クワイエットと呼ばれるリコリス   作:ぺへ

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5話

「んっ・・・もう朝・・・」

 

なんだか懐かしい夢を見たな。そう思いながらベットから出て引き出しに手を伸ばす。中に入っているのは愛煙している葉巻。

 

口に咥えて火を付け、二回程煙を吐き出し本格的に吸い始める。

 

私のルーティーンは葉巻を吸いながら趣味のコーヒーを作る事。当然、豆を挽く所からスタートだ。

 

私はこの時間が1番好きだ。なんと言っても平和を感じる。命を狙われる心配も危険も無い。だからこそ大好きなのだ。

 

思わず鼻歌を歌いながら珈琲を入れているとベットから物音がした。クワイエットが起きてきたのだろう。カップをもう一つ用意しクワイエットの方に向く。

 

「おはよ。珈琲、飲むでしょ?」

 

まだ少し眠気眼の彼女は頷く。ちなみに、彼女は部屋で過ごす際には必ず全裸だ。なんでも、服を着ていると鬱陶しいとの事。まあ、私も基本的には下着だから何も言えないけど。

 

「さっき懐かしい夢を見てさ。クワイエットとの最初の出会いと任務、覚えてる?」

 

クワイエットは頷く。まあ、忘れられはしないだろう。私も忘れる事は無い。

 

「にしてもあの時は驚いたよ。核反対の日本に核が持ち込まれていたんだから。」

 

実はあの時の商品は『無反動砲デイビー・クロケット』。1991年に撤去されて数台が残っているだけだった化石が運び込まれるなんて誰が思うのか。

 

そもそも商人がどうやってアメリカ製のを手に入れたのかも不明だったけど上は大慌て。事実の隠蔽を図るために今も何処かに隠しているらしい。もう、日の目を見ることは無いだろう。

 

「てか、今日って噂のちびっ子ファーストが訓練する日だよね?一緒にどう?」

 

ようやくいつも通りの目になってきたクワイエットはカップに口を付けながら頷く。

 

なんでも6歳にして既にファーストになっているんだとか。気にならないはずは無い。

 

朝ののんびりタイムを終了し朝風呂へ向かう。そうでもしないと司令から『臭い』と文句を言われるからだ。

 

でも、朝風呂は嫌いじゃない。さっぱりすれば気合いが入る。まあ、今日は任務は無いけど。

 

私が出てきた後にクワイエットが入り、その間に装備を整える。

 

昔から使っているハーネスやタクティカルベルトを装着し、銃とマガジンの手入れを行いホルスターに収める。当然、ナイフやその他の小物の手入れも怠らない。

 

現場では少しの不足で死ぬ。実際に見てきたからこそ怠る事は出来ない。

 

クワイエットも程なくして準備を終え共に部屋を出る。最近はバディとしての任務が殆ど無い為、ここで別れるのだが今日は互いに任務は無い、ラッキーな日なのだ。

 

まあ、こんな日に訓練場へ向かう私達は軍人魂が出来上がっているのかもしれないけど。

 

にしても周りも気になるらしい。皆、向かう所は一緒だ。

 

訓練場へ到着すると、既に物凄い人で溢れている。ファーストからサードまで。正しく注目の的。

 

「すっごい人。・・・あ、見つけた。」

 

サードの幼女達が並ぶ中、一人だけファーストの制服を着た幼女。なるほど、分かりやすい。でも、幼女の顔は楽しく無さ気だ。

 

実際そうなのだろう。私達含め、見世物の様にうじゃうじゃ集まられたら迷惑この上ないだろうし。少なくとも、私ならギャラリーに発砲する。

 

そんな下らない事を考えていると訓練が始まる。訓練で使っているのは『GLOCK19』。弾も実弾では無く模擬弾であるペイント弾。

 

教官達がサード達へ訓練を付ける中、ようやく目当てのファーストの番になる。その顔はやはり退屈そう。

 

教官達が撃った瞬間、ファーストの子は銃弾を避けた。動きはまだ稚拙ながらも何処かクワイエットに似ている。

 

「・・・なるほど。天性の才能って訳だ。」

 

クワイエットも真剣に見ている。出会った頃の蝶の痣まで出して。何か通ずるものでもあるのか?

 

結局、教官達は全員ペイントまみれ。対する幼女は一切の汚れも無かったが急に胸を苦しそうに抑えて倒れ込んだ。

 

見た感じ抑えているのは心臓部分だったから、恐らくは先天性の心臓病。天賦の才を持っているのにその才能を病が邪魔している。

 

「『錦木千束』ちゃんか・・・。波乱万丈な人生が待ってそう。」

 

でもなんでだろ。彼女はまだ死なない気がする。

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