「珍しく着いてこいって言うから来たけど・・・なんで喫茶店?」
任務終わり、クワイエットからデートの誘いを受けたから着いて来たけどこんな所に喫茶店なんてあったんだ。
いや、最近出来たっぽいな。クワイエットは普通の顔をして入って行ったから通ってるのがすぐに分かる。にしても、人見知りがあるクワイエットが喫茶店とは。趣味とは馬鹿に出来ない。
「あ!お姉ちゃん!いらっしゃいませ!っと、DAの人?」
「これは予想外だ。こんなに可愛い店員さんが居たなんて。クワイエットの相棒だよ。」
「相棒〜!!カッコイイ!名前は!?」
「スネークでいいよ。皆からそう呼ばれてる。」
「私は錦木千束!こっちは先生!」
カウンターには黒人のメガネを掛けた男の人が柔和な笑みを浮かべている。
「いらっしゃい。好きな席に座りなさい。」
「はい、ありがとうございます。」
クワイエットは既に座っていたから右隣に座る。千束ちゃんはメニューを持ってきてキラキラとした笑顔を私達に向ける。
「何がいい!?ちなみに私のオススメは千束スペシャル!」
メニューを見ると確かに千束スペシャルがある。でも3000円とかなり値が張る。私はコーヒーだけにしようとしたけど、クワイエットが勝手に二つ注文した。
「やったー!千束スペシャル二つ〜!」
「・・・クワイエット。ちゃんと奢れよ、貴様。」
クワイエットはすぐさまそっぽを向きやがった!殴りたいけど我慢してやろう。今はね!!
私は店長さんにコーヒーも二つお願いして店内を見回す。何か落ち着く。こうして穏やかな日々を過していると、何も知らなかったあの日に戻った気分になる。
「先生かぁ・・・」
「わぁぁぁ!!先生、大変!!」
私がノスタルジーに浸っていると千束ちゃんの声が聞こえてきて現実に引き戻される。少し顔を上げて奥を見てみると、小麦粉を勢いよく開けすぎたのか千束ちゃんが真っ白になっている。
店長さんも店長さんで少し困った様な顔を見せつつも微笑みながら掃除を手伝う。
私も頬杖を着きながらその様子を微笑ましく見る。ふとクワイエットを見ると私をガン見していた。
「え、何?そんなにガン見して。」
「
「何言ってるか全く分かんないけど、大事な人だよ。言うなれば今の私を作った人でもあり原因でもあるって所。」
十年、共にした言葉では言い表せない関係の人。私の最初の任務はその人の計画を阻止する為に殺す事だった。蛇の名をくれたのも技術や知恵を授けてくれたのも先生。
千束ちゃん達に目を戻すと、千束ちゃんは椅子に登って一生懸命にボウルを混ぜそれを店長さんが支えている。いや、コーヒーを飲みたいんだけど・・・。まあいいや。ここは一服しよう。
「店長さん。灰皿を貰っていいです?」
「悪いがここは禁煙だよ。」
マジか・・・。え、向こうはめっちゃフワフワ空間だけどそれで喉の乾きは癒えないよ?でもこの調子だとまだ掛かりそうだし・・・。諦めるしかないかぁ・・・。
どうするか思案しているとドアのベルが鳴る。目を向ければ私の来ているファーストの男性バージョンを着て赤いベレー帽を被った見知った男。
「あ!いらっしゃいませぇぇぇ!!」
千束ちゃんは客が来たことに喜び椅子から落ちた。それも顔面から。ふとクワイエットを見ると妙にソワソワしている。
「行ってあげな。クワイエット。」
少し驚いた顔をしつつも頷き奥の厨房へ入るのを見届け男に視線を向ける。
「隣どーぞー」
「では甘えよう。」
一般正装ではないであろうウエスタンブーツを鳴らしながら私の隣へ座る。私は頬杖を付いた状態で、彼は腕を組みながら店員を待っている。まあ、少し時間は掛かるだろうけど。
「・・・あんたも喫茶店なんて来るんだ。」
「そのまま返そうか、スネーク。」
「私は連れとのデートだよ。そっちは彼氏もいないわけ?『オセロット』。」
恐らくコイツが来たのはここを潰す為。入ってきたのは興味本位。そんでもって外には何人かのリリベルってとこかな。外にいる部下は今か今かとウズウズしてんだろつなぁ。
「これは私の独り言だから好きに聞き逃して。私はこのお店が気に入った。だからちょっかいを掛けようもんなら叩き潰す。」
「・・・これは俺の独り言だ。マルマルからマルヒトに俺を含めた部隊が襲撃を掛ける。君の存在があれば大変な事になるだろうな。」
0時から1時ねぇ・・・こりゃあ、出張らない訳にゃあいかないなぁ・・・。あの狐爺はよっぽどの喫茶店嫌いだねぇ・・・。
「お待たせしましたー!!千束andお姉ちゃんスペシャルでーす!!お兄ちゃんにはメニューをどうぞ!」
よっこらよっこらと千束スペシャルを持ってきた千束ちゃんから受け取り、オセロットにはキラキラとした笑顔でメニューを渡す。
オセロットはメニューをチラ見しコーヒーだけを注文すると、千束ちゃんは少し残念そうにしながらも店長さんへ注文を伝える。
私は私で千束スペシャルを食べるが中がまだ生焼けだ。てか、クワイエットが手伝ったんじゃないの?そう思って隣を見ると、クワイエットはサッと目を逸らした。
「待たせたね。コーヒーだ。」
ようやく出てきたコーヒー。注文してから既に20分。仮にも喫茶店を開く程だ。味は期待出来る。
「ど、どうかね?」
「・・・不味い。」
「そ、そうか・・・」
「もしかしてですけど、インスタントしか入れてこなかったでしょう?」
「うっ・・・」
いや、わかりやす!しかし、こうなるとすぐに潰れるぞ・・・?とりあえず残さずに完食した。思ったより腹に溜まる。ちなみにオセロットはさっさとコーヒーを飲んで出て行ってしまった。
とりあえず出る為に会計をして鞄を背負う。ちなみに代金は全てクワイエットに奢らせた。
「蛇のお姉ちゃん!また来てね!」
「当然。千束ちゃんを見る為にまた来るよ。それと店長さんにもコーヒーの入れ方をレクチャーしないとだし。」
「うっ・・・す、すまない・・・」
クワイエットは千束ちゃんの事を勝手に妹にしたのだろう。今もめちゃめちゃ愛でている。まあ気持ちは分かる。
「また来てね!蛇のお姉ちゃんとお姉ちゃん!」
千束ちゃんの声を後ろに受けて私達は喫茶店を出た。