TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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~宿命編~
第13話『白の鬼狩り』


 

 縁壱が死んでから何年が経っただろう?

 

 5年か、10年か……。

 時間感覚があいまいだ。

 

 それくらい、ただ鬼を斬り続けた。

 あのころの縁壱と同じように俺は鬼狩りの旅をしていた。

 

「今ならすこしだけわかる。お師匠さまがどれほどの高みにいたのか」

 

 技の冴えは当時とは比べものにならないくらい高まっていた。

 それでもいまだ、縁壱が見せてくれたあの一閃には届いていない。

 

「まふゆさま」

 

(カクシ)、ですか」

 

「はっ」

 

 唐突に声をかけられる。

 振り返ると、黒子のような恰好をした者がこちらに頭を下げていた。

 

 鬼殺隊の裏方役。

 今回の場合、連絡係といったところか。

 

「まふゆさまにおかれましては、お変わりなくご壮健のようで」

 

 俺の中身は着実に歳を重ねている。

 だが、外見はあのときからほとんど変わっていなかった。

 

 けれど、いつのころからだろう?

 

 いつ死んでもいいように、真っ白な着物を身につけるようになった。

 それから縁壱の意思を継ぐかのように、(あか)い羽織を纏うようになった。

 

「それで、なにか用?」

 

「まふゆさま、どうか鬼殺隊に入ってはいただけませぬか?」

 

「また、その話?」

 

「はい。柱のひとりが、ぜひあなたを継子(つぐこ)にと」

 

「言ったでしょう。わたしは鬼殺隊に入るつもりはありません」

 

「しかし、近年……縁壱さまが亡くなられてから”鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)”が動き出しておりまする。次々と隊員が殺され人手が足りなくなっており……」

 

 鬼舞辻無惨……すべての鬼の生みの親だ。

 あの縁壱から逃げおおせた唯一の、そして最強の鬼。

 

「そしてなにより、あなたさまおひとりでは限界がありましょう。このままでは、あなたさまはいずれ死んでしまいまする」

 

「だとしても、鬼殺隊員にはならない。お師匠さまを追い出した組織になんて入りたくない!」

 

「それは……」

 

「お師匠さまは最後まで、たったひとりで鬼と戦って死んだんだ。すくなくとも、今の腐った体制が変わらないかぎり、わたしが一緒に戦うことはない」

 

「……かしこまりました。そのように伝えさせていただきまする」

 

 (カクシ)は深く頭を下げた。

 それから「では、最後にひとつだけ」と前置きして言った。

 

 

「あなたさまの探していた――”熱鬼”を見つけました」

 

 

「……っ! そう、そうなの……あはっ……あははははははッ! ついに来たか!」

 

 母や村のみんなを殺した鬼!

 俺を、わたしを地獄へと叩き落とした忌まわしき宿敵!

 

 場所を聞いたあと、俺は準備を整えてすぐに出立した。

 このためにずっと……何年も、何年も! 剣術や呼吸を鍛えてきたのだから!

 

「まふゆさま、どうかご無事で……」

 

 (カクシ)の悲しげな声が寒空に響いていた――。

 

   *  *  *

 

 深く雪が積もっていた。

 強い横風が吹き、舞い散る氷の粒が視界を白く染め上げる。

 

「あなたは、よっぽど山が好きなんだね」

 

 ここは1年中雪が降り積もり、氷が溶けないことで有名な山だった。

 俺の声に呼応し、ヤツ(・・)はゆっくりと振り返った。

 

「なんじゃあ、まぁた鬼狩りが来よったのかぁ? かっかっかぁ、おぬしらも懲りんのう!」

 

 派手な色の着物に、芝居がかった口調。

 その姿、その声……忘れるはずもない。

 

「探した……探したぞぉおおおッ!」

 

 このときをどれほど待ちわびたことか!

 すべてを失った中、こいつを殺すことだけが生きる原動力だった。

 

「わたしを覚えているか、鬼」

 

「なんじゃあ? 知るわけなかろう、おぬしほど真っ白いガキなんぞはじめて見たわ」

 

「数年前、富士のふもとにあった村をお前は焼いた」

 

「んん~? そんなことあったかのう?」

 

「っ! お前は富士を噴火させ、溶岩でわたしの母やみんなを焼き殺しただろう!」

 

「噴火? おぉ、思い出した思い出した! あれはじつに――絶景じゃった!」

 

「おっ、お前はそのとき! わたしに村が焼ける光景を見せつけて、崖から投げ捨てた!」

 

「はて? そっちはさっぱり覚えとらんのう。だれじゃ、おぬし?」

 

「~~~~ッ!」

 

 髪色や衣服は変われど、俺の顔や身体はほとんど変わってない。

 にもかかわらず、ヤツにはわからないらしい。

 

 どころか、そんなことがあったことすら覚えていない。

 

 きっと、鬼からしてみれば、人間など大した差がないのだろう。

 俺たちがこれまで食べてきた魚の顔に見分けがつかないのと同じ。

 

 ヤツらにとってはただの食料なのだから。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 

 ……憎い、憎い、憎い!

 

 あれだけのことをしておきながら! なんの罪の意識もなく!

 のうのうと生きている、こいつが憎い!

 

「いや、しばし待てい……そうじゃ、思い出した! おぬしのこと聞いておるぞ! あちこちで鬼を殺しまわっとる白いガキがいる、と!」

 

 そうか、俺のことはこいつにまで伝わっていたのか。

 鬼はニィイイイと鮮烈な笑みを浮かべた。

 

 

「おぬしのことは――殺せ、と言われとったんじゃった」

 

 

 次の瞬間、鬼の姿が視界から消えた。

 ドン! とヤツが立っていた地面が爆発していた。

 

 そう錯覚するほどの脚力で、ヤツは地面を蹴っていた――。

 

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