TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第96話『柱の資格』

 

 しのぶが無言でじぃっと天元を見ていた。

 ……こ、怖ぇえええ!? なんかわからんけど、めっちゃ怒ってるぅううう!?

 

「そう……イエ、ば。わタ……シも、ヨウじガ……」

 

「まふゆはここに残るように」

 

「……。はイ……」

 

 ダメだった。

 逃げられなかった。

 

 しかし、なぜしのぶはこれほどまでに怒っているのだろうか?

 そう疑問に思っていると、彼女は天元に言った。

 

「採血の時間です」

 

 あっ、なーんだ。

 ただ診察に来ただけだったのかー。

 

 そう俺が「ホっ」と胸をなでおろそうとしたとき、しのぶが注射器を取り出した。

 それを見て俺も天元も顔を引きつらせた。

 

「オイオイ、胡蝶テメェよォ。その注射器……派手に針が太すぎる気が」

 

「普通ですよ」

 

「いや、でも」

 

「普通です」

 

「お、おう……、ッ~~~~!?」

 

「あぁ、すみません。刺す前にひと声かけるのを忘れていました」

 

 いきなり針を刺された天元がベッドの上で悶えていた。

 柱である彼がここまで痛がるって、尋常ではない気が。

 

「お、おいコレ……絶対に普通の注射じゃねェだろ。『忍が耐える』と書いて『忍耐』だぜ? そのオレがこんなに派手に痛みを感じるなんて、おかし……、ッ~~~~!?」

 

「あぁ、すみません。採血は複数本するとお伝えし忘れていました」

 

「胡蝶テメェ、いい加減にしねェとマジでぶっ殺――」

 

「そのとおりです」

 

「あァん?」

 

 天元の言葉をしのぶが肯定する。

 首を傾げる彼に彼女は言い放った。

 

 

「あなたのせいで――私の大切な”家族”が死にかけました」

 

 

 その言葉で俺はようやく理解した。

 しのぶは俺のために……俺たちのために怒ってくれていたのだ。

 

「……」

 

 天元の表情は動かなかった。

 もしかすると彼は、しのぶが病室に現れた時点でこうなると察していたのかもしれない。

 

「私の大切な家族がこんな大ケガをしました。すべてあなたのせいです。あなたが強引に任務へと連れて行ったせいです」

 

「ちガっ……!」

 

 ケガをしたのは俺が驕ったから、弱かったからだ。

 それに俺はもともと、遊郭への任務は強引にでもついて行くつもりだった。

 

 だから、天元はなにも悪くない。

 そう否定しようとしたが……。

 

「まふゆは黙っていなさい」

 

 ピシャッ! と反論を封じられてしまう。

 しのぶは言った。

 

「部下を守るのは上司の義務です。それに……よりによって、遊郭に連れて行くだなんて。まふゆはあなたの命令を守るために貞操を捧げようとまでしたんですよ!?」

 

 ……あー、と俺はようやく納得した。

 たしかに、それは怒らないわけがなかった。

 

「ケガをさせたことについて謝罪する気はねェ。だが、貞操に関しちゃあ誤解だ。そいつは忍の訓練を受けたくのいちで――」

 

 俺は天元の言葉にブンブンと首を横へ振った。

 そして、あのときは聞いてもらえなかった事実を話す。

 

「わタし……ぼうチュうジュツ、しタこと……なイ」

 

「……!?」

 

 その言葉は天元も予想外だったのか、目を見開いてまじまじと俺を見ていた。

 それから「かァ~」と額を押さえてうなだれた。

 

「そう、だったのか。それは……知らなかったとはいえ、本当にすまないことをした。……オレは嫁を助けたいがためにいくつもの判断を間違えたらしい」

 

 それでも、最後にそうすると決めたのは俺自身だ。

 だから、天元だけが悪いわけじゃないのに……。

 

「すべてはオレの責任だ」

 

 天元はそうはっきりと言い切った。

 そういえば、あのときの――猗窩座を仕留めそこなったときの杏寿郎も同じような態度だった。

 

 それが上に立つ者のありかたなのかもしれない。

 すべてを背負える者でなければ『柱』足りえないのだと、そう言っているように見えた。

 

「では、どう責任を取りますか?」

 

「っ……!」

 

 その言葉に俺は慌てる。

 まさか、しのぶは天元を完全に引退させようとしているのか!?

 

 それは困る!? せっかく、裏方とはいえ戦い続けてくれる気になったのだ!

 むしろ、忍の戦いかたとしてはそちらが本命……一番力を発揮できそうだけど。

 

 ともかく、これじゃあ俺が一体なんのために戦ったのかわからなくなる!

 そう仲裁しようとしたのだが、それよりも早く彼は答えていた。

 

「オレにできることはひとつ――鬼を狩る、あるいはその手伝いをする。それだけだ。鬼殺隊において、それ以外の責任の取りかたをオレは知らねェ。少なくとも……」

 

 

「――責任を取るために辞めたり、追い出されたり(・・・・・・・)。それだけは間違ってる」

 

 

「……っ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、俺は泣きそうになった。

 俺の師匠――継国縁壱は兄が鬼になった責任などを追及され、鬼殺隊を追い出された(・・・・・・)

 

 だから戦国時代、俺は鬼殺隊からの勧誘を拒否し続けていた。

 「腐った体制が変わらないかぎり、入隊はしない」と。

 

 あのときの俺の言葉が影響を与え、今の鬼殺隊になったのか。

 それとも関係なくただ時代の流れでこうなったのか。

 それはわからない。

 

 だが……縁壱の気持ちを俺なんかが決めるはおこがましいかもしれないが。

 それでも、こう思った。

 

 

 ――ここに彼の無念がひとつ晴らされたのだ、と。

 

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