TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
それは――私だ!!!!
現代男性が戦国時代の幼女に転生して、縁壱に稽古をつけてもらう話。
のちのち原作本編と合流します!
第1話『故郷、燃ゆ』
1511年(永正8年)12月。
本編開始の400年前――戦国時代。
なんでこんなことになったんだろう?
わたしはそんなことを思いながらその光景を見ていた。
「かっかっかぁあああッ! 絶景かな、絶景かな!」
どこか芝居がかった鬼の笑い声が響く。
わたしは……いや、
* * *
「――まふゆ」
わたしはお母さんに呼ばれて振り返った。
顔を布で拭われる。
「顔が炭で真っ黒じゃないの」
「えへへー。でもね、いっぱい炭があったら、みんな寒くなくなるでしょー?」
「……!」
「お父さんもお兄ちゃんもみんな、戦争に行って死んじゃったから。わたしがみんなの分までがんばるの!」
「……そう、そうね。ありがとう、まふゆ」
「お母さん? えへへー、あったか~い」
標高の高い場所にあるこの村は、毎年この時期になると雪に覆われる。
吐く息も、あたりの景色も一面真っ白だ。
けれど、母に抱きしめられていると身体の芯がぽかぽかとしてくる。
あまりの空気の冷たさで真っ赤になった指先も、気にならなくなる。
「あっ、もう行かないと!」
「気をつけるのよ」
「はーい!」
元気に返事をして、わたしは雪の降り積もる道を歩きはじめた。
村にある家を回って炭を配るのだ。
その代わりに食べものをすこし分けてもらう。
へんぴなところにあるこの村では、そうしてみんなで助け合わねば冬を越せない。
その中に、たったひとりで住む老婆の家があった。
「よく来たねぇ、
「”12歳”だよ、おばあちゃん!」
「そうかい。大丈夫かい、ちゃんとご飯食べとるかえ? こんなちっちゃな身体して……」
「わたしよりも、おばあちゃんこそ身体温かくして、ご飯いっぱい食べないとダメだよ!」
「あたしゃあもうええ。十分生きた。いや、生きすぎた。息子も孫もみんな先に死んでしもうた」
「おばあちゃん……」
今は戦乱の世だ。
戦争ではたくさんの人が死ぬ。
とくに男手はあっという間に減っていった。
老婆のところは男児が多かったから……。
富士のふもとにあるこの村に残っているのはもう、女子どもや老人だけ。
だからこそ余計に協力し合わないと。
「おばあちゃん、諦めちゃダメだよ! いつか必ず冬は終わるんだから!」
「まふゆ……あんたはほんまに、やさしい子やねぇ」
「えへへ~」
老婆が頭を撫でてくれる。
また心がすこしぽかぽかとする。
「ほんまにやさしい子。だからこそあたしゃあ心配だよ」
「おばあちゃん?」
「もし、あたしや村のだれかになにかあったとしても、そりゃああんたのせいじゃないからね。気に病みすぎちゃあいけないよ」
「もうっ、まーたそんな弱気なこと言ってぇ。大丈夫! みんなで一緒に春を迎えよっ?」
「……そうだねぇ」
老婆はどこか遠い、まぶしいものでも見るような目をわたしに向けた。
それからそっと、やさしく背中を押してくる。
「暗くなる前に帰りなさい。近ごろは”穴持たず”が出たってウワサもあるからね」
「穴持たず?」
「冬眠しそこねた熊のことさね。けど……もしかしたら、
「……どういうこと?」
「知らずに済むなら、そのほうがいいことさね。ほら、もうお行き」
そのまま家を追い出されてしまう。
それが老婆との最後の会話になるだなんて、そのときのわたしは思っていなかった――。
* * *
「あーあ。結局、遅くなっちゃった」
山の近くでは通常よりも早く夜がやってくる。
なぜなら、沈みゆく太陽の光を山が遮ってしまうから。
「急いで帰らないと」
この時間帯はますます気温が下がってくる。
凍えてしまう前に家に入らなければ、命にもかかわる。
「はぁっ、はぁっ……」
丸一日歩きどおしだったから、もうクタクタのヘトヘトだ。
それにわたしは身体も小さいし、力も弱いから余計に。
荒い息を吐きながら、家へと向かって足を動かす。
けれど、その日はなにかがおかしかった。
「……暑い」
いっぱい歩いたから?
いいや、それでは説明がつかないくらいの暑さだ。まるで真夏のよう。
ダラダラと身体中から汗が噴き出す。
耐え切れなくなって、被っていた笠と蓑を脱いだ。
いつの間にか、歩いていた地面から雪が消えていた。
やがて、なにかまぶしいものが見えてきて……。
「――家が、燃えてる?」
それは炎だった。
わたしの家は、夜なのに煌々と光っていた――。