な強さはタツマキと同等クラス・・・。いや、それ以上の可能性。なぁ、ジーナス。まさかお前が言っていた全ての髪を代償に、圧倒的な強さを手に入れた男ってのは・・・。)
そのとき、閃光のフラッシュが何気ない質問を飛ばす。
「しかし童帝。先程からお前は、激雷の天使の事を随分と推しているな。何故、奴の事をそこまで推す。・・・正直に言うが、俺は奴をそこまで気に入っていない。いや、寧ろ奴は怪人協会側のスパイなんじゃないのか?」
その言葉に、アトミック侍が驚きの声を上げる。
「どういう意味だフラッシュ!」
「・・・奴は、確かにレベル竜を倒す事の出来る実力者だ。先日の宇宙人襲来時も、多大な戦果を挙げたと聞く。だが・・・それと同時に、怪人に情けをかける事もあると聞くが?海人族が襲来したときも、長である深海王に止めを刺さなかったと聞く。・・・アトミック侍。御前もシルバーファングと共に、深海王の一件に一枚噛んでいると聞いているが?」
暗殺者という薄汚れた世界に身を置く立場から、ホタルの甘い考えに苦言を呈するフラッシュ。
しかし、アトミック侍は毅然とした態度を取る。
「フラッシュ。確かに、俺からしても坊は甘い考えを持っていると思う事も多々ある。だが、結果的に深海王の一件は丸く収まった。それに、仮に坊が深海王の正体が女神様だって事を気付かずにトドメを刺していたなら、今度こそ海人族が本気を出して侵攻してきていた可能性があったかもしれん。それこそ、S級でも捌き切れないレベルのな。結果的に全て丸く収まったんだから、今更そんな重箱の隅を突くような事を言うんじゃねぇよ。」
「・・・・・・フン。」
フラッシュの鋭い視線が止んだ事を確認した童帝は、その話題に乗っかる様にガロウの一件を伝える。
「・・・それから、人間怪人ガロウの件なんだけど。」
その言葉に、S級達の間に緊張が走る。
「ガロウに関しては発見した場合、捕獲を最優先で動いて欲しい。捕獲した後は・・・、ガロウをホタルさんの所に連れて行く。そして・・・こちら側の戦力に引き入れる。」
その言葉に、タツマキが大声を上げる。
「は、はぁぁ!?童帝!あんた何言ってんの!?人間怪人を、こっちに引き入れる!?冗談もほどほどにしなさいよ!」
「待って待って!取り敢えず、話を聞いてよ!・・・えーっとね、協会職員のセキンガルさんが居る目の前で言うのもなんだけど・・・。」
そうして、童帝はホタルがガロウを見逃がしたという点をぼかしながら、大体の事を話した。
「・・・という訳。お兄さんの話を聞く限り、ガロウは完全な悪人じゃなさそうだし上手くいけばこっちに引き入れる事が出来る可能性がある。」
その童帝の証言に、その場にいる全員は頭を抱える。そんな中、タツマキが辛うじて言葉を発する。
「・・・ホタルが、嘘を吐けるような奴ではない事は分かるけど・・・。全然、頭に内容が入ってこないわ。ガロウが・・・ホタルの元後輩・・・?」
続いてアトミック侍も、眉間の皺を揉みながら呻き声を上げる。
「ぬぉぉ・・・、マジか・・・。だが、確かにガロウはヒーローのみを標的にしている訳だし腕試し好きなチンピラと考えたら、確かに殺すほどではない・・・か?」
「はぁ・・・面倒な事に成ったな。」
そう嘆くフラッシュに続いて、プリズナーも発言をする。
「うーむ・・・。ホタルきゅんは、確かに怪人にも情けを掛ける事で定評はあるが・・・。いや、だがホタルきゅんの人を見る目は確かだしなぁ・・・。現に、深海王を改心させてしまったわけだし・・・。信じろとは言わないが、頭の片隅に留めておく程度で良いんじゃないか?」
「プリズナー、御前まで・・・。はぁ・・・、お前達で勝手にしろ。俺はどうなっても知らんからな。」
プリズナーのその言葉に渋々頷いたフラッシュを含めた全員が納得したとき、童帝の背後の自動ドアが開いた。そして入って来たのは、イケメン仮面アマイマスクだ。
「おい。君達・・・。待機室に居ないと思ったら、今回のチームメイトである僕を抜きで秘密会議とはどういう了見だ?」
そんなアマイマスクの登場に、童帝は気まずそうにする。
「アマイマスクさん。いえ、決して除け者にしようって訳じゃなくて。まずはS級の皆だけで話し合って、情報の確認を使用かと・・・。」
「何故S級だけ?僕を含めて、他にもメンバーがいるだろう?」
その質問に対し、童帝は更に冷や汗を流す。
「あ、えっと・・・。(S級以外は地上でのサポートに回す予定・・・。それを伝えたら、どうせ直前で突っ掛かってくるから直前まで黙っとこうと思ったんだけど・・・。さて、どうすればプライドを傷つけずに説得できるかなぁ・・・。)」
そんな風に悩みに悩む童帝の気持ちを無視するかの如く、タツマキが辛辣な言葉を投げかける。
「何でって、皆あんたが嫌いだからよ。」
「違う違う!そんな事無いですよ!タツマキちゃん、拗れる様な事言わないでよ!!」
そして、童帝は包み隠さずアマイマスクにして欲しい事を御願いする。しかし、アマイマスクは少し苛ついた声で話し始める。
「僕が地上待機だと?どういう事だ?」
「はい・・・つまり、今回は地下の突入班と地上でのサポート班の二つで動くので、アマイマスクさんの指揮能力を生かして貰ってですね・・・。サポート班のリーダーをお任せ出来たら嬉しいなと・・・。」
その言葉に、アトミック侍も乗っかる
「深部に攻め入るのは、俺達だけでやる。取りこぼした怪人の処理は頼んだぞ。ま、俺は弟子達も連れて行くがな。」
しかし、そんな彼の言葉を無視するかのようにアマイマスクは一蹴する。
「駄目だ。君達だけじゃ頼りない。僕も突入する。」
(やっぱり言い出した。)
そう汗を流す童帝の苦労も知らず、タツマキはアマイマスクに反論する。
「ハッキリ言わないと分かんないの?あんたのレベルじゃ、この戦いについてこれないのよ!戦力外なの!!」
しかし、アマイマスクは何処吹く風とタツマキの言葉を無視する。
「童帝・・・、分かっていないようだな。僕の指揮力を生かすなら、S級のキミ達が僕の下に就くべきだ。」
そんなアマイマスクの持論に呆れたように、ゾンビマンはタバコの煙を吐き出す。
「・・・俺達がお前の下に?冗談は名前だけにしてくれ。欲しいのは手柄か?俺の分はくれてやるから、童帝の指示を聞けって。これから、大勢の怪人と戦いに行くんだ。足を引っ張り合ってる場合じゃないだろ。」
しかし、そんなゾンビマンに蔑むような視線を向けながらアマイマスクは言葉を発する。
「・・・ゾンビマン。君は何故不死身なんだ?不気味だな。本当は怪人なんじゃないのか?」
「なんだと・・・?」
その言葉が気に障ったのか、先程まで仲介役に徹していたゾンビマンまでもが怒気を放ち険悪な雰囲気が漂い始める。そんな様子を知ってか知らずか、アマイマスクは更に言葉を続ける。
「戦闘力のみで評価されてS級という席を設けられてはいるが、その正体はどれも怪しいもんだ。本当に、味方だと思って良いのかどうか。」
そんな様子に、S級でも割と常識的な面を持つクロビカリが待ったをかけようとする。
「コラコラ・・・。挑発はそこまでにしとくんだ。良く無いぞ、ヒーロー同士で。」
しかし、そんなクロビカリの言葉に乗っかるかのようにアマイマスクは続ける。
「そう・・・、プロのヒーローの筈なのに・・・。地位に
その言葉に堪忍袋の緒が切れたのか、タツマキが立ち上がる
「てゆーか、アンタこそなんでアイドルと兼業なの!?変なの!!イケメン仮面って言うほどイケメンじゃ無いからね!アンタ!そこ分かってる!?」
「おっ、落ち着いて。アマイマスクを怒らせると、マスコミに叩かれて大変だぞ。」
怒りに燃えるタツマキをクロビカリが宥めるが、アマイマスクは更に続ける。
「管理命令されてこそヒーローに成れるのが、キミ達S級なんだろう?でなければ、戦力が高いだけの
その言葉に、流石の男色家であるプリプリプリズナーも怒鳴り声を上げる・・・。
(強引なイケメンとの主従関係か・・・。悪くないが、悩ましいな・・・。)
そんな事は無く、訳の分からない事で悩んでいた。そんな彼の代わりに、フラッシュが絶対零度の怒気を向ける。
「力づくで従わせてみたらどうだ?出来るものならな。」
その絶対零度の瞳と声色に、会議室はシン・・・と静まり返る。次の瞬間、アマイマスクの首筋の血管が隆起して闘気が露わになる。
「出来ないと思ってるのか?」
その気に呼応するかのようにフラッシュも冷ややかな殺意を露わにするが、アトミック侍がそれを制する。
「おい、冗談じゃ済まんぞ。その殺気止めろ、フラッシュ。」
「そいつ次第だ。作戦の邪魔になるのなら・・・。」
会議室内で、ヒーロ協会の上位戦力者たちの抗争が始まろうとしたその瞬間!職員の大声が響いた!
「キング様とホタル様が、御到着です!!」
その声に全員が扉の方を向くと、キングエンジンを鳴らしながら入ってくるキングと何やら小袋を持ったホタルがそこに居た。そしてホタルは挨拶をしようとするが、会議室内の異様な空気を察する。
「皆さんお待たせしました!・・・あれ?け、険悪ムード?あ、アマイさんも居たんですね!」
そのホタルの明朗ぶりに毒気を抜かれたアマイマスクの怒気が、少し収まる
「え、あぁ・・・。」
「えっと・・・イサム君?何があったのかな?」
「え、あ・・・。実は・・・。」
そう言うと、童帝はなるべくオブラートに先程の様子を話し始める。
「うーん・・・、成程。アマイさんを、突入メンバーに入れるかどうかで揉めてたんだね?」
「は、はい。」
その童帝の肯定の言葉に、ホタルは納得が言ったか゚の様に頷きアマイマスクの方に向き直る。
「僕は・・・。アマイさんが突入する事に賛成かな?」
その言葉にアマイマスクは大きく頷くが、タツマキは反論する。
「ホタル!?あんたガチで言ってんの!?こんな足手纏いが来たところで、状況が悪化するだけよ!!」
「ですが・・・。アマイマスクさんはA級1位に甘んじているだけで実力は折り紙付きですし・・・。」
その言葉にアマイマスクは「どうだ?」といったような顔を向けるが、次のホタルの言葉に硬直する。
「ただ一点の弱点を除いて。というより・・・その弱点は、この場に居る数人の方々にも当てはまりますが・・・。」
「な、何だい?その弱点とは。」
そのアマイマスクの言葉に、ホタルはキッパリとシンプルに答える。
「協調性の無さと、相手の意思を尊重する力です。」
その言葉に、アマイマスクを含めた心当たりのある数人は目を逸らす。そんな彼らを他所に、ホタルは童帝に問いかける。
「今回のチームリーダーは、イサム君だったよね?」
「あ、はい。」
その言葉に頷くと、ホタルは全員の方を向き直る。
「皆さん。今回の怪人協会の突入作戦では、散らばっているとはいえ互いの連携が必要になる事も多く成るでしょう。それ故に、御互いを尊重する心や協調性が無ければ今回の作戦は成功致しません。」
ホタルのその言葉に、全員が押し黙る。そんな中、ホタルは全員に向けて頭を下げる。
「どうかお願いします。皆さんの我の強さや、各々の強さに対する絶対的な自信は揺ぎ無いものであるとは承知しております。ですが、今回だけはどうか御互いを尊重しつつ任務に臨んでは頂けないでしょうか。」
ホタルの言葉が終わると、最初に口を開いたのはゾンビマンだ。
「激雷の天使はこう言ってるぜ。お前らはどうなんだ?」
その言葉に反応したのは、意外にもアマイマスクであった。
「・・・ふん、良いだろう。今回ばかりは、協力してやろうじゃないか。」
その言葉を皮切りに、各々も声を上げる。
「坊の言う通りだな・・・。こんな所で瓦解してたら、始まるもんも始まんねぇ。」
「そうだな!やはり、皆が協力してこそだ!」
「チッ!仕方ないわね・・・。但し、私の攻撃に巻き込まれて死んでも文句言わないでよ。」
「フンッ・・・。」
先程までは、一触即発であった会議室。しかし、今では僅かながらではありながらも協調性が生まれつつあった。その光景に、童帝は感嘆する。
(凄い・・・。さっきまで、険悪だったのに・・・。)
そんな中、ホタルが声を掛ける。
「イサム君。みんな落ち着いたみたいだし、会議を続けて大丈夫じゃないかな?」
「え?あ。そ、そうですね。ところでキングさん。その服の汚れは・・・?」
そのイサムの質問に、先程まで黙っていたキングはしどろもどろに成りながら口を開く。
「え?あ・・・これは、鍋・・・。」
そうキングが言おうとした瞬間、ホタルとキングを連れてきた2人の職員が声を上げる。
「キング様は一晩中、Z市的拠点周辺にて単独闘っておられたのです!」
「衣服の汚れは、怪人の返り血!その証拠に、正面からのみ浴びた形跡があります!」
「しかし敵の多さに体力消耗し、一時撤退したところを私共が声をかけホタル様と共に、同行を御願いしたのです!」
職員達のその証言にキングは困ったようにホタルに顔を向けるが、ホタルはこれ以上話を拗らせたくなかったので首を緩やかに降るのだった。
「あ。それから話が行ってると思いますが、シルバーファングさんとその兄であるボンブさん。それからフーちゃん・・・じゃなかった。地獄のフブキさんは、キングさんと同じ突入ルートに入る事に成りますので宜しくお願いしますね。」
ホタルのその言葉に、フブキとホタルの仲をそれとなく知るタツマキとキングは兎も角、フブキとホタルの仲を知らない面子は(フーちゃん・・・?)と首を傾げたものの了承したのだった。
━━━━━━━━━━━━━
S級達とアマイマスクが会議室に居る中、会議室から抜け出していたセキンガルはシッチと共にエレベーターに乗り、何処かに向かっていた。そんな中、セキンガルが窓の外を見ながら呟く。
「毎日眺めるこの光景を、戒めと出来るかどうか・・・。」
その言葉に、シッチも呟く。
「正念場だな。」
「あぁ、サポートメンバーは15人集まった。これで出発する。」
そんなセキンガルに、シッチは質問を投げかける。
「それでも、圧倒的不利な状況には変わらないが・・・。お前、直接現場まで行く気か?」
「あぁ。責任者として、最後まで見届ける。」
「お前が、そんな気骨ある男だとは見直したぞ。出世欲だけで動いてるもんだと、思ってたからな。」
しかし、そんなシッチの言葉をセキンガルは鼻で笑いながら否定する。
「ふっ、ピンポン。それは間違ってないさ。これは、一世一代の大勝負だ。怪人協会を倒せば昇進は確実な上に、歴史に私の名が残る。」
そして、チンという音と共にエレベーターの扉が開く。そこには、総勢15名のA級以下のヒーロー達が集まっていた。そんな彼らに、セキンガルとシッチは挨拶をする。
「良く集まってくれた。セキンガルだ。」
「シッチだ。各自、今日の任務については理解してるな?」
その問いに対して、へそ出しタンクトップに短パン姿で首から3つのメダルを下げた女性ヒーロー。B級71位の
「はいっ!種目はS級のセンパイ方の
「う・・・うむ。(種目・・・?)」
そんなミズキの快活っぷりに呆然としているシッチの横で、セキンガルが咳払いをする。
「ゴホン・・・そう。具体的には、逃げ出した残党の駆除や退避ルートの確保。子供の保護と・・・。」
そしてシッチが続ける。
「S級が突入し人質を救出したら、その保護を引き継いで本部まで無事に送り届ける事。それが一番、重要な仕事だ。」
その言葉に、ウルヴ●リンの様な鍵爪を生やしたA級34位ヒーローのフェザーが答える。
「人質は重役の息子だそうだが・・・、関係無いから安心しろ。いくら俺達が上層部を嫌いでも、きちんと役目は果たすさ。」
そんなフェザーの言葉に、ネガティブそうなスナイパーヒーロー。A級22位の
「そんな目に遭うだなんて・・・。イイトコに生まれても、大変なんだなぁ・・・。」
「一刻も早く助け出そう!!」
そんなフトマユゲに、ヘッドギアを付けたC級133位ヒーローのギアスパーが苦言を呈する。
「とはいえ・・・怪人の巣をつついて何が飛び出すか、まだ見えませんからね。当然罠もあるでしょうし、これは中々のデンジャラスブリッジですよ・・・。」
そんな中、鉄球が先に付いた鎖を持ったスーツ姿の男が風船ガムを噛みながらセキンガルに質問する。
「ダンナ、ちょっと良いかい?」
「何だ?」
その男の名は、B級60位のニードルスターだ。彼は、風船ガムを膨らましながら言葉を続ける。
「俺達ゃ、得体の知れない敵の懐に飛び込むリスクを負うんだ。ヒーローランキングの順位アップくらいは前もって確約して貰わねーと、割に合わねぇや。」
その要求を、セキンガルは了承する。
「・・・分かった。約束しよう。」
その言葉に、その場にいたヒーロー達は歓喜の声を上げる。そんな中、小声でシッチはセキンガルに声を掛ける。
「セキンガル。本当に、彼等で大丈夫なのか?」
「心配するな。あの中の何人かは、将来的にはS級への出世もあり得る有望株なんだ。私の見込みではな・・・。どうだシッチ?人類を守る盾は、なかなか分厚いと思わないか?」
その言葉に、シッチは不安そうな顔で頷くしかなかったのだった。
━━━━━━━━━━━━━
一方でS級会議が終わり、突入時刻が差し迫る中ゾンビマンは協会内のトイレで一服していた。そんな中思い出したのは、アマイマスクの一言だ。
『本当は、怪人なんじゃないのか?』
その言葉を振り払うかのように、タバコを吸っているとトイレの扉が開いた。
「突入前にちゃんとおトイレに・・・。ってあれ?ゾンビマンさん?」
「おっ、激雷の天使か。あー・・・、便所か?」
「は、はい!突入前に行っておいた方が良いかなと・・・。」
そう笑顔で返事をしながらも、僅かに眉を寄せるホタルの様子に気付いたゾンビマンはタバコの臭いが原因だと気付き、タバコを手の甲に押し付けて消す。
「悪いな、いつもは誰も来ねぇから無意識に吸っちまってた。」
「あ!す、すみません!大丈夫ですか!?手の甲が火傷を・・・!」
そう慌てるホタルに、笑いながらゾンビマンは手を振る。
「気にすんな。今の御時世、タバコに嫌悪感を抱くのも普通だからな。それに、俺はこの程度じゃ痛みも感じねぇし怪我も直ぐに治るからな。」
その言葉にホタルは押し黙るが、ゾンビマンはそんな彼に気を遣ったのか自嘲気味に言う。
「怪人みてぇだろ?こんな直ぐに治るなんてな。」
そう笑いつつも、何処かもの憂い気な感じのゾンビマンの感情に気付いたホタルは恐る恐る問う。
「あの・・・。もしかして、アマイさんに何か言われましたか?」
「ん?」
「す、すみません!その・・・協会の会議室に向かう途中で会議の内容を聞こうと聴覚を強化していたのですが・・・。その中で、アマイマスクさんがゾンビマンさんに吐いた暴言が耳に入って来てしまったので・・・。」
そう気まずそうに言うホタルに、ゾンビマンは困ったように笑う。
「聞かれちまってたか。」
「はい・・・。ご、ごめんなさい。」
そう言って顔を伏せるホタルの頭を、ゾンビマンは優しく撫でる。
「気にすんな。本当の事だからな・・・。なぁ、激雷の天使。一つ聞いて良いか?」
「はい・・・?」
「お前、進化の家って知ってるか?」
その言葉に、ホタルはビクッとするが正直に答える。
「・・・はい。ジーナス博士という方が、新人類を作る為に作った研究施設と。」
「そうか。なら、もう一つ聞いて良いか?」
「は、はい。」
「進化の家を潰したのは、お前とB級7位のハゲマントか?」
その言葉に、ホタルは少し俯いてしまう。
「・・・そうだと申し上げましたら、どうなさいますか?」
その質問にゾンビマンは爽やかに笑う。
「どうもしねぇよ。なんなら、感謝したいくらいだ。あんなクソのような組織をぶっ壊してくれたんだからな。」
その言葉に、ホタルはホッとしたような顔に成るが質問を投げかける。
「あの、ゾンビマンさん。ゾンビマンさんは、あの施設と何か関係がおありなのですか?」
「あぁ・・・。俺はな、あの実験施設で不死身の生物を作る実験・・・。不死身シリーズの"実験体サンプル66号"の被検体だったんだよ。」
その自供に、ホタルは息を呑む。
「つまり・・・。ゾンビマンさんの驚異的な再生能力は、進化の家での影響・・・だからですか?」
「あぁ。まぁ、この体のおかげでヒーロー活動を続けてこれた事には感謝してるがな・・・。」
ホタルに気を遣いつつも口寂しいのか、火を付けずに煙草を咥えているゾンビマンにホタルは複雑そうな顔に成る。
「ゾンビマンさんは・・・どう思っているんですか?」
「まぁ、今更どうこう言ってもしょうがねぇからな。この体質を受け入れるしかねぇよ。まぁ、爆発物を処理するときに毎回裸になる所為で服の出費が増えるのが悩みだがな。悪いな、こんな話して。」
そう言って話を切り上げようとするゾンビマンの手に、温かいものが触れた。ホタルが、ゾンビマンの手に自らの頬を触れさせたのだ。その様子に、ゾンビマンは少し困惑した顔に成る。
「お、おい。どうした?」
「・・・温かいです。」
「・・・は?」
「ゾンビマンさんの手が、温かいんです。大きくて、ポカポカしてて温かい・・・。人を安心させる様なそんな掌です。こんなに温かい人が、優しい人が・・・。人に危害を加える怪人さんとは僕は思えません。」
そうニコリと笑うホタルにゾンビマンはポカンとした後、プッと吹き出す。
「そうか。温かいか?俺の手は。」
「はい!」
そんなホタルの髪を撫でながら、ゾンビマンは礼を言う。
「ありがとうな。少し靄が晴れた気がするぜ。礼と言っちゃなんだが、この作戦が終わったら茶でも飲みに行かねぇか?っと、こんな事言ったら死亡フラグに成っちまうか?」
そう冗談めかして言うゾンビマンに、ホタルは笑いかける。
「もう、縁起でもない事言わないでくださいね?」
そう笑い合いながら、二人はトイレから出て集合場所に向かうのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━
ゾンビマンとホタルが談笑しながら集合場所に向かっていたとき、別の場所ではキングがシルバーファング達の所に居た。
「そうか・・・。皆、ガロウを討伐ではなく捕縛の方向で納得してくれたのか。」
「あ、あぁ。童帝氏が、皆を納得させてくれたみたいで・・・。ボンブ氏とフブキ氏の作戦参加も認めてくれたみたい。あとは、サイタマ氏の件も認めてくれたっぽい。」
その言葉に、バングとボンブも頷く。
「そうか・・・。」
「いよいよだな。ガロウと今度こそ対話が出来たら良いな。」
「うむ・・・!ワシの師としての責任を果たす為じゃ。行かせてもらうぜ!」
「分かった。じゃあ、昨日と同じくサイタマ氏の家で落ち合おう。」
そのキングの言葉に、バングとボンブは頷き合う。
「オッケーじゃ。先に行って、待ってるぜ。」
その言葉に返事をしながら、キングは部屋を出る。
「では、また後で。(あー、助かった。これで一安心だ。)」
そしてキングも、ホタルとゾンビマンに遅れる形で集合場所に着く。そんな彼に、童帝は問いを投げかける。
「あ、キングさんも戻って来た。何かあったんですか?」
「いや・・・何の問題も無い・・・。」
その様子に、アトミック侍も何かを勘付く。
(キングエンジンが、鳴りやんでいる・・・。研ぎ澄ましてきたか。)
否!単純に、ホッと一安心しただけである!しかし、キングの強さを誤認しているアトミック侍を含むその他大勢は、童帝の声と共に歩き出す。
「じゃあ、向かおう。みんな、準備は良いね?・・・行くぞ!!」
その言葉と共に、ヒーロー協会の人質救出作戦が始まったのだった!
「会議終了!突入開始!!」