TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
行冥がその意見を翻し、俺を認めていた。
いったいなぜ急に? そう首を傾げていると、答えはすぐにもたらされた。
「しかし、解せねェなァ。400年かけりゃあテメェみたいなザコでもできるだろォが、そうじゃねェ。テメェの外見からすりゃァ……」
「――まともに刀を振るえるようになって、せいぜい”3年”か」
「あっ」
ギロリと実弥が俺を睨んでいた。
そ、そういうことか~っ!?
俺の外見年齢的に、鬼を狩っていた期間が非常に短く見積もられてしまっていた。
そうか、そりゃそんな短期間にそこまで鬼を狩れるわけはないわな!?
だが、実際には10年かけてやったことで……俺は外見どおりの年齢じゃあない。
しかし、それが実弥にはわからない。
逆に行冥は――見えないからこそ気づいたのかもしれない。
ゆえに「子どもではない」と判断して、俺を認めることにした。
「……」
ついにこのときが来たか。
俺の本当の年齢があきらかになるときが。
そう思って待っていたが、なぜか行冥はなにも言わない。
それどころか……。
「みなさま、はじまりの剣士についてはどの程度までご存じでしょうか?」
と、あまねまで指摘せずにべつの可能性を示唆しはじめる。
……な、なんで!?
もしかして、具体的な年月は資料に残っていなかったのか?
戦国時代はまだ暦もあいまいだったから、そのせいで……とか?
「戦国の時代、鬼舞辻無惨をあと一歩というところまで追いつめた
「うむ! 煉獄家には代々の当主の手記が残されている! 俺も父上にそれを読ませていただいたからな! 多少の知識はある!」
あまねの問いに蜜璃と杏寿郎が答えていた。
残念ながらその答えは正確ではないな。
内容が大きく歪んで伝わってしまっているようだ。
あるいは意図的に捻じ曲げられた、か。
はじまりの剣士たちに呼吸を教えた、さらに大元――縁壱がいたことが抜け落ちている。
無惨を追い詰めたのも、彼ひとりがやったにも関わらず……全員の手柄になっている。
さらにいえば、そんな彼は鬼殺隊を追放されているのだ。
おそらく、当時の鬼殺隊が自分たちに都合がいいよう歴史を改竄したのだろう。
「なんでも、幸代さまはそのうちのひとりの”直弟子”であったそうです」
「そ、そうなの~っ!? 戦国時代といえば歴代でも最強と呼ばれる柱たちが集まっていたのよね~!? そっか~! そんな人に手ほどきを受けたから、まふゆちゃん強いのね~!」
あまねの言葉に蜜璃が声を上げて驚いていた。
というか、俺もビックリした。
あいかわらず微妙に情報が誤っているが、まさかそんな細かいところまで記録されていたとは。
唸っていると彼女は種明かしをしてくれた。
「当時のカクシが柱へと送った報告書が残っていたのです。幸代さまは当時すでに、次代の柱となることを嘱望されていたようです。ただ、ご本人は固辞されていたようですが」
「あぁ、そういうことだったんですか」
思い出したのは、俺のカタキ――”熱鬼”と戦う直前のこと。
あのとき、カクシが俺を鬼殺隊へと勧誘に来てたっけ……。
「うむ! まふゆのこと、そろそろみんなも認めてやってもよいのではないか!」
「わ、私もそれがいいかな~って!」
「よかろう……私にも異論はない」
杏寿郎、蜜璃、行冥がうなずく。
あまねの重なる説明に、だんだんと柱たちの意見が傾きはじめていた。
だが、そんな中でなおも反対し続ける者たちがいた。
それは……やっぱり、このふたり。
「畏れながら、あまねさま……人ちがい、という可能性はありませんでしょうか?」
「それは……」
「オレにはコイツがそれほどの実力者だとは思えません。400年だとか1000体だとか十二鬼月だとかよりも、同姓同名の別人という説明のほうがしっくりくる」
「不死川、話がグルグル回っているぞ。さっさと言ったらどうだ。結局、俺たちを認めさせる方法はただひとつだと」
「――戦って力を見せてみろ、と」
「はッ! まァ、そういうこったなァ!」
実弥は小芭内の言葉に凶悪な笑みを浮かべていた。
そうか、彼らにとって俺の話が事実かどうかはべつにどうでもいいのだ。
たとえここで俺の本当の年齢を伝えたとしても、彼らは俺を認めない。
彼らにとって重要なのは……。
「こいつに柱としてふさわしい”力”があるか――問題はその一点のみだ。鬼さえ殺せるならこいつがどこのだれだろうと、どうでもいいことだ」
「あまねさま、そういうわけでオレたちに御前試合の許可をいただきたく思います。それとコイツの相手はオレがもらうぞォ。伊黒ォ、文句はねェなァ?」
「ふんっ……好きにしろ。俺は証明さえできたなら、それでいい」
「ま、待ってください!」
試合を言いだした実弥と小芭内に待ったをかけたのは、しのぶだった。
ギロリと実弥の目が彼女を向く。
「なんだ、しのぶよォ。まさかジャマするってんじゃねェよなァ」
「……そうです」
「あァん!?」
「……そもそも、まだまふゆの意見を聞いていません。あまねさま、この推薦は彼女自身にも辞退する権利はありますよね?」
「そうですね……申し訳ありません。私も失念しておりました」
あまねの言葉にしのぶはどこか「ホっ」とした様子だった。
それから俺に向き合って、真剣な……いや、まるで懇願するような表情で言ってくる。
「まふゆ、今ならまだ引き返せます。柱になる、ということは大きな責任と義務がついて回ります。それはきっと……あなたには重すぎる」
「……」
だれよりも実感のこもった言葉だった。
なぜなら、しのぶは柱の中でだれよりも剣士としての才能がないから。
それでも戦おうとするなら、苦渋を――いや、毒を飲むような苦痛が伴うことになる。
彼女はだれよりも俺のことを心配してくれていた。
「しのぶさん、本当はわたしも……自信がないんです。わたしはみなさんに比べてすごく弱いし、かといってしのぶさんみたいにほかの才能があるわけでもないし」
「
「
「――わたしにできることは、すべてやる覚悟でここに立っています」
「……っ!」
「決まりだなァ」
言って、ゆらりと実弥が立ち上がる。
俺と彼の決闘が――はじまろうとしていた。