TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第102話『カラクリ技師・小鉄』

 

「そ、そういえば!」

 

 と、蜜璃に弟扱いされた気恥ずかしさからか、妙に大声になりながら炭治郎が言う。

 話題転換を試みるが……。

 

「甘露寺さんは――」

 

「えぇ~!? 蜜璃姉さんって呼んでくれないのーっ!?」

 

「……み、蜜璃姉さんはその、どうして鬼殺隊に入ったんですか?」

 

「ん? 私? 恥ずかしいな~! あのね……」

 

 

「――添い遂げる殿がたを見つけるためなの!」

 

 

「女の子なら強い人に守ってもらいたいでしょ? でも柱の人ってなかなか会えないから、自分も柱になることで――」

 

「……!?!?!?」

 

 まさかの答えに炭治郎は完全に固まっていた。

 そりゃまぁ、そうなるだろう。

 

 俺も蜜璃以外に、ここまで鬼と関係のない理由で鬼殺隊に入った隊士を知らない。

 しかし――だからこそ(・・・・・)彼女は強い。

 

 そんな彼女は戦っているときも同じ調子で、まるでふざけているみたいに思われることもある。

 だが、逆にいえばそれは――心のあるがままに刀を振るっている、ということだ。

 

 彼女が使うのは『恋の呼吸』。

 感情に乗せて刀を振るうからこそ、力が発揮される。

 

「いや、逆か」

 

 そうしなければ発揮できない(・・・・)のだ。

 ”胸の高まり”を力に変えることが、その呼吸の強さだから

 

 それに……ひとりくらい、こんな人がいてもいいと思うのだ。

 鬼狩りになるのはツラい過去を背負っている人たちばかりだから。

 

 張りつめすぎた糸は、いつかプツンと切れてしまう。

 彼女のような存在はそれを適度にほぐしてくれる。

 

「そうだ、炭治郎くん。この里には強くなるための秘密の武器があるらしいの。探してみてね」

 

 蜜璃はそう言い残したあと、カクシに呼ばれて去っていった。

 研ぎ終わった日輪刀を手にし、また次の任務へと臨むために――。

 

   *  *  *

 

 翌朝、俺は炭治郎とは別行動をしていた。

 なにせ俺には時間がない。

 

 一刻も早く、自分の日輪刀を手に入れなければ。

 しかし、さすがに1週間で刀を打ってくれというのは……さしもの天才集団であるこの里の刀鍛冶たちであっても困難らしく断られ続けた。

 

「ここはもうどれか、既製品の脇差か普通の刀を使うしかないかな」

 

 ただ困ったことに、俺が求めているのはあくまで脇差()の刀。

 普通の脇差だと、今度は両手で扱うには柄が短すぎるのだ。

 

「そうだ。既製品の脇差を拵えだけ作りなおしてもらうのなら、間に合うか?」

 

 考えをまとめるため、ぶつぶつとそんなことを呟きながら森を歩いていると……。

 キィン、キィン! という剣戟の音が聞こえてきた。

 

「ん?」

 

 と思って、その場所へと近づいて行く。

 そして、木々の合間から――その後ろ姿が見えた。

 

「……ぁ」

 

 思わず声が零れた。

 隊服を着た線の細い少年と6本腕のカラクリ人形が剣を交えていた。

 

 俺の視線が吸い寄せられていたのは、カラクリ人形のほう。

 間違いない、アレは……。

 

 

「――お師匠、さま」

 

 

 無意識にそうつぶやいた瞬間、すぐ足元から「ハアア?」とやかましい鳴き声が聞こえた。

 見下ろすと、そこにいたのは1羽の鎹烏だった。

 

「バッカジャナイノ、アンタ。戦国時代ノ武士ト知リ合イナワケ?」

 

 ほかにも炭治郎と……それから、ひょっとこ面をつけた子どももすぐそばにいた。

 声を出されるまで、彼らが近くにいたことにまったく気づかなかった。

 

 それほど、俺はカラクリ人形の後ろ姿に意識を吸い寄せられていたらしい。

 鎹烏が俺に尋ねてくる。

 

「アンタ何歳ヨ?」

 

 ……ノーコメントで。

 とか考えた次の瞬間。

 

 ――バキィイイイン!

 

 と激しい音が鳴った。

 視線を前に向けると、カラクリ人形の腕が1本叩き斬られ――そして、動きを止めていた。

 

 少年は人形の折れた手に握られていた刀を拾うと、スタスタとこちらへ歩いてくる。

 表情こそ乏しいが――超がつくほど美少年だった。

 

「おれの刀折れちゃったから。この刀もらっていくね」

 

 そう告げた彼の名は”時透無一郎(ときとう むいちろう)”。

 霞柱であり『霞の呼吸』の使い手だ。

 

 刀を握ってたった2ヶ月――12歳で柱まで昇格した本物の天才。

 14歳である現在も、今代の柱たちの中で最年少だ。

 

 ちなみにアオイと同期でもあり、彼女の心が折れたきっかけにも関わっているとか。

 そりゃまぁ、こんなのと比べられたらね……。

 

「それ処分しといて」

 

 無一郎はそう言って折れてしまった刀を炭治郎に押しつけると、去っていった。

 残されたのは俺たちと、倒れて動かなくなったカラクリ人形。

 

小鉄(こてつ)くん……」

 

 炭治郎がひょっとこ面をつけた子ども――小鉄の名前を呼ぶ。

 彼は悲しみにくれ……。

 

「ムっキーっ! な、なんですかあの人は!? 全然、人の話を聞かない!」

 

 ……あ、あれー?

 なんか元気だった。悲しむというよりは怒りに震えているという感じ。

 

「この人形には寄木細工のような仕掛けがあって。ほら、手首や指をこう……回すことで動きの設定を変えられるんです」

 

「へぇー!」

 

「そして、刀鍛冶が剣士の弱点を突く動きを組んで戦わせる。そうではないと意味のある戦闘訓練にはならない……そう、教えようとしただけなのに!」

 

「そうだよね。人の話を聞かないのはよくないと思う」

 

「ですよね!? あの人『ジャマ』って言って勝手に訓練をはじめて、しかも壊していって! 炭治郎さん、強くなってください。そして、ヤツにこう言うんです」

 

 

「――この程度か? ゴミカス、昆布頭、チビ、不細工の短足、切腹しろ……って!」

 

 

「そこまでは言えないよ!?」

 

「はぁ、でも仕方ありませんね。そのためにもまずは……」

 

 なぜか俺の知っている歴史と全部、微妙にリアクションがちがった。

 そして、小鉄は言った。

 

 

「――これを直す(・・)としましょうか」

 

 

 と――。

 

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