TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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~柱稽古編~
第124話『音柱の隠し子』


 

 産屋敷邸で柱に囲まれた、その翌日……。

 しのぶとともに蝶屋敷に戻った俺はすぐさま、みんなにもみくちゃにされていた。

 

「ままま、まふゆっ! あんた”柱”に昇格したって本当なの!?」

 

「あ、アオイお姉ちゃん。……うん、なんかそうみたい?」

 

「なんでそんなに他人事なのよ!?」

 

「そう言われても、まだ実感が湧かないというか」

 

 アオイにガクガクと揺さぶられる。

 なんか当人である俺よりも興奮していた。

 

 すでに昨日の時点で俺の柱昇格と柱稽古については通達がなされている。

 アオイたちは俺が戻って来るのを、首を長くして待っていたらしい。

 

「私もビックリしちゃったわよ~。まさか、あの小さかったまふゆちゃんがこんなにも大きくなるだなんて……お姉ちゃんも鼻が高いわ~! でも、しのぶ……本当によかったの?」

 

「姉さん……うん。もう決めたことだから」

 

「そう。それならいいの」

 

 しのぶを気遣うようにカナエが言う。

 カナエはもしかしたら、だれよりも多くのことが見えているのかもしれない。

 

「「「まふゆさま、すごいですー!」」」

 

「あはは、ありがとー」

 

 三人娘にも声を揃えて祝われる。

 と、ジッと黙り込んでいるカナヲにアオイが促す。

 

「ほら、カナヲ。あんたもなにか言ってあげなさいよ」

 

「ぇ……、あっ……」

 

「ちょっとカナヲ? どうしたのよ?」

 

 カナヲの反応はどこか鈍かった。

 笑顔を作ろうとして、しかし失敗してしまっているような……。

 

「カナヲ?」

 

「……ご、ごめんなさい」

 

 俺も気になってカナヲに声をかける。

 しかし、彼女は小さくなって泣きそうな顔で謝るだけだった。

 

「べつに責めてるわけじゃないよ。ただ、カナヲのことが心配だっただけで」

 

「……ごめ、ん……なさい」

 

「カナヲ、ちょっとお姉ちゃんと一緒にあっちのお部屋に行きましょう~。ねっ?」

 

 ボロボロと泣きだしてしまったカナヲの背中を、カナエがやさしく押す。

 そのままふたりはべつの部屋へと移動していった。

 

 カナヲ……いったいどうしたんだろう?

 今は、俺にそれを知る術はなかった。

 

 けれど、彼女に任せておけば大丈夫だろう。

 空気を変えるように、しのぶがパンっと手を叩く。

 

「さて、まふゆの昇格を盛大にお祝いしたいところだけど……残念ながらそうもいきません。すでに柱稽古がはじまっているから」

 

 聞けば、善逸や伊之助、玄弥はすでに蝶屋敷を発って柱稽古に参加しているとのこと。

 炭治郎にもお館さまからの手紙が届き、義勇のもとへと向かったそうだ。

 

 おそらく、今ごろ炭治郎は義勇に付きまとっていることだろう。

 彼が根負けして「稽古をつける」と言うまで……。

 

「柱の稽古は厳しく、大勢のケガ人が出ると予想されます。私たち蝶屋敷の面々はその治療のため動き回らねばなりません。心するように」

 

「「「はい!」」」

 

「まふゆ、あなたもすぐに柱稽古に参加して、すこしでも実力を伸ばしなさい。柱にふさわしい力を身につけなさい」

 

「はい!」

 

 そうして、俺もまた蝶屋敷を発った。

 カナヲと顔を合わせる機会を得られなかったことだけが心配だった。

 

 だが、悩んでいる時間も余裕もなかった。

 そのくらいに柱稽古は厳しいものだったから……いろんな意味で。

 

   *  *  *

 

「煉獄さん、昨日ぶりですね」

 

「うむ! まふゆか! よく来たな!」

 

 柱稽古は人によって受ける順番がちがうらしい。

 俺が最初に指示された行き先は炎柱・煉獄杏寿郎のもとだった。

 

「俺の稽古では徹底的に走って、走って、走り込んで……基礎体力の向上をおこなってもらう! まふゆ、走るのは好きか!? 全力で走るとじつに気持ちいいぞ! はっはっは!」

 

 なんだか杏寿郎が熱血教師みたいに見えた。

 しかし、本来の歴史ならこの稽古は天元が担当していたはず……と考えていると。

 

「そうだ、まふゆ! キミに伝言がある! さきほどここに宇随が来てな!」

 

「宇随さんが?」

 

「あぁ! 『氷柱! いいじゃねェか、派手でよォ! あいにくオレはもう柱じゃねェしやることがあるから稽古には参加できねェが、せいぜい派手にがんばりやがれ!』とのことだ!」

 

「……! はい!」

 

 天元はたしか特殊な任務にかかりきりだとか。

 なのに……もしかして、わざわざ激励しに来てくれたのだろうか?

 

 なんと、ありがたいことだろう。

 その期待に応えられるように精進しないと。

 

「ところで、まふゆ! キミに聞きたいことがあるのだが!」

 

「はい、なんでしょう?」

 

 俺は油断していた。

 杏寿郎も大概、天然であるということを。

 

 

「――キミが天元の娘だというウワサを聞いたのだが、本当だろうか!」

 

 

 杏寿郎はまさかの質問を、とんでもない大声で発したのであった――。

 

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