TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第125話『ウワサの彼女』

 

「キミが天元の娘だというウワサを聞いたのだが、本当だろうか!」

 

「……!?!?!?」

 

 そんな杏寿郎の言葉に、ギョッとしたように近くを走っていた隊員たちが振り向いてくる。

 驚きのあまり、そのままつまずいてすっ転んでいた。

 

「ちょっ、そんな話どこから聞いたんですかぁっ!?」

 

「んん? いやなに! 宇随の嫁のひとりがそのようなことを叫んでいてな! はっはっは!」

 

 んなわけないでしょうがーっ!?

 ていうか、杏寿郎って昨日、柱の集まりにいたよね!?

 

 じゃあ、話聞いてたはずだよね!?

 俺が戦国時代の生まれだって知ってるはずだよねぇ!?

 

「~~~~っ!」

 

 だが、この場でそれを言うことはできない。

 あきらかに周囲の隊員たちが聞き耳を立てているから。

 

「ち、ちがいますから! 誤解です! 誤解!」

 

「はっはっは! そうか、そうか! うむ! ではこの話は終わりだ! 稽古に入るといい!」

 

 これで無事に誤解は解けた、はずもなく……。

 

   *  *  *

 

 俺が杏寿郎のところで走り込みをはじめて2日目には、ウワサが全員に広まっていた。

 どんな内容かというと……。

 

「――新しく柱になったの、なんでも元・音柱である宇随さまの隠し子だったらしいぜ!」

 

 あぁ~~~~っ!?

 どうしてこうなったぁ~~~~!?

 

 俺は頭を抱えた。

 まさに俺のすぐとなりで、そんなウワサがささやかれていた。

 

 外見こそまだ出回っていないようだが、それも時間の問題だろう。

 それもこれも全部、天元の嫁が――須磨が悪い!

 

「仕方ない、もうちょっと走ってこよ」

 

 ジッとしていても居心地が悪い。

 さっさとこの基礎体力訓練を終えて、次に行ってしまいたい。

 

 だが、そうやって全力で走っていると……。

 それはそれで注目を集めてしまうわけで。

 

「なっ!? 今、オレたちを抜いて行った白髪の子、ヤバっ!? 足、速っ……!?」

 

「ちょっと待て。あの髪色……音柱さまと同じじゃないか? ということは……!」

 

「もう音柱じゃないから『宇随さま』だろ。でも、たしかに……!」

 

 いやほんともう、バレるのは時間の問題だった。

 それこそ俺は何度も……。

 

「キミってもしかして、宇随さまの娘だったりする?」

 

「ちがいます!」

 

 みたいなやり取りをさせられていたし。

 だれも「新しい柱ですか?」とは訊ねてこなかったから、ギリギリセーフだったけど。

 

 ……いやまぁ、こんな質問をされてる時点ですでにアウトな気がしなくもないが。

 いつの時代でもみんなゴシップが好きらしい。

 

 そして、数日後。

 俺はようやく杏寿郎に……。

 

「よし、まふゆ! 次の柱稽古へ向かっても構わないぞ!」

 

「ありがとうございます!」

 

 と、お墨付きをもらってその稽古場を脱出したのであった――。

 

   *  *  *

 

「あ、炭治郎の友だちの……えーっと、名前なんだっけ?」

 

「……幸代まふゆです」

 

「そうだ。そうだった。まふゆだった」

 

 次の訓練は霞柱・時透無一郎による、高速移動の稽古だった。

 そして、相変わらず俺のことが覚えられていないな!?

 

 だが、それでも俺の扱いはまだマシなほうだったようで……。

 彼は順番に並んでいた隊員たちに言い放った。

 

「じゃあ、きみたち……才能ないし、ジャマだからそこをどいてくれる? おれはこれから、まふゆと稽古をするから」

 

「なっ!?」

 

「ま、待ってください次はオレの番で……」

 

 あう~っ、コミュ力ぅ~っ!?

 俺は頭を抱えていたが、無一郎は容赦なく言葉の追撃を浴びせていた。

 

「なに言ってるの? 優秀な人間のほうを優先するのは当然でしょ? 無能なんだから、せめてほかの人間の足を引っ張らないようにはしてよ」

 

「……っ、……っ」

 

 あんまりな物言いに隊員は言葉を失ってうなだれていた。

 いやもう、ドン引きだよ!?

 

 配慮かなぁ!?

 配慮が欠けていて残酷です!

 

「じゃあ、まふゆ。やろうか」

 

「……はい」

 

 そうして俺と無一郎の稽古がはじまった。

 けど、いたたまれねぇえええ~!?

 

 痛いよぉおおお!?

 ほかの隊員たちからの視線がツラいよぉおおお!?

 

 ちなみに……稽古の内容は、筋肉の弛緩と緊張を滑らかに切り替えるものだった。

 これが上達すれば、それだけ体力も長く保つ。

 

「まふゆはとても上手だね。さすが炭治郎の友だちだと思う」

 

「ありがとう……っ、ございま……すっ!」

 

 無一郎の攻撃を躱し、あるいは反撃しながらそう言葉を交わす。

 彼は感心したようにチラリと俺の全身へと視線を向けた。

 

「すごく弱い肉体なのに……いや、だからこそかな。少ない体力でやり繰りする術に長けている。うん、正直……ぼくに教えられることはあまりなさそうだ」

 

「そうっ……です、かっ!」

 

「ところで、今って炭治郎はどうしてるのかな?」

 

「へっ? 炭治郎くん……ですか? 多分、冨岡さんのところに行っているかと」

 

「……どうして? ぼくのところじゃなくて?」

 

「えっ? あぁ、いや……なんか、説得のためだとか聞きましたけど。冨岡さんが柱稽古をやりたがらないからって」

 

「……ふーん。ぼくも柱稽古やめよっかな」

 

「えぇっ!?」

 

 そんなやり取りをしながら、数日。

 俺は杏寿郎のところよりもさらに居心地の悪さを感じながら稽古を受け……。

 

「うん、まふゆはもう行ってもいいよ。きみの動きはすでに完成されているから。これ以上、ぼくから教えることはないかな」

 

 そう、次の稽古へ行く許可をもらう。

 と、それを聞いていた……俺よりも前から稽古を受けていた隊員たちが言う。

 

「じゃ、じゃあ……オレたちも……。もう彼女より長くいるので……」

 

「なに言ってるの? きみたちはダメだよ。素振りが終わったら、打ち込み台が壊れるまで打ち込み稽古しなよ」

 

 ら、落差がヒドい……。

 俺は背中に隊員たちの視線がブスブスと刺さるのを感じながら、その場を去った……。

 

   *  *  *

 

 そして、柱稽古の3つ目。

 その場所で俺は……。

 

「きゃ~っ! まふゆちゃん、とっても似合ってる! かわいくて私、キュンキュンしちゃう!」

 

 レオタード(・・・・・)に着替えさせられていた――。

 

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