TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第119話『400歳の少女』

 

幸代(ゆきしろ)さま、みなさまにお話ししてもよろしいですか?」

 

 あまねがそう問うてくる。

 俺の秘密を話すか、話さないか――それによって運命は大きく変わるだろう。

 

 お館さまは間違いなく、すでにすべてを把握されている。

 それも俺が渡した手紙以上に……。

 

 だって俺自身ですら、自分が今までに狩った鬼の数なんて把握していなかったから。

 塵も積もれば山となる、か……いつの間にかそんなにも狩っていたんだな。

 

「まふゆ……」

 

 しのぶが俺を複雑な感情のこもった目で見てくる。

 俺の答えは……決まった。

 

 いや、最初から決まっていた。

 だってこれは、お館さまに手紙を書いた時点ですでに済んでいた覚悟だから。

 

「構いません」

 

「……わかりました」

 

 俺の答えにあまねは深く頷いた。

 それから彼女は柱全員へ俺の秘密を明かした。

 

 

「幸代さまは――この時代の人間ではありません」

 

 

「……それはいったいどういう意味でしょうか?」

 

 そう困惑した様子で聞き返したのは、まさかのしのぶだった。

 俺はむしろ、そんな彼女の態度こそが不思議だった。

 

 彼女は俺が手紙を記すところを横で見ていたはずだ。

 そもそも、お館さまへ渡すのを頼んだ相手も彼女だ。

 

 だから、すでに知っているはずだ。

 なのに彼女の反応はまるで、今はじめて聞いたかのようだった。

 

 

「幸代さまは、今から400年前――戦国時代にお生まれになったかたです」

 

 

「「「――ッ!」」」

 

 次の瞬間、柱たちは一斉に動いた。

 数名が日輪刀を抜き、俺の頸を斬り落とそうとして――!?

 

「剣を引け、不死川! 今の言葉には俺も驚いたが、まふゆが鬼というのはありえない!」

 

「そ、そうですよ~っ! 伊黒さんも抑えてくださいっ! だって、ほら! まふゆちゃん、今だって普通に日向に立っているし!」

 

「ひ、悲鳴嶼さん……どうか剣を納めてください」

 

 実弥の振るった日輪刀を、杏寿郎が同じく日輪刀で受け止めていた。

 日輪刀を振るおうとする小芭内の腰に、ぎゅ~っと蜜璃がしがみついて止めていた。

 行冥の斧のような日輪刀の前に、しのぶは両手を広げて立ちふさがっていた。

 

 残りのふたり……義勇と無一郎は淡々とした表情で眺めていた。

 彼らは「べつにどっちでもいい」という態度だった。

 

「疑わしきは狩る。それでいいとは思わねェか? なァ、煉獄ゥううう!」

 

「どけ、甘露寺。つい先日、日の光が効かない鬼が生まれたと報告にあったばかりだろう? コイツもそうでないという保証はない」

 

「やはり子どもは悪だった。こんな懐まで鬼に入り込まれるとは、嘆かわしい」

 

 俺を攻撃しようとした3人がそう述べる。

 覚悟はしていたが……正直、複数の柱から同時に殺気を向けられて腰が抜けそうだった。

 

 もし、ほかの柱たちが守ってくれていなければ、今ごろ俺の頸は繋がっていなかっただろう。

 あまねが急いで彼らに説明する。

 

「幸代さまは鬼ではありません。私どももその血液などを採取し密かに検査を行いましたが、その可能性はないという結論に至りました」

 

 そんなことされていたのか!?

 しのぶは心当たりがあったのか、「ハッ」とした様子だった。

 

 自覚のないままに調査へ協力していたらしい。

 あまねの説明になおも実弥は噛みつく。

 

「では、なぜ戦国時代の人間がここにいるのでございましょう? オレは寡聞にして、鬼のほかにそれだけ長生きする存在を知りませんが」

 

「それについては、ある種の強力な『冬眠』状態にあったことが原因ではないか、と考えられます」

 

「冬眠?」

 

「はい。彼女が見つかったのは1年中、氷が溶けず雪が残り続ける山の――いわゆる雪渓(せっけい)でした」

 

「なるほど。”冷蔵箱”に入れておいた食材が長持ちするのと同じ理屈ってわけですか。だとしても、普通の人間ならそこまで体温が下がれば死ぬと愚考いたしますが」

 

「それについては、彼女が『氷の呼吸』の使い手であったことが起因していると思われます」

 

「……『氷の呼吸』?」

 

 あまねの言葉に柱たちは顔を見合わせる。

 そして、実弥は眉をひそめたまま言った。

 

 

「――なんですかい、その『氷の呼吸』っていうのは?」

 

 

「えっ?」

 

 みんな知らないのだろうか?

 いや、たしかに俺も自分以外の『氷の呼吸』の使い手なんて見たことないけれど……。

 

「文献が失われ、伝承が途絶えてしまった呼吸のひとつだと思われます」

 

 そうだったのか……。

 たしかに『氷の呼吸』は一般的な呼吸と異なり、かなり特殊だ。

 

 適正がある俺ですら、縁壱の直接指導がなければ型を習得できていたか怪しい。

 それに当時はまだ識字率も高くなかったし……。

 

 『氷の呼吸』が扱えて文字も書ける人間なんて皆無だったにちがいない。

 教えられる者がおらず、文献もなければ……伝承が途絶えるのはある種の必然だったろう。

 

「幸代さまは当時、”熱鬼(ねっき)”と呼称されていた鬼と相打ちになって戦死されたことになっておりました。ですが……」

 

「こうして生き延びていた、というわけであるか」

 

 あまねの言葉に反応したのは行冥。

 彼はなにかを考え込んでいる様子だった。

 

「はい。また、その熱鬼は文献を見るかぎり、間違いなく十二鬼月に相当する力を持っていたと判断できます」

 

「1000体もの鬼や、その熱鬼とやらを狩ることができる……少なくとも相打ちになれるだけの力があることは間違いない、と。それに……」

 

 行冥はジッとこちらに顔を向けてくる。

 見えないはずの目が俺を見通していた。

 

「違和感があると思っていたが、そういうことであったか。幸代まふゆ――私は君を認めよう」

 

「えっ!?」

 

 唐突に、あれだけ頑なに反対していた行冥がその意見を翻していた――。

 

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