TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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~刀鍛冶の里編~
第99話『鍛冶の腕前』


 

 視界を封じられ、(カクシ)に運ばれることしばし。

 どこからともなく硫黄の――温泉の匂いが漂ってきた。

 

 長らくつけさせられていた目隠しを頭から外され……。

 視界が一気に眩しくなった。

 

「はい、到着しましたよー。ここが……」

 

 

「――”刀鍛冶の里”です」

 

 

「うわぁ~!」

 

 そうして、俺は刀鍛冶の里へとやって来ていた。

 ここを訪れるのははじめてではないが、前来たころとはまるでべつの里のようだった。

 

 いやまぁ、400年も経てば変わっていて当然か。

 あるいは本当にべつの里なのかも。

 

 ここは隠れ里だ。もし鬼に見つかったら引っ越さねばならない。

 そして400年間、一度も鬼に見つからなかった――引っ越しがなかった、とは考えづらい。

 

 そしてやっぱり、印象が異なる一番の理由は……ひょっとこ面をつけた男性だけでなく、おかめ面をつけた女性も里の中を歩き回っていることだろう。

 正直、ここまで歴史のちがいを感じる光景ははじめてかもしれない。

 

 だが、刀鍛冶という気質がそうさせるのだろうか?

 里の空気にはやっぱり、当時と同じ……熱気のようなものがあった。

 

「いやー、まふゆさまは本当に軽いですね! 今まで運んだ中で一番楽でしたよ!」

 

「そ、そうですか……」

 

「それでは、いってらっしゃいませ!」

 

 カクシの言葉にちょっとダメージを受けつつ、見送られて里の中へ。

 さっそく女流刀鍛冶を見つけに……いきたいところだが、場所がわからない。

 

 まずは宿の確保と、情報収集からだな。

 そもそも探したところで、みんなお面を被っているから自力じゃ見分けようが……。

 

「っ!?!?!? ……っ! ……っ!」

 

 なんか俺のすぐ目の前にめっちゃ挙動不審な女性がいた。

 彼女は錯乱したのだろうか、お面を両手で隠して叫んだ。

 

 

「――わ、私じゃないですぅ~!?」

 

 

「そのセリフ、本人しか言わないと思うんですけれど」

 

「はぅあぁ~っ!?」

 

「あと、お面してるから顔は隠しても意味がないんじゃ……」

 

「はぅあうあうぅ~っ!?」

 

 女流刀鍛冶は観念したように、その場に崩れ落ちた。

 俺はさっそく彼女に問うた。

 

「それで……どうして新しい日輪刀を送ってくださらないのですか?」

 

「うぅ~っ」

 

 彼女は答えたがらなかった。

 だが、「ジィ~っ」と見続けているとやがてポツリとこぼした。

 

「だって、満足のいく刀ができなかったんですぅ~」

 

「……はぁ~」

 

 職人にありがちな病気だな。

 だが、それでは困る。

 

「刀がなければわたしは戦えません。あなたがこだわりを持つのは結構ですが、その間にも刻一刻とわたしの時間はムダになっています」

 

「うぅ~っ!?」

 

「わたしの時間とあなたの時間は価値がまったくちがう――とまでは言いませんが、今この瞬間も、わたしが任務に出ることで救えたはずの命が零れ落ちているんです」

 

「うぐぐぅ~っ!?」

 

 言いすぎただろうか?

 だが、事情があるならあるで「遅れる」とひと言連絡をくれなければ困る。

 

 そんな思いからの言葉だった。

 女流刀鍛冶は肩を震わせ……そして、感情を爆発させた。

 

「び、びぇえええぇ~んっ! ごめんなさいぃ~っ! ほ、本当は私ではまふゆさまに見合う刀を打つだけの腕がなかっただけなんですうぅ~! だから刀を送れなかったんですぅ~!」

 

「……? 今回お願いしたのは単純な、脇差ほどの長さの刀だったと思うのですが」

 

 俺の正体はもう完全に鬼にバレている。

 そのため、エモノを偽る必要ももうなくなっていた。

 

 それで、本来の俺の体格に合った刀に戻すことにしたのだが……。

 女流刀鍛冶は「だからこそですぅ~!」と叫んだ。

 

「発想ではどうにもならなくて、純粋な腕が求められるからこそ難しかったんですぅ~っ!」

 

「なるほど」

 

「でも、まふゆさまの担当を外れたくなくて、それでぇ~っ……だって、まふゆさんははじめて私の刀を気に入って使ってくれた人だからぁ~っ!」

 

「そういうことでしたか」

 

 正直、彼女は社会人や仕事のパートナーとしては最悪だと思う。

 ただ俺も人間だから、彼女の想いをただ踏みつぶしてしまうこともできなかった。

 

「わかりました。ではこれ以上は責めませんから、まずは先輩や里長に報告と相談をしてください。まずは過ちを正すことからはじめましょう」

 

「ひっぐ、ひっぐ……はいぃ~っ!」

 

 俺はそう言って女流刀鍛冶を送り出した。

 そうしてひとりになった俺は、宿を頼んで用意してもらい……。

 

「……どうしたもんかなぁ」

 

 畳に寝転びながら、途方に暮れていた。

 べつの鍛冶師を見つけて、今から頼みに行くか?

 

 でも、そうすると最低でも完成は半月後。

 それでは――おそらく間に合わない(・・・・・・)

 

「んー、よしっ!」

 

 ここで迷っていても答えは出そうにない。

 そこで俺はまずは気分転換をすることにした。

 

 訪れた先は――。

 

   *  *  *

 

「おぉ~っ」

 

 到着したその場所には湯煙がもうもうと立ち込めていた。

 そう、すなわちここは……。

 

 

 ――温泉だ。

 

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