TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第126話『柱を越える者』

 

 ななな、なんじゃこりゃーっ!?

 レオタードに着替えさせられた俺は、恥ずかしさのあまり自分の身体を抱きしめて座り込んだ。

 

「かかか、甘露寺さんっ!? これっ……これぇっ!?」

 

「恥ずかしがらなくても大丈夫! これは異人の国で一般的に用いられている、正式な運動服だから! とってもかわいくて、ドキドキするわよね!」

 

「ちがう意味でならドキドキしてますけどぉ!?」

 

 なんだろう、なんでこんなに恥ずかしいんだろう!?

 戦国時代の慣れで裸は見られてもわりと気にならないのに!

 

 ピッタリと肌に張りつき、身体のラインが出るこの服を着ていると……。

 なんだか、落ち着かなくなる!

 

「た、たしかに柔軟するには理にかなった服装なんでしょうけど~っ!?」

 

 ここでの訓練内容は柔軟だ。

 そしてレオタードといえばバレエの必需品だ。

 

 身体の柔らかさを見るうえで、これほどマッチしている服装はたしかにないだろう。

 この服装が悪いとも言わない。

 

 正式なものだというのも十分に理解している。

 男女問わず、全員がそれを着せられたってなにもおかしくはない……はず。

 

 なのに、なぜだろう?

 この光景がまるで地獄絵図に見えてしまうのは。

 

 と、そんなときガラガラと扉が開いた。

 どうやら新しい犠牲者……げふんげふん、修行者の登場らしい。

 

「甘露寺さん、ウッス……稽古をつけてもらいに来まし――」

 

「あっ、玄弥」

 

「まふゆ……なっ、なななっ……なんっ、その……恰好……ブゥーーーーっ!?」

 

「玄弥ぁっ!?」

 

 俺のレオタード姿を見た途端、玄弥は鼻血を出しながら吹っ飛び、ぶっ倒れた。

 慌てて駆け寄ると、彼は遺言のように呟いていた。

 

「兄ちゃん……まふゆ……オレ、ここまでみたいだ……今まで、ありがとう……ガクッ」

 

「玄弥ぁーーーーっ!?」

 

 とまぁ、そんなひと幕もありつつ俺たちは蜜璃のもとで稽古を受けた。

 バレエをさせられたり、力技で柔軟させられたり、いっぱい食べさせられたり……。

 

 3時のおやつはパンケーキにたっぷりのバターと巣蜜、紅茶だった。

 しかし、これは食べることまで訓練であり……少食な俺にはかなりキツかった。

 

 あと玄弥のレオタード姿には申し訳ないが笑ってしまった。

 でも、おかげで「自分は似合ってるほうだし、マシじゃないか?」と開き直れたので感謝。

 

 それから数日後。

 俺は蜜璃から「次の稽古に行っていいよー!」と許可をもらい……。

 

   *  *  *

 

「じゃあね、玄弥。わたしは先に行くから」

 

「……おう」

 

 玄弥のほうはかなり手こずっているようだった。

 でも、おそらく……このあとは案外スムーズに突破できたりするんじゃないかと思う。

 

 俺がいたから、気にして……あるいは気になって? 訓練になっていなかっただけで。

 そのまま立ち去ろうとしたとき、彼は声をかけてきた。

 

「待て、まふゆ……遅くなったけど、”柱”昇格おめでとう」

 

「ん、ありがとう」

 

「……お前はマジですげぇよ」

 

 玄弥は思うところがあったのか、カナヲと同じく複雑な表情をしていた。

 しかし、カナヲとはちがい――彼はすぐに「でも」と顔を上げた。

 

「オレも必ず、お前に追いつく……柱になってやる! お前のおかげでその可能性も見えた」

 

「わたしのおかげ?」

 

「あぁ、炭治郎のヤツが言ってたんだ」

 

 

「――『一番弱い人が一番可能性を持っている』って」

 

 

「アイツはそれを『まふゆの戦う姿から知った』って言ってた。……オレも同感だと思った。それに……オレは、お前からオレと同じものを感じてたから」

 

「同じもの?」

 

「うぬぼれかもしれねぇが、オレとお前は似てると思ってる。テメェに足りねぇ部分を、必死にほかのもので……道具や戦いかたで補おうとしてる部分とかよぉ」

 

「うん、わたしもそう思う」

 

「……! そうか! ……そうかぁっ!」

 

 俺の同意がそんなにうれしかったのか、玄弥は「へへへっ」と笑った。

 それから少年は……いや、一人前の男の顔つきで彼は言った。

 

「なら、呼吸が使えなくたってオレが柱になれる可能性もナシじゃないだろ。オレはいつか必ず、お前と……そして、兄ちゃんと肩を並べられるようになる!」

 

「……うん。玄弥ならできるよ」

 

「おう!」

 

 本気でそう思った。

 一切のお世辞抜きで、彼ならば実現できると。

 

「まふゆはこのあと、だれのところの稽古に行くんだ?」

 

「わたしは伊黒さんだね」

 

「そうか……」

 

 しかし、問うたきり玄弥は黙り込んでしまう。

 首を傾げていると、ようやく彼は口を開いた。

 

「……お前はもう兄ちゃんの――風柱の稽古は受けたか?」

 

「ううん、まだ。玄弥は?」

 

「……オレもまだだ」

 

「そっか」

 

 玄弥がいったいなにを言いたかったのか、俺は理解した。

 だからこそ、明るく言った。

 

「じゃあ、もしかしたらそこでまた顔を合わせるかもね」

 

「あぁ、そうだな」

 

「じゃあ今度こそわたしは行くよ」

 

「おう、がんばれ」

 

「玄弥もね」

 

「……あぁ!」

 

 そう言葉を交わして、俺は蜜璃のもとを発った。

 玄弥の精神は本来の歴史よりも、ずっと強く育っているように思えた。

 

 きっと彼なら大丈夫。

 俺はそう思った――。

 

   *  *  *

 

 そして、訪れた柱稽古4つ目。

 ここでは蛇柱・伊黒小芭内によって、太刀筋の矯正が行われる。

 

 具体的には、括りつけられた隊士……障害物をよけながら刀を振るうのだ。

 だが、そこに先約がいた。

 

「……カナヲ?」

 

 彼女が小芭内と模擬戦を行っていた。

 だが、俺はその攻防を見て戦慄することになる。

 

 バカな、ありえない。

 だってこんなの、いくらなんでも……。

 

 

 ――強すぎる(・・・・)!?

 

 

 カナヲは小芭内を圧倒し、一方的に攻め立てていた――。

 

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