TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
「アオイ……
俺の言葉にカナヲが目を見張っていた。
というか、今さら気づいたのか。
この1ヶ月ずっとそう呼んでいたのだが……。
おそらく、カナヲはその間それどころではなかったのだろう。
俺の包帯が取れるまで、ほとんど付きっきりで世話をしてくれていたし。
まだまだニガテな看病……ずっと集中していたのだろう。
「まふゆ、まふゆ」
カナヲが俺を抱きしめたまま、ぐいぐいと揺さぶってくる。
それから、なにかキラキラとした目を俺に向けていた。
……? えーっと?
なんだこの目? どういう意味だ?
「その……
「……!?!?!?」
カナヲはなにか「ガーン」とショックでも受けたような表情になった。
えっ。俺、なにか間違えただろうか?
「私……じゃ、ない……一番、アオイちゃん……だった」
それから抱きしめていた俺を手放すと、そそっとアオイに差し出した。
なぜかカナヲは「負けた」みたいな顔をしていた。
本当にどうしたんだ!?
全然、わからないんだが!?
「い、今はアオイちゃんのほうが進んでる……けど、私……次は負けない、から」
「カナヲ、いったいなんの話……?」
なぜかカナヲに敵意? を向けられアオイも困惑していた。
ちなみに、そんなアオイだが今はもう隊服を着ていない。
詰襟に白衣という印象的な服装が見れなくなってしまったのは、正直ちょっと惜しい。
けれど、今までは
ところで、どうして病室にこれだけの人が集まっているのかというと……。
「音柱さま、こちらお薬になります。
「おうよ」
そう、今日は天元の退院日なのだ。
それでみんなお見送りに来ていた、というわけ。
ちなみに、かまぼこ隊の3人だが……遊郭での傷は本来の歴史よりも浅く済んだらしい。
そのため先に退院して煉獄の屋敷に戻って、鍛錬に励んでいるようだった。
今日は伊之助と善逸は任務のため、タイミングのよかった炭治郎だけ代表して来たとのこと。
彼らは間違いなく本来の歴史よりもずっと強く、早く成長していた。
「んじゃま、そろそろ行くとするか。……っと、そうだ」
病室から出て行こうとした天元だったが、その直前で振り返る。
彼の視線は俺に向けられていた。
「まふゆ、テメェ――派手にオレの”継子”になる気はねェか?」
「や、やっぱり天元さまの子どもぉーっ!?」
「「「……」」」
須磨の叫びは全員がムシした。
天元はまっすぐに俺の目を見ている。
さらっと告げたが、どうやら本気で言っているらしかった。
だから俺もキッパリと首を横へ振った。
「いえ、遠慮しておきます」
「……そうかい。ま、テメェなら派手にそう答えるだろうと思っていたがな!」
しのぶ、杏寿郎、天元……みんなとても良い師だと思う。
それでも、俺にとっての師匠はひとりだけだから。
「じゃあ、その代わりと言っちゃァなんだが……オレのもとで忍術を本格的に学ぶか?」
「えっ?」
「テメェがどこでソレを身につけたかは知らねェが、ウチの流派の技にもテメェの役に立つものがいくらかあると思うぜ」
「……! そ、それは……ぜひお願いしたいです!」
願ってもないことだった。
鬼との戦いで役に立つ技術なら、いくらあってもいい。
「おう。それじゃあ、入院中に溜まってた仕事を片付けて地味に落ち着いたら、テメェに手紙を送ってやる。そうしたらオレのもとまで来い」
「ありがとうございます! よろしくお願いします!」
バッと頭を下げて感謝を述べた。
でも、手紙か……。
そういえば、俺がお館さまに渡すよう頼んだ手紙はどうなったのだろうか?
とか考えていると、天元は「そうそう」と付け足すように言った。
「ウチの流派なら――”房中術”も学べるしな」
「げほっ、ごほっ……ぼぼぼ、房中術ぅ!?」
思わず、むせた。
おかげで直前まで考えていたことが頭からすっぽ抜けた。
これ、もし善逸がいたらやかましいくらいに過剰反応していただろうな。
なんてことをのんきに考えていると……となりで話を聞いていたしのぶから、ゆらぁっと殺気が立ちのぼるのを感じた。
「宇随さん、あなたまだ反省していなかったんですか? それもまさか、自分が直接まふゆに手を出すことを考えていただなんて」
「ま、まふゆは……渡さないっ!」
「天元さまぁーっ!? まさかそんな、
カナヲと須磨まで騒ぎはじめる。
それを天元は「だァーっ!」と叫んで黙らせた。
「そうじゃねェよ!? 房中術を教えんのはオレじゃなくて――テメェだ、須磨」
「……ほぇ?」
指をさされて須磨がキョトンと首を傾げていた。
天元がどこかからかうように言う。
「コイツは男も女もイケるクチだからな。女同士のアレコレもたぁっぷり
それは『襲われる』の間違いでは!?
というか、役に立つってなんだ!?
つまり天元は俺が将来、女の子と付き合うとでも思っているのか!?
んなわけ……いや、待て。
たしかに精神は男性に近いし、どっちかというと女の子のほうが好きだ。
そうなると……ん? あれ? あれれっ?
「じゃ、じゃあ、せっかくだし……」
「まふゆ、なにを流されそうになっているのですか?」
「はっ!? だ、騙されるところだった!? 房中術は結構ですからーっ!?」
「そうかい。ま、房中術はともかく忍術は学びに来いよ。あと……派手に気が変わったときは、いつでも言ってくれて構わねェからな」
「変わりませんよ!?」
とまぁ、最後にそんなひと波乱を起こして天元は蝶屋敷を去っていった。
ほんと、どこまでも派手な男だった――。
* * *
――そこから、また1ヶ月。
俺は蝶屋敷のみんなと過ごしたり、天元に誘われて忍術を学びに行ったりして暮らしていた。
ちなみに天元について、とある情報が出回っていた。
曰く、彼は柱を引退した。
曰く、原因は遊郭で上弦の鬼と戦った際に大きく負傷したから。
前者は事実だが、後者はウソだ。
おそらくは今後の彼の動きをなるべく鬼に漏らさないための情報操作だろう。
とまぁ、それはいいのだが。
ひとつ、困った問題が俺の前に立ちふさがっていた。
「い、いつまで経っても日輪刀が来ない」
俺の刀は遊郭での戦いで妓夫太郎に叩き折られてしまった。
それからしばらく経つのに、いまだに新しいのが届かないのだ。
「さすがにこのままじゃあ、鬼が来たときにどうしようもないんだけど」
もしかして、あの女流刀鍛冶……またなにかポンをやらかしているのだろうか。
そう困ってボヤいていたら、それを聞いた三人娘が言った。
「「「それなら、直接行ってみてはいかがですか?」」」
「え? 行くってどこへ?」
「「「――刀鍛冶の里、です!」」」
というわけで……『遊郭編』完結!
次話から『刀鍛冶の里編』に突入です!!