TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第118話『新たなる”柱”』

 

「「「なっ!?」」」

 

 あまねの言葉に、俺を含めて何人もの口から驚きの声が漏れた。

 お、俺が……新たなる”柱”に!?

 

「あまねさま、畏れながら申し上げます。幸代(ゆきしろ)が柱に加わること、オレは了承しかねます」

 

 真っ先に反対したのは実弥だった。

 お館さまに向けるのと同様、あまねにも敬意を払って理知的に言葉を紡いでいた。

 

 それから、今度は俺へと視線を向けて……。

 

「はっきり言う。幸代まふゆ、テメェは今すぐこの場から失せろ。ただの数合わせはいらねェ。実力のあるヤツがいねェなら、柱は欠けたままでいい」

 

 実弥はそう厳しく俺に言った。

 だが、それは彼なりのやさしさ……カナエの妹分である俺が、危険と責任のある立場になってしまうことから守ろうとしてくれているようにも見えた。

 

「俺も同感だな。認めない認めない、俺はお前を決して認めようとは思わない」

 

 実弥に続けて、俺へと否定の言葉を吐いたのは小芭内だった。

 くるくると蛇がのたうつみたいに指で宙を掻きながら、言葉を重ねる。

 

「お前は鬼殺隊に入って何ヶ月だ? 刀を握って何年だ? 時透のような才能のある者ならまだしも、コイツからはなんの力を感じない」

 

「い、伊黒さん、そんなことないわっ! まふゆちゃんには……えーっと、そう! ”かわいさ”があるものっ! だから大丈夫よっ!」

 

 小芭内を諫めてくれたのは蜜璃だった。

 彼女はバチコーンっ☆ と俺に目で合図を送ってくる。

 

 うん、ありがたいんだけどね……今の、なんのフォローにもなってないね。

 炭治郎タイプはこれだから、と呆れていたら……。

 

「炭治郎の友だちだし、いいんじゃないかな」

 

 無一郎がそう淡々と言った。

 小芭内に比較対象として名前を挙げられていた彼だったが、本人としてはどっちでもよさそう。

 

 というか、判断基準が炭治郎の友だちかどうかになっていた。

 いいのかそれで……。

 

「俺はよいと思う! まふゆには覚悟がある! そういう者は強くなる! 『上弦の参』との戦いでも彼女は目覚ましい活躍をしてくれた!」

 

「『上弦の参』戦で活躍できたのは、あくまで煉獄……お前がいたからであろう。悲しい。じつに悲しい。子どもはすぐに思いあがる」

 

 肯定する煉獄に反論したのは行冥だった。

 彼は涙を流しながらとうとうと語る。

 

「子どもは信用できない。彼女を鬼殺隊の支柱に据えるなど、容認しかねる」

 

 あと意見を言っていないのは……ふたり。

 彼らへと実弥は視線を向ける。

 

「しのぶは……いや、意見はもう決まってるかァ。じゃあ、残りは……オイ、冨岡ァ。テメェの意見はどうなんだァ? まさか、また『俺には関係ない』とでも言うつもりじゃ――」

 

「俺には関係ない」

 

「テメェ……!」

 

 我関せず、といった様子の義勇に実弥がブチ切れかけていた。

 わかってはいたがふたりの関係はまさに水と油だった。

 

「あまねさまの御前であるぞ。やめんか。にしても……賛成が3に反対が3、身内票が1、中立が1に……そして、不在が1であるか」

 

 行冥がふたりのケンカを諫めながら言う。

 最後のひとつ……不在票とは、この場にいない天元のことだろう。

 

 俺の昇格について、柱たちの意見は見事にバラけていた。

 と、そこへ口を挟んだのはしのぶだった。

 

「あまねさま、畏れながら……そもそも、まふゆはまだ”柱”の条件を満たしていないはずです」

 

 その発言に、実弥が「ほう」と目を丸める。

 しのぶの発言が意外だったらしい。

 

「なんだ、しのぶ。テメェはこいつの”柱”昇格に反対派だったのかァ?」

 

「……そういうわけでは」

 

 しのぶは罰が悪そうに俺から目を逸らし、言葉尻を小さくする。

 俺にも反対意見のように聞こえたが……しかし、彼女の言っていることもまた事実。

 

「あまねさま、わたしは……しのぶさんの言うとおり、まだ”(きのえ)”に届いておりません」

 

 柱になるにはいくつかの条件を満たす必要がある。

 それは一番上の階級である”甲”にまで到達し、さらには十二鬼月か鬼50体を倒すこと。

 

 俺は階級どころか、いずれの条件もまだ満たしていない。

 十二鬼月も単独ではなく、協力での撃破だったし……トドメも俺ではない。

 

「では幸代さま、この場で階級をご確認ください」

 

「……”階級を示せ”」

 

 俺は手の甲にグッと力を込めた。

 ”藤花彫(とうかぼ)り”によって刻まれていた文字が浮かび上がっていく。

 

「えっ!?」

 

 そこにあったのは『甲』の文字だった。

 ありえない……俺はたびたびケガをして入院していたこともあり、そんなに階級が上がるほど任務をこなしていないはずだ。

 

「幸代さまは柱に昇格するに十分な実績と実力を有していると、私どもは判断しております」

 

「実績とはどのようなものか、具体的にお聞かせ願いたい。そもそも、お館さまはこのことを承知しておられるのか?」

 

 実弥の問いに「もっともな疑問です」とあまねは頷いた。

 それからみんなへと言う。

 

「今回の昇格について、提案したのはほかでもない当主本人なのでございます」

 

「お館さまが!?」

 

 そう言われてしまうとみんなも反論できないようだった。

 『刀鍛冶の里』であれだけ大事にされていた宝刀があっさり俺に手渡されたり……お館さまの言葉にはそれだけの力があるのだ。

 

 彼は今、寝たきりのはずだ。

 おそらく、起きているわずかな時間にその決断をあまねへと伝えていたのだろう。

 

「しかし、それであれば我々に命じれば済む話。では、なぜこのような……決を取る形で我々に意見を求めているのでございましょう?」

 

「当主は『まふゆには、みんなに認めてもらったうえで”柱”になってほしいと思っている』と申しておりました。それと実績についてですが、こちらの幸代さまは……」

 

 

「記録に残っているだけでも――”1000体”を超える鬼を討伐していらっしゃいます」

 

 

「「「なっ……!?」」」

 

 柱たちの視線が一斉に俺へと向く。

 俺もその言葉には動揺を隠せなかった。

 

 まっさきに反応したのはしのぶだった。

 

「鬼を1000体ですか!? あまねさま、それでは計算が合いません! 私はまふゆがこれまでに受けた任務をすべて把握しておりますが、そのような数は絶対にありえません!」

 

「それを説明するには、幸代さまの過去について話さなければなりません」

 

「過去……」

 

 動揺から言葉を荒げているしのぶに、あまねはやさしい声音で告げた。

 それから彼女は俺へと視線を向けてくる。

 

「ただ、それを話すにはご本人の許可をいただかなくてはいけません。幸代さま……」

 

 

「――みなさまにお伝えしてもよいですか?」

 

 

 俺は問われていた。

 今まで隠し続けてきた俺の秘密……それを今、この場ですべて明らかにするか否かを。

 

 この選択によって運命が大きく変わることを俺は直感した――。

 

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