TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第105話『400年前の刀』

 

 俺が縁壱零式と戦ったあと、食事を終えた炭治郎は訓練を再開した。

 そして、見事にかの人形へと一撃を入れ――。

 

「おぉおおお! これ! 少なくとも300年以上前の刀ですよね!?」

 

 縁壱零式の中からひと振の刀が現れた。

 縁壱の存命中に作刀されたのだとすれば、おそらく300年どころかもっと前……400年以上前の刀なのだが、それについては黙っておく。

 

 しかし、拵えが異なるし彼が持っていた刀ではないな。

 彼が愛用していたのはあくまで”出鮫(だしざめ)”――柄糸の巻いてない、鮫皮が剥き出しになった刀だ。

 

 しかし、その刀身の黒さ――”漆黒”といっていい色から、一度は彼が握ったことは間違いない。

 ならば、考えられるのは……。

 

 ――彼が意図的にここへと隠した?

 

 たとえば将来、自身が寿命で死に『日の呼吸』の使い手が……黒刀使いが絶えたときに備えて、これを残したとか?

 無惨を倒すためのヒントとして。

 

「これ炭治郎さんもらっていいんじゃないでしょうか!?」

 

「いいの!? いいの!?」

 

「ちょっと抜いてみます!?」

 

「錆びてる……」

 

 その刀身を見て、炭治郎と小鉄がひどく落ち込んでいた。

 だが、それでも何百年も放置されていたにしては状態が良すぎる――錆があきらかに少ない。

 

 普通、刀は油を塗って白鞘に入れても、1年もすれば油が乾いてしまい錆びてくるものだ。

 だから定期的に手入れが必要となる。

 

 ゆえに古い刀はそれだけで希少で価値が高いのだ。

 1年1万円――なんて言われることも。

 

「……ん?」

 

 だが……いや待て。

 なんだこれは。

 

 よく見ると、これはただの錆にしては赤すぎるような?

 いや、これ……よく見るとただの錆じゃなくて”鬼の血”か!?

 

 もしかして――鬼の血が油の代わりになっている!?

 

 たしかに、そうであれば普通は錆びてしまうところを何百年ももっていて不思議ではない。

 考えてみれば、刀に携わる人間なら血まみれのままで鞘に納めて放置するとは思えないし。

 

 やはり、これは意図的なものだろう。

 白鞘でなく普通の鞘なのも鬼の血を長持ちさせるため――鞘にあえて”呼吸”をさせないためだったのかも。

 

「話は聞かせてもらった……。あとは……任せろ……」

 

 そうこうしているうちに炭治郎の担当刀鍛冶――”鋼鐵塚蛍(はがねづか ほたる)”が現れ、彼が三日三晩かけてこの刀を研ぐことが決まっていた。

 それを見ながら俺はつぶやいた。

 

「さて、じゃあそろそろわたしも自分の刀を受け取りに行くとしようかな」

 

 ダテにここ数日、ボーっと炭治郎の特訓を眺めたり、温泉に入ったり、温泉に入ったり……温泉に入ったりしていたわけじゃないのだ!

 あと、ちなみに俺はまったくもって風呂好きなどではない。

 

 言ったとおり相対的に(・・・・)そう見えていただけで。

 でもさ、ほら……せっかく温泉があるのに入らないというのももったいないし?

 

 むしろ戦国時代で1日1回だったなら、大正時代は1日3回くらいでちょうどいい、みたいな!?

 ……いや、冗談だけどね!? 本当に!

 

 まぁ、温泉はともかく。

 その合間に俺は刀鍛冶に依頼を出していたのだ。それが――今日、完成する。

 

   *  *  *

 

「まふゆさま、お待ちしてました!」

 

 そう言って出迎えてくれたのは、カナヲの担当でもある先輩おかめだ。

 俺の担当をしている女流刀鍛冶と一緒に蝶屋敷へ刀を持ってきてくれた人。

 

「できてますか?」

 

「えぇ、さきほど。確認お願いしてもいいですか?」

 

 俺はこの数日、並行して脇差長の刀をずっと探していた。

 この里なら1本くらいはそういうのもあるんじゃないかと思ったが、ダメだった。

 

 なにせ、基本的に刀は受注生産だからだ。

 そのため案外、鍛冶師の手元には――もちろんまったくないわけではないが、俺が思っていたほど刀が残っているわけではなかったのだ。

 

 しかし、1から打ってもらうには時間が足りない。

 そこで既存の刀を使ってどうにかすることにした、のだが……。

 

「そちらでいかがでしょうか?」

 

「……」

 

「……やはり、そうですか」

 

「すみません」

 

 正直なところ――その刀は俺の期待していた出来ではなかった。

 先輩おかめも俺の反応を見てそれがわかったのか、申し訳なさそうな顔をする。

 

 その刀は脇差ほどの長さの刀だった。

 まさに俺の注文どおりに見える、が……。

 

「重心が、その……すこし」

 

「やはり……」

 

 用意してもらった脇差長の刀にはひとつ特徴があった。

 それは鎺元(はばきもと)ギリギリまで刃があることだ。

 

 多くの場合、新しい刀はそこに”()()”がある。

 あえて根本の刃を研がないでおくことで、刀の強度を保ったり長持ちさせたりするのだ。

 

 ではなぜ、この刀がそうなっていないのかというと……それはこれが、本来は普通の打ち刀だった日輪刀を”磨上(すりあ)げて”作ってもらったものだから。

 言い換えると(なかご)――柄の部分を切って短くしてもらったものなのだ。

 

 ただ、そうやって……いってしまえば”ムリ”をすると、どこかにしわ寄せはくる。

 今回の場合、重心が俺にとってのベストからズレてしまっていた。

 

「すみません。ですが、この短期間ではそれが限界でした。きちんとしたものが欲しいのであれば、期限を調整して、改めて依頼いただくほかありません」

 

「そうですよね。いえ、こちらこそムリを聞いていただいてありがとうございました」

 

 しっくりは来ない。

 だが、普通の日輪刀よりはまだ俺の体格に合っているし……。

 

 とりあえずは、これでなんとかするしかないな。

 そして――この騒動(・・・・)が終わったあとに改めて依頼するほかあるまい。

 

「最近、ちょうどほかの刀鍛冶に珍しい――脇差の依頼があったそうですが、仮にそれを融通してもらえたとしても、まふゆさんは両手持ちしますからどのみち拵えは変えなければなりませんし」

 

「さすがに他人の日輪刀を横取りするわけにはいきませんよ」

 

「ですよね」

 

 そう言って先輩おかめは苦笑する。

 それから、彼女はポロッと言葉をこぼした。

 

「――本当は……」

 

「え?」

 

「あ、いえ!? す、すいません……!」

 

 いったいなにを言いかけたんだろうか?

 俺が首を傾げて彼女を見ていると「じつは」と教えてくれる。

 

「ひと振り、まふゆさまの希望に合致しそうな既製の刀を知らないではないのです」

 

「そうだったんですか!? どうしてそれを教えてくれなかったんですか!?」

 

「隠していたわけではなくて。その刀は女流刀鍛冶の間で家宝のような扱いを――いえ、神聖視(・・・)をされているため、だれかに譲渡できるようなものではなくって」

 

「なるほど。そういう事情でしたか」

 

 一瞬期待してしまったが、それでは厳しいか。

 まぁ、この刀だってベストでこそないがベターだ。

 

 十分に活躍してくれることだろう。

 それになにより……。

 

 ――うん、やっぱり刀は腰にあるのが一番だな!

 

 俺はずっと刀を背負わされていたから、ひさびさの刀を”差す”感覚に満足していた。

 長年の慣れもあって、やはりこれが一番落ち着くな――と。

 

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