最強のハゲには、男の娘かつ最強電気使いの弟がいる 作:雨を呼ぶてるてる坊主
アトミック侍に出会った次の日。彼からヒーロー名簿なるもの教えてもらったホタルは、ヒーロー協会主催のヒーロー試験会場に来ていた。
「わぁ~。ここがヒーロー試験会場なんだ・・・!えっと、お兄ちゃん
そう言って後ろに居た筈の兄と弟子の方を振り向くが、彼らは居なかった。
「あ、あれ?はぐれた・・・?ど、どうしよう・・・。」
なんと、はぐれてしまったのだ。この弟、電車の乗り換えが苦手なタイプである。しかし、そこへ声が掛かった。
「どうしたんだ?」
「ひゃ・・・!あ、あの・・・、あなたは・・・。」
そこには三白眼の、スーツを着た男性が立っていた。
「ここの試験面接官かつ、A級ヒーローのスネックだ。試験者か?」
「は、はい!僕、ここに居るヒーローさん達みたいなかっこいいヒーローになりたくて・・・。」
そう愛らしくモジモジしながら、上目遣いをするホタルにスネックは少し見惚れる。
「そ、そうか・・・。受付はあっちだぞ。」
「ありがとうございます。頑張ってきますね!」
そう言って頭を下げて受付の方向に向かうホタルを見ながら・・・
「お、おう・・・。(可愛い奴だったな。)」
と、思うスネックだった。
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そして、受付では三人の受付嬢が
「今回も大勢来るわね~。」
「けど、どうにもこうにもむさ苦しい人達が多過ぎよ。」
「さっきの試験者なんか、私の胸をやらしい目で見ながら書いてて気持ち悪いったらありゃしないわ!!さっさと、必要事項欄書けっての!!」
「あんたの胸、デカいもんね~。」
散々な言われようである。
「もうちょっと、可愛い子が来てくれたら・・・、望みを言うなら男の娘!!」
「男の娘なんて
そう話していると、恐る恐る声が掛かった。声の主は勿論、リアル男の娘のホタルであるが受付嬢達は女の子だと勘違いしている。
「あ、あの~。」
「は~い。試験希望者かな?(女の子キタ━!!)」
そう言うと、受付嬢達は笑顔で対応する。
「試験を受けに来ました。」
「じゃあ、ここの必要事項に書いてね。」
そう言うと、受付嬢の一人がホタルに書類を手渡す。
「わ、分かりました。」
そう言うと、ホタルは丸っこいあんず文字で書き始める。
(一生懸命書いてる~。丸っこいあんず文字で可愛い~・・・ん?)
そうして、一生懸命なホタルに受付嬢達が癒されていると、一人の受付嬢がホタルの性別欄に注目する。
「君、性別欄間違えてるよ。男の子になっちゃってる。」
「お姉さん達が直しといてあげるね。」
そう言って、訂正してあげようとする。
「あ、あの・・・」
その行動にホタルは待ったを掛けようとするが、受付嬢達はマシンガントークで話しかけて来る。
「けど、大変ねー。こんな所に足を運んじゃうなんて。」
「大変かもしれないけど、頑張って・・・。」
そう言って、同情の目を向ける受付嬢達にホタルは待ったを掛ける事に成功する。
「ち、違うんです。」
「へ?」
そう気の抜けた表情をする受付嬢達に・・・
「僕、男の子です・・・。」
と、顔を真っ赤にしながら言うと
「「「ゑ・・・?」」」
受付嬢達はスペースキャットと化した。
そうしてホタルが受付から試験会場に向かった後、受付嬢達は試験者そっちのけで男の娘議論を交わしていたとか何とか・・・。
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そうして、試験会場に入ると周りにはホタルよりも大柄で屈強な男達が勢揃いしていた。
「・・・す、すごい。やっぱりみんな大きい男の人ばっかりだ・・・。」
そう唖然とするホタルに、一人のマッチョが話しかけて来る。
「おいおい、何だてめぇは?」
「え・・・?」
「ここはヒーロを目指すための試験だ。てめぇみたいなひょろひょろ野郎はお呼びじゃねぇんだよ。」
その言葉に、周りの男達も嘲笑する。
「チビは、帰ってママのおっぱいでも吸ってろよ。」
「ギャハハ!幾ら本当の事とはいえ、失礼過ぎんだろ~。」
その言葉に、ホタルは気の抜けた表情をしながら返事をする。
「は、はぁ・・・。」
そうしていると、試験官から号令が飛ぶ。
「では、試験開始!そこの、女の子・・・、間違えた。男の子から!!」
そうしてホタルが前に出ると、男達から野次が飛ぶ。
「さっさと終わらせて、交代しろよな~。」
「まずは、砲丸投げ!!」
その試験官の言葉に、ホタルは砲丸を持ち上げる。
(これを投げたら良いのかな・・・?あれ?いつも投げてる砂鉄槍よりも軽い・・・?)
そう疑問を感じつつも、ホタルは軽めに投げてみる。
「えいっ。」
すると、目にも止まらぬ速さで砲丸は飛んで行き、試験会場の壁をめり込ませ衝撃で会場内が少し揺れた。
「記録!分からん!!うーん・・・。メッチャ凄い!!次ぃ!パンチングマシーン!!」
「やぁっ!!」
ホタルが拳を振るうと、パンチングマシーンは吹っ飛んでいく。
「さっきのハゲ同様、壊れたぞ!新しいの持って来い!!次ぃ!反復横跳び30秒!!」
(運動神経伝達速度向上!!)
反復横跳びでは、30以上の残像が見えるくらいの速さで飛び回る。
「残像が見えるくらい早い!!次ぃ!1500m走!!」
踏み込みの衝撃で床がめり込み、1秒もかからずにゴールテープを切る。
「踏み込みで床が壊れた!!修復班!!次ぃ!重量上げ!!垂直飛び!!」
それからも、筆記試験、論述試験、模擬実戦試験など様々な試験で高得点を叩き出した。それを見ていた野次馬達は・・・
(今回は諦めよ・・・。)
冷や汗をかき、会場から去っていったのだった。
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そうして、全ての試験を終わらせると兄と弟子の元に向かう
「試験終わったよ~。」
ホタルの声に、サイタマとジェノスが振り向く。
「そっちもか。」
「ホタル先生も、お疲れ様です。」
「どんな感じか身構えちゃったけど、優しかったね。」
そうにこやかに笑うホタルに、サイタマも頷く。
「そうだな。」
「点数が出るようです。70点以上が合格・・・。まぁ、筆記の方はあの内容だと満点は当たり前なので、問題は体力テストですが、先生達と俺なら余裕でしょう。」
しかし、その言葉にホタルはサイタマの中学時代の成績を思い出す。
(あれ・・・?お兄ちゃんって中学生のとき、テストの点数・・・。)
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そして、1時間後・・・。試験結果が返却される。
「100点でした。ん?S級ヒーローに認定すると書いてありますね。どういう意味なんでしょう?ホタル先生は?」
そのジェノスの問いに、ホタルも答える。
「僕も100点・・・、S級5位って順位まで書いてるね。ランク付けの意味って・・・?お兄ちゃん?」
そうホタルがサイタマの方を見ると、サイタマは乾いた笑いを浮かべる。
「・・・受かりましたよ。71点のC級ですけどね・・・。」
そんなサイタマの絶望顔に、ジェノスが憤怒の表情を見せながら殺気を出す。
「責任者に直訴してきます。」
そう言って責任者室に向かおうとするジェノスを、サイタマは必死に止める
「ごめん止めて!俺が恥ずかしいから!多分筆記!筆記が原因だから!」
その様子の兄に、ホタルは同情の眼差しを向ける。
「やっぱり、筆記駄目だったんだね・・・。昔から筆記テスト苦手だったもんね・・・。」
すると、館内アナウンスが流れ始める
「ホタル様、ジェノス様、サイタマ様。16時より合格者セミナーを行います。第3ホールまで来てください。」
「来てくださいじゃなくて、お越しくださいじゃないの・・・?」
そのアナウンスの言い方にホタルが突っ込みを入れるが、サイタマはあっけらかんとした様子で
「細かい事は気にすんなよな。合格しちまえば、もうこっちのもんだ。さっさと済ませて帰ろう。」
そう言うと、最強兄弟と弟子は第3ホール室に向かったのだった。
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そうして第3ホール室のドアの前に着くと、ホタルはドアをノックする。
「失礼します。今回、合格通知を頂いたホタルです。失礼いたします。」
「入ってくれ。」
中から返事が返ってくると、ホタルは慎重にドアを開けるとそこに居たのは・・・
「こんにちは~・・・。って、あ。さっきの・・・、スネックさん?」
「お、君は・・・。そうか、S級になったんだな。それに、いきなり5位とは・・・。まさか、越えられるとはな・・・。」
そう言って苦笑するスネックに、ホタルは恥ずかしい様に手を振り
「そ、そんな・・・!で、でも業界としては後輩なので、御指導
そう言って頭を下げるホタルに好印象を抱いたのか、スネックもにこやかに挨拶をしようとした。
「あぁ・・・。よろし・・・。」
その時であった。
「何してんだ?さっさと終わらせて帰ろうぜー」
サイタマとジェノスが入室してくるが、その態度にスネックは驚愕する。
(な、何だあいつは・・・!せ、セミナーが始まるというのにガム・・・だと・・・!)
なんとサイタマは、ガムを噛みながら入ってきたのである。そんな兄を、ホタルは注意する。
「お兄ちゃん。セミナーなんだから、ぺっしよ。」
「へーへー。」
そんな兄弟のやり取りに・・・
(この品行方正を具現化した子の兄だとぉぉぉぉ!!??)
スネックは心の中で絶叫した。宇宙猫ならぬ、宇宙蛇の誕生である。
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そうして何やかんやありつつセミナーが開始され、スネックが教壇に立つ。
「まずは合格おめでとう。」
しかし、そんな様子にサイタマはボケーっとして聞いており、ジェノスは何処か面倒くさそうにしており、真面目に聞いているのはホタルだけである。
「・・・・・・」
(お兄ちゃん・・・、お話は聞いてるんだよ・・・ね?)
そう心配するホタルを他所に、スネックが
「・・・一名はギリギリのまぐれだったようだが・・・。このラッキーを無駄にしないよう、せいぜい努力するんだな・・・。」
その言葉に、ホタルはシャキッと返事をする
「分かりました!」
「良い返事だ!だが浮かれるなよ!今後はヒーローとしての自覚をもって、節度ある生活を心掛けるように!君達の顔は、ヒーロー協会の公式ホームページに公開される事になるんだからな!」
しかし、そんなホタルとは対照的にサイタマはボケーっとしている。
「・・・・・・。」
「・・・聞いているのか?その間抜け面が、全国に晒されるんだ。恥をかきたくなかったら・・・。」
そう言うとスネックは手足を素早く動かし、ポーズを取る。
「俺の様な立派なヒーローを目指せ!!」
そう一喝するが、サイタマは目を開けたまま
「・・・・・・・・・。」
そんな兄の肩を、ホタルは優しく揺する。
「お、お兄ちゃん・・・、起きて・・・。」
「んがっ!?・・・何だっけ?今日の晩飯の話?」
「す、スネックさんすみません!お兄ちゃんには僕の方から説明しますので!」
そう言って頭を下げるホタルに同情の目を向けつつ、スネックはサイタマに一喝する。
「そこのお前は、妹の方からしっかり説明して貰え!!だが図に乗るなよ!A級ヒーローとも成ると、多少は協会に顔が利くんだ!不心得者は、いつでも減点してランクを下げてやる!!覚えておけ!!」
そう言い終えたスネックに、やんわりとホタルは訂正する。
「あ、あと・・・。僕、男の子です・・・。」
そう言ったホタルに、スネックは頭を下げたのだった
「そ、そうか・・・。すまん・・・。」
そうして、合格者セミナーは終わりを告げた。
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帰り道、サイタマがセミナーの内容に悪態を吐く
「けっ!つまんねーセミナーだったぜ。」
「あれは、お兄ちゃんが100%悪いよ・・・。」
しかし、ホタルの
「うぐ・・・。」
そう話している兄弟に、ジェノスが言う。
「それはそうと、我々の顔が新人ヒーローとして、世界中に知られるようですね。これでもう、先生達も胸を張って活動できますよ。そして、俺もこれで正式に弟子ですね。今後とも、御指導の方宜しくお願いします!」
「うん・・・。(やべぇ、簡単に弟子にするとか言うべきじゃなかったかもしれん・・・。特にこいつの場合・・・。)」
そう後悔するサイタマに、心の中でホタルはツッコミを入れる。
(後悔先に立たずだよ・・・、お兄ちゃん。)
そうして、しばらく歩いた先で三人は別れる
「では、今日は此処で・・・。」
「僕も、お買物してから帰るね~。」
「お、おう。じゃあな・・・。」
そうして、三人は各々の目的地に
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場面は変わり、ヒーロー協会試験所関係者室・・・。そこでは、スネックがサイタマとジェノスの態度に対し、職員に愚痴をこぼしていた。
「今日の新人・・・、ホタル君だったか・・・は礼儀がなっていたが、他の2人は本当に合格者なのか?酷い態度だったぞ!現役A級ランク38位の俺の事も知らないようだったし、どうやらこの世界の厳しさも全く知らない・・・。素人丸出しだ。あれじゃ、直ぐに死ぬぞ。」
そう言いながら紅茶を
「いや、ジェノス君とホタル君は筆記・体力共に満点・・・。特にホタル君に関しては、S級4位アトミック侍の推薦と無名時代も印象的な見た目と能力で、民衆からも隠れファンが大勢いたらしいからね。推薦という点を抜きにしても、S級は妥当だったろう。それに、いきなり5位という異例のスピード出世だ。両者共に、2年ぶりの快挙でいきなりS級認定を受けた超大型新人達だよ。サイタマ君は筆記や作文などは酷かったが、体力は50点満点・・・。結果はギリギリだったが・・・、ホタル君同様、体力試験のほぼ全てにおいてヒーロー協会体力試験の新記録を大幅に更新した・・・。彼ら兄弟の肉体には神が宿っているよ。」
そう言い放つ職員に、スネックは驚愕の顔に成る。
「・・・・・・!」
そんなスネックに、職員は忠告する。
「スネック君。君はすでにジェノス君やホタル君よりランクは下だし・・・、サイタマ君にもすぐに追いつかれてしまうかもしれんぞ。」
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そんな中、サイタマは物思いにふけながら土手を歩いていた。
(今日は、ヒーロー試験を受けに行ったはずなのに、なんかめっちゃ疲れた。ジェノスとホタルはS級?に上がっちまうし、あいつ等って凄かったんだな・・・。いや、まぁ順位とかは今更気にしてねぇけど・・・。なんか・・・、俺が成りたかったヒーローと違う気が・・・。ん?何か降ってきた。)
そう考えていると、上空からスネックが降って来た。戦闘態勢の構えを取っている。
「合格者セミナーの続きだ!この業界には新人潰しというのが存在する!!ランキングを抜かれる事を気にする者も多くてね・・・。こんな感じで早めに潰すのだ!!ぶへぇ!!」
そう言ってサイタマに殴りかかってきたが、サイタマのパンチに沈められた。
(何かこのおっさんも違うんだよなぁ~。あー、難しい事を考えんのは性に合ってねぇし、ホタルの晩飯に期待して帰るか~。)
そう思いながら、サイタマは帰路に就いたのだった
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ここは、山奥・・・。アトミック侍とイアイアンが話し合っていた。
「師匠・・・、良かったんですか?推薦などして・・・。元5位の方からは・・・。」
そう言ってイアイアンが、心配の表情を浮かべるが・・・
「俺の見込んだ男を信じられんと?それに、元5位のあいつも納得している。」
その言葉に、イアイアンは頭を振る。
「い、いえ!」
「坊・・・、S級集会で会うのが、楽しみだ・・・。」
そう言うと、アトミック侍は満天の星空を見上げながらニヤリと笑ったのだった。