TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第103話『縁壱零式』

 

「これを直すって……えぇっ!? 直せるんですか!?」

 

「え? はい、そうですけど?」

 

 俺の驚きの声に、小鉄はなんでもないことのように答えた。

 知らない……こんな彼を俺は知らないぞ!?

 

「いや、でもそうか……ありえる、のか?」

 

 この里は俺の知る中でももっとも歴史の変化が大きかった場所だ。

 ならば、そこに住んでいる者の人格や人生、経歴に変化が生じていてもおかしくはない。

 

「とはいえ失われている技術も多く、なんでも修理できるわけじゃありませんけどね。実際、昔はこの人形も複数あったみたいですが……今はこれひとつしか残っていませんし」

 

 言って、小鉄は倒れていた人形を起き上がらせる。

 そうして俺はそれと正面から向き合うことになった。

 

 俺の知る()は齢80を超えている老人だ。

 これはあくまで彼の若いころを模して造られたものだが――それでも、濃い面影があった。

 

「……ぁ、……あぁ……」

 

 俺はガマンできなくなった。

 気づくとその人形に駆け寄り……。

 

 

 ――ひしっ! と、その人形の胸元に飛び込んで抱き着いていた。

 

 

「あっ、ちょっと!?」

 

 小鉄の声が聞こえたが、そんなのを気にする余裕はなかった。

 ずっと……ずっと、もう一度こうしたくてたまらなかったのだ。

 

 そのときだった。

 カラカラカラと人形が一瞬だけ再起動した。

 

「あっ、よかった。機関部は壊れてなかったみたいです」

 

 そんな小鉄の声とともに、人形の手がまるで抱きしめるみたいに俺の背へと回されていた。

 冷たくて固いはずなのに、なぜかそれがすごく温かく感じられて……。

 

「う、うわぁあああん! お師匠さまぁっ……お師匠さまぁあああ!」

 

 俺はわんわんと声を上げて泣いた。

 小鉄も炭治郎も困惑した様子で見合わせていた。

 

 涙が止まらなかった。

 彼らは「仕方ない」という風に俺が泣き止むまでずっと待ってくれていた――。

 

   *  *  *

 

「えっと、まふゆ。大丈夫? 落ち着いた?」

 

「……う、うん。ぐすっ」

 

 鼻を鳴らしながら俺はコクンと頷いた。

 炭治郎は「ホっ」とした様子で笑う。

 

「それはよかった。まふゆが大声を上げて泣くところなんてはじめて見たから、本当にビックリしたよ。そんなにあの人形、まふゆのお師匠さまに似てたの?」

 

「……ま、まぁ……その、ちょっと? だけ? みたいな?」

 

「そっかー! きっとステキなお師匠さまだったんだろうなー! 俺も会ってみたかったなー!」

 

 うっ……は、恥ずかしい!?

 正直、穴があったら入りたい。まさかあんな泣き顔を晒してしまうだなんて。

 

「炭治郎さん、お待たせしました。直りましたよ」

 

 小鉄が言って、人形の首の後ろにカギを差し込んでゼンマイを巻く。

 するとカラクリ人形はカラカラカラと音を立てて動き出し、ブォン! と鋭く刀を振り回した。

 

 

「――”縁壱零式(よりいち”レイ”しき)”」

 

 

 動き出したカラクリ人形を見て、つい俺はつぶやくように言ってしまう。

 それを聞いた小鉄は「ん?」と不思議そうな顔をした。

 

「縁壱”(ゼロ)”式じゃなくて、ですか?」

 

「えっ、あっ!? そっか、ゼロだよね!?」

 

 この人形が作られた戦国時代には、まだ外来語である『ゼロ』という読みは存在しなかった。

 時代の流れとともにコレの呼びかたも変わっていたことを、うっかりしていた。

 

「腕もきれいに直せてよかったね!」

 

「といっても、ほかの……すでに動かなくなっていた人形の腕を移植しただけですけどね」

 

 炭治郎の言葉に、小鉄はどこか悔し気にそう返した。

 修理された縁壱零式には6本すべての腕が揃っている。

 

 無一郎に折れられたはずの場所には、代わりの腕がついている。

 すこしだけ古ぼけているが、形状はほかの腕と同じだしきちんと動作もしていた。

 

 しかし、小鉄は叶うことなら自分の手で新たな腕を作って直してあげたかったのだろう。

 ただ、今の彼ではまだ力量が足りなかった。

 

「小鉄くんはこのカラクリ技術を独学で?」

 

「いえ、師匠にです」

 

「そうですか。小鉄くんにもお師匠さまがいるんですね」

 

「……はい。おれの親父が急に死んじゃって、兄弟もいなくって……それで、ひとりぼっちで刀にもカラクリにも才能がなかったおれを拾ってくれたのが、師匠なんです」

 

 そう小鉄は自身の過去を語りはじめる。

 師匠の話ということで、俺も自然と表情がやわらかくなってしまう。

 

「やさしい人なんですね」

 

「……はい。彼女は本当に……やさしい人なんです」

 

「彼女? ということは女の人なんですか」

 

「えぇ。カラクリの技術に関しては女流刀鍛冶のほうが進んでいますから。もともと女流刀鍛冶は鍛錬する筋力が足りないのを、カラクリ仕掛けの槌を使って補ったりしていますから」

 

「へぇー」

 

 そうか、それで……。

 本来の歴史よりもカラクリの技術が多く現代まで残り、それで縁壱零式も修理できたのか。

 

「中にはカラクリだけを専門にやっている人もいて……おれも今、その人のもとで修業しています。ただ……男のクセに女に師事するなんて、ってバカにされることも多いですけど」

 

「……それはツラいですね」

 

「ううん、おれはツラくない。本当にツラいのは……師匠のほう。だって本来、女性が男の弟子を持つことは許されてないから。彼女らはあくまで……」

 

 

「――女流(・・)だから」

 

 

「でも、おれは当時そんなこと知らなくて……でも、その人は本当はダメだったのに、おれのワガママを聞いて弟子にしてくれた」

 

 父を亡くしてひとりぼっちになっていた小鉄を、放っておけなかった――か。

 小鉄は肩を震わせ、泣いていた。

 

「けれど、そのせいでほかの刀鍛冶や……どころか、同じ女流たちにも目の敵にされて。だから、おれは一流にならなくちゃいけないんだ!」

 

 俺は納得した。

 どおりで小鉄の技術が本来の歴史よりもずっと高いわけだ、と。

 

 

「おれはいつか必ず――縁壱零式を完璧に直して、どころかそれよりもすごいカラクリを作れるようになって、師匠に恩返しするんだ!」

 

 

 目標のある男の子はとっても強いのだ!

 と、それはともかく……。

 

「というわけで炭治郎さん! 特訓してあの”昆布頭”を見返してやりますよ!」

 

 炭治郎の過酷な修行がはじまった――!

 

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