TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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祝100話!!
記念すべきキリ番は……まさかの温泉回!?


第100話『恋柱・甘露寺蜜璃』

 

「すっごい……この温泉、びっくりするくらい広い」

 

 それこそ湯煙と相まって対岸が見えないくらいだ。

 俺はスルリと着物を脱いで岩の陰に畳んで置くと、かけ湯をしてから足を差し込んだ。

 

「ふわぁあああ……」

 

 ゆっくりと身体を沈めていき、肩まで浸かる。

 気持ちいい。

 

 それになんだか泣きそうになった。

 だって刀鍛冶の里の温泉には、縁壱との記憶があるから。

 

 もしかしたら、俺は本当はお湯ではなく――思い出に浸るために温泉へと来たのかもしれない。

 そう思うくらいに。

 

「懐かしいなぁ」

 

 あの時代はまだ毎日お風呂に入る習慣が一般的ではなかった。

 そんな中、俺は頻繁に水浴びしたがったもんだから、ワガママだと思われてたっけ。

 

 それからすっごい温泉好きだとも思われていたと思う。

 だからか、里以外でも……温泉のある地域では、必ず連れて行ってくれていたように思う。

 

「……っ」

 

 俺はパシャッ、パシャッ! とお湯で顔を洗った。

 濡れてしまいそうになった頬を誤魔化すために。

 

「あ、そうだ。せっかくだからと奥のほうまで行ってみよっと」

 

 ちゃぷちゃぷと水面を揺らしながら、お湯の中を進んでいく。

 すると……。

 

「ん? なんだあれ?」

 

 なにやらぼんやりと桃色の塊が湯煙の奥に見えてきた。

 首を傾げながらそのまま接近した……次の瞬間。

 

 ――ざぱーん!

 

 突然にその桃色の物体が立ち上がった。

 そして、言った。

 

 

「――どくじゃがいも~! 食べちゃうぞーっ! がおーっ!」

 

 

 桃色の髪をした女性が、脅かそうとするみたいに両手を上げて立っていた。

 ソレ(・・)を目撃してしまった俺は……。

 

「ぎゃあああ~~~~っ!?」

 

 悲鳴を上げてザパーンっ! とすっ転んだ。

 だ、だって……おおお、おっぱいがぁー!?

 

 俺は見てはいけないものを見てしまった気になって、慌てて両目を塞いだ。

 あぁでも、すでに網膜に肌色が張り付いてしまっている……。

 

 と、その女性は俺の様子を見て慌てだしていた。

 

「あ、あわわわっ!? ごめんなさい、そんなに驚くとは思ってなくて! そんな顔を押さえて泣いちゃって……わ、私のせいよねっ!?」

 

 ちがう! 泣いてるんじゃない!

 ただ裸がおっぱいで肌色が桃色だからぁ~~~~!(?)

 

 俺たちはお互いに混乱して、大騒ぎをして――。

 

   *  *  *

 

「落ち着いた?」

 

「すみません、取り乱して」

 

「「……ふぅ~」」

 

 俺たちは並んでお湯に肩まで浸かっていた。

 いやー、さっきはいきなり美人の裸を見てしまったせいで動揺してしまった。

 

 だが、冷静に考えてみると……言ったとおり戦国時代は温泉巡りをしていたし。

 女性の裸にも慣れているんだった。

 

 ただ知っている(・・・・・)人物でしかも胸が大きな相手だったから、ビックリしてしまったのだ。

 そう、この女性は……。

 

「はじめまして。私は”甘露寺蜜璃(かんろじ みつり)”って言います」

 

 彼女こそが恋柱・甘露寺蜜璃。

 オリジナルである『恋の呼吸』の使い手だ。

 

 両目の下のホクロがチャームポイント。

 ちなみに、その桃色の髪は桜餅を食べすぎた結果らしい。

 

「あなたのお名前は?」

 

「わたしは幸代(ゆきしろ)まふゆです」

 

「そう! まふゆちゃんって言うのね! ステキなお名前! 私、ドキドキしちゃう! あなたはどうしてこの里に来たの?」

 

「じつは――」

 

 そんな雑談に興じて、しばし。

 ざぱぁっ! と蜜璃がお湯から立ち上がった。

 

「ふぅ~。それじゃあ私はそろそろ上がろっかな。まふゆちゃんはどうする?」

 

「わたしはもうすこし浸かっていきます」

 

「そう、わかったわ。のぼせないように気をつけてね」

 

 その心配はご無用だ。

 じつは『氷の呼吸』で体温を調節することで……手足がふやけることを除けば、俺は無限にお風呂を楽しむことができるのだ。

 

 まぁ、呼吸をそんなことに使ってどうするんだって感じだが。

 戦国時代はそれでも、そこまで長風呂することはなかったけどな。

 

 こうして、ゆっくり湯を楽しめるようになったのは心が変わったおかげ。

 俺は温泉の心地よさに身を任せるように、しばし目を閉じ……。

 

「――不死川玄弥! ひさしぶり! 元気でやってた!? 風柱と苗字一緒だね!」

 

「――死ね! 話しかけんじゃねぇ!」

 

 いつの間にか、湯煙の向こうからそんな叫び声が聞こえていた。

 どうやら、ウトウトとしている間にほかの人が入って来ていたらしい。

 

 にしても、この声は……。

 俺はふと思いついた。

 

 もしこの時点でふたりを仲直りさせられれば、本来の歴史よりも有利にことを運べるかも。

 それで、ちゃぷちゃぷと彼ら(・・)のほうへと近づいて行き……。

 

「――ダメだよ、玄弥。友だちは大切にしないと。それから、炭治郎くんも。相手の事情も考えずズカズカと聞いちゃダメだよ」

 

 そう声をかけた。

 瞬間「あぁん!?」とドスの聞いた声で返答が来た。

 

「こんなヤツが友だちだぁ!? だれだ、そんなふざけたこと言うのは……ふへぁっ!?」

 

 そのとき、一陣の風が駆け抜け湯煙が一気に晴れていた。

 俺の視界に玄弥と炭治郎の姿が現れる。

 

 と同時に、玄弥の口から変な声が漏れていた。

 ……? あっ、忘れてた。そういえば俺って今……。

 

 

 ――裸なんだった。

 




【第100話】!!!!
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