TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第128話『未来の”花柱”』

 

 カナヲが強すぎる……。

 だが、いったいなぜこれほどまでに成長したのか?

 

 俺はそれを知っているだろう人物にジッと視線を向ける。

 彼女――カナエは頬に手を当てながら、困ったように言った。

 

「そうね……私はカナヲがああなった理由を知っているわ。じつは、ここにいるのもカナヲのことが心配でついてきちゃったからなの」

 

「カナヲはいったいなぜ……?」

 

「……うーん。これはまふゆちゃんに言ってもいいのかしらね~」

 

 俺には明かせないことなのだろうか?

 しかし、カナエはしばらく悩んだあと「やっぱり伝えておくべきよね」と頷き、語りだした。

 

「じつはカナヲ、まふゆちゃんの前では見せていなかったけど……あなたが遊郭へ潜入任務に行った直後くらいから、ムチャな稽古を繰り返すようになっていたの」

 

「……?」

 

 その時期になにかあったという記憶はない。

 可能性として考えられるのは……天元に、俺とアオイが任務にムリヤリ連れ去られてしまい、それでふがいなさを感じた、とか?

 

 でも、それは本来の歴史でも似たようなイベントはあったし……そこまでの影響はないはず。

 そう思考を巡らせていた俺だったが――カナエの述べた答えは予想外のものであった。

 

「私、カナヲを問いただしたのよ。そしたら、あの子……『見つけちゃった』って」

 

「見つけたって、なにを?」

 

 

「――あなたの遺書を」

 

 

「……えっ!?」

 

 俺は「ハッ」とした。

 そうだ、俺は自分が死んだときのために情報を残していた。

 

 お館さまたちや、みんなへと宛てた遺書をしたためた。

 とはいえ、引き出しの奥にしまい込んでいたはずなのだが……。

 

「ちなみに手紙の中身は……?」

 

「そこまではカナヲも私も見ていないわ。遺書のことを知っているのも、私たちふたりだけ」

 

「そうですか……」

 

 安心して「ホっ」と息を吐く。

 もし中身まで読まれていたら、大きく運命に影響していたかもしれないから。

 

「それでカナヲは、まふゆちゃんがどれだけの覚悟で戦いに臨んでいたかがわかったんだって。自分は今まで知っているつもり(・・・)でしかなかった、と思ったんだって」

 

「……」

 

「まふゆちゃんがそこまで身体が強くないのは、みんなわかってる。なのに、これほどの剣技……血のにじむ、なんて言葉が生温く感じられるほどの努力をしてきたのでしょう?」

 

 それは……ちがう。

 俺はただ優秀な師に恵まれただけだ。

 

 そして、復讐心のままに刀を振るい続けただけ。

 努力なんてきれいなものじゃない。

 

「カナヲは『今までの自分の努力じゃ全然足りない』と考えるようになった。それに……」

 

「それに?」

 

「このまま戦い続ければ、いつかは本当にあなたが死ぬ。そのことを――まふゆちゃんの『死』を、強く意識しちゃったんだと思う」

 

 無限列車で死にかけて、遊郭でも死にかけて……それから刀鍛冶の里でも。

 言われてみると、むしろ今も生きていることのほうが不思議なくらいだ。

 

「だから、あの子も覚悟をしたの」

 

 

「――『私がまふゆを守る』って」

 

 

「そういえばカナヲ、前にもそんなことを言ってました」

 

「そうね。以前はそれが『目標』だった。でも、今は――『覚悟』」

 

 ……どうりで強くなるわけだ。

 今のカナヲは才能だけでなく、本来の歴史ではまだ小さかった”心”まで持っているのだから。

 

「でも、あなたが”柱”になって動揺しちゃったみたい。自分が強くなれたと思ったら、まふゆちゃんはさらに先にいっちゃってて……それで、遠くに感じたみたいで」

 

「そんなことは……」

 

 カナヲと俺の実力は確実に詰まっている。

 俺の実力はもうずっと、ほとんど変わらず横ばいで……のびしろも残ってない。

 

 一方でカナヲの力の最高点は、もっと高みにある。

 彼女はそこまで焦る必要などなく、着実に強くなればいい。

 

「わたしは……カナヲが心配です。今の彼女は、なにかを犠牲にしてまで強くなろうとしているように見えました」

 

 具体的にはカナヲは”目”を酷使しすぎているように思えた。

 彼女は目が良すぎる(・・・)から……。

 

「そうね。私もそう感じたわ」

 

「だったら!」

 

「でも今はまだ、カナヲに”心”のまま行動させてあげたいの。せっかく手に入れた大きな感情だもの。大切な想いだもの」

 

「で、でも……」

 

「安心して。今は逆に、あなたが柱になったことを努力のバネにしているから。いつか……」

 

 

「――『自分も”柱”になる』」

 

 

「そうカナヲは言っていたわ」

 

「カナヲが柱に……?」

 

 もし、実現したとしたら――カナヲがなるのは”花柱”だろう。

 まるで、しのぶのあとを……いや、カナエのあとを継ぐかのようだった。

 

「それに……大丈夫。私がついているもの。いざというときは必ず私が止めるもの~」

 

「……!」

 

 カナエはそう言って笑みを浮かべていた。

 は、はは……すごいな、この人は。

 

 さっきまで感じていた不安が溶けて消えた。

 こんなに頼もしい言葉もない、と思った。

 

 彼女に任せておけば大丈夫……いや。

 任せる、と俺も決意した。

 

「カナエさん……カナヲのこと、よろしくお願いします」

 

「はい、任されました」

 

「わたしも……わたしのやるべきことをしてきます」

 

 カナエはカナヲを追いかけて、歩き去っていく。

 それを見送った俺は、小芭内へと歩み寄った。

 

「ふん……元・花柱との会話は終わったようだな」

 

「はい。すみません、お待たせしました」

 

「言っておくが、俺は甘露寺のように甘くないからな」

 

 そうして、俺と小芭内の握る木刀がぶつかりあった――。

 

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