クワイエットと呼ばれるリコリス   作:ぺへ

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6話

私は任務終わりにはいつも通りの道を帰る。今日だってそのつもりだったが、なんとなく違う道を選んだ。

 

理由は無いとも言えなくは無い。恐らく折れた電波塔を見たくなったのだ。

 

小さいファーストの訓練を見て早五ヶ月。任務漬けの日々だった。スネークとも最近はあまり話せていない。

 

そして偶々辿り着いた電波塔の良く見える公園。そこのベンチに腰かけじっと見据える。

 

正直、私は何の為に戦っているのか悩むことが多々ある。大抵のリコリスはDAの為に命を捧げているが、私は特段そうでも無い。

 

スネークはスネークで何か別の志を持っているのは分かる。なら私は?ただ、与えられた任務をこなすだけ。

 

考え耽ていると足元に何か違和感を感じる。見ると黒猫が擦り寄っていた。私は抱き上げ膝の上に乗せるとすぐに楽な姿勢を取った。

 

shí haʼátʼíísh biniinaa hinílá(私はなぜ生きる)

 

黒猫に思わず問いかけてしまう。この身体は既に虫が巣くっている。今更、人間ぶるつもりも無いが私は人として死にたい。

 

リコリスでもクワイエットでもなく、ただの人として。

 

「わぁ!ヌッコ!」

 

顔を上げるとあの時の小さなファーストが駆け寄ってきた。目を輝かせながら。

 

「触ってもいい!?」

 

私が頷くと緊張しているのか少し震えながらも優しく撫で感動に打ち震えている。

 

「お姉ちゃんの子?」

 

私は首を振った。しかしこの猫は人馴れしすぎている気もする。恐らく、人に飼われているのだろう。

 

「わぁ〜!可愛い〜!」

 

目を輝かせながら撫でているのを見て思わず、少女の頭を撫でてしまう。あの時見た退屈そうな顔とは別に毎日が充実しているのだろう。

 

彼女も最初は疑問を浮かべる様な顔つきだったが、すぐに人懐っこい笑みを見せる。そして私の隣に座ってきた。

 

「お姉ちゃんもリコリスなんだね。私は錦木千束!お姉ちゃんは?」

 

私は首を振る。私に本来の名前なんて無い。そもそも話せないのに伝えられるはずも無い。

 

「も、もしかして喋れない・・・?」

 

突如としてアワアワとし始める彼女に思わず笑ってしまう。すると今度は頬を膨らませた。まるで小さなスネークだ。

 

「あ、そうだ!お姉ちゃん、私のお店に来てよ!最近始めたんだけど、あんまり人が来なくてさ〜。」

 

私は何故か頷いてしまった。特に関わりも無い。それどころか、先程少女の名前を聞いただけなのに。それでも、心地良かったのだろう。

 

彼女は破天荒な生き方をする。リコリスとしては異常な、それでいて日本に住む女性にとっては普通な生き方を。だからこそ興味が湧いた。だからこそ知りたいと思った。彼女を見守りたかった。

 

彼女はスネークに似ている。私が喋れない事を知ってずっと喋っている。でも、それが心地良い。

 

「ここ!私と先生のお店、『リコリコ!』」

 

外見は一般的な家。しかし、中に入れば画像で見た喫茶店そのものだ。なんだか心が踊る。オーナーであろう黒人の男性が快く迎えてくれた。

 

「いらっしゃい。喫茶リコリコへ。」

 

私はカウンターに座り、聞いてもいないのに千束はオススメを伝えてくる。私は千束のオススメをジェスチャーで伝え、数分後には千束が持ってきてくれた。

 

彼女は所謂、看板娘とやらなのだろう。彼女のオススメはコーヒーとクリームたっぷりのパンケーキ。

 

嬉しそうに持ってきた千束に期待をするが、正直に言うと味のバランスは最悪だった。

 

コーヒーの味は殆どが苦味で、対するパンケーキは生焼けの上異常なまでに甘い。

 

私は確かに甘いのは好きでは無いが、これは度が過ぎている。千束の期待を込める目は心が痛むが素直にダメだと首を振った。

 

それによって千束は顔を俯き、オーナーは申し訳無さそうにしたがこれでは店が続かない為、心を鬼にして全てを盛り付けられたパンケーキとコーヒーを空にして千束の頭を撫でる。

 

彼女は再びキョトンとしながらもまた笑顔になり、それを見て私はようやく分かった気がした。

 

スネークはこの為に戦っているのだと。この、なんでもない、皆が感じる闘争とはかけ離れた世界の為に自分自身を犠牲にして守っているのだと。

 

私は一つの学びと共に、千束と言う妹を守る為に決意を新たにした。

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