TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
俺と玉壺が、温泉へと続く石畳の階段で向き合っていた。
ついに鬼どもによる『刀鍛冶の里』への襲撃がはじまったのだ……!
「ヒョヒョッ、知っていますよぉアナタのことは。しかし、ジャマをしないでほしいものですねぇ。ワタクシには”あの方”に与えられた崇高な使命が――」
「氷の呼吸・肆ノ型――”
霜が降りるかのごとく静かに踏み込んで放つ、横凪ぎ。
俺は現れた2個目の壺を即座に叩き斬っていた。
だが、次の瞬間にはまたべつの場所に壺が現れている。
ダメだ、今の俺の剣じゃ
重心が合っていないせいか刀の振りに一瞬のラグがある。
そのせいで正面からじゃ逃げられてしまう。
「キサマ! よくも2度もワタクシの壺を――」
仕方ない。
こうなったら
そう考え、俺は壺が現れるたびに刀で斬りつけた。
2個、3個、4個……。
「ちょっ、このっ……キサマぁあああ! 話を最後まで聞かんか!? 脳みそまで筋肉でできているのか! あぁ、もうよい。ワタクシの作品を理解する力ない猿は――永遠に黙っておれ」
何個目かの壺を出現と同時に叩き斬った瞬間、俺は自分が失敗したことに気づいた。
その壺は割れると同時にバシァアン! と大きな水音が鳴った。
視界の端――離れた場所にもうひとつ壺が現れていることに気づく。
すなわち、こちらはダミー。
「血鬼術――”
中から津波のごとく水が全方位へと溢れ出していた。
しまった!? これは……俺の
そうだ、当然だが鬼が”作中”で使った技がそのすべてだとはかぎらないのだ。
しかも、よりによって今回使われたのは単純な水による物量攻撃。
それは俺の
範囲が広く躱せない――大抵の場合、そういった攻撃は威力が低くなる。
だが、俺にとってはそれで十分致命傷になってしまう。
身体の貧弱な俺では、そんなのでも傷を負ってしまうのだ。
これに巻き込まれれば高確率で俺の細い手足は折れ、動けなくなる。戦えなくなる。
そうなればあとは死ぬしかない。
ほかに方法はなかった。
『氷の呼吸』を全開にする。
「スゥウウウッ!」
そして、襲い来る津波を斬りつけた。
同時に冷気を流し込む。
次の瞬間――ピキピキィイ! と津波が俺に覆いかぶさると同時に凍って停止した。
ひとまずは防いだが、結果的に俺は自分で作った氷の檻に閉じ込められることになっていた。
最悪だ。俺は凍らせることはできても、溶かすことはできない。
ほかに手がなかったとはいえ、身動きを封じられてしまった。
どの方向から攻撃が来る!? どんな攻撃が来る!?
今度こそ躱せない。反応しろ! 受け流せ!
「……」
そう全力で警戒し続けるが……しかし、いつまで経っても攻撃はやって来なかった。
代わりに……。
『――うわぁあああ!?』
遠くのほうから悲鳴が聞こえてきた。
瞬間、俺は「ハっ」と気づいた。
慌てて、何度も氷の檻へと刀を突き立てた。
カン! カン! と氷を掘削しはじめる。
「やられた!? 玉壺め! まさか、あいつ――逃げやがった!?」
おそらく現在、炭治郎たちが相手にしている”
玉壺のほうから、目の前にいる『俺』という獲物から逃げるなんて、想定していなかった。
「くっ!? 固い!」
こういう単純に筋力を要する作業は俺の天敵だ。
こればかりは物理的にどうしようもならない。
もし俺に行冥のような強靭な肉体があれば、簡単に叩き割って出られただろうに!
そうないものねだりをしてしまうくらいに最悪の状況。
「クソっ、このっ! 早く割れろぉおおお!」
当然だが、こんな使いかたをすればすぐに刀がダメになる。
刀の斬れ味がどんどんと落ちていくのがわかった。
だが、これ以外に脱出の方法も思いつかない。
やがて、ようやくピシィッ! と亀裂が入って氷が砕けた。
しかし、やはりというべきか……もうそこに玉壺の姿はなかった。
怒りや後悔――そんなものに苛まれている時間すらない。
「だれか助けてくれぇえええっ!」
俺は助けを求める声へと向かって、全力で駆けるしかなかった。
……そうだ、考えれば思いついたはずなのに。
今回の鬼どもの狙いはあくまでもこの里をつぶすことだ。
そして、鬼殺隊全体の弱体化を図ること。
玉壺の場合とくに――”作品”を作ることのほうに関心があるし……。
俺が気づけなかったのは……おそらく、油断があったのだと思う。
俺は走りながら、困惑を隠せなった。
その油断の原因となったことについて考えていた。
「頼む……早く”増援”来てくれ!」
俺はお館さまにきちんと手紙を渡している。
その中にはここが襲撃されることも記してある。
だから、自分にできることをしながら待機していた。
完全に迎え撃ってしまうと、こちらが相手の動きを読んでいることがバレてしまう。
だからなるべく自然に、偶然を装って予備戦力が用意されているはず。
そして、まんまと
だが、なぜかいまだその気配はどこにもなかった――。