TS転生幼女は「氷の呼吸」の使い手   作:可愛ケイ@VTuber兼小説家

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第17話『紅蓮華のごとく』

 

「――おぬしも鬼になればええ」

 

 鬼の発言はまさかの内容だった。

 思わず、声が震えた。

 

「なにを、言って?」

 

「わしは”あの方”よりその権限をいただいておる。そうすれば、おぬしも今よりうんと強くなれるぞ。そして……今後は磨いた技のすべてを、人を殺すために使うんじゃ!」

 

「お前……お前ぇえええ!?」

 

「かっかっかぁあああ! 鬼を狩るための技で人を狩る……なんと愉快なことか!」

 

 鬼が高笑いしていた。

 耳障りな、最低な声だった。

 

「ほれ、これからは同じく人類の敵と――”家族(オニ)”となるんじゃ。仲良くしようではないか。ほら、教えてやろう。わしの名前は――」

 

「……く、くくっ」

 

 俺は堪えきれずに声を漏らした。

 それは嘲笑だった。

 

「なにがおかしい」

 

「いや、だって……くく、あはははっ! 名前? 鬼が名前だって? これが笑わずにいられる? だって、そんなのまるで……」

 

 

「――まるで、人間のマネごとじゃない」

 

 

「……あ?」

 

「所詮、人の道を外れただけのできそこないのクセに。あなたの名前になんて、なんの価値もない。どうでもいい。あなたはただの”鬼”。それ以下はあれど、それ以上はない」

 

「こっ、小娘キサマぁあああ!? ”あの方”がくださった名前を侮辱するかぁあああ!?」

 

 鬼の指がさらに食い込み、ブシュゥ! と俺の肩から血が噴き出した。

 痛い! けれど、それよりも……。

 

 つい「あはっ」と笑みがこぼれてしまう。

 あぁ、やっぱり……。

 

 

「――油断した」

 

 

「あん?」

 

 この外見を選んでよかった。

 自分の選択は間違っていなかった。

 

 非力だからこそ、幼いからこそ、敵はこうして何度でも油断してくれる。

 会話に……時間稼ぎ(・・・・)にまんまと引っかかる。

 

「あーほんと、おっかし……お前は気づいていたはずなのにな。わたしにまだ策があるって」

 

「じゃから、それがこの氷の刃で」

 

「突き技じゃあ鬼は殺せない――そんなこと、わたしが理解してないと思う? その先(・・・)があるとは考えなかったの? こんなにも悠長にお話なんかしちゃって」

 

「なにをわけのわからんことを。もういい、キサマを――」

 

 ……もう十分だ。

 俺はこいつを――殺せる(・・・)

 

 

「咲け――”氷華(ひょうか)”」

 

 

 俺は歌うように言った。

 同時、俺は密かに切っ先へと送り続けていた冷気を一気に解放した。

 

「は? な、なんじゃこれは……? ぐおぉおおおッ!? 身体がッ……身体が内側から冷えて――いや、凍っていくぅううう!?」

 

 注ぎ込んだ冷気で相手を体内から瞬時に凍結させる。

 固化した血は液体であったときよりも体積を増す。そして……。

 

 

 ――バァアアアン!

 

 

 限界を超えると同時に、その肉体を内側から炸裂させた。

 

「ぎぃゃあああぁあああッ!?」

 

 鬼の絶叫が轟いた。

 

「痛い痛い、凍るように痛い!? いやこれは、実際に身体が凍って……!?」

 

 破裂した鬼の腹部からは、真っ赤に凍った血の華が咲いていた。

 それは、まるで真っ赤な(はす)の花……。

 

 

 ――”紅蓮華(ぐれんげ)”のごとく。

 

 

「わたしは……弱いままでいい! 強くなくてもいい! ただ、お前たちさえ殺せればそれで!」

 

 鬼を殺すのは技か?

 否――油断(・・)だ。

 

 この技は『型』ではない。

 これは、鬼を殺すための力がない……非力な俺が辿りついた、ただの”(すべ)”。

 

 俺は吠えた。

 

「なにが『鬼になれ』だ!? ふざけるな! お師匠さまが教えてくれた剣術は、呼吸は……力はすべて! お前たち鬼を滅ぼすためのものだぁあああ!」

 

「ぎゃあああッ!? こ、このクソガキがぁあああ!」

 

 鬼はその場から動けなくなっていた。

 ヤツはまるで斬首を待つ罪人のごとく、膝を着いて頸を差し出している。

 

「クソっ、身体が凍って動かぬ!? じゃ、じゃが斬れるものか! お前のような非力な小娘にわしの頸がぁあああっ!」

 

 鬼が頸に力を込める。

 メキィメキィ、と強度が増したのがわかった。

 

「……たしかに、斬れないだろうね」

 

「ほれ、やはりそうじゃろう!」

 

 

「――1回だけじゃあ、ね」

 

 

「……お、おぬし、なにを考えとる? なにをするつもりじゃ?」

 

 俺は上段よりさらに上、”大上段”に刀を構える。

 これだけの溜め時間と体勢が整えば、たとえ力のない俺でも――刃は通る!

 

 

「氷の呼吸・参ノ型・(かい)――”断頭(だんとう)雪崩(なだれ)”」

 

 

 ”参ノ型”を大きな隙と引き換えに強化した技。

 ブシュウウウ! とヤツの頸から血が噴き出した。

 

「ぎぃゃあああ~~~~ッ!?」

 

 それはヤツの頑強な皮膚を貫通していた。

 しかし、頸を切断するには至らず、数センチのところで止まってしまっていた。

 

「か……かかっ! ほれ見ろ、斬れぬではないか! やはり、おぬしではわしを殺せな――」

 

 

「――”断頭・雪崩”」

 

 

「ぎぃいいいあああっ!?」

 

 俺は2度目(・・・)の”参ノ型・改”を繰り出していた――。

 

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