TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第123話『”柱稽古”開始!』

 

 俺が”柱”……か。

 正直、全然実感が湧かない。

 

氷柱(こおりばしら)……氷柱? ……あれ? これってつらら……ぷふぅっ!? ご、ごめんなさい! 笑うつもりじゃ……ぷふぅーっ!?」

 

「甘露寺ィ、テメェはすこし口を閉じておけェ」

 

「はひぃっ! ご、ごめんなさい~っ!」

 

「不死川、ケンカなら甘露寺の代わりに俺が買ってやる」

 

「あァ!? なにも売ってねェだろォが、やんのかァ!?」

 

 今度は小芭内と実弥が口論になりかけていた。

 なんか実弥っていつもだれかとケンカしてるな……。

 

 でも……うん、”つらら”呼びは勘弁してくれ。

 正直、俺もちょっと思ったけど。

 

「……ここからが正念場だ」

 

 これから運命が大きく変わっていくだろう。

 それこそ不可逆的なまでに。

 

 打ち明けるタイミングとしては今がベストだったかも。

 逆に、今後は俺の知識が役に立たない場面も増えていくかもしれない。

 

 たとえば黒死牟が予期せぬタイミングで現れたように。

 と、考えて――俺は「ハっ!?」と思い出した。

 

「あまねさま、ひとつよろしいですか? じつはわたし、今日ここに呼ばれたのはてっきりべつの理由だと思っていたのですが」

 

「そちらについてもお話しいたします。幸代(ゆきしろ)さまにはお詫びをせねばなりませんから」

 

「えっ?」

 

「あなたがくださったこちらのお手紙について」

 

 しのぶ以外はみんな、なんの話かかわからず首を傾げていた。

 柱を代表するように行冥が問う。

 

「手紙とは……あまねさま、私どもにも説明をお願いしても?」

 

「えぇ、こちらは幸代さまが私どもに託してくださった手紙でございます。中には『刀鍛冶の里』の襲撃に関する情報が記されています」

 

「なるほど、襲撃を受けてなにか気づいたことがあった、と?」

 

「いいえ。こちらの手紙は――里の襲撃が起こる”前”に書かれたものになります」

 

「なんと!? つまり……幸代まふゆは里の襲撃を予見していたと!? いや、思えば……彼女は浅草に無惨が現れるという情報も掴んでおりましたな」

 

 行冥が見えぬその目を丸くして驚く。

 ちなみに、俺が伝えた情報はあくまでも”予想”だ。

 

 さすがに『転生』なんて言うとウソくさくなるから、伏せざるをえなかった。

 それでも、かなり確度の高い情報を提供していたはず。

 

 それに、手紙を届けたのは柱であるしのぶだ。

 にもかかわらず……ギリギリまでなんのリアクションもなしだった。

 

 実際に襲撃が起こるまで、情報を信じてもらえなかったのだろうか?

 たわ言だと思われてムシされていたのだろうか?

 

「じつは……」

 

 と、あまねが教えてくれる。

 なんでも俺が手紙を送った時点で、すでにお館さまはほとんど寝たきりだったという。

 

「体調が芳しくなく、手紙を確認できたのは里が襲撃される直前でございました」

 

「直前……、えっ!? でも、それじゃあ情報の裏を取る時間もなかったはず」

 

 たしかに応援は間に合わなかった。

 だが、鎹烏はすぐに飛んできていた――俺へと宝刀を渡すように連絡は来ていた。

 

「それについては、当主に『この手紙は信用できる』という勘が働いたそうです」

 

「……!」

 

 なるほど、そういうことか。

 産屋敷家の人間は代々、未来予知と言えるほどの勘……先見の明を持っている。

 

 彼らはその能力を使って莫大な財産を築いたり、家や鬼殺隊の危機を幾度となく回避してきた。

 中でも現当主の耀哉(かがや)は特別にその能力が高かったはず。

 

「いえ……待ってください。だとしても、手紙を読んだしのぶさんやほかのかたは……?」

 

「まふゆ、それについては私からも謝罪しなければなりません」

 

「しのぶさんが?」

 

「あのとき素直に言うべきでした。じつは私には――あの手紙が読めていませんでした」

 

「えぇっ!? どっ、どうして!?」

 

「だって、あまりにも……字が汚すぎて。てっきり暗号文だと思っていました。だから、私も手紙の内容を知ったのはつい先日のことで」

 

「!?!?!?」

 

 そんなバカな話があるか!? と叫びかけて気づく。

 そういえば、当時の俺は利き手をケガしており、逆の手で文字を書いていた。

 

 加えて、俺には現代(・・)の書き文字のクセがある。

 かといって、アゴも潰れていたから口頭での説明でもできず……。

 

 もしかして、あのときしのぶが「考える時間をくれ」ってそういう意味だったのか!?

 な、なんだこれは……。

 

「解読できたのは唯一、当主だけでした。そのため対応も遅れてしまいました」

 

 こ、こんなことってあるか!?

 いくらなんでもこんな理由、バカバカしすぎるだろ!?

 

 それじゃあ、里の人たちがケガをしたのは俺の責任じゃないか!

 なんでこうなる? どうして?

 

 世界すべてが仕組まれているかのようにさえ感じる。

 それこそまるで……。

 

 

 ――歴史の修正力でも働いたかのように。

 

 

「……いや、まさかな」

 

 そんなはずはない。

 歴史はきちんと変わっているはずだ……それも、良い方向に。

 

「それと、幸代さま。柱になった以上、共有しておかねばならぬ情報がもうひとつあります。それは”痣”についてです」

 

 それからあまねは”痣”について語った。

 体温が39度以上で発現し、身体能力を飛躍的に向上させるそれ。

 

 だが、あいにく俺には関係のない話だ。

 なぜなら『氷の呼吸』の影響でそこまで体温が上がることはないから。

 

 おそらく、柱の中で痣を出せない剣士は……俺と、しのぶだけだろう。

 それに、もし仮に(・・)すでに俺が痣を発現してしまっていたら――。

 

「……いや。それは今、考えることじゃないか」

 

 俺はそう思考を打ち切った。

 そろそろ解散、といった雰囲気が漂いはじめたころ実弥が言ってくる。

 

「幸代まふゆ。さっきも言ったが、テメェ程度に天元の代役が務まるとは思ってねェ。だからそこまで期待もしてねェ」

 

「それはわかっています」

 

「だが、柱として最低限の務めは果たしてもらう。だから、そのためにわからないことがあるならすぐに訊ねやがれェ」

 

「はい……、ん?」

 

「遠慮なんかすんじゃねェぞ。テメェみたいなザコにそんな余裕はねェんだからよォ」

 

「え、えっと……わかりました?」

 

 あれっ? 最初「調子に乗るな」って怒られてるんだと思ったけど……。

 これ「ムチャするな」って心配してくれてるだけでは!?

 

 実弥……めちゃくちゃやさしいな!?

 口調は荒いが、言ってる内容は思いやりに溢れまくってる。

 

 もしかして、柱の中で一番まっとうなのって彼なのでは?

 柱ってみんな、性格になにかしらの問題を抱えているからなぁ……。

 

「それから最後にもうひとつ、幸代さまに共有しておく情報があります。これから鬼殺隊で……」

 

 

「――”柱稽古”を実施いたします」

 

 

 ついに来たか……!

 小芭内が「時間がない」と言っていたのはこれのことだろう。

 

「まだ幸代さまは柱に昇格したてですので、現状……指導をお任せする予定はありません」

 

 それは助かる、と俺は「ホっ」と息を吐く。

 アオイたちの稽古に付き合ったことはあるが、本格的に人に剣を教えたことはなかったから。

 

「ただし、柱稽古の一環で……柱同士での手合わせには参加していただきます」

 

「は、はひっ……!」

 

 だ、大丈夫かな……俺。

 最終決戦まで生き残ってるかな……?

 

「それでは氷柱・幸代まふゆ――これからよろしくお願いいたしますね」

 

「……はい!」

 

 その後、鬼殺隊全体へと俺の柱就任が通達された。

 そして……。

 

 

 ――柱稽古がはじまった。

 

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