TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
「
あまねがそう問うてくる。
俺の秘密を話すか、話さないか――それによって運命は大きく変わるだろう。
お館さまは間違いなく、すでにすべてを把握されている。
それも俺が渡した手紙以上に……。
だって俺自身ですら、自分が今までに狩った鬼の数なんて把握していなかったから。
塵も積もれば山となる、か……いつの間にかそんなにも狩っていたんだな。
「まふゆ……」
しのぶが俺を複雑な感情のこもった目で見てくる。
俺の答えは……決まった。
いや、最初から決まっていた。
だってこれは、お館さまに手紙を書いた時点ですでに済んでいた覚悟だから。
「構いません」
「……わかりました」
俺の答えにあまねは深く頷いた。
それから彼女は柱全員へ俺の秘密を明かした。
「幸代さまは――この時代の人間ではありません」
「……それはいったいどういう意味でしょうか?」
そう困惑した様子で聞き返したのは、まさかのしのぶだった。
俺はむしろ、そんな彼女の態度こそが不思議だった。
彼女は俺が手紙を記すところを横で見ていたはずだ。
そもそも、お館さまへ渡すのを頼んだ相手も彼女だ。
だから、すでに知っているはずだ。
なのに彼女の反応はまるで、今はじめて聞いたかのようだった。
「幸代さまは、今から400年前――戦国時代にお生まれになったかたです」
「「「――ッ!」」」
次の瞬間、柱たちは一斉に動いた。
数名が日輪刀を抜き、俺の頸を斬り落とそうとして――!?
「剣を引け、不死川! 今の言葉には俺も驚いたが、まふゆが鬼というのはありえない!」
「そ、そうですよ~っ! 伊黒さんも抑えてくださいっ! だって、ほら! まふゆちゃん、今だって普通に日向に立っているし!」
「ひ、悲鳴嶼さん……どうか剣を納めてください」
実弥の振るった日輪刀を、杏寿郎が同じく日輪刀で受け止めていた。
日輪刀を振るおうとする小芭内の腰に、ぎゅ~っと蜜璃がしがみついて止めていた。
行冥の斧のような日輪刀の前に、しのぶは両手を広げて立ちふさがっていた。
残りのふたり……義勇と無一郎は淡々とした表情で眺めていた。
彼らは「べつにどっちでもいい」という態度だった。
「疑わしきは狩る。それでいいとは思わねェか? なァ、煉獄ゥううう!」
「どけ、甘露寺。つい先日、日の光が効かない鬼が生まれたと報告にあったばかりだろう? コイツもそうでないという保証はない」
「やはり子どもは悪だった。こんな懐まで鬼に入り込まれるとは、嘆かわしい」
俺を攻撃しようとした3人がそう述べる。
覚悟はしていたが……正直、複数の柱から同時に殺気を向けられて腰が抜けそうだった。
もし、ほかの柱たちが守ってくれていなければ、今ごろ俺の頸は繋がっていなかっただろう。
あまねが急いで彼らに説明する。
「幸代さまは鬼ではありません。私どももその血液などを採取し密かに検査を行いましたが、その可能性はないという結論に至りました」
そんなことされていたのか!?
しのぶは心当たりがあったのか、「ハッ」とした様子だった。
自覚のないままに調査へ協力していたらしい。
あまねの説明になおも実弥は噛みつく。
「では、なぜ戦国時代の人間がここにいるのでございましょう? オレは寡聞にして、鬼のほかにそれだけ長生きする存在を知りませんが」
「それについては、ある種の強力な『冬眠』状態にあったことが原因ではないか、と考えられます」
「冬眠?」
「はい。彼女が見つかったのは1年中、氷が溶けず雪が残り続ける山の――いわゆる
「なるほど。”冷蔵箱”に入れておいた食材が長持ちするのと同じ理屈ってわけですか。だとしても、普通の人間ならそこまで体温が下がれば死ぬと愚考いたしますが」
「それについては、彼女が『氷の呼吸』の使い手であったことが起因していると思われます」
「……『氷の呼吸』?」
あまねの言葉に柱たちは顔を見合わせる。
そして、実弥は眉をひそめたまま言った。
「――なんですかい、その『氷の呼吸』っていうのは?」
「えっ?」
みんな知らないのだろうか?
いや、たしかに俺も自分以外の『氷の呼吸』の使い手なんて見たことないけれど……。
「文献が失われ、伝承が途絶えてしまった呼吸のひとつだと思われます」
そうだったのか……。
たしかに『氷の呼吸』は一般的な呼吸と異なり、かなり特殊だ。
適正がある俺ですら、縁壱の直接指導がなければ型を習得できていたか怪しい。
それに当時はまだ識字率も高くなかったし……。
『氷の呼吸』が扱えて文字も書ける人間なんて皆無だったにちがいない。
教えられる者がおらず、文献もなければ……伝承が途絶えるのはある種の必然だったろう。
「幸代さまは当時、”
「こうして生き延びていた、というわけであるか」
あまねの言葉に反応したのは行冥。
彼はなにかを考え込んでいる様子だった。
「はい。また、その熱鬼は文献を見るかぎり、間違いなく十二鬼月に相当する力を持っていたと判断できます」
「1000体もの鬼や、その熱鬼とやらを狩ることができる……少なくとも相打ちになれるだけの力があることは間違いない、と。それに……」
行冥はジッとこちらに顔を向けてくる。
見えないはずの目が俺を見通していた。
「違和感があると思っていたが、そういうことであったか。幸代まふゆ――私は君を認めよう」
「えっ!?」
唐突に、あれだけ頑なに反対していた行冥がその意見を翻していた――。