TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
俺はヤツが出したのだろうザコ鬼を狩りながら、『刀鍛冶の里』を駆け抜けていた。
玉壺に一刻も早く追いつかないと! 見つけないと!
鬼を生み出す大元を断たないと被害は止まらない!
すでに、里の中は大混乱だった。
「みんな逃げて! お願い! 生きのびて!」
幸いにも、まだ攻撃ははじまったばかり。
ザコ鬼もなるべく発見と同時に狩っているので、まだ俺の見える範囲に死者は出ていない。
だが、重軽傷者はすでに多数出ていた。
自分の失態で出てしまったケガ人の悲鳴やうめき声が聞こえる。
情けなさで泣きたくなる。
だが、おちおち落ち込んでいることもできない。
「ひぃいいい! ここにも鬼が!? だれか助けてくれぇえええ!」
「今、行きます!」
天元に注意されたはずだ。
お前はそんなにも強いのか、と。
そうだ、俺は弱い――だから、なんでも完璧になんてできない。
だから、せめて今できることを全力でやる。
「いた! 今までのより大きい!」
声が聞こえた場所へと駆けつけた。
鬼はまるで手足が生えた魚のような外見をしている。
その弱点は背中についた壺。
玉壺の血鬼術で動いているコイツらは、その壺を壊すことでしか倒せない。
「氷の呼吸・弐ノ型――”
雪原を駆ける兎のごとき軽い足さばきで跳躍する。
その巨体――高い位置にあった壺をそのまま叩き斬った。
だが、ただ斬るだけでは壺の大きさに対して刀の長さが足りない。
脇差長の刀にした弊害だ。
だから、俺は刀を滑らせるようにして振るった。
刃を
「……ふぅ」
壺がきちんと破壊され、きちんと鬼が灰となって消えていることを確認する。
今のは本来の刀の使いかたではない。
普通、刀はもっとも遠心力の乗る切っ先が、相手にちょうど到達する間合いで斬る。
だが、今回はそれでは足りないと判断した。
今回したのは、どちらかというと”試し切り”での刀の振るいかたに近い。
あるいは包丁で食材を切るとき、と言い換えてもいい。
敵を殺すためと、畳表などを切断するためとでは刀の振りかたが変わってくる。
太いものを”切る”にはこうするのが一番。
「”
あの技は氷で刀身を伸ばすことができるが、当然というべきか……氷には刃がなく、斬れない。
あくまで突き刺すだけ――相手に届かせることにしか使えないのだ。
「にしても、鬼の数が多い」
俺はまた、聞こえてきた助けを求める声へと向かって走り出す。
斬っても斬っても鬼が減った気がしない。
そして物を斬れば斬るほど、刀の斬れ味は落ちていくものだ。
普段は俺もここまで短時間に刀を消耗させてしまうことはないのだが、最初に氷の掘削を行った……アレがマズかった。
そのときにできた小さな刃こぼれが、敵を斬るたびに広がっているのがわかる。
今のも切断の途中でわずかだが手に引っかかる感触があった。
「近いうちにこの刀は斬れなくなる。だから、どうかその前に――だれか来てくれ!」
そんな俺の声はだれにも届かない。。
ただ、カンカンカン! と襲撃を告げる警鐘だけが鳴り響いていた――。
* * *
「はぁっ……、はぁっ……」
俺は荒い息を吐きながら、膝をついていた。
なんとか、ひと通り鬼は討伐できたと思う
「ありがとうございます、ありがとうございます」
「いえ……はぁ、はぁっ」
感謝を述べてくる里の住人たちに短く、そう返した。
とりあえずの山場は越えた。
だが、もう刀は完全にダメになってしまっていた。
とくに最後はたかがザコ鬼相手なのに刃が弾かれてしまったほど。
おかげで、何度も刀身を打ちつけてようやく壺を叩き割って倒すハメになった。
それに、ずっと刀に負荷がかからないように気を使いながら戦ってきた。
当然、その分だけ集中力が必要だし余計な体力も使う。
それらは疲労という形で俺にのしかかってきていた。
「大丈夫ですか、鬼狩りさま?」
「いえ、お気になさらず。それよりも今のうちにケガ人の手当てと避難を。いつまたあの鬼どもが現れるともしれません」
「は、はい! わかりました!」
俺も今のうちに身体を休めないと。
それに代わりの刀も必要だ。
先輩おかめには申し訳ないことをした。
せっかく用意してもらった刀だったのに、たった1日でダメにしてしまった。
この刀は残念だがもう死んでいる。
急場しのぎ――いや、急刃しのぎも難しい。
最後、壺を叩き割るのに使ったときに大きく欠けてしまっていた。
小さな刃こぼれなら砥ぐことで直せるが、これはもう……。
「まふゆさん!」
と、ウワサをすればだろうか。
先輩おかめが大声で俺を叫んで、駆け寄って来ていた。
いったいなにをしてるんだ!?
いいから早く、お前も逃げてくれ――と怒るよりも早く、彼女は叫んだ。
「まふゆさん――あの子を見ませんでしたか!?」
「あの子……? まさか、いないんですか!?」
俺の担当刀鍛冶が行方不明?
最悪の想像が頭をよぎる――彼女が、玉壺の”作品”にされている姿を。
「急いで見つけないと!」
「――ほう、だれを探しにいくというのだ?」
そのとき世界が静止した。
いやちがう、あまりの恐怖で身体が動かなくなっているのだ。
まるですべてを見通されているかのような感覚。
なんだ、これは。ありえない。なぜ……やつがここにいる!?
剣士風の外見。
その男の顔には、3対6つもの目があった。
目のひとつには『上弦』の文字。
そして、もうひとつには――『壱』の文字。
「こうして直接、相まみえるのははじめてだな。私の名は……」
「――”
そして、俺は理解させられることになる。
歴史を変えることが、どれほど恐ろしいリスクを孕んだ行為であったかを。
「では、聞かせてもらおうか。なぜ――”400年前”の人間がここにいる?」
俺の目の前に現れたのは『絶望』だった――。