TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
俺が産屋敷邸へ!?
って、いったいなぜ!?
困惑しながらも、俺にはついていく以外の選択肢はなかった。
カナヲたち同期の面々に送り出され、出立し……。
* * *
目隠しを外されると、そこは広く美しい庭園だった。
俺は『刀鍛冶の里』へ行ったときの何倍も厳重にカクシの人に交代で運ばれ、この場所へと連れてこられていた。
こここそが鬼殺隊の本部。
かつて炭治郎が柱合会議にて裁判にかけられた場所……。
「まふゆ」
「しのぶさ……、ん」
しのぶの声が聞こえて振り返り、思わず言葉を失った。
ズラリと柱全員が勢ぞろいしていた。
すでに柱を引退した天元の姿だけはなかったが……。
それでも、この光景はさすがに壮観というほかなかった。
強者にはオーラがある。
それがここまで集まると声を発することすら躊躇われるほど。
炭治郎ってこの状況でアレコレ柱に言いまくってたんだよね……?
す、スゴすぎる。なんて胆力。
「まふゆ、ひさしいな! まさかキミとこのような場で再会しようとはな!」
「煉獄さん……その、お元気でしたか?」
「うむ! 目のことは気にするな! もう慣れた! はっはっは!」
こうして直接、杏寿郎と顔を合わせるのは無限列車での戦い以来だ。
彼の左目は猗窩座との戦いの後遺症で、眼帯に覆われていた。
しかし、本来であればこの時点ではもう失われていた存在。
歴史は確実に良い方向へと進んでいる……と思いたい。
「きゃーっ! まふゆちゃん、元気だったーっ!? 里での戦い、大変だったんだってー!? ごめんねーっ、私……自分の戦いで精いっぱいで全然気づいてなくてーっ!?」
「甘露寺さん……いえ、あの状況では仕方のないことだったと思います」
蜜璃はすでに戦いの傷も癒えて元気いっぱいという様子だった。
聞くところによると、あの戦いのあと2日で目覚め、5日目には全快していたとか。
その特別な肉体を俺はどうしても羨まずにはいられない。
貧弱な俺とはまさに対極のような体質だ。
「なんだかキミ、見たことある気がする……そっか、炭治郎の友だちだっけ?」
「時透さん……その節はどうも」
無一郎も蜜璃と同じペースで回復したとかで、すでに本調子のようだった。
柱というのは例外なくバケモノ揃いらしい。
……いや、たしかこの異常な傷の治りの早さは”痣”が出た影響でもあったっけ。
体温が上がらず痣が出せないだろう俺にとってはますます羨ましいことだ。
たとえそれが――寿命と引き換えの力であったとしても。
あと多分、俺のことを炭治郎の付属品かなんかだと思ってる。
いやまぁ、いいんだけどね……。
「で、なんでコイツがここにいるんだァ? しのぶよォ、テメェが連れてきたんだろォ? なら、オレたちに説明する義務があんじゃねェのかァ?」
「不死川さん……」
しのぶへとそう言葉の矛先を向けたのは、先日も蝶屋敷で顔を合わせたばかりの実弥だ。
しかし、その荒っぽい口調とは裏腹に……彼はしのぶへ説明の機会を与えているように見えた。
ほかの人たちに対してより、すこし態度がやわらかい気がする。
もしかすると、カナエの妹だからだったりして……。
「申し訳ありません、私も詳しくは聞かされていないのです」
「子どもがこの場にいるなど、ロクな理由ではないだろう。悲しい、私はじつに悲しい……」
「悲鳴嶼さん……」
子ども嫌いの行冥は、そう言って涙を流しながら数珠を握った手を合わせていた。
俺が彼と顔を合わせたのは、浅草へと無惨を探しに行ったときの1度きり。
彼が子ども嫌いとなった原因……そのわだかまりも、近いうちに解消したいところ。
だが、今はまず……。
「――まさか、この短期間に2度も柱が全員集合することになるとはな」
木の上から、まるで蛇のように絡みつく視線が俺へと向けられていた。
俺は声が聞こえたほうに頭を下げて、あいさつする。
「はじめまして、
「……ふんっ。ほかのやつらとはすでに顔見知りで手心を期待しているのかもしれないが、俺はそうじゃない。俺はお前を冷徹に判断させてもらう」
黒髪に口元を隠すように巻かれた包帯、それから首元に巻きつく相棒の蛇。
彼こそが蛇柱――『蛇の呼吸』の使い手である”
「胡蝶の責任は……知らぬというなら問わないでおいてやる。だが、お前はべつだ」
俺を指さし言ってくる。
初対面だが、状況が状況だけに態度が辛辣だった。
「許さない、許さない。柱全員を集めたんだ。しかも、今の俺たちは命の次に時間が惜しい状況だ。もしもくだらない理由だったら俺はお前を許さない」
「伊黒さん、あんまりイジメちゃかわいそうだよ~っ!」
「……ふんっ」
蜜璃にたしなめられ、小芭内はようやく俺にネチネチ言ってくるのを止めてくれる。
これで全員の意見が出揃った……いや、ひとりまだ残っていたか。
「で、さっきからずっとだんまり決めこんでるヤツがいやがるなァ? テメェは幸代まふゆについて、なにか知ってんのかァ? なァ、冨岡よォ?」
「……ちがう」
「彼女の名前は『幸代まふゆ』じゃない。彼女の名前は――『神崎鮭大根』」
「げほっ、ごほっ!? と、冨岡さん!?」
義勇の発言に俺は思わずむせた。
お願いだからこんなタイミングで天然を発揮しないで!?
「ブフッ!? ……すみません」
「……っ、……っ」
蜜璃が思わず吹き出し、しのぶも顔を背けて肩を震わせていた。
ピクピクと実弥のこめかみが怒りのあまりひきつっている。
「冨岡ァ……テメェ、ふざけやがって」
「ふざけてなどいないが」
「あァ、そうかいィ……ケンカ上等だオラァ! お望みとありゃあ、ぶっ殺してやらァ!」
あーもう!? めちゃくちゃだよ!?
一触即発――その空気を、パァン! と行冥が
「隊員同士でやりあうのはご法度である。それに……もうすぐ参られる」
行冥の言葉を受けて、柱たちの雰囲気が変わった。
一瞬だった。
「――大変お待たせいたしました」
その声が聞こえたときには、全員が整列して膝をつき、頭を下げていた。
俺も彼らに倣って頭を下げる。
「どうぞみなさま、顔を上げてください」
屋敷の縁側に立っていたのは、鬼殺隊の頭――”産屋敷
……ではなかった。
「幸代さまとは『はじめまして』になりますね。私は当主代理の”産屋敷あまね”と申します」
白い髪をした美しい女性だった。
お館さまの奥さんだ。
だが、なぜ彼女が?
本人はいったいどうしたのだろう?
「柱のみさなまにはすでにお伝えいたしておりますが、当主の耀哉は病状の悪化のため人前に出られません」
「……!」
言われて記憶が蘇る。
そうだ、そうじゃないか……もうお館さまの身体はとっくに限界だ。
産屋敷家は鬼舞辻無惨をその家系から生んでしまったことで呪われている。
30歳になる前にみんな死んでしまうのだ。
「改めて、お館さまが一日でも長くその命の灯火を燃やしてくださることを祈り申し上げる……」
行冥がみんなを代表してあまねをおもんばかった言葉を放つ。
彼女は頷き、すぐに本題へと入った。
「先日に続いて集まってくださり、ありがとうございます。本日の議題はほかでもありません。こちらの幸代まふゆさまには……」
「――新たなる”柱”となっていただきたいと考えています」
そう、あまねは言った――。