私はそれを感じとって目が覚めた。少し頭がぼやけているせいか、直前の記憶がハッキリしない。
起き上がり辺りを見渡すと、飾り等は何一つとして無い。自分の部屋もそうだが違うのは
「ハァ・・・なんで止めた私が怒られんだよ。マジ、意味わかんね〜・・・」
愚痴を零しながらファーストの制服を着た少女が入ってきた。年は同じくらいだろう。背丈は私の方が上。
ああ、思い出した。私は彼女に負けたのだ。彼女は机の引き出しから葉巻を取りだして吸い始めた。
「あ、起きた。あんたのせいで私、めっちゃ大変だったんだけど〜?まあいいや。名前は?」
私はすぐに首を振った。私が喋れば、
当然、彼の恩恵も受けている。超人的な力は彼のおかげだ。だが、それは世界を滅ぼす理由にはならない。
「・・・もしかして喋れない?先天的か後天的かだけ教えて。イエスなら首を振って。ノーならそのままでいいよ。」
私は彼女の言う通りにした。私は負けたのだ。逆らえるはずもない。彼女は紫煙を吐きながら何かを納得した様子だった。
「なるほどね。あなたの事を知れてよかったよ。私にも名前は無い。けど、司令部からはスネークって呼ばれてる。まあ、友達からはジェーンって呼ばれてるけど。好きな様に呼んで。相棒。」
彼女は私に葉巻の吸口を向けてくる。私は手に取り吸ってみた。タバコなら何度か吸ったことがある為、同じように吸ってみると大きくむせてしまった。
「あはは!葉巻は香りを楽しむ為のものだから肺には入れないの。」
彼女は何故か得意気な顔で再び吸い始める。私は何故かその顔に腹が立って思わず蹴りを入れてしまった。彼女は痛みに耐えかねて床を転がり回る。
「いや、酷くないかな!?ちょっとからかっただけじゃんよ!」
彼女の苦痛に耐える痛みを見て思わず笑ってしまった。彼女はそんな私を見て安堵しているようだった。
思い返せば人前で笑ったのは初めてだ。皆が私を化け物として扱う。しかし、彼女からはそんな空気を感じない。彼女に超人的な能力を見せたのにだ。
でも私が見せたのは一瞬だけ。見続ければ彼女も化け物と言うかもしれない。だから、私は心を開いてはいけない。傷つきたくないから。
「にしても貴女、無茶苦茶ね。虐められてたリコリスを助ける為にファーストを含めたリコリスを五人相手にして勝つなんて。」
何故それを知っているのだろう。 その事はあのトイレに居た数名しか知らないはずなのに。
「ま、貴女は私預かりになったから。今日から相棒だよ。」
言い終えた途端に机の上に置かれていた端末が鳴る。恐らく任務なのだろう。彼女は端末を見ずにそのまま鞄に押し込む。
「任務の時間みたい。行くよ。」
どうやら私も行くらしい。しかし、許可が貰えるのだろうか?でも私に拒否権は無い。とりあえず、ついて行こう。
彼女はかなり人気があるようだ。道行く人から視線を向けられている。しかし、気にする様子も無くスネークは歩いていく。
到着したのは会議室。ここで伝えられるのだろう。彼女はノックをして扉を開ける。私も続いて見渡すとサードのリコリスが四名、ファーストのリコリスが一名、司令部の者であろう女性が一名。ファーストの人は私を見るなり顔を真っ赤にして抗議する。
「なんでコイツがいるんですか!コイツは問題を起こしたばかりです!!」
「黙りなさい。これは楠木司令からの命令です。」
聞いた事のある名前。司令なのだから偉いのだろうが何のために?それは私も気になる。
「今回の任務は?」
「おいお前!今は私が話してるだろうが!」
彼女がスネークに銃を向ける。私は蹴り殺そうとするも彼女に止められた。何故?
「あなたに私は殺せないよ。」
「今すぐに銃を置きなさい!これは命令よ!」
司令部の人間が言い終わった途端にスネークはファーストの持つ銃のマガジンを抜きスライドを後ろに引きつつ、ファーストを押し倒した。ファーストは顔を真っ赤にしながら銃を向けるもそこにスライドは無い。
「な!?」
「これ、返すよ。」
スネークは外したスライドを丁寧に渡す。ファーストの顔は何が起きたか分からない顔をしている。サードのリコリスもだ。スネークは何事も無かった様に椅子へ座り説明を促す。
「・・・で、では、今回の任務を説明します。」
簡単にまとめると、銃の密売業者を殺さずにランデブーポイントへ連れて来る事と商品の回収。
それだけなら楽だが時間制限もあるらしく、取り引き相手が来るまでに終わらせなければいけない。理由は教えてはくれなかったがそうしなければならない理由があるのだろう。
「今回、密輸量が多いと言うことであなた方をお呼び「私と彼女だけでいい。」え?」
「こっちのファーストは信用出来ない。だから私と彼女だけでいい。貴女もそれでいい?」
私は頷く。ファースト達は何も言い返せないのか下を向くばかり。
「しかし楠木司令からは「構わん」楠木司令!」
突然の訪問により全員が立ち上がり敬礼する。私も真似をしてとりあえず敬礼した。
「スネーク。今回の任務は言わば派閥同士の抗争だと思え。この件の受取人は大道寺一派だ。」
「大道寺一派が?つまり、荷物は金塊とかですか?というか、大道寺一派の仕事をリコリスが邪魔すると?」
「私もそこまでは知らされていない。この任務の元は防衛省だ。大道寺一派に見られたくない何かなのは確実だ。」
何の話かは分からないが相当面倒なのだろう。そもそも大道寺一派という言葉を私は聞いた事も無い。周りも困惑した表情である為、本来なら司令官クラスでないと知り得る事の出来ない情報のはず。
「お前が問題を起こしたサードだな。お前の経歴は見た。自分の役割を理解し任務をこなせ。」
私は頷く。私は元からそのつもりだ。言われるまでもない。
「では行け。私はお前達に話を聞かなければならない。任務開始時刻は二時間後だ。」
司令の目はファースト達に向きつつ細くなっている。ファースト達の顔はかなり強ばっている。それを言ったところで戻る事は無いのだろう。
私とスネークは会議室を出た。スネークは何かを考え込む様に腕を組んでいるが私はそんな彼女の後ろを歩く。
「・・・クワイエット。うん、それがいい。貴女のコードネームは今日からクワイエットね。いつまでも貴女なんて呼ぶの嫌だし。」
私は頷くしかない。別に名前などなんでもいい。私にとっては不必要なのだから。