TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手 作:可愛ケイ@VTuber兼小説家
炭治郎たちとの乱闘で実弥が謹慎を食らってしまい……。
俺は代わりに隊員たちに柱稽古をつけることになってしまっていた。
ちなみに炭治郎と玄弥はこの稽古を中断させられ、強制的に次の場所へと向かわされた。
そのため、完全に……俺ひとりぼっちだ。
「ど、どうしてこんなことに」
俺も頭を抱えていたが、稽古を受けに来た隊員たちもみんな困惑していた。
そりゃあそうだろう。
風柱が来ると思ったら、代わりに出てきたのが小さな女の子だったのだから。
ざわついている彼らに、仕方なく俺は自己紹介する。
「えーっと、みなさんはじめまして。わたしは新しく柱になりました――氷柱・
「なっ!? とても、そんなに強そうには見えないぞ……!?」
「こんな小さな子が!? 本当に!?」
「まだ10やそこらじゃないのか!?」
さすがにそこまでは幼くはないだろ!?
せいぜい12くらい……って、言ってて自分で悲しくなってくるが。
「オレ、そういえばほかの柱のところで聞いたぜ。なんでも元・音柱さまの隠し子らしい」
「そうなのか!? たしかに、あの髪色……同じだ!」
誤解だぁーーーーっ!?
イヤな予感してたけど、めっちゃウワサ広まってるぅううう!?
「あと、あいつ……霞柱さまからものすごくえこひいきされてたぜ」
「そうそう。オレたちは厳しい訓練させられたのに、あいつだけはあっさり合格にしてて」
えこひいきは誤解――じゃあないですね、はい。
本当にされていたから……順番飛ばしがあったから、否定できない。
ただ、それは俺だからではなく……炭治郎の友だちだから、だけど。
それに訓練内容についても、むしろ俺のほうが難しいことをやらされてたんだけどなぁ……。
「大体、あんなに小さい女のガキが柱になれるとかおかしくね?」
「あいつ、ウソ吐いてるんじゃないか?」
「実力じゃなく、だれかのお気に入りだっただけに決まってるぜ」
「たしかに顔はかわいいけどよぉ」
「ふざけやがって、実力もないクセに……! 鬼殺隊の看板を――”柱”の名を汚しやがって!」
うわぁ~、ヘイトがすっごーい。
なんかもう俺、心が折れて泣きそうなんだけど……。
でも、うん……正直、これはしょうがない部分も多いと思うんだよなぁ。
この状況じゃあ、俺が逆の立場でも似たような感想を抱いただろうし。
しかし……はぁ~、どうしたもんか。
そう悩んでいた、そのときだった。
「――お、ちょうど弱そうな柱がいるじゃねぇか」
そう、集団の中からひとりの隊員が前に出てきて、俺に言い放った。
……ん? なぜだろう?
間違いなくモブ顔だし、モブ隊員だと思うのだが……。
俺はなぜかひどく、彼に見覚えがあった。
「こんなガキでも柱になれるなら、オレでもなれるぜ!」
「えっと、だれですか?」
「オレは安全に出世したいんだよ! 出世すりゃあ、上から支給される金も多くなるからな!」
全然、話が通じない。
しかし……んんっ? この言い回し……。
「お前をぶっ倒してオレも柱になって……そこそこ稼いだら、悠々自適に引退生活してやるぜ!」
おおお、お前……サイコロステーキ先輩やないかぁあああっ!?
生きとったんかいワレぇえええ!?
「えっ? えっ? やだーっ、うそーっ!?」
と、俺はこの世界でも屈指の人気キャラクターの登場に興奮した。
本来なら那田蜘蛛山で死ぬはずの彼だったが、どうやら生き残っていたらしい。
しかし、彼の存在はまさに渡りに船だった。
俺はスゥッと木刀を構えた。
「ここでは打ち込み稽古をしてもらいます。模擬戦をして、わたしから1本取れたら合格です」
「はっ、ナメんじゃねぇぜ! こんなガキを倒すくらいだれでもできるぜ!」
「……わたしはあまり人に剣を教えたことがなくて。
「はッ! お前みたいなガキに教わることなんてなにもないぜ!」
「では……そこのあなた、合図してもらえますか?」
「え? わ、私……ですか? わかりました」
近くにいた人にそう頼む。
たまたまだが女性の隊員だった。
「それじゃあ……」
と、女性隊員はすこし俺へと心配するような目を向けながら手を上げる。
しかし、俺がジッと構えたままなのを見て……申し訳なさそうに、手を振り下ろした。
「――はじめっ!」
その合図とともにサイコロステーキ先輩が地面を蹴った。
彼は『八相の構え』――野球のバッティングフォームに似た構えをしていた。
別名『木の構え』とも呼ばれるそれのまま突撃してきて、木刀を振り下ろしてくる。
……
もしかするとこれは彼なりのジョークなのかもしれない。
さすがはサイコロステーキ先輩だ!
「おらぁっ! おらぁっ!」
サイコロステーキ先輩が何度も連続で打ち込んでくる。
ここでの柱稽古の内容は、まさにこの連続打ち込みなので俺は躱さずにあえて受けた。
といっても体格差と筋力差が大きいので、受け流させてもらっているが。
すぐに彼の息があがりはじめる。
「ぜぇっ、はぁっ……このっ! じゃあ、力でねじ伏せてやるぜ!」
サイコロステーキ先輩はこのままじゃラチが開かないと思ったらしい。
強引に鍔迫り合いに持ち込もうとしてくる。
しかし、これは打ち込み稽古ではない。
打ち込んでこないのであればもう終わりだ。
「……なっ!?」
力で押し込めようとしてきたところを、俺はスッと力を抜いて相手のバランスを崩した。
彼が踏ん張ろうとしたところで足を払ってやる。
結果、彼は自分の力を逆に利用されてステーン! と転がっていた。
俺は仰向けに倒れた彼の頸に、やさしく木刀を押し当てた。
これで勝負アリだ。
と思ったのだが……やはりサイコロステーキ先輩は格がちがった。
「は……ははっ! そ、それがどうした! 鬼殺隊の敵は鬼だ! お前みたいな細腕で鬼の頸が斬れるかよ! だからこの勝負、オレの勝ちだ!」
す、すごい! この状況で逆に自分の勝ちを宣言できるのか!?
サイコロステーキ先輩はそのまま強引に起き上がってこようとする。
でも……うーん、たしかに一理あるな。
それじゃあ仕方ない。
俺は木刀の峰を――ガンッ! と踏みつけた。
「ぐぇ――っ!?」
木刀の切っ先が地面に埋まった。
と同時に、頸が圧迫されたサイコロステーキ先輩からうめき声がこぼれる。
俺はうっすらと笑みを浮かべる。
周囲でその様子を見ていた隊員たちが「ひぃっ!?」と悲鳴のような声をこぼした――。