クワイエットと呼ばれるリコリス   作:ぺへ

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8話

「スネークとクワイエットをですか・・・?」

 

「ああ。なんでもかなり優秀だと言う噂じゃないか。彼女らの協力があれば、日本はより平和を保てる事だろう。」

 

DAのらリコリス総司令である楠木は現防衛大臣と会食を行っていた。しかし会食とは表向きであり、政府直轄である秘密特殊作戦部隊『CP(サイファー)』への引き抜きである。

 

最低限、司令官クラスから知り得る組織でありリコリスからしてみれば異例と言える大出世であるが、それを簡単に良しとは頷けなかった。

 

理由はスネークとクワイエットだ。目の前の防衛大臣は歳の割に性欲が盛んで若い女性ばかりを集めている変人である。

 

しかし、サイファーに所属する部隊員は防衛大臣への忠誠など存在しない。その上、大抵がキャリアアップを目指しているが上記の二人は全くの異質。

 

クワイエットの方はスネークが手綱を握っている為まだしも、スネークの方は楠木を含めて誰も制御出来ない。唯一、手綱を握っていたスネークの師も既に死んでいる。

 

故に彼女は自由。命令違反もすれば、才能がある者は敵味方関係無くスカウトするという常人の精神で言えばイカれた素質を持つ。

 

「防衛大臣。僭越ながら、あの二人はあまりオススメ出来ません。いずれあなたも・・・」

 

「楠木君。私は君にお願いをしている訳では無いのだよ。」

 

返答は分かりきっていた。この男は欲望しかない。欲を叶える為ならなんでもするだろうが、スネークに比べたら可愛いとしか思えない欲だ。心の中でため息を付き立ち上がる。

 

「・・・承知しました。しかし、自身の身は自分で守ることをお勧めします。では、失礼します。」

 

そう言い残し楠木は襖を閉め外へ向かう。既に迎えの車は来ている為、乗り込み窓の外を眺めながら頬杖を着き防衛大臣の陥落の速さを予測する。

 

「案外、すぐさま落ちるだろうな。」

 

楠木の独り言は夜の風に流されていく。

 

 

 

 

深夜0時。天気は季節外れの土砂降りであり一部では道路が冠水するほど。そんな豪雨の暗闇の中、複数の人間が足早に歩いてくる。赤い男性用制服を身に纏い、頭には赤いベレー帽。腰には革製のホルスターを正面と背部の二つ装着し、独特な形状のハンマーも見える。

 

男の名は通称『オセロット』。リコリスでスネークの名が轟いている様に、リリベルでは知らぬ者は居ない優秀な工作員。

 

そんな彼が率いる部隊員は紺色の制服が五人、ベージュ色の制服が四人の計十名。オセロット以外は身バレ防止の為かマスクを装着している。

 

彼らが向かうのは当然、喫茶リコリコ。錦木千束への特別待遇が気に入らない一部の上役がリリベルをけしかけたのだ。

 

リコリコまで目の前という所で突然オセロットは腕を上げ隊員達の動きが止まる。一見何も無い様に見えるが、よく目を凝らせばうっすらと人影と紫煙が見える。

 

更に注意深く見ると、赤と灰色のグラデーションされた女性用制服。完全にリコリスの、それもファーストだ。この光景にオセロット以外に動揺が走る。

 

今回の件は重要機密事項。決して漏れてはならない作戦のはずなのに漏れている。つまり、誰かが情報をリークしたのだ。

 

「これはこれは。なんとも懐かしい臭いだ。スネーク。」

 

「オセロット。悪いけどここは私のお気に入りなの。出来れば帰ってもらえない?」

 

昼間に会った時とは違い、二人の空気は険悪だ。オセロットの方は芝居だがスネークからは本気の殺意を伺える。

 

そもそも二人は元々敵同士だったが、とある一件から互いに認め合い、DAの誇る人工知能をも掻い潜って密会を重ねてきた戦友。

 

そんな二人の放つ緊迫した状況から、他の隊員達は冷や汗が止まらない。ファーストとはいえたった一人。だと言うのにあの鋭い目は本物。正しく蛇に睨まれた蛙だ。

 

一人の隊員が静寂に耐えきれず装備していたAR57をスネークに向けた瞬間、銃が弾かれる。所持していた隊員は手首を痛めたのか抑えながら辺りを見回している。

 

「なるほど。スナイパーか。それも視界の利かない雨の中、銃に見事命中させるとは。」

 

「私の相棒だよ。北北西三キロのビルの屋上にいるよ。」

 

「今流行りのクワイエットか。いいセンスだ。お前達、手を出すな。」

 

オセロットは腰に装着していたホルスターから愛銃である『シングル・アクション・アーミー』を二丁抜く。スネークも腰のホルスターから『M1911A1』を抜き胸の方に装着している小型ナイフも抜いて構える。

 

ほとんどが生唾を飲み込む中、耳に装着したインカムからリリベル全員へ通信が入る。オセロットは左手の銃をホルスターに戻し、右手ではスネークに向けながらもインカムを触る。

 

『こちら司令部。アルファ、現状の報告を。』

 

「こちらオセロット。現在、目的地には到着しましたがリコリス部隊ファーストのスネークと交戦中。至急、作戦中止を求めます。」

 

『スネークだと?』

 

「ええ、司令。その他、リコリス部隊セカンドのクワイエットも援護しています。無事に切り抜けたとしてもターゲットの抹殺は不可能かと。」

 

『くっ・・・楠木め・・・。作戦中止だ。すぐに帰投しろ。』

 

「了解。」

 

しばらくオセロットはスネークに銃を向けていたが、銃口を外し器用に回しながらホルスターへ収める。

 

「撤収だ。」

 

「しかし隊長!」

 

「先の通信を忘れたか?」

 

セカンドのリリベルは悔しそうに歯噛みしながらも渋々従う。スネークもその様子を見て銃とナイフを収める。

 

「あー、オセロット。そっちの司令官殿に伝言を頼みたいんだけど。」

 

「貴様!!何を「聞こう」隊長!!」

 

「次にここを襲うようなら私は鬼になる。そう伝えてくれる?」

 

「・・・ああ。伝えよう。また会おう。ジェーン。」

 

「ええ。アダムスカ。また。」

 

オセロット達が完全に去るのを見送ると、隣に音もなくクワイエットが降り立つ。ここまでの土砂降りでも音一つ立てないのかとスネークも思わず感心する。そんなクワイエットの顔は申し訳なさそうだ。

 

「気にしないでよ、相棒。それにしてもいい射撃だったよ。とりあえず中に入ろ。」

 

クワイエットは頷き喫茶リコリコへ入る。この襲撃の情報は事前に楠木とミカには伝えられておりこの後、抗議が入ることだろう。

 

スネークが入口を開けた瞬間、リコリコの電気が突然付き咄嗟に目をつぶってしまう。微かに目を開けると驚いた様な顔をしている千束がいる。奥のカウンターには銃を構えているミカがいた。

 

「お、お姉ちゃん!?な、なんで!?」

 

「ちょっとリリベルを追っ払ってたの。てか寒いからお風呂借りていいです?」

 

「ああ。千束、案内してあげなさい。」

 

「う、うん!」

 

千束はパタパタと忙しそうに二人を案内する。その様子を見てスネークは思わず微笑んだ。

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