TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第14話『その刃は鬼に届くか?』

 

 ――速いっ!

 

 俺は転がるようにして、ギリギリで鬼の攻撃を回避した。

 あきらかに今まで戦った鬼たちとはレベルがちがった。

 

「ほほう? ちっこいクセにやるのう、今のを躱すか」

 

 そうゆっくりと振り返った鬼の身体からは、ジュゥウウウと蒸気が立ち上っていた。

 降ってくる雪がヤツの肌に触れる端から……いや、触れる前に蒸発している。

 

 ヤツが立っている周囲の雪も、あっという間に溶けて水となる。

 茶色い山肌が露出していた。

 

 その肌はまるで沸騰するみたいにボコボコと泡立っていた。

 かなり距離を取ったのに、ここまで熱気が伝わってくる。

 

「……血鬼術か」

 

「しかり!」

 

 鬼がニヤリと笑った、そのときだった。

 突如横合いから――吹雪の中から、人影が飛び出してきた。

 

 その人物は刀を振りかぶっていた。

 

「隙ありぃいいい!」

 

「あぁん?」

 

 かの人物が振るった刀は、鬼の頸を捉えていた。

 刀身がその頸の中ほどまで到達する。

 

「やった! 取った!」

 

 刀を握る彼は、その表情に喜色を浮かべていた。

 このバカっ……!

 

「かっかっか、こりゃあ失敬! ジャマが入ったのう。まだ鬼殺隊のザコが残っておった」

 

「はっ? なんで平然として……」

 

「おぬしこそいったい、なにをよろこんどるんじゃ?」

 

「……えっ?」

 

 彼の振るった刃は、するりと鬼の頸をすり抜けた。

 いや……。

 

「なんで、刀身がなくなって――!?」

 

 なくなったんじゃない。

 鬼に触れた部分が――ドロリと溶けた(・・・)のだ。

 

「かっかっか、言っとらんかったか! あいにくわしの頸は……刀じゃあ斬れぬ」

 

「そんな、頸を斬れない鬼だなんて無敵じゃ――ぎゃあぁあああっ!?」

 

 次の瞬間、彼の身体がひとりでに燃え出した。

 長時間、ヤツの近くにいたからだ。あまりの高温に自然発火を起こしたのだ。

 

「あ……ぁ……、……」

 

 すこしして火はおさまった。

 地面に転がる彼の身体からは、プスプスと煙が上がっていた。

 

 ……助ける余裕はなかった。

 

 カヒュ、カヒュとおかしな呼吸音が聞こえる。

 彼はギリギリで生かされていた。

 

「危ない危ない、黒コゲにしてしまうところじゃった。わしは鬼狩りは必ず、ひと口は味見するようにしとるんじゃ。まれに当たり(・・・)があってのう、くじ引きのようでじつに愉快!」

 

「本当に、鬼というやつはどいつもこいつも悪趣味だ」

 

「わかってないのう、これは”(いき)”と言うんじゃ。おぬしからは珍味の気配がするのう?」

 

「もういい。お前は()く死ね」

 

「……ふむ?」

 

 俺はシャランと刀を抜いた。

 ピクリ、と鬼が反応する。

 

「ほほう。透明な刀とは、はじめて見たわい」

 

「スゥゥゥ、……フッ!」

 

「かっかっか! 自ら飛び込んでくるか!」

 

 狙うは一点、頸のみ。

 それに……。

 

「ほうれ、よぉく狙うんじゃぞぉ!」

 

 やっぱりだ。こいつは油断している。

 だから、さっきもワザと鬼殺隊員の攻撃を受けた。

 

「じゃが、あいにくわしの頸は――」

 

 ヤツは今がもっとも無防備!

 この一撃で決める!

 

 

「氷の呼吸・参ノ型――”雪崩(なだれ)”」

 

 

 『氷の呼吸』唯一の剛剣。

 まるで押し寄せる雪のごとき勢いで叩きつける、俺が使える中でもっとも威力の高い技。

 

 透明な刃が鬼の身体に触れ――。

 

「……」

 

 鬼が一瞬で、三間……5メートルも離れた場所に移動していた。

 

 ……躱された。

 なんという、勘の鋭さ。

 

「どういうことじゃ? 今、たしかに刃がわしの頸に触れたぞ?」

 

 不思議そうに、鬼が自身の頸に手を当てて確かめていた。

 そこからはツーっと一筋の血が流れていた。

 

 浅い。斬れたのはほんの薄皮1枚だ。

 それもすぐに回復してしまう。

 

「なるほど」

 

 ギョロリ、と鬼が俺の握る刀を見た。

 ボコボコと沸騰するみたいに、ヤツの眼球が泡立っていた。

 

「どうやら、おぬしの刀――異様なまでに冷たいようじゃのう」

 

「……チッ」

 

 大抵の場合、強い鬼ほど頭もいい。

 あの一瞬でタネが割れてしまった。

 

「驚いたのう。まさかこの世に”熱の鎧”を貫通してくる刀があろうとは。それに、わしに近づいたというのにおぬしも燃えておらぬな。そちらも同じ理屈というわけか」

 

 全部、ヤツの言ったとおりだった。

 俺は『氷の呼吸』で刀身を冷やし、溶かされることを防いだのだ。身体も同様。

 

 だが、バレたからなんだというのか。

 俺のやることは変わらない。

 

「お前を殺す」

 

「かっかっか、威勢がええのう!」

 

 俺はトンっと地面を蹴った。

 跳ねるようにして鬼へと斬りかかる。

 

 

「氷の呼吸・弐ノ型――”白兎(しろうさぎ)”」

 

 

 プシュっ、と鬼の体表に浅い傷ができる。

 そのまま畳みかけた。

 

 

「氷の呼吸・漆ノ型――”華吹雪(はなふぶき)”」

 

 

 連続で相手を斬りつける。

 鬼の身体に無数の傷を刻みつけてゆく。

 

「ちぃっ!」

 

 鬼は腕を交差してその連撃に耐えていた。

 どうやら、速さでは俺に若干の分があるらしい。

 

 ヤツはやがて「たまったもんじゃない」という風に飛び退った。

 それが好機だった。

 

 ――今だ!

 

「スゥゥゥっ!」

 

 深く息を吸い込み、そして吐き出す。

 俺は一気に踏み込んだ。

 

 

「氷の呼吸・肆ノ型――”霜走(しもばし)り”」

 

 

 一瞬で彼我の距離はゼロとなる。

 刃は今度こそ確実に鬼の頸を捉え――。

 

 

 ――キィイイイン!

 

 

 甲高い音が鳴った。

 刃は鬼の頸の……その表面で止まっていた。

 

「なんじゃ? わしに刃が届いて……その程度で、まさか本当に勝てるとでも思ったか?」

 

「っ……!」

 

 なにかの血鬼術?

 いいや、ちがう。これは――ただ単純に硬いだけ(・・・・)だ!

 

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